第9話 諸悪の根源と絶対悪4(通常版)
「・・・俺を含めた人類は、お前さん達に恐れ多い事を繰り返しているわ。」
「嫉妬心を抱かせるという部分わぅね!」
「・・・まあそれもあるわ。」
俺の諸々を踏まえてのボヤきに、見事なボケを絡ませたツッコミを入れるミツキ。それに周りの女性陣は殺気に満ち溢れた目線を投げ付けて来た。まあ実際には十分当てはまるから反論のしようがない・・・。
「まあ冗談さておき、4大宇宙種族の方々を利用するという部分、ここは本当に恐れ多い感じですよね。私達では絶対に敵わない力を多々お持ちです。人類がどんなに背伸びをしても、絶対に届かない技術力に生命力と。」
「若輩ながらも述べさせて頂くとすれば、それはホンの一握りの愚物に過ぎません。貴方達は我が身を挺してまで、私達を支えてくれているではありませんか。愚物とは雲泥の差、むしろ貴方達の方が宇宙種族的概念をお持ちですよ。」
「本当にそう思います。純粋無垢の一念を抱き、己の執念と信念を貪欲なまで貫き通す。その生き様は私達も大いに見習うべきです。」
「お褒めのお言葉、感謝します。ですが、それでも同胞が皆さん方を利用してきたのは事実。この業は消える事はありません。もちろん、今後の生き様を通して汚名返上させて頂く決意ですけど。」
「俺も心から同調し同意するわ。罪は全部俺が被る。だからミツキは何時も通りの明るさでいてくれ。それこそが恩返しの戦いに帰結してくる。」
彼女の一念は、今までの流れを見て来ての罪悪感にも帰結してくる。それだけは絶対に抱かせたくない。ミツキは敬い・労い・慈しみの精神を根幹に据え、周りを鼓舞し激励し続ける存在でなければならない。姉のナツミAもしかりだ。ナツミツキ姉妹の生き様は、今の世上に必要な概念の1つである。
「はぁ・・・自己嫌悪では飽き足らず、ついには総意の罪悪感すら背負うと。」
「エリシェ君、不服かね?」
「そうは思いませんが・・・貴方が可哀想です。」
「総意の罪悪感すら背負うとなると、仕舞いには自分自身に押し潰されてしまいますよ。」
「俺1人だけなら、ね。でも今の俺は1人ではないわ。こうして慕ってくれる女傑達が数多くいてくれる。持ちつ持たれつ投げ飛ばすの概念がある限り、俺は今後も総意の矢面に立って突き進んで行くわ。」
時間が経てば経つほど、この一念と生き様は揺ぎ無いものに昇格していく感じだ。それだけ己に課せられた使命は大きい証拠である。そして一同の負担を可能な限り全部取り除きたい。心から思う存分暴れられるようにな。
「以前述べた通りではないですか。その一念こそが夫婦という概念に繋がると。シュームお母様が仰る夫婦とは別の、もっと純然たる一念の部分ですよ。」
「本当よね。今になってヘシュナちゃんが言おうとしていた部分を痛感できたわ。T君が全てを背負って突き進む姿に、父親的・母親的・パートナーとしての一念を感じずにはいられないし。」
「嫉妬心を抱くぐらいなら、同調して共闘すべきでしょうね。」
周りの女性陣が呆れながら俺を見つめてくる。しかしそこに殺気の目線はない。俺が本当に思っていた部分を汲んでくれたという一念だ。ヘシュナが言う通り、夫婦と言う概念を通り越してのものである。
「むしろ、わた達の方が男性わぅね! 逆にTちゃんが女性わぅよ。その包容力ある一念は、お母さんの胸の中で抱かれている安堵感に繋がるわぅし。」
「本当よね。今になって漸くその真髄を知れたのは、案外私達の目も節穴だったと言えるのかも知れない。私達の方こそ、もっと男性心を知らないとダメね。」
「何を仰る、そのままで良いんだよ。お前さん達の中にも男性心はしっかりある。ただ生粋の女性である故に、その部分が感付けないだけだと思う。俺はその真逆だろうし。だから性転換ペンダントを経て、その両方を学ぶ事ができた。カラセアとナセリスが一番顕著だと思う。」
