第5話 窃盗軍団の逆襲3(通常版)
(その後の流れはどんな感じだ?)
(んー・・・殆ど平行線と言うか、出て来ない感じですね。)
かつて、コミケで共闘したヲタクの方々。彼らの強い要望とあり、トラガンの女性陣と一緒にアキバに赴いている。当然コスプレは必須で、現地での親善活動との事だ。
(マスターとご一緒できて光栄です。)
(本当にありがとうございます。)
(ああ、よろしく頼むよ。)
初めて出会った時より、各段に成長しているサラとセラの双子。ミツキに近い可愛らしさもあるが、その絶対に曲げない一念が強く表れている。これは他のトラガンの女性陣にはない、特質的なものである。
(おおぅ? わたが可愛らしいと思われたのは初めてわぅよ。)
(ポチはヤンチャボーイそのものだからねぇ。可愛らしさとは異なる次元だし。)
(んだんだ。)
喫茶店本店の店長たるサラとセラが出払っているため、今の喫茶店はナツミAとミツキが運営している。サーバーブースはデュリシラが駐留してくれているので、連絡要因としては打って付けだ。
(本格的な実戦が、まさか秋葉原からスタートとは見事ですよ。)
(実際に激闘や死闘を演じる事を想定していましたし。)
(まあそう言いなさんな。こうした親善活動も、世上の安寧を勝ち取るための大事な布石だ。戦うだけしか能がなかった俺達に、こうした機会を与えてくれたヲタクの方々には、心から感謝するしかない。)
(フフッ、本当ですよね。)
何気ない感じでコミケに参加。そこでの2回に及ぶ襲撃事変を経て、現地のヲタクの方々との面識度が上がった。ラフィナ達の助けもあったが、今では非戦闘型の警護者そのものだ。
(・・・そうか、そういう事か。何も戦うだけが警護者の世界じゃない。こうした行動も、警護者の生き様の1つになる訳か。)
(何を今更と言った感じじゃないのよ。その帰結自体は、君が真っ先に至ったじゃない。それらに感化されたのが私達だったし。)
(本当ですよね。漠然と戦闘を繰り返す集団という概念を、見事に崩したのはマスターになりますし。確かにポチがコミケへの参加を促しましたが、乗るか乗らないかは貴方次第でしたから。)
(切っ掛けは、些細な事から開始する、か・・・。)
一旦休憩を取りつつ、近場に座ってミンティアを食す。ここ秋葉原こと千代田区は、今は法令で禁煙である。一部では喫煙が可能だが、要らぬトラブルを起こさないために茶菓子で済ませている。
(・・・はぁ、日常が恋しいわ。5大宇宙種族の面々には申し訳ないが、各々方が登場後は警護者の概念が著しく崩されているし。)
(そこはお構いなく。本来なら放浪の旅に出るつもりでしたが、地球人の過激な行動を監視する意味合いで留まりましたし。それが今では、貴方を中心に世上に浸透し切っている。過去にミツキ様がネタで、“宇宙の彼方”に赴くとありましたが、私達からすればこの地球こそが正に宇宙の彼方ですよ。)
(遠い所にある希望ではなく、近くにある希望こそが正にそれと。当時は揶揄で宇宙の彼方を挙げましたが、ユートピアやアルカディアでも示せますし。)
遠くの希望ではなく、近くの希望を、か。いや、むしろ希望は作り出すというものならば、俺達こそが宇宙の彼方とも言い換えられる。生命体の凄さはここにあるのだろうな。
(ちなみに、宇宙海賊様の旗艦がアルカディア号ですからね。)
(その盟友様を看取ったのが・・・な訳で。)
(そうですねぇ~・・・。)
(この野郎・・・。)
(ウッシッシッ♪)
またである・・・。念話を通して、他の面々のニヤケ顔が脳裏に浮かんで来る。もはや格好のネタの1つとなっていた。本当にこの美丈夫達は強いわな・・・。
(・・・この期に及んで、また窃盗団かと呆れたのが本音だった。しかし、それらは非日常になるが、黒いモヤの完全非日常を前にすると、日常そのものになるのだろうな。)
(本当よね。各方面で活躍している仲間達も、そこでの活動自体が本来の姿だし。あの黒いモヤはもう、生命総意で戦うしかない相手になってくるからね。)
(全く以て馬鹿げていますよね。でも、私的な直感ですが、この戦いが実質最後のものとなると思います。まあ、今回得られるノウハウは、何れまた同じパターンの襲来があった時の特効薬になりますし。)
(その時は全面協力をさせて頂きます。何処ぞの馬の骨とも分からぬ阿呆に、貴方達総意を貶されてたまるものですか。)
念話から凄まじい覇気を放つヘシュナに、周りの面々が驚愕する様子が映し出されていく。俺の過去を読んだ直後から激変したヘシュナ。一切の油断がなくなり、更に力も増した感じになっている。正に覚醒状態だわ。
(私が生誕時にお会いした小母様と、物心付いた時にお会いした小母様。しかし、今の小母様とは雲泥の差ですよね。小父様も全く同じですが、小母様の激変度の方が如実に表れていますし。)
(・・・ミツキTさんの強い生き様、か。彼女がヘシュナさんを覚醒させたも当然だろう。デュヴィジェさんも同じクチになるしな。)
(・・・その“さん”付けですが、どうにかなりませんか。)
(わたにも敬語呼びわぅよ。)
(本当ですよ。呼び捨てにされた方が気が楽ですし。)
(ハハッ、これも俺の素体の1つよ。今後も己が生き様を貫き通すわ。)
