第6話 誘引の総攻撃5(通常版)
「まあともあれ、この後奴等がどう出るかだが。」
「完全に八方塞がりになったからねぇ。これで出ないと面子すら丸潰れよね。」
「もし直接乗り込んできた場合、連中の単体戦闘力を考慮すると危険な感じが。」
「あー、まあねぇ。でも最悪の場合は3姉妹に任せる。お前さんが指摘した単体戦闘力、この点だけでは実質最強だしな。」
俺の言葉にミュティ・シスターズが不気味な笑みを浮かべる。彼らギガンテス一族は4大宇宙種族で最強だ。特に単体戦闘力では他の追随を絶対に許さない。ペンダント効果や技術力効果を除いても、自前の力でハリアーⅡなどを持ち上げる事ができるのだから。下手をしたら各種ガンシップすらも軽々と持ち上げるだろうな。
「むしろここはカラセアとナセリスとタッグ対決が面白そうだな。」
「そうね。相手が同じ実力を有しているなら、一切の外的力を除いた肉弾戦で雌雄を決するのが望ましいわね。」
「問題は向こうがそれに応じるかどうかですが。」
「マスターがあそこまで啖呵を切ったのですよ。それに応じなければ玉無しですよ。」
「今のTちゃんそのものわぅね!」
「はぁ・・・。」
肝っ玉がないという例え方をするデュリシラに、ミツキの見事なまでのボケが炸裂する。何度も用いている性転換効果を揶揄してであり、それを伺った周りの面々は爆笑していた。まあ確かにそう言われたら為す術はないが・・・。
「しかし、お前さん達も真の黒幕は分からず仕舞いか。」
「はい。私が幽閉される前では、不穏な動きは察知できていたのですが。それ以降は全く分かりません。」
「確かに私達は3大宇宙種族の方々よりも弱小なのですが、模写の力だけはズバ抜けていると思います。その特性を利用された感じになりますので。多分私達の真逆の性質を持つ連中の事、それを最大限模写したと思われます。」
「模写の力が今回の淵源か。」
最前線で戦う事が多かったからか、手料理の腕もかなりのものを持つ2人。休息に入ろうとしたシュームとナツミYUの代わりに厨房に立ちだしたのだ。しかもかなりの手捌きである。
「・・・シングルファーザーの真骨頂だな。」
「ハハッ、確かに。ティエラは無論、エシェムL様も何度も1人にさせてしまっています。せめて手料理だけは振る舞えるように努力はし続けました。」
「主夫の鏡よね。でも失礼ながら、私から見ればTちゃんの方が上手よね。」
「ですね。お2人は戦士としての期間が長かったようで、何処か重さを感じますし。」
「恐らくティエラ様とエシェムL様がお生まれになってからの修行でしょう。マスターの場合は幼少期からと伺っていますし。」
「幼少期ねぇ・・・。記憶を失う前やそれ以降も手料理をやっていたし。」
紅茶を啜りながら当時を振り返る。シルフィアが言うには、俺は飛行機事変で記憶を失う前も料理を作っていたという。記憶を失った後からは今の記憶になるが、それからもずっと今の調子になる。ナツミツキ姉妹とナツミツキ四天王と合流する前から、小規模な喫茶店を開業しての様相だった。それが今では大規模な喫茶店になっている。
「初めてお会いした時から、並々ならぬお力をお持ちである事を痛感しました。戦闘力以前にしても、総じて万能的な力をお持ちですし。」
「もっと多岐に渡る修行をすべきでしたよ。」
「はぁ、今のままでも十分過ぎると思うけどねぇ。」
絶え間ない努力の姿勢には脱帽するしかない。カラセアもナセリスも完全に警護者としての力と言い切れる。だからこそ、あれだけ偽物共が猛威を振るったのだ。コピーキャットとなる存在は、オリジナルとなる存在の力に依存する事を改めて思い知らされた。
「俺が逆転した状態の悪役だったら、どんな輩になるのか想像が付かんわ。」
「多分、滅茶苦茶優しい悪逆非道な男わぅね。笑顔で優しく害をなす存在わぅ。」
「全部が全部逆転すると、間違いなくそうなるわね。」
「あまり見たくない姿だけど。」
優しい悪役ってどんなものなのか、変な興味をそそられる。まあ相当手が付けられなくなる怖れは十分あるだろうな。
「TちゃんはTちゃんのままで良いのですよ。逆に形作るとしたら、ミスT状態になるのが無難でしょうけど。」
「何だ、そんなに無難なら披露するわ。」
言うか否か、速攻で性転換ペンダント効果が発動。ミスターTからミスTへと変身を遂げる。ヘシュナの強化法を経てからは、各種ペンダント効果が最大限発揮している感じである。
「はい、この姿でよろしいと。」