「ハハッ、本当ですよ。長い間あの姿でいましたので、男性心を痛感させられましたし。」
「百聞は一見に如かず、です。実際に経験する事で得られたものもありますからね。」
長年父親として活躍していた2人だからこそ言い切れる内容だ。実際にカラセアとナセリスは男性だと思っていた。しかし実際は女性であり、ミュセナやスミエの計らいで男性化していたのである。経験した者にしか語れない確固たる結果論は、何ものにも代え難い宝物だわな。
「地球人の夫婦と言う部分が、どれだけ濃密かを窺えさせられるわね。実際の夫婦だった時間は僅かだったけど、確かにそこに持ちつ持たれつ投げ飛ばすが存在していたし。」
「ですね。シングルマザーの今だからこそ言い切れる感じでも。ですが、私はこの道を選んだ事に後悔はしていません。今後も警護者の生き様を貫いて行きますよ。」
「性転換して女性の時間を過ごしてきた手前、本当に心から頭が下がるわ。」
女性がどれだけ偉大かを何度も痛感させられる。特に今はその真骨頂とも言い切れるわ。対して野郎は破壊と混沌しかもたらしていない。どれだけの女性と子供が泣かされてきたか。これ程罪深い生き物はいないわな。
「はぁ・・・毎度の自己嫌悪と。」
「でも実際にその流れだったので仕方がないと思います。私達も男性時が長かったので、女性陣の声無き声を痛感していますし。」
「声無き声あれど、反論を開始するのもまた女性陣でしたよ。先見性溢れる目があるからこそ、先手を取って動けると。」
「結論は出ているのですけどね。まあマスターのボヤきを何度も聞いてくれば、エリシェ様のその一撃が出る訳でして。」
「あー・・・確かに一理あります。」
「その場合は一撃必殺返しをすれば良いかと。」
「やられたら・・・やり返す、竹箆返しわぅ!」
カラセアとミツキの極論で、エリシェを含む周りの女性陣の目が妖しく輝きだした。実際に何度もその流れを目にしているが、とにかく怖いの一言に尽きる・・・。しかし、そんな面々がいるから俺もあるのだ。本当に感謝に堪えないわ。
「ありゃ~、一撃必殺返しをされちゃったわぅよ。」
「アハハッ、こればかりはやられましたね。」
「殺気の目線すら慈愛の一念と取るぐらいだからねぇ。」
「女性は偉大、それに尽きるわ。」
一服しながら呟いた。否、呟くしかない。本当に彼女達あっての俺である。ミツキが生き様、持ちつ持たれつ投げ飛ばすが如実に現れている。これで感謝できないのなら、今までの性転換をしてきた流れは無駄に終わるだろう。
「まあともあれ、あの連中さえ叩き潰せば全て終わる。総意は安寧を求めている事も痛感させられたからな。俺達は名代で動き続ければいい。」
「全部片付いたら、ハワイ辺りでバカンスするわぅね。」
「あー、例のプランですか。一応挙げてありますよ。後は実行するのみですし。」
「おういえい! 食っちゃ寝るの繰り返しわぅね♪」
「それでも、依頼があれば警護者に舞い戻ると。」
「ワンコは只管に茶菓子を追い求め続けるのだよ。」
以前エリシェに挙げていた一件である。全て片付いたら、暫くはバカンスに浸りたいとも。しかしナツミAが語る通り、警護者の依頼が入れば直ぐ動き出すのもまた通例。もはや警護者の道から抜け出せそうにない。それだけ警護者の理は広く深いとも言い切れる。
ただ実際問題は南極に展開中の軍勢だ。地球人が出せる最大最強の兵器群を投入し、奥の手ではツァーリ・ボンバなどの核兵器である。まあ4大宇宙種族の力をすれば、完全な悪足掻きに過ぎないが。既に無力化そのものだしな。
できれば連中の方から諦めてくれれば良いが、平行線で終わる感じだろう。偽者事変では多大なダメージを受けただろうし。その仕返しがこの南極事変である。過去にヘシュナ達の一件があったから、再南極事変とも言うべきか。何ともまあ。
ともあれ、今は向こうが動き出すまで待つしかない。下手に動き出したら思う壺だろう。本当に最終決戦とも言えるわな。
