第11話 最終話・警護者の理1(通常版)
ハワイでのバカンスを終えた俺達は、再び日本へと戻ってきた。どの面々も休息を望んではいたが、結局は警護者の道からは避けられない様子である。生粋の警護者とも言えるだろう。それに世上はまだまだ不安定な部分が多い。それらを解決していくのが警護者そのものだ。今後も俺達の戦いは続いていく。
そして恒例ながらのコミックマーケットへの参加もとい参戦である。粗方片付いた後に同日が巡って来るため、毎度ながらの地域への友好拡大となる。特に生粋の戦闘集団たる警護者がコスプレで参加とあり、今では一種の風物詩と化していた。
ただ前回と前々回は無人兵器軍団の襲来があったため、今回も不測の事態を想定している。駐車場にトレーラーを配置し、そのコンテナ内部に各種武装を保管した。完全武装状態でのコミケの参加は、俺達警護者の一種のステータスになりそうだわ。
「決まりました! 特大のチョークスラム! 相手選手は完全にダウンしています!」
特設リングの外側は即席実況席で吼えるメルア。何でも昔はアマチュアながらも、レスラーをやっていた経緯があったとか。ナツミYUの生き様に呼応したのは単なる偶然ではないのは明白だろう。
「お祭り騒ぎにしやがって・・・。」
「まあまあ、そう仰らずに。以前ミツキ様が挙げていた、コミケ会場でのプロレス試合。なかなか良い感じじゃないですか。」
「警護者は地域行事に参加してこそ、非現実の世界から脱する事ができますし。それに今後はこの活動が多くなると思います。粗方のデカい軍勢は叩き潰した感じですからね。」
「最後の最後で襲撃とか参るがね。」
先も述べたが、最後の最後での襲撃は通例事であった。今回もそれを期待して参加されているヲタクの方々だが、流石に今回はそれはないと思いたい。
この警護者達によるプロレス大会は、ヲタクの方々からは大絶賛されている。特に俺達がコスプレの状態で肉弾戦を演じるため大盛り上がりだ。それに各獲物を使わない状態が俺達の真骨頂とも言える。つまり今この瞬間こそが本当の警護者たる姿なのだ。
過去に地元での襲撃や愚者共の戦いもそうだったが、連中は致死率が高い獲物に頼り過ぎていた。それ故に獲物を使わない場合は話にならないぐらい弱々しい。対して俺達は各獲物を使わない方が全力で戦う事ができる。不殺の精神を貫いている故に自制しているとも言えた。
獲物を使わない方が本気を出せる警護者も問題ありだが、それが俺達の元来の戦闘スタイルである。そして叩き潰すという部分からして、この生き様は俺達に一番性に合う感じだ。
「その後の世界情勢はどんな按配なんだ?」
「原始時代に戻ったかの様な感じですよ。しかし悪党共をほぼ全て駆逐したため、至って穏やかな感じですけど。」
「軍事力は平行線を行くも、核兵器・細菌兵器・生物兵器は全て消滅させましたからね。以後は皆様方がそれぞれで管理運営していくしかありませんけど。」
「その部分は烏滸がましいですが、日本が代表で各国家のオブザーバーを担当しますよ。既にこれらへの対策は数多くの襲撃事変を踏まえ、それ相応の経験を得ていますし。」
「それに各国家にも私達の同胞が活動しています。今後も水面下での悪行は全て叩き潰して行きますよ。」
大企業連合の総帥たるエリシェとラフィナ。そしてその2人の身辺警護を担当するカラセアとナセリス。4人ともコスプレ状態だが、その気迫は流石は一同を纏め上げる力を醸し出している。特にカラセアとナセリスは漸く諸々の流れに順応しだしてきた感じだ。
「あの偽者共ですら悪党共を纏め上げていた感じだったしな。オリジナルのお前さん達はそれ以上の力を持っているのが痛感できる。」
「我が事ながらの出来事で恐縮でしたが本当ですよ。それが全て丸く収められた事には、心から安心しています。」
「ミュセナ様が最後の最後で致命の一撃を放たれましたし。まさか真の巨悪を残し続け、何が本当の事なのかを示されるとは。」
「まあねぇ。」
カラセアが挙げるミュセナの一撃。過去の悪党共の記憶を消さず、態と待機状態にさせて放出した感じだった。法服総裁達ですら、連中を見て真の巨悪を知ったのである。己の過ちを知るには、それ以上の巨悪を以て制するとも言える。
「悪の概念は思想であり人ではありません。あの愚物ですら思想の歪みで悪党に至った。宇宙種族の正眼に照らし合わせれば、地球人の浅はかな野望や欲望は子供の戯言レベルそのものですよ。」
「本当にそう思います。」
エリシェの発言は格言的な内容である。もし諸々の戦いが俺達だけだったら、対処不可能なレベルにまで至っていただろう。特に核兵器・細菌兵器・生物兵器は対処し辛い獲物群だ。それを4大宇宙種族は意図も簡単に無力化し消滅すらもできる。俺達がどれだけ背伸びをしたとしても、絶対に手が届くものではない。
