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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
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第7話 怒りの一撃5(通常版)

「へぇ~・・・お前さんもレシプロ戦闘機が。」

「はい。やはり飛行機はプロペラに限りますよ。」


 ハワイに到着するまで、各自自由行動になった。俺はエリミナ達と一緒に、超大型豪華客船の超巨大格納庫にいる。ハリアーⅡのメンテナンスもお手の物らしい。ナツミYUが分解調整を行うムルシエラゴよりも凄まじい様相だ。


「というか、トーマスMが部隊長な感じがするけど。」

「とんでもない。自分は整備士上がりのサポートが本職でしたから。エリミナ達の方が操縦技術は凄まじいですよ。」

「でもトーマスMさんが年齢トップとしても、君より2歳も若いからねぇ。」

「人は見掛けに寄らないという事ですよ。」


 ハリアーⅡのシステムメンテナンスを行っているシルフィア。ナツミA・ウエスト・サイバーも一緒で、身内で最強の頭脳陣だ。ただ機体整備はトーマスMとラシュナが担当しており、エリミナや他の3人はパイロット中心との事だ。


「しかしまあ・・・この格納庫は・・・。」


 立ち上がって周りを見渡す。シルフィアやエリミナ達の機体が合計7機、上手い具合に鎮座している。正しく航空母艦の格納庫そのものだ。しかもハリアーⅡの性能からして、このまま後方大型ハッチから離陸もできるのが見事である。


「垂直離脱可能なハリアーⅡだからこその運用、か。」

「そうね。世界最強戦闘機のラプターでも、ハリアーⅡの様な真上への離着陸は不可能だからね。次第点で次期高性能戦闘機F-35ライトニングⅡが無難かな。」

「ただ燃料はガバ飲み状態ですけど。」

「ハリアーⅡも滑走路からの離着陸の方が望ましいのですがね。そっちの方が燃料消費は抑えられますし。」

「まあ機体自体の能力発揮には前者が正しいと。」


 本当にそう思う。ハリアーⅡや初期のハリアーは、垂直離着陸を行ってこそ真価を発揮する機体だ。それを疎かにしてしまっては全く意味がない。


「むむ、兄貴。ちょっと機体を動かしてくれませんか? 死角で見辛いっす。」

「了解、起動させて動かすよ。」

「機体を持ち上げればいいのですか?」

「え・・ええ、まあ・・・。」


 ミュティナの発言に苦笑いをするトーマスM。しかし逆にニヤリと微笑む彼女に、その後の展開が読めてしまった。前輪支柱近くまで向かうと、そのまま何食わぬ顔で掴んで持ち上げるのだ。それに驚愕する周りの面々。


「改めてみると、重力制御の力は凄まじいわな・・・。」

「私もそう思います。ただこれは半分のみで、あと半分は私達種族の力ですけど。」


 まるで傘を持つような仕草でハリアーⅡを持ち上げる様に、身内も格納庫にいる人物の誰もが驚愕せざろう得ない。ミュティナの華奢な身体の何処にそんな力があるのか、本当に不思議としか言い様がないわな。


「この力を連中は狙っている訳よね。」

「例のカス共ですか・・・。」

「個人戦闘力は最強そのものだからね。」


 何を思ったのか、ミュティナに近付き抱き上げるシルフィア。するとハリアーⅡ共々軽々と持ち上げてしまうのだから怖ろしい。これはミュティナ自身は普通の自重であるという現れになる。ハリアーⅡだけ重力制御で超軽量にしているため、この様な荒業が可能のようだ。


「そ・・それさ・・・シルフィアさんの方が化け物に見える感じよね・・・。」

「元からそうだから仕方がないんじゃないかね。」

「酷い言われ様だけど、まあその方がハッタリが効くからいいかもね。」

「何事も大事に見せて、相手に威圧を掛けるのが無難ですよ。」


 今度は彼女が空中に浮かぶハリアーⅡの脚部を掴み、そのままコクピットの方に這い上がって行くではないか。ナツミAの場合は十八番の力の作用点の限界を知っているため、その瞬間に出せる力のバランスが物凄く良い。腕相撲で彼女に勝てないのが十分肯ける。


「これだけの強者がいれば、俺は補佐に回るだけで申し分ないわな。」

「いえ、その逆だと思います。マスターが敵の目を引き付けてくれるからこそ、俺達が補佐に回れる訳で。あのカーチェイス時なんか正にそうですよ。」

「持ちつ持たれつ投げ飛ばす、今はそれが定石になっていますからね。」


 外周作業が終わり、機体を床に下ろすミュティナ。その彼女を抱き下ろすシルフィア。まあ見事な様相だわ。その中で平然と作業をするナツミA。彼女の腕からすれば、ハリアーⅡのコンピューターは造作もないとの事だ。何とも・・・。


「案外、ミュティナさん達も警護者になった方が安全が確保できるかもね。その超絶的な力はあるものの、戦闘訓練はされていないようだし。」

「両親や妹達には既に訳を言ってありますから、後は行動あるのみですけど。」

「あらま、お早い事・・・。」


 恩師の発言には驚くが、ミュティナの発言にも驚いてしまう。確かに警護者としての戦闘訓練を積んでいれば、彼女達の超絶的な力も合わさって無双そのものだろう。今は守る側に回っているが、その時は守られる側になるのは言うまでもない。


