第7話 忍び寄るメテオ1(キャラ名版)
元監獄アルカトラズで幽閉されていた、エシェムLの父カラセアとティエラの父ナセリスを救出。そこからは劇的な変化が訪れる。偽物共は本物達を捕縛しようと躍起になるが、既に4大宇宙種族の庇護にある2人には触れる事すらできない。
何よりもカラセアとナセリスはやり手の戦闘者という事もあり、実力で捕縛するには到底無理な話である。特に今現在はナツミツキ姉妹の手解きを受けており、今以上の実力を得るに至るだろう。警護者として開花するのは間違いない。
同時に覚醒した人工生命体の四天王も共におり、彼女達も含めた6人は更なる力を持つのは言うまでもないわな。まあナツミツキ姉妹が育成に携わっているのだ、連中に付け入る隙などありはしない。
そして軽く驚いたのは、カラセアとナセリスが男性ではなかったという事だ。世上の目線などを掻い潜るために、俺と同じ性転換ペンダント効果で男性化していたという。実際には生粋の女性であり、しかも超が付くほどのお嬢様気質であった。エシェムLとティエラも生粋のお嬢様気質であるため、流石は母親と言うべきだろうな。
何はともあれ、後は一連の当事者と諸悪の根源を引き摺り出すだけだ。それで現状の騒乱は全て鎮圧する感じである。それでも俺達の戦いは終わらないがな。
ミスターT「本当なのかそれ・・・。」
ネデュラ「間違いありません。3大宇宙種族の大母船どれもが捕捉しています。今の巡航速度だと、1ヵ月後には激突するコースです。」
神妙な面持ちで語るネデュラ。喫茶店に彼が訪れてきたのには驚いたが、それには明確な理由があった。1ヵ月後に地球に激突する惑星があるというのだ。
先日、ギガンテス一族・ドラゴンハート一族・カルダオス一族の大母船が超長距離レーダーで捕捉したという。地球側はそれ程の優れた超長距離レーダーなど持っていない。宇宙空間にあるハッブル宇宙望遠鏡でも捕捉は厳しいようだ。
それに今回は惑星の巡航速度がかなり速く、こちらに来るのが早いらしい。更に小惑星と示しておらず、それは月を超える超巨大惑星だというのだ。もはや小惑星のレベルを超越している規模である。
ミスターT「・・・対策はあるのか?」
ネデュラ「そこは問題ありません。我ら3大宇宙種族の大母船を駆使し、軌道を変更させますよ。ただ、もしもの場合もあるため、油断は禁物になりますが。」
紅茶を啜るネデュラの表情に笑顔はない。それだけこの惑星の軌道をずらすのが相当厳しいという事になる。
ミツキ「破壊は・・・できないわぅか。」
ナツミA「“深い衝撃”の映画を見た事あるでしょうに。下手に破壊したら大量の破片が地球に降り注いでくるわよ。“世界の終わり”では車程度のものでも、ニューヨークの街並みを破壊したじゃない。」
ミツキ「直接乗り込んで真っ二つに・・・も厳しいわぅ?」
ナツミA「ネデュラさんからの情報を元にした惑星を破壊するには、地球上の全核兵器を動員しても不可能ね。地下で爆発させてもたかが知れているし。」
ミツキ「八方塞がりわぅか。」
何時もの明るさがない喫茶店内。通常のこの告知だと、もはや終末を意味するに他ならない。しかし幸いにも3大宇宙種族の力があるため、何とかなるのが実状だろう。
ミスターT「・・・阻止できるなら、逆に惑星を利用するのも手か。」
ヘシュナ「貴方も同じお考えでしたか。地球上の無益無謀な戦乱を鎮圧させるには、それ以上の災厄を示すしかないと。それとナツミA様が仰った破壊による破片の降り注ぎですが、地球自体をバリアとシールドで覆えば防げます。太陽系すら可能ですよ。」
ナツミA「あら・・・取り越し苦労だった訳ですか。」
それなりに調べ上げていたナツミAだったが、物凄く身近の肝心な事を忘れていたようだ。4大宇宙種族が実用しているバリアとシールドを極大にまで拡げれば、地球はおろか太陽系すらも守れるというのだ。バカげてるとしか言い様がないが、現状はその力の恩恵に与るしかないのも実状だ。
ヘシュナ「ただ不謹慎ながらも世上の戦乱を鎮圧させるには、態と様子見をするのも1つの手かと。地球人自体が全力を以てしても破壊不可能な惑星ですし。マスターが仰った通り、ここは惑星を利用する手法が良いと思います。」
ミスターT「一歩間違ったら、お前さん達が招いた災いとも言われかねない。どういった形で災厄を表現すべきか・・・。」
完全に不謹慎極まりない。接近中の惑星を利用し、地球上の戦乱を終息させるという荒業だ。それでも結果的に悲惨や不幸が根絶できる流れに近付くなら、ここは惑星という生命体自身にご足労して貰うしかないだろう。相手の生命を犠牲にして、となるが・・・。
ミスターT「・・・そうか、惑星や小惑星などは一種の生命体に比例するか。彼らの生命を犠牲にしての行動になっちまう。」
ナセリス「そこまで深く考える必要はないと思います。私達も多種の生命を頂いて延命している様なものですし。それに根本的な問題として、その1生命体で数え切れない生命体が絶滅に至るのを阻止する事にも至ります。」
カラセア「ここ数ヶ月の間に貴方の一念を見続けて参りました。貴方の一念は全ての生命を守る事に帰結しだしている。故に接近中の惑星という生命をも守りたいと思われていると。」
