第5話 カーチェイス2(キャラ名版)
ミスターT「これいいな・・・。」
ディーラーに現ランボルギーニを引き渡し、色々なスーパーカーを物色するナツミYU。俺も付き合ったのだが、その中で目に止まった車種がある。
ナツミYU「パガーニ・ウアイラね。可変フラップ搭載という航空機さながらの車種よ。安定性ではランボルギーニを超えるとも言われてるけど。」
ミスターT「・・・価格もぶっ飛んでるわ・・・。」
提示価格を見て驚愕した。日本円にして1億2千万とはこれいかに・・・。ランボルギーニでさえここまで高額ではない。聞く所によると、職人さんによるハンドメイド仕様との事だ。だからこの価格なのだろう。
ミスターT「グローブライナーやハーレーが安く思えてくる・・・。」
ナツミYU「車両の車種を超えるとそうよね。でもランクではグローブライナーもハーレーも、同型車種の中では全く同じ高級車扱いだから。ムルシエラゴもウアイラもハーレーとほぼ同系列よ。」
ミスターT「ハイパーカーという流れだの。」
ナツミYU「ウアイラもスーパーカーじゃなくハイパーカー扱いだからね。」
Ta152H時と同じく、ベストから手袋を出して着用。それで目の前のウアイラを触らせて貰った。車に関しては疎い俺でも、目の前の芸術品の良さは痛感できる。見事な仕上がりだ。
ミスターT「で、どうする。このウアイラにするのか?」
ナツミYU「そんなまさか。前と同じムルシエラゴにするわよ。この車種に愛着があって、今までも何度か乗り替えているから。」
不調子のランボルギーニ・ムルシエラゴはまだ1代目との事。約6年乗り続けているとは先刻窺ったので、それからして相当愛着があるようだ。このウアイラも魅力的な車両だが、それでもムルシエラゴを選ぶ所に執念を感じずにはいられない。
ミスターT「分かった。全部終わったら、事務所に請求書を回してくれ。」
ナツミYU「はぁ・・・。」
どうしても買うのかと呆れ気味のナツミYU。そんな彼女を尻目に、その後もウアイラの物色を続けた。この車体、まるでTa152Hの様に洗練されているわ。これなら彼女のような愛好家にスーパーカーが愛され続けられる訳だ。
ちなみにナツミYUがスーパーカーへ執着しだした理由が伺えた。何でも偶々見ていた番組にて、ムルシエラゴを駆使したカーチェイスに憧れたのだとか。こちらの理由の方が呆れるしかない。
まあムルシエラゴの最高速度は342kmとの事。この車種でカーチェイスをしようものなら、相手へ速攻追い付く事は間違いないか。ちなみに物色中のウアイラは何と370kmという。
更には400km以上を叩き出す凄まじいスーパーカーもといハイパーカーがあるそうだ。それはブガッティ・ヴェイロンというそうだ。価格も超絶的にぶっ飛んでおり、日本円で何と2億6900万との事である。しかもこれ、厳重な審査が通らなければ買えないらしい。
これから考えると、まだムルシエラゴやウアイラの方が手頃で買えそうだ。ヴェイロンの存在は、史上最強のハイパーカーと言える。それに今では車自体が航空機に近くなっていると言えるわな。400km以上とは・・・。
これ、この3台でカーチェイスなんかしたらとんでもない事になるわ・・・。
ディーラーのオーナーさんが俺がウアイラを丹念に物色しているのに気付き、色々と声を掛けて来てくれている。それは販売目的ではなく、純粋にこの車が好きなのだとか。俺がこの車種に見せる情熱を感じ、話さずにはいられなかったようである。
確かに俺もTa152Hになると、オーナーさんと同じ意味合いに至る。その良さを周りに語りたくなるのは、愛好家故の性であろうな。
今もウアイラに掛けて色々と会話をしている俺の姿に、我が事の如く嬉しがるナツミYU。推測だが、スーパーカーやハイパーカーに対しての話題が合う人物がいなかったのだろう。俺がこれらに興味を示しだした事で、新たな共通の話題が得られたという喜びだろうな。
