第13話 母と娘と4 救出完了(通常版)
(マスター、ディナリア様の救出が完了しました。)
(お疲れ様。)
周囲を巻き込んでの催し物を見守り続けていると、遠方のヘシュナから念話が飛んでくる。ティリナの母、ディナリアの救出が成功したとの事だ。それを伺い、楽しそうに催し物を見ていたティリナが驚愕していた。
ただ、堅固な母たるディナリアの事からか、深く気にしている様子ではなかった。肝っ玉が据わっていると言うのか、達観していると言うのか、俺には理解不能な感じである。
もしかしたら、ディナリアの窃盗団の逆壊滅作戦自体、幼子のティリナは全て周知していたのかも知れない。この落ち着き様を踏まえれば、そう考えざろう得ないからだ。
これが俺と同じ地球人であれば、間違いなく何を考えているのだと思うに違いない。だが、ティリナやディナリアはデュネセア一族である。2人の根幹には、大局的に物事を見よという概念が働いているのが十分肯けるしな。
それに、彼女達の女王はあのデュヴィジェなのだから・・・。気質的に似ていても何ら問題はないだろう。いや、似過ぎてしまったために、この事変に至ったのかも知れないが・・・。
何はともあれ、これで問題解決となったと思いたいわ・・・。
初日のアキバ・コミケが終了した。総括を行うため、関係者一同がレプリカヴァルキュリアへと集い合っている。今も歩行者天国の直上で停止しているため、移動に関しては同艦搭載のレプリカブリュンヒルデで行った。
レプリカヴァルキュリアの下部戦闘艦の飛行甲板は、直下の歩行者天国の区画に匹敵する広さなため、関係者一同が全員集まる事ができた。この様相を見るだけでも、同艦が規格外の飛行戦艦だと言わざろう得ない。
そして、俺達との接点が無かったティリナとディナリアは、飛行戦艦に乗艦できた事に絶句し続けていた。
「・・・空を飛んでる・・・。」
「ハッハッハッ! 素晴らしかろう!」
飛行甲板から直下を眺めるティリナ。近場には補佐としてミツキとサラとセラがいる。流石に甲板から飛び出す事はないとは思うが、大事を取っての見守り隊な感じである。
それに、3人からすればティリナは妹分そのものだ。更に元来から対人コミュニケーションが優れているのだから、自然と面倒を見てしまうのだと思う。見事と言うしかない。
「・・・何と申し上げれば良いのやら・・・。」
「んー・・・この場合は黙って見つめる、これだわな。」
「ですねぇ。」
その4人を遠巻きに見つめるディナリア。娘が何時の間にか俺達と親しくなっている現状に驚いている。まあでも、短期間で打ち解けられる力量を持つ面々がいるのだから、必然的な感じであると言えた。
既に何度も乗艦している俺達としては、今の様相は別段珍しい事ではない。しかし、この母娘に関しては非現実的な様相に映っているようだ。デュネセア一族ではあるが、言わば2人は一般人に近いのだから。
まあでも、今となってはファミリーの一員に等しくなってはいる。この関係は今後も続いていきそうである。より一層賑やかになりそうで怖くはあるが・・・。
「さて・・・総括の前に大事な事がある。」
一同して和気藹々としている中、徐に口を開く。その発言が何を意味しているのかを、総意は直ぐさま察知したようだ。特に当事者となるディナリアはかなり萎縮している。
そんな傍らの彼女の額に向けて、軽くデコピンを放ってみた。それに絶句する彼女だが、総意の方はお見事だとニヤケ顔だ。その後の結果を恐れて震えていたティリナは、今の流れを見て呆然としているが・・・。
「今の一撃で全てをチャラにする。後はティリナさんを大いに労ってやってくれ。」
「ですね。この中で一番心配していたのは、愛娘たるティリナ様ですし。」
「色々とありましたが、結果的に厄介者は全て潰せました。大局的に物事を見よ、と。それを単独で実行されたのですから、ある意味誇り高いと思います。」
総意としては色々と言いたい事はあるようだが、今のデコピンの一撃で解決させる事にしたようである。母親としての行動ではなかったが、デュネセア一族としての行動ではあったと。特に5大宇宙種族の面々が一番痛感しているようである。
何度も挙げるが、ディナリアが守り切った作品は、携わった数多くの人物の血と汗と涙の結晶だ。決して蔑ろにはできない。しかし、だからと言って愛娘を放置するのは、と言う部分でもある。ここは悩ましい感じとしか言い様がない。
「・・・本当に申し訳ありませんでした・・・。」
「大丈夫ですよ。終わり良ければ全て良し、ですので。」
「ですねぇ。」
深々と頭を下げるディナリア。その彼女を労うデュリシラとナセリス。同じ母親としての一念を察知できたからだろうな。彼女達も同じ立場に至ったのなら、ディナリアと同様の行動を取るとも言っていた。
母親としては失格かも知れないが、開発責任者としては致し方がない。先にも挙げたが、例の作品に関わった面々を露頭に迷わす事だけは避けたかったと思われる。
「ちなみに、ディナリアさん以外も無事ではあるのか?」
「大丈夫ですよ。模倣犯の連中は、漠然と動いていたに過ぎませんでしたし。」
「はぁ・・・窃盗団絡みの流れは、永続していきそうですよね・・・。」
「本当だわな。」
今回の事変の結果に関して、軽く挙げてみた。特にディナリア自身と彼女達が手掛けたものの安否度である。すると、直接救出に関わったヘシュナが問題ないと語ってきた。
そして、その様相が過去の窃盗団絡みと結び付くため、それに非常に縁があるナツミYUが深い溜め息を付いた。かく言う俺もしかりだ。
ただ、模倣犯を一網打尽にするために、自分自身と創生した物品を囮にしたディナリアには脱帽するしかない。下手に野放しにすれば、他へ火種をばら撒く恐れもあったのだから。
第13話・5へ続く。
人質の救出完了と。とは言うものの、完全に相手を壊滅させるために突入した感じではありますが@@; この部分をどうするかで悩みましたが、既に超デカい事変こと黒いモヤ事変を終えた後なので端的に済ませました><; まあでも、この後の流れが更にデカくなっていきますが・・・。
しかし、大局的に物事を見よ、と。人間は目の前の諸々に目が奪われがちですが、更に視野を広げた先は未来への布石とも言えるのではないでしょうか。まあ、言うは簡単・行うは難し、これになってしまいますけどね(-∞-)




