第4話 束の間の休息1(キャラ名版)
偽デュヴィジェの悪行、通称偽デュヴィジェ事変だが、本物のデュヴィジェが現れた事により、一瞬で解決に至った。そう、本当に一瞬である。
俺としては、あの流れからして、更に長引きそうな気がしていた。しかし、デュヴィジェの戦闘力と機転ある行動の前に、実質的に瞬殺された偽デュヴィジェだった。
当然、不殺の精神を心得ている本物デュヴィジェの事、相手の殺害は一切していないが。むしろ、そこまでの実力をどうやって得て来たのかが気になるが・・・。
ともあれ、これで1つ目の問題は解決できた。直ぐにでも、次なる課題に進むべきである。
惑星事変ほどの進軍速度ではないが、刻一刻と迫る黒いモヤ。その正確な規模も判明する。太陽系を軽々と上回る大きさだった。天の川銀河に近い様子でもあるが、明確な規模が判明した今なら、問題なく対策が講じれるだろう。
太陽系や天の川銀河の全生命を守るためにも、この黒いモヤを退くないし、消滅させねばならない。今や一警護者の範疇を超越しているが、それでも自分達の成すべき事をするのみである。
偽デュヴィジェ事変から1週間が経過。例の黒いモヤの進軍速度は非常に遅いため、万全の準備を整えられている。それだけ、相手が凄まじい大きさである証拠だ。
また、本物のデュヴィジェが地球全体に謝罪も行った。地面に頭がぶつかるまでの土下座も繰り出している。大袈裟的な姿だが、そこまでしないと納得ができないと豪語もしていた。何処までも熱血漢で負けず嫌いな性格である。
それに、本当の幸せが何なのかも語っていた。目の前の大切な存在を守り抜いてこそ、と。上辺だけの幸せなど、真の幸せとは言えない。それを演じていたのが偽デュヴィジェである。ただ、実際には願いを叶えるだけの実力はあったのは確かだが。
今後は、それら超絶的な力を使わずに、地道に周りへの幸せの種を蒔いて行くと言い切ってもいた。それが、デュネセア一族の新たな生き様であるとも。
デュリシラ「う~ん・・・こうも簡単にできるとは・・・。」
ミスターT「悩んでいた頃が嘘のようだわな。」
デュネセア一族の回帰により、バリアとシールドによる超作戦が滞りなくできそうだ。今もシミュレーションを展開しており、色々な局面を模索している。と言うか、太陽系を超える黒いモヤを消すというのは、もはや正気の沙汰ではない。
ちなみに、偽デュヴィジェ事変が解決したと同時に、性転換ペンダントの効果が切れた。今はミスTからミスターTへと戻っている。ただ、再び非常に長い間、性転換をしていた反動だろう。恒例とも言える長髪は、軽く2mに至るまでになっている。
ミツキ「ぬぅーん! これは、“風の四天王”ちゃんわぅね!」
デュリシラ「アハハッ、確かにそうですね。」
ミスターT「笑い事じゃないんだが・・・。」
ミツキが譬喩は、某ゲームの4作目で登場する、“黒い甲冑”の四天王の1人、“風の四天王”というボスだ。身長の3倍以上の髪の毛が印象的で、それを駆使して竜巻のバリアを張る事ができる。
シューム「案外、ミスTの時の方が合うんじゃないのかしらねぇ。」
ナツミYU「ですねぇ。」
ミスターT「言ってろ、じゃじゃ馬娘達め。」
ミツキ「ウッシッシッ♪」
ミスTからミスターTに戻るや否や、周りからの物凄い殺気に満ちた視線に曝され続けた。その淵源は、5姉妹とその母の言動である。肉親の様に接して来ている事からか、凄まじい嫉妬の一念をぶつけられている。ただ、当の母娘達は自然的で、それが意図的なものではないのは確かだ。そこは周りの女性陣も理解してくれている。
ミスターT「そう言えば、4人は今もトラガンの面々と修行の繰り返しか。」
ナツミA「ですねぇ・・・。例の事変後に日本に来たと思えば、直ぐさま修行に明け暮れるという。ポチの生き様にクリソツですよ。」
ミツキ「まだまだ修行が足らぬのだ、我が弟子達よ。」
デュリシラ「フフッ、本当ですよね。」
ミスターT「何とも。」
偽デュヴィジェ事変から数日後、ティエナ・エシェス・エルシェス・エルシェアが来日した。しかし、休む間もなくトラガンの面々と合流し、直ぐに修行を開始しだしている。黒いモヤの一件は承知済みのようで、不測の事態に備えてのものらしい。
デュリシラ「そうそう、宇宙船団は何時でも指定の位置に跳べるそうですよ。」
ミスターT「転送装置のフル活用だわな。まあそうでもしないと、太陽系を覆う様な布陣は絶対に展開できない。ここは力を使い続けるしかないしな。」
