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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第3部・帰結の旅路
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第9話 諸悪の根源と絶対悪1(通常版)

 カラセアこと防衛庁長官と、ナセリスことガードラント王。その偽者2人を殺気と闘気の心当てで封殺した事変。発した波動は全世界はおろか、成層圏の宇宙船団群にも到達した。それはオーバードーズとなったようで、俺自身は直後に気絶をした。


 性転換ペンダント効果も解除され、更には睡眠力をカットしていたペンダント効果も解除されたようだ。約1ヶ月もの間、眠り続けていたようである。その後は1週間ほど同じ状態が続いていた。ミュティナが後先考えずに使うなと言った理由を痛感させられた。


 しかし、その効果は地球全体に良好化を与えたようである。愚物共が相次いで気絶した事、良識者は気絶しなかった事。つまり悪心にのみ反応させ、気絶させたという流れだ。これにより、ヘシュナ達は気絶した連中を片っ端から捕縛して回っているようである。


 一歩間違えば独裁行動とも取れなくはないが、偽者2人や南極事変の流れからして看過する事はできない。地球はおろか宇宙全体すらも糧として考えるような輩だ。野放しにすれば今後の驚異的な火種になるだろう。


 今の重苦しさよりも、未来の平和安穏をだ。烏滸がましい感じだが、これは地球だけのものではない。4大宇宙種族の面々や宇宙全体を考えれば安々しいもの。ならばその大役を、心を鬼にしてでも貫き通してやる。




「あれから1ヶ月か・・・。」

「Tちゃんは30わぅね。わたは今年で21わぅよ。」

「ナツミYUの依頼から2年経過した訳だが、俺には1ヶ月までの記憶しかないが。」


 1ヶ月もの間眠り続けていた自分。俺はその期間の記憶が全くない。目覚めたのが1ヶ月、その後1週間眠り続けた。ペンダント効果の副作用で1ヶ月も眠る事になるとはな・・・。


「お前さんや周りも美人になったわ。」

「むふっ♪ 煽てても何も出ないわぅよ。」

「何とも。ただこの1ヶ月は本当によく頑張ってくれたわ。」

「あと一歩の所まで来ていますからね。」


 今の喫茶店は総出が出払っており、厨房はミツキが担当してくれている。俺はウェイターとサーバーブースの情報を逐一確認していた。ただ、今は解体編成したメカドッグ嬢10人が屯しているが・・・。


「ワンコなのにワンコではない現状。生身のワンコ群には失礼だが、毛が抜けたり体臭があったりとしないしな。」

「筐体が鋼鉄の肉体ですからね。しかもTさんの殺気と闘気の心当てを受けた10人は、今や人と同じ様な人格を持っていますよ。」

「機械式にすら効果があるとはねぇ・・・。」


 俺達の言葉にウンウン頷いているメカドッグ嬢達。顔つきや身体つきは機械だが、生命体のワンコをも超える言動が目立つ。これで喋り出したら驚異的だろうな。


「その思った部分ですが、言語機能を持たせれば喋ると思いますよ。既に独立した生命体の様相に近いですし。」

「はぁ・・・某機械犬が真っ青な感じだわ。」


 確かに彼女達の人格は、もはやワンコの域を超えている。筐体が機械兵士式の人型タイプであれば、人工四天王の4女傑と何ら変わりない様相となるだろう。生命体という概念に近しい10人・・・いや、10女傑と言えるだろうな。


「アレだ、機械兵士式の筐体でも作るかね。」

「あー、同一リンクですか。ワンコ式と人型式と。しかも機械の凄い所は、同じロジックを展開できる点でしょうし。人間や生身ワンコでは成し得られませんからね。」

「最低限の兵力、だな。」


 話している途中でハッとした。既に戦いは終わりに近いのに、今後もこの流れが続く事を予想して展開しだしていたのだ。つまり諸悪の根源を潰せたとしても、俺達の戦いは終わる事はないという証拠だな。


「警護者の世界に引退は存在しないわぅね。」

「本当だわな。世上に助けを求める声無き声がある限り、俺達の戦いは終わらない。」

「メカドッグ軍団とメカヒューマン軍団でブイブイ言わせてやるわぅ!」


 ミツキの言葉に尻尾を振って応える10人のメカドッグ嬢。ここまで感情があるとなると、言語機能を持たせてあげないと可哀想だわ。今度デュリシラ達に相談してみよう。


 その後も喫茶店でのノホホンな状態が続いた。一同が出払っているため、俺とミツキは本店の担当に明け暮れるしかない。ナツミAですら出ているのだ。それだけメカドッグ嬢達の力が凄い証拠だろう。10人もいれば申し分ないと、この1ヶ月で判断したようである。


 しかしまあ、あれだけのデカい流れを起こしても諸悪の根源は現れない。偽者2人は言わば実働部隊であり、諸悪の根源ではなかった。更に連中を補佐していたのが、世界中の超大国や大国の上層部だという事実。本当に馬鹿げた話である。そこまでして私利私欲に走りたいのかと呆れるしかないわ。


 まあだからと言って、一切の手抜きはしない。諸悪の根源や悪党共は地球上では、ホンの一握りでしか存在しない。他の方々は良識者が数多いのだ。ただ力を持たぬ故に虐げられていたという事だけである。声無き声はそこらかしこから発せられているのだから。


 警護者の戦いは決して終わる事はないだろう。それ以上に重要度が増したとも言い切れる。またそれは大企業連合や躯屡聖堕フリーランスもしかりである。更にトライアングルガンナーが傭兵組織として独立した。警護者界の下請け的な感じだが、その戦闘力は今では警護者に勝るとも劣らないほどだ。潜入捜査をした時が懐かしいわ。