ミンティアを食しながら、今の生き様を語る。先日から誰彼構わず、名前には“さん”付けを徹底しだした。いや、本来の俺自身がそれであったと、シルフィアやスミエも語っている。本来の自分自身に戻ったに過ぎない。まあ名前以外の言い回しはラフな流れになるがな。
休憩後も親善活動を繰り返していく。とは言っても、今はヲタクの方々と一緒に、歩行者天国の場でのイベント活動になるが。まあ、ここにいる身内が全員女性であるから、何を行うにしても様になるのが救いだろう。
それに、本来なら俺は野郎である。今は性転換ペンダント効果でミスTになっているが、できれば野郎でいる方が気が楽ではある。ただ、これだけ周りがオールレディースとなると、ミスT状態でいる方が自然体になるのが皮肉な話だがな。
突然である。昭和通り側から、物凄い爆音が聞こえてきた。そちらを窺える場所に立つと、複数の車両が凄まじいスピードで突っ切っている。その背後からは警察車両も追随している。この事から、先頭の車両が窃盗団という事が直感で分かった。
幸いにも、こちら歩行者天国側には侵入して来なかったのが幸いか。下手をすれば大惨事に至っていたかも知れない。それに障害物と言っては大変失礼だが、戦略的には人物などがない場所の方が逃げ易い。今回も連中は、そこそこ頭が切れるようである。
親善活動をトラガンの面々に委ね、俺達はその場で作戦会議を行う事にした。身内は念話が使えるため、逐一連絡が取れるのが有難いわ。
(ついに現れましたか。直ぐにそちらに向かいます。)
(私も不測の事態に備えて、ナツミYU小母様に同伴しますね。)
即座に連絡が入るは、ナツミYUからのものだ。どうやら喫茶店で待機しており、ウアイラでの高速追随を展開するのだろう。同伴者にデュヴィジェが名乗りを挙げてきた。これなら、不測の事態は全く以て問題ない。
(どうするT君、レプリカヴァルキュリアを出して空から威圧を掛ける?)
(その方が手っ取り早いか・・・。と言うか、今回の連中の意図が全く読めないんだが。)
(既に犯行声明は出しているので、後は動くのを待つだけでした。まあ、私達の真の巨悪は黒いモヤですからね。言い方は悪いですが、窃盗団など眼中になし、という感じでも。)
(確かにな。)
本当である。窃盗団の行動など、日本の限定的なエリアでのものでしかない。しかも地球内で補完されている。対して、黒いモヤは太陽系はおろか天の川銀河を覆い尽くさんとしているのだ。規模からしても雲泥の差である。
(本来なら、私達だけで解決すべき問題なのですけどね。)
(今回もマスター方にご足労して頂く形になってしまいましたし。)
(そこは気にしなさんな。ウインドさんもダークHさんも、警察庁長官の大任がある。俺達は実働部隊そのものだ。頭には、しっかりと鎮座して貰っていた方が安心するしの。)
(・・・この敬語呼ばれは何か違和感が・・・。)
(本当にそう思います・・・。まだ呼び捨てにされた方が、身が引き締まる思いですし。)
(はぁ・・・そうですか。)
恒例の名前に“さん”付けをした俺に、難癖を付けてくるウインドとダークH。ただ、今となってはこの流れを貫くしかない。これはもう、俺自身がそうするのだと決めた以上、最後まで貫き通したいものだわ。
(ただ・・・何だか嬉しいです。私達の役割方、畏怖の一念で見られる事が多いため、普通に接して貰える事は非常に希でも。)
(ですね。皆様しかフランクな言動をぶつけてくる方はいません。まあ慣れものですが、こうして普通に接して頂けるのは幸せですよ。)
(・・・お前さん達の活躍は、本当に陰の存在でしかない。表舞台で活躍する事は非常に希になる。そうした裏方の存在を、縁の下の存在を支えねば、覆面の風来坊の名が廃るわ。)
これは過去に身内にも語ったものになる。縁の下の力持ちこそが、万事を動かす原動力となっている。ウインドとダークHはその極みとも言えた。警察庁長官の大任は、相当な重圧になるだろう。ミツキが過去に言っていた通り、代わりに担う事が必要だというのも肯ける。
(ウインドさんとダークHさんの名代として・・・いや、総意の名代として、この事件を鎮圧する事を心から誓う。ぶっきらぼうな俺には、このぐらいしかできない。)
(大丈夫ですよ。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、この気概で進めば万事解決です。)
(そうね。ポチが縁の生き様が、利他の一念と共助の理に至る事ができる。他にも帰結する事ができるけど、敬い・労い・慈しみの精神がなければ、絶対に至れない境地だし。)
(ミツキTさんも命懸けで教えてくれたしな。全力を以てしてでも、周りを支え抜くのだと。俺は・・・彼女の名代として、今後も総意を守り続けるわ。)
完全には思い出せないが、ミツキTとの一時が沸々と浮かんでくる。病弱の身でありながら、最大限の力で動き続けていた。ナツミAが病床の時と非常にダブる。彼女や盟友達を守ると誓ったのは、この時と同じだったからだろうな。
第5話・4へ続く。
揺るがない原点があるからこそ、進むべき道を見誤らない。これは、リアルでも常日頃から心懸けねばならない概念かと。気を引き締めていかねば・・・。
しかし、キャラ会話が多いです><; 話の流れでの一定人数を超過しているため、誰が誰だか分からなくなる感じでも@@; こうなると、キャラ名版の方が分かり易いのですが><; 悩ましい(-∞-)




