後悔してももう遅い 〜神様にお願いして転生!ハーレム!最強!と思ったんだが浅はかだった〜
◆おお、せいねんよ、しんでしまうとはなさけない
天地全てが白く距離も分からない空間に、少年の名残りを残す青年が倒れ伏していた。
彼は制服らしき服を身に付けているものの、シャツにべっとりと血が付着しており、凡そ普通の状態ではない。
「うぅん……」
やがて彼は目を覚ます。周囲を見回すものの困惑は明白だ。
「ここはどこだ? 何でこんな所に居るんだっけ」
「目覚めたか、君」
「え?」
上から少年ではない声が響く。その声は正に天上の響きという快さだ。
やがて上方から光を背負う美しい女性が、まるで椅子に寛いだような姿勢のまま降りてきた。
なんだこれ? なんかのドッキリ企画に巻き込まれたのか?
「ドッキリなどでは無いよ」
「うっ!?」
「人の心ぐらい覗くのは簡単さ、まぁそれは些細な事として本題に入ろうか」
「えっ、ちょ、俺まだ本気で何が何だか」
「率直に言って死んだよ君」
「!?」
「道を歩いていて落下物に頭を砕かれ見事に即死、実にスプラッタだが直前の記憶が無いのも納得だろう?」
正直訳が分からない。なのに何故か信じられるような気がしてならず、彼は背筋が冷える気がした。
振り絞った記憶の最後、突然視界が何らかの理由で下に向いたのまで思い出せた。その直後、意識から何から全てが虚無に覆われ、気が付いたら今なのだ。
そうか、あれは直撃の衝撃で、俺は死んだのか。
「納得したようだね。それじゃあ非業の死を遂げた君には特別に行き先を選ぶ権利が与えられる」
「行き先?」
彼は展開に付いてこれていないが、頭が落ち着く前に話が続いてしまった。
「一つは地球に再誕するコース。普通の輪廻だね」
「はぁ」
「次に私の世界で勇者やるコース。とてもとても危険な宿命が待っているが実質蘇生の上、やる事をもし全部成せたなら恵まれた環境が待っている」
「す、すっげぇあからさまなブラックの気配」
「最後に君……というか人間を欲しがっている神様の箱庭世界に転生するコースだね」
「? ……よく分からない」
「君はライトノベルは嗜むかな? それの異世界転生みたいなものだよ。まぁ、チートの一つや二つぐらいは特典に貰えるんじゃないかな?」
彼にも薄々分かってきた。恐らくこの女性は女神で、自分は降って湧いたような滑り止めチャンスを得ているのだと。
「地球に生き返ることは出来ないので?」
でも少しは欲張った。
「身体グチャグチャだから、つまり亡霊になりたいってこと?」
「なんでもないです」
まぁそんな所だろうとは思っていたけど、治してもらえるコースは無かったようだ。
「じゃあ……勇者はどう考えても殺し殺されの鉄砲玉だし、異世界行きます」
「地球再誕は選択しないのかい? まぁ鶏転生や鮭転生、はたまたミドリムシ転生かもしれないけど」
幅がヤバすぎる……なんで食用になるのばっか挙げるんだ。
地球再誕は普通過ぎてスルーな選択肢と思ったが完全除外だわ。
いい感じに生まれ変わる確率が無に等しい闇鍋ガチャじゃないか。
「地球と言っても俺は日々をなぁなぁで過ごしてきたんで、子供にしては知識あるってだけの実質ゼロからのスタートはあんまりって感じですね」
「君、内心と口から出てくる建前が違い過ぎて少し面白いよ」
「ぐぬっ(心読まれるんだった)」
もう元通りに生き返れないのなら、少しでも恵まれてそうな方に行きたい。
そう心に決め、神様の箱庭への転生を決める。
「……よし、それでは引き取り手の神様と交代するから、あとは頑張れ」
光を背負った女性は一際強く輝いたと思ったら、跡形もなく消えてしまった。
頑張れって何が?
