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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
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第10話 骨董品の威力5(キャラ名版)

 どれぐらい戦い続けただろうか。甲板に夥しい兵士達が倒れている。偶に勢い余って艦外に落ちそうな人物がいた。その彼らを戦いの最中でも助けて回ったが・・・。


 死活問題の戦いの最中で敵兵士を助ける、か。一歩間違えば自分が危うくなるのだが、その姿勢を欠いたら軍服連中と同じになってしまう。


 憎むべきは一念や思想であり人間ではない。そして諸悪の根源はあの軍服連中なのは明白。不幸にも連中の手足となり捨て駒になっている特殊部隊に、俺達は人としての生き様を見せていくしかない。



ミツキ「星空が綺麗わぅ~。」

ミスターT「今までの戦いが嘘のようだな。」


 夜の帷が降りた頃、自然と大乱闘は終わっていた。前半は射撃で圧倒するも、それらは致死に至らないように調整していた。後半の大乱闘は殴り合いだったため、致死に至る事は無いに等しい。しかもどの面々も清々しい表情を浮かべていた。


ミスターT「これを考えると、今後は洋上での生活になるわな。とてもじゃないが、日本にいると要らぬ火種を引き起こしかねない。」

ミツキ「わたは喫茶店で陣取るわぅよ。姉ちゃんや四天王、それにウインドちゃん達がいれば問題ないわぅし。」

ミスターT「そうだな。狙いが俺やミュティ・シスターズなら、俺達はレプリカ大和で行動した方が安全だろう。国内だと被害が拡大してしまう。」

ビアリナ「むしろ世界中を回って情報収集に走った方が良さそうです。特殊部隊が何処でどう出没するか分かりませんし。」

ミツキ「目の前にいるわぅよ。」


 彼女の皮肉を込めた言葉に捕縛された兵士達は苦笑いを浮かべている。しかし人としての対応には感激しているようではある。前にも述べたが、憎むべきは一念や思想であり人ではない。捨て駒同然に扱われた彼らには全く罪はないのだから。


ミツキ「とりあえず、特殊潜水艦の甲板で海運わぅね。わた達は一度東京に戻るわぅ。」

ミスターT「俺はここに残るわ。他の面々にそう伝えておいてくれ。」

ミツキ「らじゃー!」


 ミツキの言葉の直後、レプリカ大和の隣に特殊潜水艦が浮上してきた。というかその姿を見て驚愕した。こちらも旧日本海軍の潜水艦で、当時世界最大の伊400シリーズである。これすらもレプリカとして建造していたとは・・・。


エリシェ(私達は戦争をしている訳じゃないのですよ。だから最低限の武装で十分です。)

ミスターT(だからと言って骨董品を・・・。)

エリシェ(ただし外見に惑わされたら寝首を掻かれますよ。表面は伊400でも、内部や装甲は今の原子力潜水艦と同じものを使っています。最新鋭の設備が整っていますので。)

ミスターT(はぁ・・・。)


 何と言うかまあ・・・。まあでも、こうやってレプリカでも骨董品を見られるのは光栄だわ。特に大和や伊400シリーズは幻の艦船である。それを建造した部分には驚くが、特殊部隊には特効薬であろう。



 特殊部隊の兵士達をレプリカ伊400の甲板に搭乗させていく。レプリカ大和から釣り橋状タラップを延ばし、そこから乗り移っていった。ちなみに名目上では捕縛であるが、彼らを縛り上げる事などしない。それが俺達のポリシーである。


 それに彼らも思うは、自分達が捨て駒当然に扱われる現状には違和感を感じているだろう。でなければ最後まで徹底抗戦をする筈である。素直に従ってくれる姿を見れば、どちらが悪か明白である。


 レプリカ伊400型潜水艦の甲板に特殊部隊の兵士達を乗せて、同艦は東京湾へと向かって行った。ミツキ・ナツミA・ビアリナも一緒である。俺は引き続きレプリカ大和で待機する事にした。




ミュティナ「お元気そうですね。」

ミスターT「うわぁ?!」


 突然だった。レプリカ大和の船首で物思いに耽っていると、その場にミュティナが現れたのだ。これには大声を挙げて驚愕してしまう。


ミスターT「な・・・なんだ・・・ああ、転送装置での移動か・・・。驚かすなよ・・・。」

ミュティナ「ヘヘッ、すみませんです。」


 現れたのはミュティ・シスターズ全員である。ミュティナを筆頭にミュティラとミュティヌ。彼女達だけの所を見ると、9女傑はエリシェの元に向かったのだろう。恩師の姿もない。


