第11話 艦隊決戦3(キャラ名版)
ナツミYU「ナツミYUです、艦長を代わります。目標となる敵艦への狙いは各々に任せますので、確実に仕留めていって下さい。またバリアは敵側からの攻撃は阻止しますが、こちら側からの攻撃は通りますのでご安心を。」
彼女の発言で更に物凄い雄叫びが巻き起こった。どうやらナツミYUが指揮を執っている事に奮起している様子である。先程も述べたが、躯屡聖堕チームの中では伝説的存在だ。その彼女の指揮とあれば、奮起しない方がおかしいだろう。
艦橋の窓から周りを見ると、あの46cm主砲がゆっくりと動き出している。しかも3基が独立した動きを展開している。それは副砲や各種砲台も同じだ。これには申し訳ないが、物凄く興奮してくる。あの伝説の戦艦大和の戦う姿を間近で見られるのだ。
ミスターT「一同に追加補足をしたい。文献での話でしか窺った事がないが、主砲の発射時の爆風は凄まじいとの事だ。艦外にいるメンバーは全員退避して、反動に備えてくれ。」
ナツミYU「実際に大和の攻撃を見るのは私も初めてよ、十分油断しないように行動を。」
俺達の言葉に再び湧き上がる面々。伝令を雄叫びで返す所が、実に躯屡聖堕チームらしい。その後もレプリカ大和の武装が準備を続けている。
確かミズーリ号の主砲一斉射撃の爆風は、巨艦をも傾けるとの事だ。ミズーリ号ですらそうなるのだから、レプリカ大和とはいえ凄まじい衝撃が走るだろう。十分注意せねばならない。
まあ多分だが、バリアの効力に重力制御の理も働いている様子だ。主砲射撃時の爆風は、案外物凄く軽いものになるかも知れないが・・・。
どれぐらい待っただろう。伝令で攻撃準備が完了した事を伝えた。一応の報告であろう。それにGOサインを出すナツミYU。直後、46cm主砲が一斉に火を吹いた。
やはりそうだった。バリアの効力には重力制御の理が働いているようで、最強の主砲たる46cmの一斉発射でも振動は殆どない。しかも3基が独立してそれぞれの目標を狙ったのにである。この場合は艦自体がかなり揺さ振られる筈だ。流石は重力制御の理か。
しかしそれでも超轟音が鳴り響く様は、正に怒れる獅子の咆哮そのものだ。これだけでも人間には相当効果があるのだが・・・。
そう、敵艦は全てが無人兵器。当然回避などする筈がない。したとしても、世界最強の主砲たる46cm砲の巡航速度に敵う筈もない。しかもこれらはオリジナルにはないイージス艦は十八番、電子制御式の超精密誘導を導入した状態での射撃である。狙われたら最後、どんな船だろうが一撃必殺である。
遠方の複数の艦船に主砲弾が直撃する。たった一撃で大爆発を巻き起こしたのだ。そのまま海の藻屑と化していく。正に天下無双そのものである・・・。
ミスターT「はぁ・・・ここまで凄まじいものなのか・・・。」
ナツミYU「エリシェさん曰く、オリジナル大和の改良版だからね。当時より火力は数段上がっていると思えるわ。」
ミスターT「しかも今は電子制御での一撃必中だしな。」
主砲の再装填の間、副砲が断続的に火を吹いた。放たれた先の敵艦に見事着弾し、大爆発しないものの致命的な一撃を与えている。この副砲だけでも当時の駆逐艦以上の火力を誇っているという。更にはレプリカ大和の兵装は各段に進化を遂げていた。ナツミYUが言う様に、当時とは比べ物にならないぐらいの火力だ。
躯屡聖堕メンバー1「レーダーに機影、航空兵力と思われます!」
ナツミYU「広範囲高密度生体レーダーで探知して頂戴。無人だったら各種砲台で迎撃開始。」
躯屡聖堕メンバー2「了解です!」
今度は飛行兵器か。ここから窺える限りだと、かなりの数の戦闘ヘリや戦闘機がいる。ただ問題は有人か無人か、ここだわな。
ミスターT「ハワイの方への被害は?」
躯屡聖堕メンバー1「全くありません。敵艦及び航空兵力は全てこちらに向けられている様子で。」
ミスターT「軍服連中め・・・。」
それ程までにミュティ・シスターズの力が欲しいのか。それか先刻の当て付けか。どちらにせよ、こちらをただでは見逃してはくれまい。ならば徹底抗戦あるのみだ。
ルビナ「敵方はギガンテス一族のテクノロジーに目を向け過ぎて、私達一族のテクノロジーには目を向けていないようですね。」
ミスターT「ミュティナが言っていたが、お嬢も何らかの特殊能力があるのか?」
ルビナ「はい。ミュティナ様方とは真逆の、超常的能力と言いましょうか。種族としての力も同じぐらいのものです。」
ミスターT「はぁ・・・人間泣かせそのものだわ・・・。」
ナツミYU「本当よね・・・。」
ミュティ・シスターズを含むギガンテス一族の力やテクノロジーに驚愕しているのに、今度はルビナの一族の力やテクノロジーに驚愕せざろう得ない。彼女が言う超常的能力となると、それは多分在り得ない動きが可能と推測できる。う~む・・・。