ミスターT「破壊せずに軌道を変えられればね・・・。」
サーバーブースで何度も激突コースのシミュレーションをしているデュリシラ。彼女の背後から様相を見守った。ネデュラが語る様に、1ヵ月後には確実に地球に激突する流れである。
ミスターT「今までもお前さん達は大母船などで惑星や小惑星の破壊を?」
ミュセナ「無論、私達が絶滅してしまっては全く以て意味がありません。この場合は貴方が思われているように災厄と位置付けて破壊してきました。ここに相手への思い遣りは持たなくても良いと思いますよ。」
ルビナ「この一撃で地球が崩壊してしまえば、今まで陰ながら尽力されてきたスミエ様の行動が全て水泡に帰してしまいます。私は断固として破壊し、地球を守るべきだと断言します。」
スミエ「そうですね。ただ貴方達がいなかったら、正に地球は終焉を迎えるという事になります。それが定めかどうか、またそれを曲げる事で歴史を変えてしまうのか。」
エリシェ「滅びの定めである事を覆す、という事ですか。恐れ多いながらも、実に馬鹿げているとしか思えません。過去の歴史をタイムマシンで捻じ曲げるというのなら、歴史の改変になるでしょう。しかし今はまだ1ヶ月の猶予があり、実際に滅んだとは言えないのです。ならば何としてでも阻止すべきです。滅びの定めなどクソクラエですよ!」
何時になく怒り気味のエリシェに驚く面々。確かにエリシェの一念の方が現状を直視した最善の行動そのものだ。しかしスミエの一念は俺のにも帰結し、人類を守るべきものかという部分に帰結してくるのだろう。それを揶揄しての歴史の改変という意味合いだわな。
スミエ「・・・そこまで生きるという覚悟を定めていらっしゃるのなら、全く申し分ありません。Tちゃんの一念を代弁しての、世上の意見を伺った感じになりましたが。」
エリシェ「いえ、こちらこそ声を荒げてしまい申し訳ありませんでした。ただ、迫り来る災厄は断固として蹴散らしていくべきです。ルビナ様が仰った通り、スミエ様の生き様すらも水泡に帰す一撃がこれですよ。私は烏滸がましいながらも、地球全体に住む生命体の名代として地球を守る行動を貫きます。」
ミスターT「・・・分かった、お前さんの一念を汲む。ネデュラ達、ギリギリの接近まで引き寄せてからの破壊を頼む。一応の見せ付けをして、今後の戦乱を少しでも減らす要因に利用しよう。」
ネデュラ「了解しました。皆様方と念入りな戦略を練り出します。必ず地球を守りますよ。」
決意新たに語るネデュラに静かに頭を下げた。ギガンテス一族が宇宙種族最強であれば、実質の最高責任者は彼になる。前線実働司令官はミュセナだろうが、やはり一族の頭を担う存在の格は違うわな。
紅茶を飲み干すと、近場にいた直近の護衛の面々と一緒に転送装置で去って行った。彼も力は惜しみなく使う気質のようで、妻のミュセナとは異なる感じだわ。
ミスターT「しかしまあ・・・何だってこんな時期に。」
ミュセナ「本来ならば、地球に衝突しない方がおかしいと思います。他の惑星群には数多くの小天体が激突していますし。まあ地球は大気圏があるので、小さい物は全て燃え尽きますが。」
ルビナ「地球自体が幸運に恵まれた宇宙船そのものだと確信しています。唯一不二の存在とも。」
ミスターT「そうだな。それが何処ぞのカス共は自分の物だと思い込み、私利私欲に貪り続けている現状。地球も怒っているだろうが、それが他の惑星を招いたとも言えるわな。」
一服しながら思う。言わばこれは大自然自体を貪り続けて来た、人類への竹箆返しそのものになる。確かにこの言い当てが数多くの自然災害には結び付かないし、不謹慎極まりない考えだろう。だがそれでもカス共は資源の貪りを止めようとはしない。
ミスターT「・・・死ぬのは怖い。しかし生命体は何れ必ず死を向かえる。」
ヘシュナ「ええ、確かにそうですね。ただ、貴方の怖さはそれ以外にあるようですが。」
ミスターT「本当に怖いのは、今の記憶を失う事だ。記憶喪失の類じゃない、死という現実により自分自身が喪失する事そのもの。生命は巡るという概念は、お前さん達を見ていれば痛感できる。だが・・・そこに俺自身はいない。」
スミエ「だから人並み以上に忘却を恐れる、ですか。Tちゃんの根本概念はそこに帰結している感じですし。」
キセルを薫らせるスミエが全てを見抜いてくれた。忘却ほど怖ろしいものは存在しない。死という現実以上に怖いものだ。人は生きていても忘れ去られれば死んだも当然である。
ミツキ「逆に、身体は朽ちても忘れ去られなければ永遠に生き続けられるわぅね。」
ミスターT「ああ、その通りだわ。俺達が大切な存在を忘れなければいい。そしてそれを何らかの形で語り継ぐ事も重要になる。忘れ去られなければ永遠に生きる事ができるしな。」
ミツキ「正に永遠の生命わぅよ。」
茶菓子を頬張りつつ、ミツキが究極論理を語ってくれた。そう、忘れ去られなければ永遠に生きる事も可能なのだ。それはその瞬間を生きる人物に根付き、共に生き続ける事である。これの繰り返しにより、身体が朽ちた人物も永遠に生きる事ができる。
第7話・2へ続く。