ミスターT「・・・へぇ、修行の成果が出てるわ。」

ミュティラ「分かります?」

ミュティヌ「シルフィアさんに徹底的に鍛え上げられましたから。」


 出逢った頃の幼さは何処へやら。今の3人はミツキに匹敵する据わり様である。しかも美しさも出ている。彼女達の時間の流れは物凄く速いのだろうな。


ミュティナ「なるほど、これが伝説の戦艦大和ですか。」

ミュティラ「ハワイのミズーリ号とは別の重厚感がありますね。」

ミュティヌ「正に戦う艦ですにゃ。」


 船首から艦橋の方を見入る3姉妹。俺も見上げるが、改めて見ると凄まじい重厚感である。しかし今後の流れを窺うと、レプリカ大和での戦いは避けられそうにない。俺達が狙われている以上、それなりの武装と乗り物が必要になってくる。


ミスターT「ごめんな。本当なら喫茶店に戻りたいんだが、特殊部隊が何処に現れるか不明だ。今は人気がない場所にいるのが被害を多くしなくて済む。」

ミュティナ「お気になさらないで下さい。元はと言えば私達が地球に残ると言い出した時、ここから全てが始まったのですから。逆にお兄様を巻き込んでしまって、本当にすみません。でも一緒に居られて幸せです。」

ミュティラ「だね。そのためにシルフィアさんにお願いをして、警護者の触りを学んできました。今後は足手纏いにはなりませんよ。」

ミュティヌ「持ち得る力の全てを使って、連中を蹴散らすじぇ。」


 一蓮托生とはこの事なのだな。今では3姉妹は俺の妹そのものだ。あの時の彼女達が抱いた思いを無解にはできない。ならば共に突き進むのみである。


ミスターT「分かった。幸いにもこのレプリカ大和とレプリカ伊400がある。洋上生活になるが、連中には十分対抗できるしな。」

ミュティナ「いざとなったら母船や大母船を使い圧力を掛けますよ。規模なら地球を簡単に掌握可能なものですからね。」

ミスターT「怖い事を言いやがる・・・。」


 不気味に微笑みながら空を指す彼女。今でも地球外では母船とそれ以上の規模を誇る大母船が鎮座しているとの事だ。確かに空を見上げると、月に似たデカい物体が見える。


ミスターT「そう言えば、特殊部隊の出所についてなんだが。連中も転送装置の類を使っている気がするが?」

ミュティナ「確かに。こちらのテクノロジーを強奪して、独自に開発したみたいですね。ただし、本当の力には辿り着いていませんけど。」


 今度は4人して甲板で物思いに耽りだした。俺達が狙われている以上、日本は東京に戻る事ができない。このレプリカ大和で敵の目を引き付けるしかない。その中で今まで気になっていた事を尋ねた。どうやら推測した通りのものらしい。


ミスターT「力の誤った使い方だわな・・・。」

ミュティナ「それが強大ならば尚更でしょう。これは地球人だけとは限りません。大宇宙を旅してきて、否が応でも見せられてきましたから。」

ミュティラ「征服欲って誰にもであるものですよ。」

ミュティヌ「ミツキ姉ちゃんみたいに、敬い・労い・慈しみの精神があればねぇ・・・。」


 何時の時代、更にはどの惑星でも同じ様相のようだ。これは人間という種族が争いを起こすと言うものではなく、生命体自体が争いを起こす要因があるみたいだ。確かに生命体自体は生き残りを掛けて、色々な生命体とぶつかり合っている。偶々それが人間であったという事になるだろう。


ミスターT「・・・今は尖兵という役割は必要みたいだな。」

ミュティナ「突破口、ですか。」

ミスターT「さっきの東京湾で襲撃を受けた時、エリシェが言っていた。日本自体が反撃に出る事は殆ど在り得ないと。法案やら責任問題の押し付けで足の引っ張り合い、実際に動けるようになるには多大な被害が出た後になるだろう。だからナツミAがレプリカ大和を東京湾外に移動させたんだ。被害を大きくさせないために。」


 今の微温湯に浸かった状態の日本の中枢では、とても特殊部隊への対応は不可能だ。独自に展開するだけなら自衛隊と警察機構をフル動員が関の山だが、実際にどこまで通用するかは全く以て未知数である。だからこそ警護者に白羽の矢が刺さった訳だが。