 世上から悲惨と不幸というマイナス面の要因を根絶させるまで、今後も俺達の戦いは続く。そこに俺の生き様が役立つなら万々歳である。




 それから数日間は喫茶店本店でミツキとメカドッグ嬢達とのノホホンが続いた。後になって戻ってきた面々は、口を揃えてノホホン度を羨ましがっている。と同時に嫌な情報も教えてくれた。


 ロシアがかつて製造した、世界最強の核兵器“ツァーリ・ボンバ”が全て消えたとの事だ。今も残っている事自体に驚きだったが、それが全て紛失した事も驚きである。核兵器ではない現段階の最強兵器は“MOAB”というものだが、やはり核兵器の威力は逸脱している。


 核兵器は核融合反応で爆発力を得るため、反応兵器とも言い換えられる。逆に通常の兵器群は全て無反応兵器とも言うべきか。どちらにせよ人殺しの兵器には変わりない。


「ロシアの世界最強の核爆弾ツァーリ・ボンバ全部が紛失、か。」

「ブロークンアローわぅ。」

「ブロークンアローズかしら。どちらにせよ、現段階では先の惑星事変に匹敵する大事件となっていますよ。」

「何処まで地球と良識の方々を困らせれば済むんですかね・・・。」


 怒り心頭のミツキに一同大きく頷いている。地球規模での大災厄となった惑星事変では、悪党共は消える事はなかったのだ。それよりか今の方が大災厄を招いているとも言い切れる。


「地球上で最強の核兵器だろうが、完全無力化は問題ありません。地球はおろか、太陽系や銀河系すらも守れる様相ですし。」

「そこはねぇ・・・。ただ仮に目の前で使われても、瞬時に無力化ができるかという部分が気になるが。」

「全く以て問題ありませんよ。それらが反応兵器なら、無反応にさせれば済む事です。絶対悪への対策は万事お任せを。連中にデカい面などさせません。」


 力強く語るミュティナ。1ヶ月振りにその容姿を見て驚いてしまった。以前はミツキと大差ない背丈だったが、今ではシューム達に近い背丈になっていたのだ。たった1ヶ月でここまで成長するのには驚いたわ・・・。


「あー、容姿の件ですか。お兄様が眠られている間に、ちょっと宇宙空間での流れなどがありましたので。」

「そうね。私はずっと地球にいるけど、貴方達は数週間宇宙で活動していたし。多分その影響で急激に成長したのだと思います。」

「数週間で、ねぇ・・・。」


 成長の完成系がミュセナとあり、娘のミュティナや他の2姉妹はドンドン母親に似だして来ている。僅か数週間でシューム達に近い様相になったのは、何れ母親に似た巨女化する証拠だろう。


「わたなんか全く変わらないわぅ。」

「何を仰る。外見も内面もエラい様変わりしているだろうに。お前さんは変わっていないと思うが、1ヶ月眠っていた俺からすれば明らかに変わっているわ。」

「成長は生きている限り、永遠に繰り返されるものですからね。若輩ながらも、私も日々鍛錬を続けて来ました。今では結構やれるようになったと思います。」

「ヘシュナ様の成長振りは凄まじいものでしたよ。」


 一際異彩を放っているのはヘシュナだろう。かつては全宇宙種族の中で最弱の力だったが、今ではナセリスと互角に渡り合える程の実力を持つに至った様子。俺がいない1ヶ月の間に、筆舌し尽くしがたい修行を繰り返してきたようである。カラセアも地球人とは思えない実力を有しているのには驚きだが。


「またまたご謙遜を。ですが、これで漸く皆様方のお役に立てます。全ての悪党群はお任せ下さい。」

「今のヘシュナ様は4大宇宙種族の警護者筆頭格ですからね。ナセリス様もしかりで。」

「ただ一族を纏め上げるのは娘に委ねますが・・・。」


 頭は参るとボヤくナセリスに、同調の肯きをするヘシュナ。確かにこの2人は一族を束ねる器ではない。ナセリスは娘ティエラが、ヘシュナは妹ヘシュアが適任だろうな。


「1ヶ月の冬眠がまるで10年近く寝ていた感じだわ。」

「それだけ切磋琢磨し続けて来た証拠ですよ。世上はまだまだ不安要素が燻っていますし。特に親玉が叩けていない現状、その超絶対悪の紛失になった訳ですし。」

「そこまでして力を持ちたい理由が分かりませんよ。」

「ガクブル状態が続いている証拠わぅね。」


 簡潔に纏めるナツミAに、極論を語ったミツキ。そう、連中は世上が怖くて仕方がないと考えるのが妥当だわ。だから超絶対悪を持ち出し屈服させる。それが要らぬ火種に至る事を連中は考えもしないのだろうな。


「まあ何にせよ、声無き声を掬い支えて行くのが警護者の使命。今後も如何なる困難があろうが、全部蹴散らし続けてやるわ。」

「本当よね。今となっては私達が頑張らない限り、地球は疎か宇宙すら危うくなってくる。そういったレベルにまで危険度が高くなっているし。」

「普通の警護者として動いていた頃が懐かしいです。」


 超大型ジャンボジェット機でアメリカに向かった時が懐かしい。ナツミYUにとっては再会となるが、俺としては記憶を失った後の初対面となる。それでもあの時から全ての流れが開始したとも言い切れるわ。


    第9話・2へ続く。

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