今現在、5大宇宙種族の面々は、全員宇宙へと出払っている。繰り出せる宇宙船団全てを指定の場所に跳ばせるよう、色々と作戦を練っているようである。決め手は俺になるのだが、それを拡大放出させるのは彼らの使命だわ。
ミスターT「手伝う事はないかと尋ねたが、今は休めと一蹴されたしの。」
デュリシラ「そりゃそうですよ。ルビナ様とヘシュナ様、それにデュヴィジェ様のトリオパワーでの力の増幅は可能ですが、その根幹は貴方の力に掛かってきますし。」
シューム「もうさ、一警護者の行動力を超越しているわよね。」
ナツミYU「世界規模でも手に余るのに、それが地球はおろか、太陽系となると為す術が無い状態ですよ。」
ミスターT「まあそう言いなさんな。」
カウンターの前で座り、一服しながらボヤくシュームとナツミYU。厨房はナツミAとミツキが担当しており、2人はウェイトレスの役割を担っている。
2人の言う通り、今の様相は一警護者の範疇を完全に超越している。5大宇宙種族の加勢がなければ、絶対に担えるものではない。それ即ち、黒いモヤの接近で、太陽系の滅亡を意味する事になる。
幸いにも、その黒いモヤを退ける力が俺達にはある。確かに逸脱した様相だが、それで世上に安寧がもたらされるのなら全力を以て挑むべきだ。それこそが、警護者魂に帰結してくる。
今も不貞腐れ気味のシュームとナツミYU。その背後に回り、2人の肩に手を回しつつ、優しく抱き締めてあげた。突然の行動に慌てだすのだが、直ぐに身体を委ねてくる部分は見事としか言い様がない。
デュリシラ「シューム様もナツミYU様も、警護者の激戦を潜り抜けて来た、正真正銘の強者です。確かに、話された事も一理ありますが、お2人がいたからこそ今があるのですから。」
ミスターT「そうだな、デュリシラの言う通りだわ。お前さん達が、足元の地盤を堅固にまで固めてくれたからこそ今がある。それが宇宙で戦っている5大宇宙種族に帰結すると思うよ。そんな2人に敬意を示せなければ、警護者として失礼極まりないわ。」
更に2人を抱き寄せ、その頬に自分の頬を当てる。慌てて煙草の火を消しつつ、その余韻に浸りだしていく。エリシェがしてくれた、頬を当てて温もりを感じる厚意である。
ミスターT「全てが終わったら、一夫多妻が可能な国にでも移住するか。」
デュリシラ「ほほぉ、本当に実行する気でいるのですねぇ。」
ミスターT「そう言うお前さんも、エラい乗り気じゃないか。」
デュリシラ「そりゃあ・・・オフコースでございます。」
自分に嘘を付かなくなってからのデュリシラは、目覚ましい程に女性を体現している。普通であれば茶化しが飛ぶような内容に、見事なまでに同意をしてくるのだ。胸中に抱いていた悲願たる部分の1つとも言える。
ミツキ「わたは常にフルコースを所望するわぅ!」
ナツミA「片っ端から食い漁るのが性分だしねぇ。」
ミツキ「ふんっ、このポチミツキ、見縊って貰っては困るわぅ!」
ナツミA「はぁ・・・。」
シメはミツキのボケである。ナツミAの呆れ顔は毎度の事だが、それを聞いたデュリシラは無論、癒しの一時を満喫していたシュームとナツミYUは爆笑しだす。本当に素晴らしい女傑だわな・・・。
ミスターT「まあ何だ、今は束の間の休息を満喫するかの。」
ミツキ「ですね。実際には、各布陣が整わない限り、最後の一手に進めませんから。」
ナツミA「それに、この作戦はタイミングが肝心との事ですし。」
デュリシラ「適切なタイミングで力を解放しないと、相乗効果で撃滅する事ができません。全てが狂うと、逆に飲み込まれる結果も出ていますからね。」
とにかく、今は待ち続けるしかないのが実状か。実に悩ましい感じだわ。
デュリシラ達が何度もシミュレーションをしているが、確実に成功をするのはタイミングが合った時のみである。それ以外では、太陽系は無論、天の川銀河は黒いモヤに飲み込まれて消滅してしまうのだ。
ただ、しっかりタイミングさえ合えば、問題なく退けられる結果も出ている。今はその時まで待ち続けるしかない。特に俺の力が切り札となるためか、周りの対応が恐ろしいまでに温和なのだ。嵐の前の静けさの如く、である。
第4話・2へ続く。
次の課題へと進む一行。と言うか、15万光年以上の巨大さを誇る天の川銀河。それを覆い尽くす規模の黒いモヤとか、この設定は我ながら正気の沙汰ではないと思ったりも@@; ただ、宇宙規模からすれば、この規模は微々たるものなのでしょうけどね。大宇宙は本当に広いですわ(=∞=)