躯屡聖堕メンバー1「生体レーダー識別完了。飛行兵器群は全て無人のようです。」
ナツミYU「なら容赦なく撃滅ね、各員にそう伝えて頂戴な。」
躯屡聖堕メンバー2「了解しました!」
オリジナル大和は時代にそぐわなかったため、航空戦力の前に倒されている。戦艦としての戦いで倒されたのは、旧ドイツ海軍の戦艦ビスマルクぐらいだろう。それは壮絶な戦いだったとの事だ。大和自体も戦艦同士の艦隊決戦なら、決して引けを取らなかった筈である。
ただ、ビスマルクは事前に舵を破壊されており、直進しかできなかったという不利な点もある。完全な状態で戦ったら、別の流れになっていたかも知れないが。
ミスターT「戦艦のキラー要素たる航空機への攻撃か。今回はバリアもある、負ける事はないわ。」
ナツミYU「そうね。しかも相手は理不尽な対応をする軍服連中、しかも夥しい無人兵器と。当時の戦いとは雲泥の差よ。」
ミスターT「徹底駆逐してやるわ。」
俺の言葉が合図となったのか、司令塔たる躯屡聖堕メンバーの2人が各員に通達していく。直後、各砲座が一斉に火を吹き出した。主砲と副砲は引き続き、海上戦力の掃討に当たっている。
一方的とは正にこの事だろう。レプリカ大和の兵装はオリジナルと大差ないが、その火力はオリジナルを遥かに凌いでいる。しかもイージス艦に搭載の電子制御式システムもあるため、その命中精度は遥かに凄まじい。
更にミズーリ号にも搭載されている現代兵器群も大活躍している。こちらはレプリカ大和の標準装備の兵器群よりも命中精度が高い。放たれれば最後、相手を撃墜するまで追尾し続ける恐怖の矢でもある。
飛来する戦闘ヘリや戦闘機を簡単に撃墜していく様は、オリジナル大和では成し得ない力の姿だろう。それに今は相手の様相が全く異なる。負ければ全世界が危ない。
躯屡聖堕メンバー1「レーダー探知、魚雷と思われる推進装置が向かってきます!」
ミスターT「海中もバリアは健在だな?」
躯屡聖堕メンバー2「実際に確認はしていませんが、問題なさそうです。」
ナツミYU「正に大船に乗った気持ちでいなさいな。」
レーダーを見せて貰うと、先程のミサイル以上の魚雷と思われる兵器が向かってくる。表を見ると、水中に縦筋が何本も走っていた。しかしそれらはバリアに阻まれ爆発していった。レプリカ大和を包み込むような大飛沫が舞い上がるが、船体へのダメージは全くの皆無だ。
ミスターT「ギガンテス一族のテクノロジーねぇ・・・連中が血眼になって欲しがる訳だ。」
ナツミYU「現行兵器が全て役に立たなくなるからね。しかも外から防げて中からは攻撃ができる。至れり尽せりよね。」
ルビナ「宇宙空間での兵器の使用は地球よりも威力が増しますので、バリアなどの防御策は必須でしょう。更には各種生物に有害な放射線なども防ぎますよ。殆ど最強と言える致死力を持つガンマ線すら防ぎますから。」
ミスターT「それさ、外部からの目に見えない超微粒子すらも防ぎそうなのは分かる。だけど生物に必須な酸素などは、どう取り入れるんだ?」
ルビナ「さ・・さあ・・・詳しい事は私にも。私が生まれる遥か前より開発されたもので、どの様なテクノロジーが施されているかは全く以て不明ですが。」
ミスターT「ルビナですら不明事か・・・。」
ナツミYU「正にロストテクノロジーそのものよねぇ・・・。」
今後の地球での兵器開発は、この手のバリアが決め手になりそうだ。まあだとしても、このオーバーテクノロジーを提供する事はないだろう。ギガンテス一族や後続のドラゴンハート一族の虎の子でもある。それを無理矢理に手に入れようとしているのが、あの軍服連中となる訳だ。
そう言えば、映画「“独立記念日”」や「“宇宙戦争”」ではバリアの効果が逸脱していた。序盤の人類はそのバリアを破る術を知らず、一方的に攻撃を受けていた展開になる。
ただし、前者はコンピューターウイルス・後者は地球に古来から住まう微生物が特効薬となった。コンピューターウイルスは近代兵器群にもなるテクノロジーだが、微生物は地球での生存権を承諾されるか否かを突き付けられた形だ。
何度か話に挙がっている火星移住計画。しかし実際には火星に住まう微生物に、地球人が生存権を承諾されるかどうかがカギになるだろう。外部からの異端児をすんなり受け入れるとは到底思えない。
となれば、この掛け替えのない地球を大切に使わせて頂く事が最善の策だ。それを私利私欲に走る愚者共が横暴の限りに吸い尽くしている。だから昨今の異常気象などが起こっているのだと思う。言わば地球の怒りである。
複雑な心境だが、今の生き様も地球での生存権を得るためのものに帰結するだろう。警護者の役割は、烏滸がましいが地球を守る事にも繋がると言えるわな。
ミスターT(エリシェ、聞こえるか?)
