第5話 カーチェイス1(キャラ名版)
ブラジャー作戦ことデュリシラ護送の依頼。あれで俺達の名が知れ渡ったようで、あちらこちらに引っ張りだこにされる。というかブラジャー作戦で通るのが非常に下賤が・・・。
ともあれ、かなり難しい作戦をこなせた部分は素直に感謝したい。咄嗟の判断で無事解決という展開は、俺でも呆れるぐらいである。
ちなみに都心の暗殺者ことデュリシラは、ほとぼりが冷めるまで海外で生活するという。三島ジェネラルカンパニーかシェヴィーナ財団などの専属警護者で過ごした方がいいだろう。
あの超軍団なら傭兵も規律正しい面々が揃っている。カムフラージュには打って付けだ。それに10人もの名うての警護者が揃っているのだ、恐れるに足らずとはこの事だわ。
更に俺の活躍でエリシェとラフィナが何かに目覚めたようだ。今は9人からのしっかりとした戦闘訓練を受けているという。間違いなく警護者の道に進み出しているのだが、大丈夫かと心配になってくる。まあ周りはスペシャリストが大勢いる。向こうは向こうで任せよう。
恩師シルフィアは今も海外を飛び回っているとの事。最強の警護者故に、その腕を買われているのは言うまでもない。またブラジャー作戦で使ったハリアーⅡが大変気に入ったらしく、専用の機体を自腹で購入したという。何ともまあ・・・。
というか何時の間に戦闘機の操縦ライセンスを取得したのやら。まあ俺も動かせなくはないのだが、高所恐怖症の問題で操縦は無理だろう・・・。
ミツキ「これをこうすれば・・・OKわぅね!」
ナツミYU「へぇ~・・・凄いですね。」
喫茶店隅のカウンターで資料に目を通している。その背面ではゲーム筐体で遊ぶ2人だ。ナツミAほどの腕前はないものの、ミツキも相当な腕前を持つゲーマーである。その腕前に感嘆しているナツミYUだった。
ナツミA「今度、新しい筐体でも導入しましょうか。」
ミスターT「そのツテがあるなら任せるよ。」
ナツミA「フフッ、お任せを。」
不気味なまでに瞳を輝かせる彼女。ナツミAの本業はゲームクリエイター。コンピューター関連の博識から、その道に走ったというのだ。これでも国内最強の不動産業の社長令嬢だというのにな・・・。
そう言えば先日、恩師シルフィアも国内最強のホテル運営グループ会社の社長令嬢と言っていた。しかしその在り来たりな生活に嫌気が差して、自らゲーマーとしての道を開拓しだしたとの事だ。しかし、後の流れは警護者への道である。
ナツミAもシルフィアと殆ど同じらしく、身内を困らせるほどのゲーマー魂炸裂だったとの事だ。そこに集い会ったのがミツキやナツミツキ四天王という。本当に不思議な縁である。
そのゲーマー関連のスキルが、今ではスナイパーライフルを使わせたら右に出る者がいないとされる程の腕前に至るとは。ミツキも彼女に影響されて、同じくゲーマー経由でのスキルを発揮している。マグナムを二丁拳銃で扱うスタイルは、ゲーム内のキャラクターを模したものだとか。
また四天王の方もゲーマー経由で今のスキルを獲得したとの事。実際の重火器を扱えるまでの修行はウインドとダークHが担っている。まあ彼らは格闘技馬鹿とも言えるほどプロレスが大好きなため、重火器よりも肉弾戦の方が遥かに強いだろうな。
シューム「今度の依頼とかは分かるの?」
ミスターT「いや、今の所はないの。今見ているのは、今までの依頼の資料だが。」
お客さんの注文を完成させるシューム。それをナツミAがトレイに乗せて運んでいく。今はこの光景を良く見るわ。その中で俺の行動を気にして語り掛けてきた。
ミスターT「まあ資料といっても、どれも報酬が記載されたものだけどね。」
休憩も兼ねて厨房から出てくるシューム。今度は俺が厨房を担当する事にした。その際、目視していた資料を彼女に手渡した。カウンターに座りながらそれに目を通しだすが、直後に硬直するのが何とも言えない。
シューム「・・・土地含めマンション数棟丸々買えて、お釣りが来るような金額じゃない・・・。」
ミスターT「最低限でいいって言ったんだけどね。」
ナツミAから新たなオーダーを言われ、急ぎ調理に取り掛かる。こう見えても炊事は得意であり、調理師免許もしっかり取得済みだ。その中でのシュームのボヤキ。確かに記載されていた金額には度肝を抜かれている。
ナツミYU「エリシェさん方が仰るには、そのぐらいのお礼はさせて欲しいとの事でしたよ。」
ミスターT「命には変えられないのにな。」
