第2話 歴史は繰り返す2(キャラ名版)
デュリシラ「お・・・東京に鎮座中の宇宙船からアプローチが。」
ミスT「場所は政府官邸か?」
デュリシラ「いえ・・・へぇ、ここにですか・・・。」
デュリシラがそう語った直後、空間の歪みを感じる。すると、目の前に現れる複数の面々。その中の1人は、5姉妹と全く同じ雰囲気を出していた。つまり、偽デュヴィジェという事になる。
偽デュヴィジェ「・・・私達が来る事は、知られていたという事か。」
デュリシラ「残念ながら、4大宇宙種族の集大成ですからね。宇宙大帝が考えるほど、私達は甘くないという事ですよ。」
ヘシュナ「はぁ・・・あの小娘が立派になったものですねぇ。」
偽デュヴィジェ「ふむ・・・貴殿らとは初対面だが。」
張本人が直接現れた事で、周りは一気に殺気立つ。しかし、何時になく冷静なデュリシラに驚くが、過去にミュティナが揶揄った喋りを繰り出すヘシュナである。だが、偽デュヴィジェの方はその意味を知らないように見て取れる。となれば、偽者である事は確定的だわ。
ミスT「およしなさい、お嬢様方。ところで、貴方様は如何様な理由でこちらに参られたのです?」
偽デュヴィジェ「大凡、全て把握しているのだろうに。貴殿らに有意義となる交渉を持ち掛ける。望むものを全て用意する事ができるが、どうなされる?」
これは・・・某宇宙戦艦の大帝の方が戦略家だわ。偽デュヴィジェの方は、漠然と誘惑交渉をするだけでしかない。しかし、宇宙種族という部分から、その力は確かなものだが。
そして理解した。デュネセア一族は、4大宇宙種族にはない力を持っている。それは雰囲気から相手を誘惑させ、そこに引き擦り込もうとするものだ。ファンタジーゲームでは幻惑魔法そのものである。
ヘシュナ達カルダオス一族も精神操作ができるが、それは相手に触れるか、場の流れからの変革になる。南極事変で撃滅した面々が、その流れでヘシュナに騙されていた感じだった。そして、俺の脳内の記憶を読んだ時は、直接相手の頭を触れねば読む事ができない。ウインドとダークHの一件も同じである。
デュネセア一族は、言葉巧みに場を支配し、その種族的な力で誘惑していくようだ。見事な力である。
偽デュヴィジェ「・・・どうした? ありとあらゆる手立ては可能だ。我々に不可能などない。」
ミスT「・・・そうかい。ならば1つ、叶えて欲しいものがある・・・。」
偽デュヴィジェの波動からか、それが俺に悪影響を及ぼしたのか。頭に違和感を感じつつ、俺は1つの揺さ振りを掛けてみる。ただ、頭の中には漠然としていて、それが何なのかは不明にはなる。だが、偽デュヴィジェの言動に腹が立ってきたのもまた事実か・・・。
偽デュヴィジェ「では如何様にも挙げるがよい。」
ミスT「・・・今から17年前に、不慮の逝去を遂げた少女を生き返らせて欲しい。」
偽デュヴィジェ「む・・・死者の復活か・・・。」
俺の言葉に声を詰まらせる。と同時に、傍らにいるヘシュナが俺の手を握ってきた。恐らく、曖昧な記憶をハッキリさせるためだろう。今のヘシュナなら可能だ。
ミスT「どうした? 何でも願いを叶えてくれるのだろう? それとも、流石のお前さんでも、既に失った生命体の復活は無理なのか?」
偽デュヴィジェ「ぐぐっ・・・。」
俺の言葉に次の答えが出て来ない。と同時に、偽デュヴィジェ自身も今現在対峙している、理不尽・不条理な概念に、俺自身も心の底から腹が立ってきた。
ミスT「腐っても、デュネセア一族の頭だろう。大宇宙の理からして、生命体の儚さから至る偉大さを痛感しているはずだ。ましてや、俺達の最大の願望、死者の復活。ファンタジーゲームでない限り有り得ない。お前さんが行っている、等価交換染みた誘惑行為は愚の骨頂だ。恥を知れ、阿呆っ!」
偽デュヴィジェ「・・・・・。」
俺の言動が激しさを増して来るのと同時に、傍らにいるヘシュナが全身で抱きかかえて抑えてくれている。第3者視点から見れば、今の俺は完全に暴走状態に陥っている。しかもそれが、偽デュヴィジェが言動などにより、絶対に触れてはならない部分に触れたからだ。
偽デュヴィジェ「・・・貴殿の課題は達成不可能、これが返答だ。」
ミスT「・・・“ありとあらゆる手立ては可能”と言ったのは嘘だった訳か。もう一度、生命体や生命自体の根幹概念を最初から学び直して来い。今のお前さんの立ち位置は、俺達や地球人総意に全4大宇宙種族にすら至らない。その無知故の傲慢さ、眼前の幸せだけを叶えようとする儚さを、ゼロから学び直して来い!」
右手に持つ携帯方天戟を偽デュヴィジェに向ける。そして、左手には先程挙がった最強の力の1つを繰り出した。ルビナとヘシュナが直伝の電撃の概念、そこに殺気と闘気の心当ての応用による増幅版。まるで魔法の如く、左手にスパークを繰り広げる電撃の渦が表れる。
偽デュヴィジェ「・・・宣戦布告と取って良いのだな・・・。」
