表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
37/544

第5話 カーチェイス3(通常版)

「あら、こんにちは。」

「何でお前達がいるんだ・・・。」


 現地ディーラーに着いて驚いた。海外にいるはずのエリシェとラフィナがいるではないか。しかも展示品のウアイラと、もう1台の車種を品定めしている。


「ミツキ様とお話しまして。何でも貴方がこちらの車種に興味があるとかで。」

「まさか・・・買ったとか言うんじゃないだろうな・・・。」

「そのまさかですが。」


 ノホホンとした感じで語る彼女に、俺の方が青褪めてしまった。しかもラフィナが物色している隣の車種は、同系列の車種を持たねば買えない代物だ。


 フェラーリ・エンツォ。現フェラーリ所有者でしか入手できない超貴重なスーパーカーだ。入手経路がとにかく限られているため、見る機会も非常に希である。それが目の前にあるのには驚くしかない。


「これもいいですね。こちらは同系列車種がないと入手は不可能ですか?」

「立て前ではそうなっておりますが・・・。」

「なら・・・あちらの同型車種と一緒に買います。手配して下さいませ。」


 エリシェが指し示す先には、これまた超骨董品のフェラーリF40がある。それと後継機のエンツォを買うと言い出した。焦るも商売的に万々歳といった形のオーナーさんだが、俺は顔面から血の気が引く思いだ・・・。


「ど・・どうするんだ・・・スーパーカー3台も・・・。」

「管理はナツミYU様にお任せします。」

「実は君がムルシエラゴの代金を払う事を知ったら、そのお返しとばかりにね。」


 実に申し訳なさそうな顔をするも、滅多に手に入らないスーパーカーを管理できるとあってご満悦のナツミYUである。穴があれば永遠に隠れたい気分だわ・・・。



 手続きが完了するまで、近くのテーブルで暇潰しをする。エリシェとラフィナの紅茶を啜る姿は、本当にお嬢様としか思えないほど上品だ。またナツミYUも大人の雰囲気で啜る姿は、2人には出せない色気を感じさせるのが何とも言えない。


「本当は例の窃盗事件への対処なのです。」

「スーパーカーばかり盗むアレか。」


 茶菓子を食べながら語る。ここに来る前に喫茶店で見たアレだ。高級車ばかりを狙う窃盗事件が頻発しているという。


「今回の3台はこちらが入手しましたが、それ以外の車両は財閥側で確保に走っています。結構被害が酷く、纏め買い的な感じになりますけど。」

「ほとぼり冷めたら同じ金額で払い下げする形ね。」

「そうです。販売店からしても、売り上げ自体は成り立っていますから。同じ金額であれ、懐は潤う仕組みにしてあります。」

「まあ最悪はこちらが半分負担してもいいのですが。」


 平然と語るエリシェに呆れ返るしかない。しかし現状の窃盗事件はかなり大きくなっている様子で、この先手を取った回収行動はディーラーにとって好都合とも言われているらしい。世界最大の大企業連合だからこそ成せる技だな。



「それと改めて。先日の時限爆弾排除作戦、本当にありがとうございました。」

「一歩間違えば大勢の死者が出ていたかも知れません。本当にありがとうございます。」


 その場で深々と頭を下げる2人。語る内容は、あの通称ブラジャー作戦である。咄嗟の判断で動けたのが、結果的に多くの人命を救う形になった。


「気にしなくていいよ。俺にできる最大限の行動をしたまでだからの。」

「だからこその、これら車両の手配よね。」

「はい。物品で返すのは失礼極まりません。ですが貴方にできる事といったら、今はこの位しか思い付きませんので。」

「俺としては、孤児院の資金援助があれば万々歳なんだけどね。あとはデートができれば願ってもないけど。」


 一服しながら3台のスーパーカーの領収書を見て度肝を抜かれた。これだけで軽く数億は至る超高額である。これを平然と支払えるエリシェには脱帽するしかない。


「・・・なるほどねぇ。無欲故に肩肘張るのを止めさせるためのデートな訳ね。」

「む? ああ、口説きのものか。お前も前はそうだったろうに。エリシェもラフィナも相当内に溜め込んでいる。俺が担いたいのは、目の前の人の幸せな顔だ。それ以外にどんな報酬があるんだか。」


 至って真面目に答えた。相手が男性であれ女性であれ、心に悩みを抱えていては真の笑顔は決して見れない。俺の存在が笑顔を見れるに一役買えるなら、喜んで何でもしたいものだわ。


「ミツキ様が仰られた通りですね。ミスターT様は本当に無欲で、他者への気配りを最優先に動いていると。」

「私達の行動には違和感を覚えられていますが、私達自体には普通に接して頂いています。本来なら物怖じしてしまうのでしょうに。」

「さっきも言ったが、出身の孤児院への資金提供がどれだけ嬉しい事か。それに世界中の人々を陰ながら支えている。更には俺達同業者にも出資してくれている。これに応えるには、今以上の正確無比な依頼を遂行し続けるのみだわ。」


 経緯がどうあれ、純粋無垢な生き様には真っ向勝負でぶつかりたい。己自身の真の生き様を示すのみでいい。それこそが生き様に対しての礼儀である。


「諸々了解致しました。私達も警護者として動き出した手前、貴方様を師匠と位置付けて活動していく次第です。」

「大企業連合の総帥と秘書が警護者ねぇ・・・。」


 決意漲る発言をするエリシェに、力強く頷くラフィナ。専属の警護者達から手解きを受け出していると聞いたが、今ではかなりの腕前に至っているようだ。その華奢な身体からは想像もできない強いオーラが滲み出ている。