放置されてどれほど時間が経ったのか、突然に光の玉が飛んできた。
何の変化も無い空間に長い事放置されて狂うかと思った。
「君かぁ」
「はっ?」
「よろー」
「えっその、神様ですか?」
「あい」
(な、なんかこう、雰囲気違う! 思ってたのと!)
「あーね」
「は、はい!」
「人型いないけど増やしたいからよろしゅー」
「は!? ちょっと意味が」
「ハーレムよろり」
「ちょっと魅力的な響き、いやもうちょっと話をうわ体消え」
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「ちょっと誘導的に伝えるのは神様への忖度だった分、
僅かな詫びとして別の選択肢も出したけど無駄だったね。
地球だったら次の死者は飼い猫転生だったからいやぁ勿体無い勿体無い、私もそのうち休みで一猫行きたい。あ、今回の誘致の褒美で有休20年ぐらい余裕かな、猫枠は私が貰ってしまおう。
しかし私が女神サマとか失笑ものだ、見る目が無いね。
女神サマがやったら要望無視の問答無用で異形転生だよ」
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拝啓、前世お母様、先立った不幸をお許し下さい。
もう少し堅実な頭に育てばよかったと深く反省しております。
俺は今……
「ジードガールノドアギュタフソマロイ」
「いやあのそう言われましても」
「ハシメワオオセラツカヒヤテホロロロイ!」
「全くもって心の準備ができないと言いますか」
「ビゴ!ノマ!アルタユソヒエムワドカメアンゴハタリ!」
「助けて神様ー!!」
……グッチョグチョの動く苔みたいな地を這う生き物や、触手が連なって本体が無いような生き物、蛇とサメを足して二で割ったような生き物らなどなど、凡そ名状し難い生き物達にモテモテです。
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「ま、後悔してるだろうけど、強く生きてな種馬くん。
神様から生き物創りを委託された女神サマは、神様の好みをガン無視して自分の趣味に走ったのさ。で、結果に嘆いた神様が外から人間因子を取り込もうと思ったわけよ。
恨むんなら私じゃなくて神様か女神サマを恨んでおくれな」
人物紹介
・彼
至って普通の容姿の人間男性。
事故死の後に神様の箱庭に転生した青年。
死因は降ってきたビルの外壁であるが、外壁が剥がれ落ちた原因は不明である。不明である。
あまり頭を使うのは好きではないが、その結果見事に誘導にハマった。
神様に授けられたチートは「発狂無効化」「優性遺伝(特大)」「意思疎通」「言語理解」
・神々しい女性
正体は大天使。最低限の仕事派の女。
神様の事は給料くれる社長程度に尊敬している。女神様はエグいので尊敬していない。
・神
光の玉。
女神と一緒に趣味として自分好みのユートピアを創ろうと画策したが、女神のエキセントリックな趣味を忘れており名状し難い生き物の世界になった。
彼を送り込んで、徐々に人間成分を混ぜ込ませることで方向修正予定。
話し方にクセがある。
・女神
仄かに輝く水玉。
未登場のくせに全ての元凶。
あまり蛋白質が好きではない。
好きな身体的特徴は蓮コラ。
苦手なのは指示書と命令と要望。
・苔ちゃん
神託を受けた巫女にして絶世の美少女。
彼の事を心配し、後見人として見守っている。
全ての苔が彼女である為、増えても代替わり不要。
つまり彼女自身がドライアド女性みたいになる未来がワンチャン。
真摯なメインヒロイン!
・触手さん
神様を信奉するハイプリエステス。
狂信のケがあるものの神託を真摯に受け止め、子孫繁栄に励もうとする大人の魅力溢れる妖艶な女性。
彼女の説法を受けたモノは初めからそうだったように神様を信じるという。
エッチできれいなお姉さん!
・サメヘビ様
箱庭内の平和を守る女王様。
世界が神様の箱庭であることと、自分達が神様の望みからかけ離れている事を理解しており、神様に世界ごと廃棄される可能性を恐れている。
神託を受け、未来を閉ざさぬ為にハーレム運営を主導、率先する覚悟も見せる。
高貴なムッツリお嬢様!