ミスT「はぁ・・・阿呆が。根本的に、一体誰が全ての淵源なのか、それも全部学び直せ。今の俺が望むのは宣戦布告ではなく、お前さんが学び直し成長した姿だが。潔く撤収する事が最大の行動じゃないのか。」
偽デュヴィジェ「・・・何時か、必ず後悔させてやろう・・・。」
ミスT「・・・帰りなさい、お馬鹿さん・・・。」
左手の電撃の渦を更に拡大させ、物凄い球体を作り出す。そして、そこに込められた殺気と闘気を目の当たりにし、流石の偽デュヴィジェも顔を青褪めだしている。しかし、かつて悪役を担っていたヘシュナと同じく、その表情は物凄い怒りに満ち溢れていた。
暫くの間対峙していると、サッと消えていく偽デュヴィジェ達。これも転送装置による移動になる。去った先は分からないが、頭上で静かに鎮座していた宇宙船が稼動を開始。そのまま上空へと去っていく。
そう、ヘシュナの宇宙船は転送装置での去り方を何度かしていた。だが、今の宇宙船は自然な動きで去る姿を見せている。いや、見せ付けていると言った方がいい。今の対峙で相当な楔を打ったつもりだが、はたしてどう出るかが見物だわ。
完全に去って行くまで、俺は大宇宙船を凝視し続けた。
地球上の大宇宙船群は、一度成層圏へと離脱したようである。今もデュリシラが持参したノートパソコンで世上を調査している。一触即発の状態だったが、とりあえずは退けた感じになるだろう。
ミツキ「電撃ビリビリは脅威わぅ。」
ナツミA「もはや魔法の概念よねぇ。」
ナツミツキ姉妹も、ペンダント効果をフル発揮させて、右手に同じ様な電撃を繰り広げている。しかし、俺が先程繰り広げた凄まじい力には至らない。それだけ、俺の怒りから来る凄まじいものだったという事だろう。
スミエ「・・・Tちゃん、後日お見せしたいものがあります。」
ミスT「例の少女のデータか何かか?」
スミエ「ええ、彼女が自身の姿を記録してくれと仰っていましたので。ただそれにより、Tちゃんにどの様な変化が訪れるかは不明ですが・・・。」
ミスT「大丈夫よ、有難く拝見させて頂きます。」
宇宙戦艦の甲板に座り込み、一服しながら空を眺める。本来なら記憶喪失の手前、過去の事は全く以て把握できない。しかし、あの時ヘシュナの補佐や偽デュヴィジェの影響からか、例の少女の事が脳裏に浮かんできた。その後はあの激昂による対峙である。
ミスT「・・・すまんな、完全に己を見失っての激昂状態だったわ。」
ヘシュナ「そんな事はなかったと思いますよ。現に貴方が、まるでナレーターの如く、冷静に己を見ていた部分を感じました。まあ、あの場合は私でも同じく激昂に入りますけど。」
シューム「本当に君は強いわよね。これらペンダント効果により、今では君の胸中全てが手に取る様に分かってくる。その中でのあの激昂状態、私だったら我を忘れているわ。」
ナツミYU「ですねぇ。」
傍らに座り込み、同じく一服をしだすシュームとナツミYU。何時にも増して、感心そうに俺を見つめてくる。精神面の強さを見れたからだろう。まあ俺としては、完全に暴走状態に陥っていたのは確かだが。
ミスT「恩師、今のには歴史は繰り返すの概念は当てはまってませんよね。」
シルフィア「気質的には同じ感じだったけど、根本的に掘り返せば相手に原因があるからね。今回は当てはまっていない感じよ。」
エリシェ「つまり、何時もは当てはまるような愚行をしていると。」
シルフィア「この美男子・・・今は美女子こと美丈夫だけど、彼を見れば一目瞭然でしょうに。」
溜め息を付きつつ、ミツキ持参の茶菓子を漁るシルフィア。彼女には、俺のこうした人間的弱さを何度も見せてきた。エリシェとラフィナに置き換えるなら、毎度ながらの自己嫌悪による、自分自身との対峙の質疑応答だ。
ミスT「昔からそうよ、俺の悪いクセの1つになる。まあでも、ああいった理不尽・不条理な対応には、徹底抗戦するに限る。人の弱みに付け込む時点で論外だわ。」
ナデュミラ「フフッ、本当に小父様らしいですね。」
シェレミナ「偽者であっても、母の気質は絶対に引かない一念を持っていますし。それを退かせるには、呆れさせるか怒らせるかですから。」
ミスT「お前さん達には、迷惑を掛けさせちまってるわ。本当に申し訳ない。」
カルディヌ「気にしないで下さい。ある意味、良い気付けの1つですから。」
ナシュレア「本当ですよね。改めて、生命体が何たるかを伺い知れましたし。」
デュネイス「小父様の手腕には脱帽ですよ。」
偽者であれ、デュヴィジェの存在は5姉妹の母親。先の対峙は、言わば彼女達の母親を貶した事にも帰結する。5人にその事を詫びると、気にするなと笑顔を浮かべてくる。
第2話・3へ続く。
ミスターT君の生き様の淵源たる、逝去した少女。既に探索者側では登場していますが、警護者側ではまだ未登場となります。その彼女が全ての礎とも。絶対不動の原点回帰を持つ者は、何かしらの譲れない強い思いがあるものです。リアルでも、それを痛感させられます。