それから数日後。大企業連合・躯屡聖堕フリーランス・トライアングルガンナー、そして警護者軍団。この4大勢力に名指し召喚してきた残党勢力。いや、愚物とも言えるわ。そこで各陣営の代表と抜粋軍団を集め、直接南極へと乗り込む事になった。
大企業連合はエリシェとラフィナを筆頭にギガンテス一族が補佐。躯屡聖堕フリーランスはデュリシラを筆頭にドラゴンハート一族が補佐。トライアングルガンナーはエルシェナ三姉妹が頭だが、代理でカラセアとナセリスが担当。カルダオス一族が補佐に回る。そして警護者軍団はミツキとナツミAを筆頭にガードラント一族が補佐に回った。
シルフィアとスミエは不測の事態として、隠密部隊と共に姿隠れをして待機中だ。これは4大宇宙種族と共に、ミュセナ・ルビナ・ヘシュアが新たに開発した力の1つである。俺は他の面々と共に4大勢力のオブザーバーな感じで待機した。
兵力としてはブラックブレイドにレプリカTa152H、そしてレプリカヴァルキュリアに宇宙戦艦である。最小限の兵力とも言えるが、連中にとっては驚異的な戦闘力でしかない。まあ諸々の兵器概念を取り除けば、ツァーリ・ボンバ群が超絶的な威圧を醸し出しているが。それでも4大宇宙種族の前では、ただの爆発しない爆弾である。
「バリアとシールドの恩恵はデカいわぅ。」
「フフッ、本当ですよね。あの時はバリアとシールドが出たり出なかったりしていたので、南極の寒さは本当に堪えましたし。」
「バリアとシールドが寒さや暑さを感じさせなくする部分にも脅威を感じるがの。」
本当である。今現在の南極の気温はマイナス50度だが、バリアとシールドの恩恵でプラス20度ぐらいの暖かさしか感じない。成層圏での依頼時は酸素マスク無しでいられ、大深度海溝では潜水病の対策をしなくて済んだのだ。何処まで逸脱した能力だと思わざろう得ない。
「それで、兵器群は後方に待機させておく感じか?」
「その方が良いでしょう。既にバリアとシールド自体、既存兵器群を完全無力化する様相ですし。そのぐらいのハンデを与えても良いと思います。」
「馬鹿げてるわよね。言わば生身の身体で地球上最大最強の核兵器に対峙するのだから。」
「爆発しなければ無害ですよ。まあ絶対に爆発させませんけど。」
前にも挙げたが、4大宇宙種族は地球人が核兵器を最終手段に用いる部分に完全に冷め切っている。彼らは超新星爆発などで発するガンマ線バーストすら無力化させる事ができるのだ。それから比べれば、ツァーリ・ボンバなどマッチ棒程度の炎でしかないと言い切るしな。
「幸運と希望と勇気が無尽蔵に拡散する爆弾はないわぅか?」
「あるじゃない、生命力という存在が。私達そのものに内在する生命力が、それらプラスの力を出す事ができる。連中はその概念を信じ切っていないだけよ。」
「本当ですよね。だから今だにこんな兵装で待ち構えるのですから。」
ミツキの見事なボケに、ナツミAが見事な解釈を語る。そう、生命力そのものが元品の無明に対する究極の武器そのものなのだ。ここに帰結するのに、どれだけ遠回りをしたのやらと痛感させられる。しかし実際には、目の前の自分自身の生命に内在しているのだから見事だわ。
そしてミツキが挙げる兵装は、目の前に待ち構えている残党兵力である。海上勢力は陸地故に出せないが、地上勢力と航空勢力は凄まじい数になっている。流石は窃盗軍団だろうか、F-22ラプターやF-35ライトニングⅡすらある。
極め付けは連中の中央に鎮座している、複数の物体だろう。ロシアから盗んだ地球上で最大最強の核兵器ツァーリ・ボンバだ。あんなのがと言っては大変失礼であろうが、あんなのが地球を滅ぼす力なのが本当に信じられない。無知故の暴言か、それともそれらが無力化されている事による安心感か。何ともまあ・・・。
第9話・5へ続く。




