第8話 国家間外交4(キャラ名版)
パール・ハーバーより遠方の海岸では凄まじい事になっていた。到着した時点で、海岸には夥しい兵士が倒れている。当然、誰も死んでいないのが見事なものだ。ただし、両手・両脚・両肩には銃弾が打ち込まれている。しかも急所を外してのものだから怖ろしい。
今も何処からともなく現れる特殊部隊の兵士と交戦を繰り広げる仲間達。特に凄まじいのがナツミツキ四天王だろうか。その獅子奮迅の活躍を見て、やり手の警護者たるナツミYUは驚愕していた。ただシュームの方は見事だと賛美を贈っている。
ミスターT「取り越し苦労だったか・・・。」
ナツミYU「四天王の方々は警護者じゃないですよね・・・。それでここまでやれるのは、見事としか言い様がありません。」
シューム「貴方は外見で物事を捉え過ぎるクセがあるからね。そこが普段はノホホンとしている彼らの実力を見抜けずにいた訳よ。」
俺達は不測の事態に備えて待機をした。しかし不測の事態は在り得るのかと疑問を抱きそうなぐらい凄まじい事になっている。その中で語るナツミYUとシューム。確かにナツミYUは相手の外見から判断してしまうクセがある。対してシュームは直感と洞察力をフル動員して判断するため、初対面で四天王の実力を即座に読んだのだ。
シューム「まあ、その一線を超えた先は私を遥かに上回る据わりがあるけどね。」
ミスターT「確かに。シュームには悪いが、ナツミYUの清流の如き動きはとても敵わないわな。というかシュームは濁流に近いから、ナツミYUとは真逆の属性に近いけどね。」
ナツミYU「はぁ・・・。」
呆れ顔のナツミYUに小さく笑うシューム。この2人は本当に極真逆の属性を持っている。近場で例えるならミツキとナツミAだろう。ナツミツキ姉妹も全く正反対の属性を持つ女傑である。この4人は本当に良く似ている。
待機状態も、新たに現れた俺達を敵視する特殊部隊。こちらにも攻撃を仕掛けてきたため、当然ながら相応の返しはさせて貰った。特に今の流れを邪魔されたとして、エラい激昂するシュームとナツミYU。便乗してエリシェとラフィナも暴れるのだから怖ろしい。
俺もトリプルマデュースシールドによる攻撃で相手を圧倒。というか射撃以前に打撃に近いか。控え気味にするも、その筐体で殴られた兵士は気絶する程のダメージを受けているようだ。
ミツキ「おおぅ?! 半モヒカンヘッド兄ちゃんわぅよ!」
ナッツ「おおっ! 確かに!」
ミュティナ「う~ん、やはり背丈がないと見栄えが良くないですか。」
獅子奮迅の活躍をするも、心のゆとりさを失っていない面々。と言うか恐らくだが、彼らにとってのこの戦いは朝飯前程度なのだろう。でなければ余裕など生まれる筈がない。
ミスターT「その後の按配はどうだ?」
サイバー「何処から出てくるか分からない状態ですが、まあ烏合の衆程度で。」
エンルイ「周辺は姉御方が警戒に当たっていますが、特に問題はなさそうですよ。」
語りつつ空を示す。上空では恩師シルフィアを含むハリアーⅡ隊が展開していた。機体自体に重力制御の理を施しているからか、通常では考えられない動きをしているが・・・。
ウエスト「あー、取り回しの姿ですか。思われた機体重量を軽量化させているため、ブースターの出力を最小限に抑えられるのだとか。それに時間と空間が織り交ざったシールドにより、弾丸やロケットランチャーすらも推進力を無力化にできるとの事で。」
ミュティナ「私達の常套手段です。しかしそれらも自身の戦闘力を前面に出してこそのもの。補佐的な役割程度でしかありません。私達種族は銃弾程度の傷なら、直ぐに治癒してしまいますので。」
飛び交う弾丸の射線軸上に左手をかざす彼女。そこに弾丸が着弾し血が飛び散った。しかし直ぐに弾丸が抜け落ち、撃たれた傷は即座に治癒しだしている。
ミスターT「・・・不貞寝したいんだが・・・。」
ミツキ&ナツミYU&シューム「ダメッ(わぅ)!」
今まで培ってきた戦闘技術を全て否定しかねない要因である。致死率が高い銃弾を受けても、即座に治癒しだすとは何事なのか・・・。再び不貞寝したいと言うと、3人からダメ出しを喰らう始末である。それに周りの面々は笑っていた。