エリシェ(何でしょうか?)
ミスターT(この様子は中継か何かで見ているのか?)
エリシェ(はい。今も臨時参謀本部にて、皆さんの勇姿を凝視しています。バリアの堅固さや、大和自体の総合火力をまざまざと見せ付けている感じで。彼らには申し訳ないのですが、実に爽快極まりません。)
念話でエリシェに連絡を入れる。どうやら向こうでも中継により、今の現状を目視しているようだ。第2次大戦時の過去の遺産たる戦艦大和が、特殊部隊に決定的にな一撃を放つ様は見事のようである。
ナツミYU(バリアがなかったら、最初のミサイル群の飛来で大ダメージを蒙っていた感じよね。次の航空戦力の攻撃や魚雷群の到来で、確実に沈められている感じで。)
エリシェ(ですね。しかしその全てがバリアによって完全無効化されています。その効果がどれだけ有効かを痛感していると思いますよ。)
ミスターT(・・・俺的解釈だが、多分横槍が入りそうだな。協力する代わりにバリアや重力制御の理を提供せよ、と。そうなった場合はハワイを離れる。そもそも警護者自体が独立した戦闘部隊、何者にも組しない傭兵そのものだしな。)
エリシェ(そこは同意します。人間の私利私欲は何度も見せ付けられてきました。在り得ない強大な力を前にすれば、それを欲するのが人間のエゴ。まあ今回のこれは態と見せて、どういう反応をするのかを確認するのが目的ですけど。)
ナツミYU(なるほど、本音はそこにあった訳ねぇ。)
全てを見越した行動を考えていたエリシェ。確かに軍服連中が率いる特殊部隊は、世界共通の敵対勢力である。しかしギガンテス一族やドラゴンハート一族のオーバーテクノロジーも実に魅力的だろう。その力があれば、世界を我が物にする事も可能である。
ミュティナL(大丈夫ですよ。いざとなったら宇宙空間から揺さ振りを掛けますから。地球人のエゴから発生させた戦争の歴史、これを簡単になりますが拝見をしました。皆様には大変申し訳ありませんが、この部分を踏まえれば信用に値できる種族ではありません。)
ミスターT(ごめんな。俺もお前達がアリゾナ記念館で地球人の戦争の歴史を知り、どんな対応をするかを考えていた。しかも記念館での内容の発端は、俺の祖国たる日本が淵源だ。)
ミュティナL(でもお兄様はその罪を背負い、今こうして戦っておられるじゃないですか。当時の軍国主義を傘に台頭する勢力とは全く違います。)
ナツミYU(止むに止まれぬ事情で起こった戦争だったからね。一説だと、太平洋での日本との開戦を望むアメリカ側が態と真珠湾攻撃を引き起こしたとも。奇襲に仕立てて愛国心を駆り立て、日米決戦に持ち込んでいった。国が・種族が、そこはさておくけど。人間自体がエゴの塊よ。)
滅多に怒らないナツミYUがかなり激怒している。彼女の本業は教師であり、未来の大切な申し子達を守る側である。その子供達を苦しめる戦争には断固反対もしていた。だからこそ警護者の道に走ったとも言っていた。
ナツミYU(そうね、君が思った通り。一見すると矛盾していそうな生き様だけど、力が無ければ虐げられるのも目に見えている。最低限の力を持つべきだと。正に警護者の力が打って付けよ。)
ミスターT(最後は自分自身との戦い、自分自身の生き様をどう刻んでいくか。ここに回帰するか。案外、軍服連中はそれを世界中に教えてくれているのかもな。)
ルビナ(人間としての正しい道と選択を、ですね。)
先程も語ったが、ギガンテス一族とドラゴンハート一族のオーバーテクノロジーは軍事部門に所属する面々にとって超魅力的であろう。それを交渉の材料に支援を要求してくるのは目に見えている。地球上の現行兵器が一切役に立たないのだから。喉から手が出るほど欲しがるとは、正にこの事だろうな。
第11話・4へ続く。