ミュティナ「今もこの日本外で待機しているのも、要らぬ火種を国内に持ち込まないためですか。」

ミスターT「喫茶店に居て襲撃を受けた事を想像してみ、それこそ大混乱を巻き起こすよ。羽田空港への通路で無人兵器に襲撃を受けたが、あの程度だったからまだ良かった。ハワイの時を考えれば、アメリカ国内だったから対処ができた。日本国内では絶対に無理だ。」


 同じ日本人として恥ずかしいわ。これだけの軍団を持ちながら、それを活かし切れていない。かといって第2次大戦の時のような軍国主義も大問題である。最低限の自衛能力という事で自衛隊を組織したようだが、肝心の時にこれでは守れるものも守れない・・・。


ミスターT「地球人として、日本人として述べる。俺は争い事は好きじゃない。絶対悪たる戦争も。しかし大切な人が攻撃を受けているのを、黙って見ていられるほど愚かではない。」

ミュティナ「全てシルフィア様からお聞きしましたよ。貴方が警護者の道に進まれた時、一度迷った事があったそうで。人は何故争いを続けるのか、と。この警護者という存在も、最悪は戦争の火種を起こす尖兵になりかねないのかもと。しかしそれでも自身や周りを守れる力は持ちたい、そう言って今も警護者の道に進んでいるのだと。」


 力説する彼女。確かに以前、恩師シルフィアにボヤいた事があった。警護者という存在は、悪い言い換えだと戦乱助長者ともなりかねない。それでも大切な人を守るための力だけは持ち続けたいと。本当に矛盾した話だが、これが俺の心境でもある。


シルフィア(聞こえているわ、私も争いや戦争は大嫌いよ。しかし外部からちょっかいを出して来る阿呆がいるなら、私は容赦なく反撃するわ。そのための独立した組織、警護者たる存在じゃない。それを覚悟した上で君はこの道に進んだ、違う?)

ミスターT(ええ、その通りで。)

シルフィア(それに君の場合、自らのエゴで争いや戦争を起こす阿呆ではない。目の前の掛け替えのない大切な人を守りたいために、今の警護者の道を突き進んでいる。そして君のその生き様に共感した面々が、今こうして集い合っているじゃない。)

エリシェ(そうですよ。私もシルフィア様と同じ、争い事は好みません。むしろ反対です。しかし力を持たねば屈服されるのもまた世の常、だからこそ私達三島ジェネカンや大企業連合は企業力で争い事自体を封じ込めようと努力しています。世上から悲惨と孤児と言う二文字を無くす貴方の生き様に共感し、尖兵になりかねない警護者という道にも進みました。)

シューム(要は力の誤った使い方をしなければ良いだけの事よ。あの特殊部隊・・・いや、軍服連中が正にそうじゃない。君は力の誤った使い方をしていない、それは私達がしっかりと見ているから大丈夫よ。)

デュリシラ(ですね。ミツキ様が信条、持ちつ持たれつ投げ飛ばす。そのプラスの一念があれば、絶対に誤った道には進みません。)


 意思の疎通・念話によって、仲間達の言葉が脳裏に響く。それに無意識に涙が溢れてくる。自分1人だけで進んでいるように思えていたが、実の所は周りに支えられていたのだ。


ミツキ(うむぬ。Tちゃんは言わば特殊部隊の面々、あの軍服連中すらも汲んで罪悪感を抱いているわぅよ。その強い思いは大切わぅが、ソレはソレでコレはコレわぅ。)

ナツミA(そうね。連中は明らかにテロ紛いの行為を繰り返している。特に私達以前にギガンテス一族のテクノロジー欲しさに襲撃や拉致を画策している。まあ実行もしているけど。)

ウエスト(マスター、世の中には煮ても焼いても食えないカスがいるものだよ。そいつらの事まで考える必要は一切ない。確かに相手の命を敬う姿勢は大切だが、その命が悪事を働いている部分の報いは受けさせる。因果応報の理だと以前言っていたじゃないですか。)

シルフィア(因果応報の理は大きく深いわよ。今は何事もなくても、人が死んで旅立った先は間違いなく地獄よね。そうならないために私達は肝に銘じつつ、そういった連中すらも正していくための戦いを続けているんじゃない。)

エリシェ(それに私達は裁定者ではありません。どちらかと言うと調停者ですよ。偉そうな呼び名でもありますが、実際に動いているのは私達だけ。そう呼んでも文句を言われる筋合いなど全くありません。反論してくるなら、逆に代わってくれと言いたいです。)


 俺の行動全てを見てくれていた面々。そこに今までの生き様が刻まれている。確かに裁定者や調停者などと言う偉そうな存在にはなりたくない。しかしそれが実際にできるのは俺達だけになる。そのための警護者の力だ、誤った力の使い方ではない。


シルフィア(毎度ながらのアレを言いましょうか。誰彼がどうこうじゃない、自分自身がどうあるべきか。それが重要だ、よ。君が矢面立って争いを防ごうとしているなら、それが正に君の生き様。もし正義ではなくても間違った事でもないわ。)

ミツキ(そうわぅ! その生き様で姉ちゃんやわた達は救われたわぅよ! そのTちゃんを悪く言う奴は蹴飛ばしてやるわぅ!)