その後も戦いは続く。一体何処から沸いて出てくるのかと思うほど、特殊部隊の連中が出現し続けた。それだけミュティ・シスターズを捕獲するために、全勢力を出している感じとも思える。まあ対峙する面々が悪かったが・・・。
重力制御ペンダントの恩恵は、ウエストやミュティナが語る通りの様相だ。物質の重量を超軽量にする以外にも、物質の時間と空間という概念を捻じ曲げるという。その証拠が上空を飛ぶハリアーⅡ郡だろう。受けた弾丸やロケットランチャーの推進力を殺し、無力化させているのだから。
当然それは俺達にも至る。弾丸やロケットランチャーの巡航速度を無くすため、その場に止まるかのような様相になる。となれば対処は簡単だ。叩き落すか弾き返すか、になる。正に見えないシールドとはこの事だろう。
そして驚くのがミュティ・シスターズの種族の力だ。ギガンテス一族は地球上の人間や動物を遥かに超える寿命を誇る。更に化け物とも言えるその能力だ。映画のスーパーマンそのものと言えるぐらいである。
ただ流石の彼女達も、空を飛んだり水中や宇宙で呼吸をする人外な行動は不可能との事だ。あくまで生命体の域を超える事はできないと言う。まあ一理あるが、う~む・・・。
ミツキ「ぬっ?! 新手の勢力わぅか?」
ミツキの声で我に返った。彼女が指し示す方角から、大型ヘリが向かってくる。明らかに味方ではないのは確かだろう。見た事がないカラーリングをしている。ここハワイに駐留中のアメリカ軍や日本の自衛隊の代物ではない。
ミスターT「円陣防御! 不測の事態に備えてくれ!」
一同「了解!」
俺の声に即座に応える面々。ミュティ・シスターズを中央に、その彼女達を守るように展開した。それに上空のハリアーⅡ郡も気付き、俺達の周りをゆっくりと旋回している。
その中の1機が海岸に着陸してきた。コクピットからはシルフィアが颯爽と降りてくる。ただ、右手にはあのアタッシュケースを持っているのが何とも・・・。
暫くすると、大型ヘリが海岸に着陸してくる。それに合わせて特殊部隊の兵士が俺達を取り囲む様に展開してきた。
その様相を見て一際腹が立った。負傷した兵士達を踏み越える形をしたからだ。明らかに一般の兵士とは全く異なる。血も涙もないとはこの事だな・・・。
軍服男1「ほぉ・・・これだけの相手に無傷とは。まあ地球外生命体の恩恵があるからだな。」
・・・顔を見て一発で生理的に受け付けない事を直感する。周りの面々も明らかに不快感を感じている様子だ。間違いない、コイツが全ての元凶だな。
エリシェ「貴方が一連の首謀者ですか?」
軍服男2「口に気を付けろ、こちらのお方を誰だと思っている!」
ミスターT「・・・俺にはボンクラにしか見えんがね・・・。」
俺の言葉に激昂したようで、軍服男が手持ちの拳銃を撃ってきた。それは脳波でコントロールされた人口腕部、そこに握られている黒色マデュースシールドによって弾き返されたが。どうやら脳波と直接リンクしているからか、直感と洞察力が即座に反映されるようだ。
軍服男2「クッ・・・化け物め・・・。」
ミスターT「生命体をカス同然に思う貴様等よりかはマシだがね。」
軍服男1「まあ待て、事を荒立てるつもりはない。こちらの要求は知っての通りだろう。それが達成されるなら、大人しく引き上がるとしよう。」
エリシェ「答えは言うまでもない、継続試合と行こうか。」
その声を聞いてゾッとした。普段の温厚なエリシェの声色じゃない。ハスキーボイスが響き、腹の底から激昂しているのが痛感できた。ここまでの彼女の怒りを初めて見るわ・・・。
軍服男1「・・・一筋縄ではいかない訳だな。」
シューム「あら、ならその股間に付いているのはニセモノという事ね。」
ナツミYU「・・・なるほど、肝っ玉ですか。」
軍服男の言動に、シュームとナツミYUの見事な茶化しが炸裂する。それに不本意ながらも笑ってしまうのは何とも言い難い・・・。近場で倒れている兵士すら小さく笑っている。
その彼に先程激昂した軍服男が拳銃を発射。しかし同時に物凄い発射音がすると、放たれた弾丸が地面に落ちた。直ぐ近くには巨大な弾痕が刻まれている。