「お前さん達の先駆者が、各種テクノロジーに生命力の理を施したのは正解だったわ。しかも善悪判断の概念をも兼ね備えている。悪党共は持てたとしても、使う事はおろか解析すら不可能な業物だしな。」
「確かに。これらは私達が生まれる遥か前から存在していたので、当時からこうした流れを予見して施したのでしょうね。」
「当時から邪な心を持つ連中がいたという部分にも驚きですけど。」
「宇宙種族のテクノロジーは、何時如何なる時でも羨望の眼差しな感じだったのですね。」
何ともまあ。当時の名も種族も知らない連中は、彼ら宇宙種族達を利用しようと画策をしていたのだろう。今となっては窺い知る事はできないが、今現在の各種テクノロジーに施された力を見れば十分肯ける。力は何なのかという事を痛感せざろう得ない。
「俺ももっと修行をしないと張り合いがないわな。」
「何を仰います。そこまで他者に寄り添い共助の理を貫く姿勢、私達の方が学ぶべき概念そのものですよ。」
「本当ですよね。それにその概念は貴方だけではない。エリシェ様やラフィナ様もしかり、警護者全体そのものに根付いている理とも。その力を持つ者達が異体同心の理を経て集い合っている。それが大企業連合や躯屡聖堕フリーランスと、本当にお見事ですよ。」
ナセリスとカラセアの言葉に深々と頭を下げた。カラセアは俺達と同じ人間ではあるが、その精神的支柱は盟友ナセリスと同じ宇宙種族そのものだ。ミツキやナツミAもここに回帰している。彼らが監視の目を光らせてくれれば、今の人類は間違った方向に進む事は全く以て皆無である。
「分かった。俺は俺で有り続けるのみだな。」
「そうですよ、自然体のままでよいのです。」
「まあ・・・ミツキ様の生き様には、背伸びをしても届きませんけど。」
エリシェが語り見る先には、リング上で大暴れしているミツキの姿がいた。今も某県で有名なご当地キャラたる“黒い熊の姿”の着ぐるみを着用している。顔の部分には穴が開いており、そこから覗かせる顔は実に清々しい表情だ。
「はぁ・・・。」
「フフッ、本当に溜め息が出ますよね。溜め息が出るぐらい魅入られてしまう。」
「純然たる生き様を貫く故に、そこに私利私欲は全く以て皆無と。だから各種ペンダント効果がフルパワーで発揮される。素晴らしい女傑ですよ。」
「変人極まりなし、だな。」
もはや変人や変態の概念を超越しているとも言える。地球人の言葉では言い表せられない、生命の次元の要因とも言えるだろう。それ即ち宇宙種族そのものとも言える。
「・・・ハハッ、ミツキに教えられたわ。俺達も宇宙種族だったんだわな。」
「何を今更な発言ですけどね。私達は太陽系第3惑星の地球に住む宇宙人ですし。」
「地球人的解釈で見るから、ナセリス様方を宇宙種族と見てしまう。私達も十分宇宙人と言えますし。」
「宇宙種族だと宇宙の種族となるので、素直に生命体と言い切るべきでしょうね。生命体には国籍も惑星籍も宇宙籍もありません。生命体と言えば、何処でも通用しますよ。」
「・・・アレはワンコ生命体、だな。」
今も暴れるミツキの姿を見て、ボソッと呟いたそれを聞いた周りは大爆笑しだした。確かに過去にミツキが言った通り、ワンコ種族の方が意味合い的には合う。それ即ち生命体そのものだと言い切れるしな。概念を超越した怖ろしいまでのものだろう。
「さて、サラとセラの喫茶ブースでも行ってくるかの。」
「私もお供します。」
「私達は色々な出品ブースを見て回ってきますね。」
「迷子になりそうな気がしますが。」
「あ、では私も同伴致しますよ。こう見えてもコミケ造詣には親しいので。」
コミケと聞くと目の色が変わるラフィナ。何でもエリシェも呆れるほどのコスプレイヤーとの事である。今も着用しているのは、俺が分からない作品の代物だ。流石のエリシェもここまで詳しくないとの事である。
しかしまあ、身内の多岐多様に渡る趣味実用は怖ろしいまでだわ。それらが息抜きとなり、本命の行動の起爆剤に至っているのだから。特にミツキやナツミAなどが顕著で、ここぞとばかりに大暴れしている。
更には大企業連合と躯屡聖堕フリーランスの面々にも、ラフィナのようなコミケなどの造詣に親しい人物が数多くいるという。各方面での催しではコスプレしてまで出ているらしい。
シュームが言った通り、俺達はアキバに再就職した方が活路を見出せそうである・・・。
第11話・2へ続く。
「黒い熊の姿の着ぐるみ」、くまモンさんですU≧∞≦U 流石に県名とキャラ名を挙げるのはマズかったので、総称(?)としての表現ですm(_ _)m でも、可愛いキャラは大歓迎ですにゃ><b




