第10話 生命の力6 生体兵器のハイパーレールガン(キャラ名版)
そんな俺達の念話に割り入ってくる相手がいた。目の前の黒いモヤ“嬢”に匹敵する、非常に禍々しい力である。凄まじい力用がそこにはあった。
だが、既に“同様の力”を浴びている手前か、それに対しての免疫力が付いてしまった。つまり、迫力はあるが対応は可能だと言うレベルになる。
真黒のモヤ(・・・オ・・オノレ・・・ワガハンシンヲウバイヨルカ・・・。)
放たれた言葉にゾッとする。しかし、黒いモヤ嬢との対峙がそれを相殺させてくれていた。その言葉から推測するに、相手は女性なのだろう。だが、際限なく込められた殺気が強く、男性と聞き間違うほどの迫力だ。それに正直な所、悪党自体は野郎気質で十分だ。
この場合は、“真黒のモヤ”と挙げるべきだろうか。黒いモヤの方は、今から思えばお嬢様風の風格だ。物凄い対比だと言わざろう得ない。端的に挙げるなら、極善と極悪だろう。
ミスT(悪いが、“彼女”は貴様とは離別したいんだとさ。)
形には表れていないが、念話を通して黒いモヤ嬢の肩を両手で支える。念話であれば、形に捕らわれる事は一切ない。矮小たる人間の形でもあれば、大宇宙に匹敵する形にも到れる。
そして、それは俺だけではない。念話を通し、身内達総出が黒いモヤ嬢の肩を持つに至る。この場合は、精神力や生命力で相手と対峙していると言えるだろう。
真黒のモヤ(グ・・ググッ・・・。)
ミツキ(おい貴様、いい加減諦めろカス野郎!)
恒例の“ググッ”発言が出たからか、物凄い激昂度で言い放つミツキ。その言葉は念話で増幅されつつ、真黒のモヤへと襲い掛かる。
根本から極善の極みとも言えるミツキは、光の属性を持ち合わせている。真黒のモヤは対極たる闇の属性だ。黒いモヤ嬢も闇の属性だが、光の属性も持ち合わせている点が異なる。
両者の属性はお互いに特効的力量を発揮する。しかし、最後は生命力がモノを言ってくる。ことミツキに関しては、身内達の中で最強の力を持っている。大宇宙に匹敵するかの如く、広大で力強い。
真黒のモヤ(オ・・オノレ・・・。)
ミスT(・・・はぁ・・・。“何処のカス”か知らないが、貴様は総意の触れてはならないものに触れた。生命と魂を踏み躙る行為は、未来永劫永遠に許さん。貴様の死を以て償え。)
ミツキの迫力に便乗しつつ、俺の方も啖呵を切ってみた。あえて“何処のカス”と挙げたのは、一種のハッタリそのものである。実際には、黒いモヤ嬢から離別した悪党だしな。
そして、次の瞬間から不思議な事が巻き起こりだした。
各巨大兵装の配置は完了しており、後は何時でもハイパーレールガンを放つだけとなる。その中心に位置していたのが黒いモヤだ。
しかし、今は黒いモヤは黒いモヤ嬢と真黒のモヤに分かれている。そう、完全に分離していた。天の川銀河に匹敵する黒いモヤが、今正に半分に分かれたかのようになっている。
ただ、流石は極悪と言うべきか。極善の黒いモヤ嬢よりも力は上手だ。両者が分離した際、黒いモヤ嬢の方が力量の割当てが減らされたのだろう。悪党にしては上出来な仕様だわな。同時にそれは、黒いモヤ嬢が極善に至ったと言う事を指し示した。
不思議な事が巻き起こったと挙げたのは、今正にその様相が目の前で現れだしたからだ。
ミスT(・・・デュヴィジェさんや、黒いモヤ嬢は“善心”なんだよな?)
デュヴィジェ(・・・ハッ?! そう言う事ですねっ!)