俺が不殺生を貫いているのは、今正に語った言葉通りのものだ。相手が極悪人であっても、大切な命には変わりない。ただ犯罪に至ったのだから、致死に至らない程度の報いはしっかり受けて貰うが。それでも俺の目が黒いうちは、絶対に死者など出してなるものか。
ミツキ「Tちゃんは人命尊重を最優先に動いているわぅからね。それは正にプライスレスわぅ。」
ナツミA「ただ最低限の資金は欲しいわね。喫茶店の運営や特殊兵装の開発も馬鹿にならないし。」
ミスターT「ここの地下の改造費も相当出たからねぇ。」
四天王が悪戦苦闘している特殊兵装開発工場は、ここ喫茶店の地下に増設した形に至る。既に出来上がっている建物の下に地下空間を2階も構築したのだ。ここ周辺の地価からして、相当の金額が飛んでいったが。
ナツミYU「お望みでしたら、私からも資金提供致しますよ。個人兵装の開発と恩恵には大変お世話になっていますから。」
ミスターT「ありがとね。まあ今は何とかなってるから、何れ建て替えの時は色々と頼むよ。」
シューム「ここの規模だと、相当デカい喫茶店が立ちそうよね。」
カウンターで一服しながら語るシューム。既に何度か建て替えの案は出ているが、実際に動くとなると別の店舗などが必要になってくる。資金はあっても動けないのが現状だろう。
ミツキ「それ以上に、Tちゃんにはご褒美がありそうわぅけどね。」
ミスターT「・・・こちらの女傑2人か。」
ミツキがニヤニヤしながら語るそれは、ナツミYUとシュームを指し示している。顔を赤くする両者だが、何時でもどうぞという雰囲気を出すのが何とも言えない。
ナツミA「ご褒美も何も、自然的な成り行きな感じがするけど。」
ミツキ「若さ故の過ちわぅね。」
ミスターT「う~む・・・。」
2人の思いは痛いほど伝わってくる。ここまで思われる事自体が、本当に喜ばしいものだ。しかし俺には2人を癒せるかどうか不安なのが現状だが・・・。
ミツキ「直感キュピーンわぅ! お2人を支えられるかどうか不安わぅね?」
ミスターT「お前のそれは凄いわな・・・。」
ミツキ「図星わぅ~♪」
的中したと喜ぶミツキ。それに呆れるも笑うナツミA。俺の方は遣る瀬無い気分だが、実際には2人の考えに思い悩まされる。
ナツミYUとシュームを癒すという部分は全く問題ない。2人を娶るとあっても、国外なら一夫多妻は認められている。そこに赴けば済む事だ。一応だが・・・。
ただ俺が懸念するのは、2人の心の隙間を埋められる存在になれるかどうかの方だ。心中に抱く思いは相当大きいものだと感じる。
本当に2人を支えるのなら、生半可な考えでは接したくない。心から癒されたと感じれるような状態にまで至りたいもの。俺にはその役が担えるのかどうか・・・。
ミツキ「私はナツミYUさんとシュームさんの深層の痛みは理解できていません。理解しようにも、半端じゃない痛みに潰されると思います。貴方はそこに挑もうとしているのですから、思い悩むのは当然だと思いますよ。」
ミスターT「中途半端な考えでは接したくない。かといって今の俺には支えられるかどうかも不安になっちまう。」
ナツミA「それでいいと思いますよ。最初から答えがある道など絶対に在り得ません。手探り状態で進むのが人生というもの。強いては、それこそが夫婦というものじゃないですかね。」
ミスターT「夫婦か・・・。」
ナツミYUとシュームが究極的に望む形は、間違いなく夫婦の関係だろう。今は男女間の間柄で接したいという一念が強いだろうけど。しかし俺の職業柄、何時死ぬかも分からない。パートナーになったとしても、再び未亡人には絶対にさせたくない。
ナツミYU「ナツミAさんが仰る通り、先輩や私の望む究極の形は正にそれです。しかしマスターが仰る通り、不安な要素が数多くあるのも現状。」
シューム「何振り構わず接する方が幸せなのかも知れないわね。でもそれで君が思い悩んでしまうのなら、結果的に不幸にしてしまう。それに君が思ってくれたように、私達の職業から何時死ぬかも分からない。」
心中読みには驚いたが、2人が言う事は正に自分の心境そのものだった。普通の生活をしているのなら、その道を我武者羅に突き進む事もできる。しかし現状はそれが許されない。
ミスターT「・・・それでも、俺はこの道を貫き続ける。テメェが決めた生き様だ。途中で曲げるような無様な醜態など曝したくない。貫けないような生き様など、最初から行わなければいいわな。」
シューム「フフッ、そこも全く同意見ね。今となってはこの道以外に生き様は考えられない。ならば最後まで貫き通す以外に道はないわ。」