ナツミA(まあ程々にね・・・。)


 何と言うかまあ・・・。真剣な会話の最後のシメがミツキの叫び、これには不覚ながらも笑ってしまった。釣られて面々も笑っている。


ウエスト(まあ何だ、何とかなるさ。一歩ずつ前に進めば、必ず道は拓けていく。)

エリシェ(幸いにも私達には絶大な力がありますから、どんな苦難な道であろうが突破できます。)

シューム(正に力の良い使い方よね。)

ミツキ(恐怖は暗黒面に通じておるのだよ。)

ナツミA(はぁ・・・。)


 再び最後の最後でミツキのボケに笑ってしまう。それは某宇宙戦争の正に善悪を象徴とするものだ。ダークサイドの語録はフィクションではあるが、あながち偽りでもない。実際にその道に走っているのが軍服連中である。


ミスターT(まあとりあえず、当面はレプリカ大和で過ごすとするよ。日本には戻れそうにない。)

ミュティナ(移動に際しては特殊潜水艦でもいいですし、緊急事は転送装置を使ってもいいかと。逆に目立つ移動方法だと襲撃される怖れがありますから。)

シルフィア(そうね。レプリカ伊400ならペイロード区画もあるから、ある程度デカい輸送も可能よね。ただ連中が潜水艦を出してくるとも限らない。十分注意しないと。)

エリシェ(そこは全く問題ありません。レプリカ大和もレプリカ伊400も、ギガンテス一族十八番の技術力で超強化してあります。バリアが最もたるもので。魚雷や爆雷など地球上の兵器では傷を付ける事すら不可能ですよ。更に言えば化学兵器・生物兵器・生体兵器すらも完全に阻止する力がありますし。)

ミツキ(正に“独立記念日”わぅ!)

ナツミYU(まあねぇ。外見は旧世代の遺産なのに、内面は超近代兵器そのものよね。)


 本当にそう思う。レプリカ大和もレプリカ伊400も、外見は第2次大戦の骨董品である。しかし使われている材質や武装、戦闘能力自体は計り知れない力を有している。言い換えれば宇宙船そのものだ。地球上で最も戦闘力を持つ最強の個人兵装とも言える。


ミスターT(さて・・・今後どうするか。)

エリシェ(再びハワイに赴いては? 日本国内では反撃すら不可能でも、アメリカ国内なら軍隊の出撃も容易です。それに正直な所、私達の底力を見せ付ける機会にもなりますし。)

シルフィア(野心家ねぇ・・・。まあ誤った力の使い方をしなければ問題ないかな。)

ミスターT(了解、今からハワイに向けて動き出すわ。レプリカ伊400は日本にいるから、こちらに戻す際に武装や物資を搭載して帰還してくれ。)

ミツキ(了解、T艦長!)


 最後の言葉で再び笑いが起きる。艦長か、そんな柄でもないわな。とりあえず今後の方針を打ち出し行動を開始した。敵の目がこちらに向いているなら、むしろ堂々と動いてやるわ。



 特殊部隊の兵士達を日本に輸送した後、レプリカ伊400にありったけの武装と物資を搭載して戻すように頼んだ。レプリカ大和に乗り込んだ時は軽装備だけである。マデュースシールドなどの武装は手元に欲しい。特殊攻撃機・晴嵐が3機格納できる密閉棟が見事に役立つだろう。


 というか内部にハリアーⅡを分解して格納できないものか。2機なら搭載できそうな気がするが、う~む・・・。このプランは後でエリシェに問い合わせてみよう。


 まあ何にせよ、今後の活動は洋上とアメリカはハワイだろう。向こうに戦乱の火種を飛び火させかねないが、今の日本よりは遥かに対応が素晴らしいわな。反撃できる時に明確に反撃ができる場所にいた方がいい。


 さて・・・どんな流れになるか。まあどんな流れになろうが、必ず乗り越えてやるわ。


    第11話へ続く。

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