第6話 生き様を示して2 迫る恐怖を押し殺しつつ(通常版)
「葛西駅周辺、物凄く賑わっていますよ。」
「そりゃあねぇ・・・。」
「コスプレの姉さん方が、事態を収束とのニュースも流れていますし。」
「何とも・・・。」
「警護者が表向きに認められだしていても、圧倒的戦闘力を持つが故に、表舞台では超が付くほど目立ちますからね。」
「それでも、そこから突っ込んだ探索をしないでくれているのが有難いけどね。」
一区切り着いたので、それぞれ一服しながら寛いでいる。戻る先は、今も身内がいるアキバである。あの後、再度戻ると告げていたので、その約束を守らねばならない。
「空の方はどうだ?」
「万事大丈夫ですよ。後は小父様を筆頭に、主力陣を適切な場所に配置するのみです。まあ、その時までは待機になりますが。」
「待機、ねぇ・・・。」
「私達の気質から、こうした待ち状態は重荷の何ものでもないわね。」
「本当だわな。」
後に至る、黒いモヤ事変。これは適切なタイミングで行動するしかない。下手に動いた場合、最悪はこちらが消滅してしまうのだ。今は静かにその時を待つしかなかった。
(なぬぅー! 何時の間にか終わっちゃってるわぅー!)
(だから・・・動かない方が良かったのに。)
(おのれぇ~! ワンコロが、下らぬ手を使いよって!)
(それ・・・ポチにソックリ返すわね。)
突然の念話に驚く。それはシュームが語っていた、別ルートから葛西臨海公園へと向かったミツキとナツミAからである。俺達がアキバに戻っている事を察知してか、慌てて現地へと戻りだしているようだ。
(・・・その生き様、本当に見習いたいものですよ。)
(理は良いでしょうけど、ポチの表向きの姿は見習わない方が身の為ですよ。)
(ハハッ、そこは本当に痛感するわ。ミツキさんの生き様は、再現しようにも再現できないぐらいだしな。並大抵の力がなければ、とてもじゃないが押し潰されるわ。)
(ふんっ、このポチミツキ、見縊って貰っては困るわぅ!)
常にボケに転じて周りに笑いを巻き起こす彼女。その生き様は、体現しようにも並大抵の力では実現すら不可能である。いや、実際にはできるのだろうが、長くは続かないだろう。
(ミツキ様の力は、ミツキT様すらも具現化は無理でしょう。それは、個々人の生命力の輝きに他なりません。)
(そこは、桜梅桃李の理とも挙げれますからね。)
(確かに。)
桜梅桃李、か。桜には桜の、梅には梅の、桃には桃の、李には李の良さがある。先にスミエが挙げた、個々人の生命力の輝きそのものだ。それらが最大限発揮できるのが、異体同心の理になるしな。
(・・・正直、怖くないと言ったら嘘になります。今現在だと、あの黒いモヤ自体はどの様に転がるか分かりません。ですが、だからこそ、不安や恐怖を糧として、前に進む事に決めたのですから。)
(警護者の理、よね。その部分がなかったら、私もガクブル状態だったかも知れない。)
(黒いモヤは、不安や恐怖、そして死という究極の力の集合体ですよ。凡人では太刀打ちができませんから。)
ボソッと語るミツキに、周りの面々の一念が浮かんでくる。俺もそうだが、正直怖くないと言ったらホラ吹きである。万全の対策を以てしても、今回の黒いモヤは完全消滅できるかは不明だ。これを怖くないと言うのなら、生命体としてどうかしている。
(・・・心配ありませんよ。ここに究極の変態気質の変人がいますからね。それが黒いモヤへの特効薬になるなら、喜んでこの生命を捧げます。皆様方の大切な生命を、何処の馬の骨とも分からぬ輩に、踏み躙られてたまるものですか。)
(・・・感動的な文句だけど、今の君には激しく信憑性に欠けるわ・・・。)
(アッハッハッ! 本当ですよね。)
(そりゃひでぇわ・・・。)
俺なりに述べた決意だが、今の身形が問題だった。性転換状態であり、自動手記人形嬢のコスプレ状態でもある。その姿からの啖呵は、完全に迫力を殺いでしまっている。
(でもまあ、今は各ペンダントが女性化を望んでいるようですからね。そのお姿で、あの戦いに望まれた方が良いと思います。)