ナツミYU「皮肉ですよね。己の幸せを得ようとすると、それ以上に他者の幸せを守ろうとする。それが警護者としての使命なのでしょうね。」
3人同時に一服しだす。それを知ると笑ってしまった。何か考えに更けようとすると、この一服をするのは共通事項のようだ。俺達は本当に似た者同士である。
ミツキ「まあ今は青春を横臥しつつ、依頼をこなしていくわぅね。人助けに繋がっていくわぅし。」
ナツミA「裏稼業で人助けとはね。用は生き様の在り方よね。」
ミツキ「わぅわぅ。」
一区切り着いたと判断したのか、再びゲームを興じるミツキ。ナツミAの方は俺に代わって厨房を担当してくれている。俺もナツミYUとシュームと共に、カウンターに座って物思いに更けた。
警護者は殺人的職業になりかねない。護衛対象を守るためなら、如何なる手段を投じても構わない。それが俺達の業界の暗黙の掟である。それを捻じ曲げているのが俺達だからな。俺の不殺生の生き様は異端児そのものだろう。
しかし俺達の生き様に感化されている警護者が多くいるのも確かである。それだけ今までが殺伐としてきた証拠だ。その中で偶々変革者が俺達であったというだけの話である。
それにこの警護者は技術職でもある。戦闘技術が強ければ、不殺生の生き様も十分貫いていける。むしろ不殺生を貫く事で、より一層戦闘技術が向上されてもいる。今の警護者世界のレベルは昔よりも遥かに高いと言われるぐらいだ。
更には活人技である。これは格闘術になるが、生かして制する戦術になる。武器を使わない肉弾戦なら、致死に至るのは非常に希だ。またこの方が爽快感も相まって充実な依頼を達成できると絶賛されてもいる。
今後の警護者の世界は更に変わっていくだろう。活人技たる格闘術による肉弾戦。これが主体になっていくのは言うまでもない。個人兵装はあくまで相手を無力化させるための手段に過ぎないのだから。
ナツミYU「うーん、少しレスポンスが下がってるわね。」
ミスターT「音だけで分かるのか・・・。」
都心を疾走するランボルギーニ、ナツミYUの愛車である。つい最近カスタマイズしたとの事で、その納車に付き合っている。かれこれ数年は乗っているという愛車中の愛車との事だ。
ナツミYU「君と同じ28の時に買ったから、もう6年になるわね。」
ミスターT「ワイルドウーマンさながらだな。」
彼女が指摘した不安要素を察知した。車に関して無知の俺でも、確かに変な違和感を感じる。経年劣化も考えられるが、それだけ乗り回している証拠だろう。
ミスターT「・・・エンジン周りか、それともサスペンションか。」
ナツミYU「ほほぉ、流石ね。私もその辺りを疑ってるのよ。」
ミスターT「搭乗者の命に関わるからねぇ・・・。」
難しい表情の彼女。それからして相当のガタが来ている様子だ。ただ長年苦楽を共にした愛車を手放すのは辛いだろう。相当お気に入りの車両のようだ。
ミスターT「そうだな・・・例の報酬金で同型車をプレゼントするか。」
ナツミYU「え・・そんな、悪いわよ。」
カウンターで見た報酬金の金額。シュームが言うように、マンション数部屋ではなく数棟を購入してお釣りが来るほどのもの。しかも土地付きである。ランボルギーニを購入するのも全く問題ない。
ミスターT「運が悪かったの、お嬢様。俺は一度決めたら徹底的に走るクチでね。今から同型車を見に行きますかな。」
ナツミYU「は・・はぁ・・・。」
呆れ顔のナツミYUに笑ってしまう。ランボルギーニ自体、数千万はするという超高級車だ。それを簡単に購入できてしまう自分にも驚くしかないが。まあ今現在までの護衛依頼の報酬が相当な金額になっているため、これが罷り通るのが何とも言えない。
ちなみに俺はスーパーカーはあまり好きではない。グローブライナーなど武骨な車の方が好きで性分に合う。それにこちらの方がランボルギーニよりも遥かに低価格だからな。
ともあれ、言い出しっぺは自分である。ナツミYUには悪いが、ここは有限実行させて頂くとしよう。
その後、急遽目的地を変更。喫茶店に戻るはずが、今いたディーラーへと戻る事になる。実際にランボルギーニの調子がイマイチであり、それの報告もしなければならない。そこはナツミYUに任せるとして、資金の方は俺が持つ事にした。
俺の行動に相当焦っている彼女だが、どこか嬉しそうにするのが何とも言えない。これは俺が資金を出すという部分ではなく、俺と過ごせる時間ができたという部分だろう。何気ない行動でも彼女の癒しになれば幸いである。
第5話・2へ続く。