「むしろなった方が安全ですよ。まあ駐留は喫茶店でもいいでしょうし。マスターや身内と行動すれば問題ありません。」

「それこそ、名言“持ちつ持たれつ投げ飛ばす”が合うわな。」


 全ての作業を終えたナツミA。コクピットから降りる様は、本当のパイロットのようである。ただまだ6機ほど残っているため、作業は山のように残っているとの事。もはや完全な裏方作業である。


 後に駆け付けたミュティラとミュティヌも合わさり、ハリアーⅡ郡の改修作業は続く。例の重力制御の理が思う存分発揮できている。本来なら数時間掛かる外周作業が、僅か短時間で終わってしまうのには驚愕との事だ。仕舞いにはハリアーⅡを逆さまにして持つという荒業すら披露する。作業効率としては超絶的であろう。


 これ、3姉妹は警護者よりメカニックの方が合うのかも知れないわ。超巨大な物質すらも軽々と持ち上げられるため、クレーンやハンガーによる持ち上げ作業が全く必要としない。となると最高の作業として、巨大ビルなどすらも持ち上げる事が可能か。う~む・・・。


 まあここは3姉妹が行いたい事をさせるのが一番だわ。その時こそ真価が発揮するしな。何だか陰ながら見守る父親の気分になる、何とも・・・。



 通常、ハワイへの航行は数週間ぐらいは掛かるという。特に海は天候に左右されるため、最短で動けても5~7日と言われている。ただそれは“通常の船舶”なら、だ。


 この超大型豪華客船は海上側に世界最大の豪華客船を3倍程度にした様相。更に海中はその船体の3倍以上の構造物がフロートの役目で鎮座している。正に動く氷山そのものだ。また規模からして重武装も可能とあり、正に超巨大戦艦といえる。


 よって大波すらも影響を受けないため、手前で挙げた航行日数は最短で5日程度だという。恩師が言った通り、1週間でハワイに到着できるか。


 しかしまあ、大波ですら飛沫程度の威力にしかならないこの船体。こんなのを建造できる三島ジェネカンの力は凄まじいものだわ・・・。




「のどかわぅ~。」


 翌日の朝にはハワイに到着するという話になった。今は超大型豪華客船の最上部、ここにあるラウンジで寛いでいる。寝そべりながら表を見つめるミツキが、ここを普通の自宅にしか思わせない・・・。


「そうそう、ハワイでの依頼って何わぅ?」

「今度は本格的な要人護衛らしいよ。現地で大規模会議があるらしく、それの身辺警護を任された形だ。」

「そこに下手をしたら・・・ミュティ・シスターズを狙う輩が現れる、ですか。」


 突然の真面目言葉に驚くも、雰囲気が一変している。やはり3姉妹の一件は、ミツキにしても激怒するもののようだ。


「まあ俺達がいれば問題ない。それに今までの3姉妹だと厳しいかも知れないが、今では警護者の触りも得ている。そう簡単には奪わせはせんよ。」

「私達が総出なら大丈夫ですよ。それに重力制御の理を特殊ペンダントで得られるようにもしてくれています。いざとなったらマデュースシールドでも使って暴れてやりますから。」


 そう言って胸元にぶら下げているペンダントを見せてくる。ミツキもそうだが、俺や周りの面々に特殊なペンダントを分け与えてくれた3姉妹。その効果は彼女達が持っている重力制御の力が発揮できるとの事だ。


「しかも凄いのが、人のプラスのエネルギーに反応しなければ発揮しないというのも。」

「悪心があれば絶対に力は発揮しない、だな。」

「正に力の極みですよね。」


 どういった概念で力が発揮するのかは不明だ。しかしそれが実現できているのが何よりの証拠である。この力があれば振り回すのも不可能とされるマデュースシールドも扱えるだろう。


「・・・力は使ってこそ真価を発揮する、か。」

「非常に奥が深い言葉わぅね。」


 普段の語末に戻る彼女。俺が語った内容に、端的かつ深い意味合いで答えてくれた。力とは何か、これはほぼ永遠の課題に近い。


「・・・まあ、今は目の前の課題を1つずつクリアしていく事を考えますか。」

「うむぬ、楽観主義でいきませう♪」


 徐に立ち上がると、室内に訪れたミュティナ達と合流。そのまま部屋を出て行った。代わりにナツミYUとシュームが入室してくる。2人ともノースリーブにミニスカートという、エラいラフな出で立ちだ。


「バカンス気分丸出しだな・・・。」

「息抜きできる時はしないと損よね。」

「本当ですよ。」

「はぁ・・・何とも。」


 女性を前面に出している2人。しかしそれこそが彼女達の本当の姿だろう。警護者という殺伐とした世界に身を置く故に、何処が現実か非現実か分からなくなる場合もある。バカンス気分としているのは、一時でも非現実から現実に戻りたい現われだろうな。


「現地で依頼が終わったら、少し息抜きでもするかね。」

「無事終われば、ね。」

「今回の様相は、今までとは異なるもののようですし。油断はできませんよ。」

「そうだな。」


 普段の流れからして、自然と一服をしだす。それが3人同時という部分に気付くと、自然と笑みがこぼれてしまう。


 その後は雑談をしながら時を過ごした。まだハワイまでは丸1日は掛かるそうだ。水や高所が苦手な俺だが、今いる場所からは想像も付かないものだわ。


 まあ今は一時の休息を満喫するとしよう。現地でどんな流れになるか分からないが、人間のモラルとして触れてはならない所を触れた報いは受けさせる。


 警護者のトップクラスの面々による、怒りの一撃への下準備だ。


    第8話へ続く。

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