・・・恩師シルフィアが獲物、格納式重火器だ。砲弾に近い弾丸が、相手の放たれた弾丸を相殺する形で地面に着弾したという流れか。これは見事と言うしかないわ・・・。
軍服男2「ググッ・・・一度ならず二度も・・・。」
シルフィア「悪いけど、アンタ等の動きは止まって見えるからねぇ。何をしても無駄よ。」
ウエスト「それとも・・・その胸に風穴開けてやろうか?」
持参したガトリングキャノンを地面に置き、背中に背負うライフル状の獲物を構える彼。その銃口先は電気が帯びている。これ・・・まさか・・・。
ラフィナ「引き上げる気がないのなら、このまま徹底抗戦を繰り広げますけど。」
シューム「死にたいなら掛かって来な、ボウヤ達。」
シュームの激昂はまだしも、エリシェと同じく普段は温厚なラフィナも相当激昂している。銃口は下げられているが、その右手に持つアサルトライフルが何時火を吹いてもおかしくはない。
一触即発のこの場。そんな俺達すらも取り囲む軍勢が現れた。この出で立ちは先程大会議場でも見掛けたものだ。各国のシークレットサービスが総出で登場である。
更にその彼らを縫うように現れる複数の面々。顔を見たエリシェ達は驚愕していた。そんな彼女に構わないといったジェスチャーをする。
スーツ男2「今まで見てきたテロリストよりも性質が悪いな・・・。」
スーツ男1「これだけの手練れを前にしても引かないかね?」
スーツ男3「私達も事を荒立てたくはない。それでも暴れるというのなら、彼らと同じく徹底抗戦をするつもりだが。」
流石の軍服連中もその姿を知っているようで怯みだしている。静かにその場を去っていく軍服連中と特殊部隊の連中。相変わらず腹立たしいのは、負傷した兵士達を放っての撤退だ。
ミスターT「おい、仲間を見捨てて行くのか?」
軍服男1「役立たずなど必要ない。」
軍服男2「今度は容赦はしない、覚えておくんだな!」
ミスターT「・・・はぁ、これだからカスは困る・・・。」
怒りと呆れの応対をするも、それに応えず去っていくのだから埒があかない。他の特殊部隊の連中も、後から駆け付けてきた大型ヘリに乗って去っていく。
この襲来は言わば不法侵入者そのもの。アメリカの威信に掛けて追撃をすると思ったが、全く手を出さずにいるのが不思議である。むしろスーツ男の3人が、シルフィアの姿にエラい戦々恐々な感じなのも何とも言えない。
数機の大型ヘリが完全に去って行った所を見計らうかの様に、一同して安堵による大きな溜め息を付きだした。かく言う俺もその中の1人である。
ミスターT「・・・胃に良くないわ・・・。」
ナッツ「ですよねぇ・・・。」
シューム「あら、私は今もアドレナリン出っ放しだけど?」
緊張の糸が切れた面々はその場に座り込んだりしている。しかしシュームやナツミYUは今もイケイケモードのようで、目がかなり血走っているのが何とも・・・。
ミスターT「さて・・・人として当然の事をしますかの。みんな頼む、手を貸してくれ。」
ミツキ「おういえい! まっかせろ~わぅ!」
シルフィア「フフッ、流石よね。人を憎まず、その行動を憎む。試合が終われば全てファミリーと。私も付き合うわ。」
近場に3挺の黒色マデュースシールドを置くと、ミツキが持参していた大きな袋を展開する。その中には応急救護セットが揃っており、それらを持って倒れている兵士達の元へ向かった。
それから数十分、いや数時間は応急救護活動に明け暮れた。不測の事態に備えて、上空では今もハリアーⅡ郡が旋回してくれている。地上にいる面々で、今まで相手にしてきた特殊部隊の兵士達を治療して回って行った。
この姿にスーツ男3人やそのシークレットサービス達は呆然としている。しかしシルフィアがエラい形相で彼らを睨むと、顔を青褪めながらも加勢しだしているのが何とも言えない。これ、彼らは恩師の事を知っている事になるか。う~む・・・。
簡易的な治療を施していると、そこに数多くの救急車両が駆け付けてくる。負傷した兵士達の誰もが致命傷の一撃ではないため、先程の簡易治療で事無きを得ている感じだ。後は病院での治療で問題ないだろう。
第8話・5へ続く。