幸いにも地上なら乗り物に関しての怖さは一切ない。また乗り物全般に対しての酔いも全くない。高所恐怖症と水恐怖症が災いして、関連する乗り物が苦手になっているだけである。
案外、彼女に逆に買わされそうな気がしてならない。まあそれだけ、このウアイラは相当な魅力を感じる。スーパーカー・ハイパーカーという次元を超えた、職人技が成せた芸術品故の力だろうな。
新たなムルシエラゴの納車を予約し、電車と徒歩で喫茶店に戻った。車両で戻ると思っていた面々は呆気に取られている。また俺がスーパーカーやハイパーカーに興味を引かれた事にエラい驚いていた。
ちなみにシュームはハーレー一筋との事だ。車は乗れれば良いという解釈ゆえに、ここはナツミYUとは合わないか。ただハーレーという共通の話題があるため、問題はなさそうだ。
ミツキは何とバスが好きだという。しかも路面バスだとの事。ナツミAも同じく路面バスに魅力を感じているようだ。二種免許があるため、何れ同バスを入手したいとも言っていた。
この姉妹、何から何まで逸脱しているわ・・・。まあ俺も武骨な車両派なので、路面バスは大歓迎なクチではある。それを言ったらナツミYUとシュームに呆れられたが・・・。
ミツキ「おおぅ、面白いニュースやってるわぅよ。」
ミスターT「どした?」
数日後。納車が今日だとの事で、再びディーラーに赴く事になった。そんな中、ミツキがテレビを指し示している。流れてくる映像は、高級車ばかりを狙った窃盗事件との事だ。
ミツキ「裏で売り捌く売人わぅかね。」
ミスターT「分からんが、納車前に見たくない内容だな。」
ナツミYU「その時は奪い返すまでよ。」
ノースリーブにミニスカートという出で立ちのナツミYU。両グローブを腰のポシェットにしまう姿は、ワイルドウーマンさながらである。
ミツキ「ウッシッシッ! 魅力全開わぅね♪」
ナツミYU「茶化さないで下さい・・・。」
ナツミA「対するマスターは武骨過ぎるけど。」
俺の出で立ちを見て溜め息を付く一同。ズボン・ロング・ベスト・コート、そして頭の覆面と変わりない。夏場は薄着を着用するが、基本的にこのスタイルは全く変えていない。
シューム「彼女を襲わないようにね。」
ミスターT「言ってろ、じゃじゃ馬娘め・・・。」
厨房からの茶化しで赤面のナツミYU。俺は呆れ顔で返すも、ニヤニヤしているのが何とも言えないシューム。ただ面白いのが、お互いにお互いを披露しようとしている点だろうか。恋路に突っ走るなら、お互いに奪い合いな感じが出るだろう。今の2人は全く異なる。
また恩師との一件後、この2人は若くなった気がする。今までは俺より年齢や経験が上であったからか、姉的雰囲気が色濃く出ていた。しかし今はまるで妹の様な感じで接してくる。むしろミツキとナツミAの方がよっぽど姉的雰囲気である。
案外、ナツミYUとシュームは無理していたのだろう。それが自然体の極みである恩師に出会って、形作っていた固定概念を崩されたと取れる。逆に恩師と同じ自然体の極みのミツキとナツミAがその生き様に触れて、より一層大人化した感じだろうな。
時として子供が大人のような感じがする時がある。シュームの娘リュリアや、ナツミYUの双子の娘アサミとアユミ。この2人がエラい大人な感じがするのは、正に自然体でいるからなのだろう。
子供と大人の境とは何処なのだろうかと思うが、多分そんなの存在しないのだろうな。
ちなみにディーラーまでは前回同様、徒歩と電車を駆使して赴く事になる。帰りは車で戻る事になるからだ。
新車のランボルギーニ・ムルシエラゴと対面できる事に、エラい喜びを示すナツミYU。まるで幼子のような感じがしてならない。何ともまあ。
第5話・3へ続く。