(それだと、自動手記人形様より金髪喪服美女様の方が良いと思いますけど。)
(金髪喪服美女さんは、言わば導き者だろうに。しかも、最初は主人公を惑星のボルトにするために現地に招いた。後に色々な流れがあり覆ったが、マイナス面の姿が出ちまう。)
(対して、自動手記人形さんは、自動手記人形という部分を警護者に当てはめられる、と。更に顧客がいれば、何処へでも馳せ参じるとも名言していますからね。生い立ちは色々とありましたが、後を考えるとプラス面の姿が数多い。)
(これは、同作を描かれた方々への思いも胸に秘める。要領が悪い俺には、このぐらいしかできない。)
総意の色々な思いを胸に秘めれば、今回の黒いモヤとの対決は絶対に避けられない。不安や恐怖と言った概念ではない。負ければ全てが消えてしまうのだ。連中を退けられるのに俺の生命が使えるなら、これ程喜ばしい事はない。
(・・・何処までも、利他の一念なんですね。もう・・・呆れるを通り越して、応援するしかないじゃないですか・・・。)
(その一念こそが、正に百人力よ。だから大丈夫さ。)
傍らで涙を流しているエリシェを、静かに胸に抱き寄せた。この涙、この思いこそ、今の俺の絶対的な起爆剤そのものだ。彼女・・・いや、彼らの思いを絶対に無碍にはできない。
(私達って、最後は全部Tさん任せですよね・・・。)
(本当にそう思います・・・。)
(今までの行動も、全部任せてしまっていましたし・・・。)
(持ちつ持たれつ投げ飛ばす、だがの。普段から傍らで、心からの笑いあり涙ありの存在を示してくれている。それに対しての返しそのもの。言い方は悪いが等価交換か。それこそ、俺の生き様だしな。)
(はぁ・・・私もそうだけど、君も損な生き方しかできないわね。)
(皮肉にしか聞こえんがの。)
(ハハッ、ごもっともね。)
サラッと語るシルフィアの言葉に、周りの面々が小さく笑っている。俺自身の生き様もとい、警護者自体の生き様は損な生き方としか言えない。それでも、今のその自然と出た笑みを守るために、俺達の生き様は存在している。それだけで十分である。
(俺自身も、何処までやれるかは未知数だ。しかし、出来うる事はし続ける。何もせずに消滅など絶対にしない。)
(誰でも死ぬ時には死ぬ、それだけの事だ。だが1つ頼みたい。もしあのクソッタレどもに命を奪われるなら、奴らにトコトン思い知らせてから死のう! これわぅね!)
(はぁ・・・某船長の啖呵よね。ただ、今の黒いモヤを機械蜘的な群に例えるなら、正にその気迫が必要よね。)
(乗り込み機械兵士と言う名の警護者軍団で、モッフモフのモフモフにしてやんよ!)
(はぁ・・・ミツキさんの気質がなければ、黒いモヤ自体に屈服してたかもねぇ。)
(生命こと“力”は偉大なのだよ、お分かり?)
(正義の騎士の海賊長さんかしらね。)
現状なら閉塞感が否めない現状だが、そこに切り込みを入れるのがミツキのネタボケである。それにネタを知る面々は、不甲斐無いばかりに笑っていた。どんな状況であれ、こうして笑いに変化させる力を持つミツキ。本当に見習いたいものである。
落ち着いたエリシェを胸に抱きつつ思う。この掛け替えのない生命を守り通す事こそ、俺の一世一代の戦いである。俺にできる事は何でもし続けたい。否、それしか俺にはできない。
第6話・3へ続く。
過去に例がないぐらいに、会話中心の話でした><; 誰がどの台詞なのかを明確にされたい方は、キャラ名版をお勧め致しますm(_ _)m うーむ・・・通常版は無用の産物ですかね・・・。
と言うか、皆さんが創生される作品を拝見させて頂く限り、余程の事がない限りは、キャラ名を最初に挙げて、それから台詞を記述する形は見た事がありません。各作品の書跡版でも、キャラ名は一切ありませんし・・・。
これは、詳細描写を織り交ぜて、もっと話を細分化させるべきなのでしょうね。苦労人が現状、その流れを貫いていますので。う~む・・・大改修は必須そうですわ(>∞<)