俺の言葉の真意を察知してくれたデュヴィジェ。直ぐさま、十八番のバリアとシールドの力を黒いモヤ嬢へと放つ。幾ら規模が縮小したとはいえ、それでも天の川銀河に迫る様相だ。そんなのお構いなしにバリアとシールドの効果が施されていく。
同時に、正に隣接している真黒のモヤには、バリアとシールドの効果は一切働かなかった。相手が悪心に満ち溢れた極悪である証拠だ。それを窺い知った一同は、不気味なまでにニヤリと笑みを浮かべる。
ナツミA(何だか呆気ない最後だと思うけど、アナタは私達の死の力量だからね。ならば、容赦なく消させて貰うわね。)
何時もは裏方の役回りとなるナツミA。その彼女が真黒のモヤに死刑宣告を言い放った。ただ、その引き金は俺に委ねるらしく、態とらしく会釈してくる。
殺気と闘気が込められた一念に、真黒のモヤも恐れ慄いたのだろう。俺達以上の巨体を駆使して、こちらを覆い尽くそうと包み込もうとしてきた。
当初は各巨大兵装で取り囲んでいたのだが、今はその布陣すらも覆い尽くすかの規模で圧倒して来ている。破れかぶれ戦法と言うべきだろう。だが、それが効果を成さない事を身を以て思い知っているようだ。
最後の一手は既に準備できている。後は実行するのみだ。当初はハイパーレールガンを駆使した射撃戦法を取ろうとしたが、ここは総意で同期している黒いモヤ嬢を巨大兵装に見立てて放つ事にした。
ヘシュナから更に与った巨大ペンダントと共に、他の全ペンダントの力を解放。以前の事変でも同じ様な流れは取ったが、今回はそんな生温い事などしない。相手を殺すつもりで挑む。
各ペンダントの力が解放されていき、そこに自身が持つ殺気と闘気の心当てを織り交ぜた。合成された力は、真黒のモヤを仮に押し留めている各船団にも呼応していく。
巨大ペンダントに直接語り掛けるようにそれらは到来し、そこから一斉に真黒のモヤへと向けて殺気と闘気の心当てが放たれ出していった。その射出口となるのは黒いモヤ嬢だ。
当初はカルテット・キャノンと題した、俺達だけで消滅させる作戦だった。巨大兵装たるハイパーレールガンを駆使しようとしたのは、相手が超大な存在だったからだ。
だが今は戦術が変わった。ハイパーレールガンを使わずとも、真黒のモヤに匹敵する存在の黒いモヤ嬢を用いれば済む。言葉は悪いが、彼女は生体兵器のハイパーレールガンである。
同時に、彼女と真黒のモヤは属性こそ異なれど、全く以て同類の存在だ。こちらが意図的に属性を合わせたりしなくても、そこに超絶的な特効薬が存在してくれている。これ程有利な環境は類を見ない。
俺達総意の生命力を、念話の力を通して黒いモヤ嬢に送る。その力を受けた彼女は、離別すると決断した真黒のモヤに対して、その引き金を引いた。驚いたのが、爆発などのド派手な演出はなかった事だ。地味に言えば侵食だろう。
規模的には圧倒的に劣る黒いモヤ嬢が、俺達総意の力を得て超絶的に膨れ上がっている。その力を以て、真黒のモヤを覆い尽くし消滅させていった。完全消滅そのものだ。
ちなみに、各巨大兵装の巨大ペンダントも効果を発揮している。黒いモヤ嬢に同期しつつ、その艦体から真黒のモヤへ向けて、特効的な力を放ち続けていた。触れれば即座に消滅する力量である。
この力量に関しては、最早人知を超えた様相と言うしかない。理路整然と解釈できる物事では全くない。地球人的に言えば、神の領域とも言えるだろうな。
ふと脳裏にある事が浮かぶ。黒いモヤ嬢の力量が、俺達と何ら変わらない事は先に挙げた。つまり、彼女は立派な生命体に昇格した証拠であると。
同時に、ここまでの極大的な力を放てば無事では済まされない。それを覚悟の上で行動した事に、俺は心の底から脱帽した。
彼女は、己の生命を賭して、半身とも言える真黒のモヤを消滅させようとしているのだと。
第10話・7へ続く。
無限大に近い広大な大宇宙を以てしても、生命の力は同等の力量を発揮する、でしょうか。ディスカバリーチャンネルは解明・宇宙の仕組みなどを視聴させて頂いている流れと、宇宙戦艦ヤマト2202からのネタで思い付いた展開でした。小なる宇宙、大なる宇宙、生命の力は偉大ですよね。
ともあれ、呆気なく真の巨悪を屠ったという流れは、殺風景にも程がある感じでしょうか><; まあでも、ここぞと言う時に本気を出すのもまた通例でしょうし(何@@;
自前の作品群は見事に拙い作品ではありますが、あと少しで警護者は完結となります。最後までお付き合い下されれば幸いですm(_ _)m