「走り立てですが、護身術はそれなりにできますので。引けは取らないと思いますよ。」

「エリシェさん達11人とも、格闘術ではかなりの腕前ですから。人は応用を利かせれば何だって出来ますよ。」


 仲間が増えたと嬉しそうなナツミYU。この警護者自体、そんなに仲間が多い世界ではない。こうやって身近に現れる事自体が幸運なのだろうな。




 一区切りとして一服しようとすると、表の公道を凄まじい勢いで通過していく数台の車両。その後ろをサイレンを鳴り響かせ、数台のパトカーが追い掛けて行く。


 一瞬見えたが、前方の車両数台はスーパーカーに見えた。となると、乗車している奴が噂の窃盗者か。


 そこに血相を変えてオーナーさんが現れる。今のカーチェイスに青褪めるオーナーさん。これ、推測するに奪われたな・・・。



「もしかして・・・。」

「た・・大変申し訳ありません! 別の整備中の車両が窃盗団に奪われまして・・・。」


 エラい落胆しているオーナーさん。というかこんな間近にまで窃盗団が現れる自体驚きだ。こうなれば、ここで潰しに掛かるのが無難か。


「追跡して捕縛するか・・・。」

「つ・・追跡するって・・・車両もないしどうするのよ!」

「フッ、まあ任せなされ。オーナーさんや、後で全部弁償するから勘弁な。」


 腰のホルスターからマグナムを取り出すと、目の前のショーウインドウ目掛けて発砲した。強化ガラスではないようで、連続射撃で粉々に飛散した。それに周りの面々は驚愕している。


 そしてテーブルの後ろ側にあった車両を使う事にした。先日、俺が魅了された超高級車のパガーニ・ウアイラだ。現状だとこれが無難だろう。


「ナツミYUさんや、燃料満タン後に追い付けるか?」

「・・・馬鹿にしないで頂戴、そこらの阿呆には絶対負けないわよ!」


 ショーウインドウの破壊とウアイラに近付く俺に、全てを把握したナツミYU。ポシェットからグローブを取り出すと、颯爽と両手に装着していく。警護者時と同じ本気モードである。


「あ、お待ちを。燃料なら予備のを全部用いれば、満タンは可能だと思います。」

「・・・すみません、大至急補給をして下さい。」


 颯爽と動き出すオーナーさん。エリシェとラフィナも咄嗟の行動に加勢を申し出た。大企業連合の頭の様相ではない。今ここにいる2人は間違いなく警護者そのものである。


 気付いたが、破壊したショーウインドウの地面側。ここにまだガラスの突起がある。いくらウアイラでもタイヤのパンクで大惨事を引き起こしかねない。


 俺は背中に装着している獲物を使った。携帯式方天画戟を取り出し、そのガラスの突起に一閃させる。それに驚いた。まるでバターを切るような感覚で突起を取り払えたのだ。


 そして同時に青褪めた。これ、真剣そのものだ・・・。それを背中に格納していた現状に、青褪める以外にどうすればいいのやら・・・。


 また全てを把握しだした店員さん達が、散乱しているガラスの破片の除去を開始しだした。俺も大きいものをウアイラが発進するであろう場所から遠ざける。その際こちらに向かって小さく頷く彼らに、俺は心から頭を下げた。



 俺達が出口を確保していると、ナツミYUがウアイラに乗車してエンジン始動まで待つ。そこに複数のガソリンタンクを持って現れるオーナーさん。エリシェとラフィナも一緒だ。


 更に車両からはバッテリーも外されていたようで、整備士さんの1人が速攻搭載してくれていた。そう、本当に速攻である。流石はプロフェッショナルだわ。


 本当ならエンジンを始動して待ちたい所だろうが、給油中のエンジン駆動は非常に危険である。ここは車に詳しいナツミYU、しっかりと待つべき所は待っているわ。


 まあウインドウに飾られているサンプル車両故に、内部に搭載の燃料は微々たるものだとは思う。大量に入っていては不測の事態に問題を起こしかねない。


「エリシェとラフィナ、俺達が出発したら喫茶店に行ってくれ。ミツキにオーダーワンコ発動、と。」

「それって某宇宙戦争のエピソード3のネタ・・・。」

「アッハッハッ! 諸々了解しました!」


 秘密の暗号を口にするが、その元ネタを知るナツミYUが難癖を付けてくる。ただエリシェとラフィナの方は大爆笑している。彼女達も元ネタを知っているが、その言葉が何を指し示すのかを把握したようだ。


 慎重かつ迅速に燃料補給を終える。若干溢れそうになっている所を窺うと、このガソリンだけで満タンまで至ったようだ。これなら長距離走行は可能だろう。タンクの蓋を閉め、準備は全て整った。


 それを窺ったナツミYU、即座にエンジンを始動しだす。怒れるライオンが雄叫びを挙げるかのような大爆音を放つウアイラ。僅かな時間のエンジン温めの間に、俺は助手席に搭乗。エリシェ達に合図をすると、ナツミYUはウアイラを発進させた。


 長時間のアイドリングによるエンジン温めができないため、その場でバーンアウトをする。エラいスモークが発生し、車内にまでタイヤの焦げる臭いが充満してきた。


 これ、バーンアウトする必要はないような気が。そんな思いを巡らすと、傍らのナツミYUが俺の肩を軽く叩いてくる。気にするなという表情が見事なワイルドウーマンだわ。


 そのままの勢いで破壊したショーウインドウからウアイラが飛び出していく。歩行者さんに当たらないかと思ったが、ショーウインドウ周辺には店員さん達が通せんぼをしているではないか。全てを見越した行動に、俺は車内から彼らに深々と頭を下げた。


 ここに居る全員、思いは同じだ。窃盗団を捕縛してくれ、と。


    第5話・4へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