「何とも。まあ今となっては見慣れましたけどね。」
「実に馬鹿げてるとしか・・・。それでいて美貌は変身すればするほど、磨きが掛かるというのが何とも。」
ミスTに変身した姿を目の当たりにして、カラセアもナセリスも驚愕している。しかしその姿を見て何故か安堵しているのが気になるが。ティエラとエシェムLもしかり。その意味合いを直感と洞察力がフル回転して導き出された。
「・・・本当の所、カラセアもナセリスも女性なんだろう?」
「な・・何だってー!」
「態とらしい言い回しよね。薄々は気付いていたと思うけど。」
「むっふー、わたの直感と洞察力はワンコ譲りわぅ♪」
「はぁ・・・何とも。」
やり手の面々は今の事実を知っていたようだが、他の面々はその様相に驚愕している。何処をどう見ても男性にしか見えない2人なのだ。ただティエラとエシェムLが何らかの要因で隠し通していたと思われる。
「力を付けるまでは強者を表現しないとなりませんでした。皆様を騙すような事になってしまって、本当に申し訳ありません。」
「それに世上の様相から、ヘシュナ様の時もそうだったと思います。女性というだけで舐められる可能性も十分ありました。父も・・・いえ、母も私達が幼少の頃から常に気にされていました。」
「なるほど。ただナセリスは宇宙種族だから分かるがカラセアは人間だろう。何時何処でその手法を得た・・・って、ばあさまとミュセナが淵源か。」
「流石は逸脱した直感と洞察力をお持ちです。正にその通りですよ。」
何というかまあ・・・。内情を周りに知って貰った事により、今まで以上に安堵の表情をするカラセアとナセリス。その表情は男性ではなく女性の慈愛の一念そのものだ。
ナセリスは過去に地球に降り立つと同時に、ミュセナとルビナとヘシュナの計らいで性転換ペンダント効果を使ったという。カラセアも同時期に知り合い意気投合した仲との事で、その流れから両者とも偽った姿を演じ出したというのだ。
当時は世上の流れから男尊女卑が強く、特に新参者の2人には厳しい様相だったとの事だ。そこで苦肉の策として性転換状態で進む事にしたという。今では2人とも男性そのものだと思っていたが、俺がミスTになる事で本当の事を曝け出したのだろう。それを察知したのが俺だったという事だ。
「現状を知られたのですから、もう仮の姿を止めても良いと思いますよ。」
「Tちゃん達は長い間騙され続けていた感じですが、色々な事情があってのものです。ここは私に免じて許してあげて下さい。」
ルビナとスミエが語った後、それぞれの胸に隠し持っていたペンダントを取り出す。どれも性転換ペンダント効果のもので、その効果を切るカラセアとナセリス。俺が変身したのとは真逆の形で男性から女性へと変化していった。いや、この場合は元に戻ると言った方がいい。
「本当にすみませんでした。真実を話すには内情を語らないといけませんでしたが、貴方が同じ様な力を使っていたので語る事ができました。」
「この点も娘達に常に嘘を付かせていた事になります。本当に申し訳ありませんでした。」
「委細承知、大丈夫よ。にしても、これだから野郎は・・・腑煮え繰り返るわ。」
男性時でも美形だった2人が、本当の姿たる女性に戻った事で美女まっしぐらといった感じになっている。もし性格までも演じていたのなら、この2人は生粋のお嬢様風の淑女と言える。ティエラとエシェムLを見れば確信的だろう。
「はぁ・・・何処までも女性目線よね。」
「まあまあ。カラセア様もナセリス様も、男性時に並々ならぬ苦痛を経て来たと思います。その気質からしてTちゃんと呼応する部分があったと思います。だから彼が性転換した事で本音を曝け出したと。」
「君の手腕も恐れ入るわ。」
呆れ顔で俺を見つめるシルフィア。ただ他の女性陣はカラセアとナセリスが置かれていた状況に強く共感している様子だ。特にシュームとナツミYUは男臭い警護者の世界に身を置いているため、その胸中の苦痛にかなりの共感を寄せている。
「まあ何にせよ、これからは偽らずに娘達や世上の流れに貢献してくれ。総意の背後に忍び寄る不安や恐怖は、俺が全部蹴散らしていくから。」
「むっふー♪ その姿で言うのは信憑性に欠けるわぅが、熱意は痛烈に伝わるわぅね!」
「そうね。男性と女性の気質を理解しているからこそ、寄り添える力と言えるわね。ポチや私もその気質に近いけど、流石にTさんには敵わないわね。」
「弟子はわた達の方だったわぅか?!」
「ワンコ故に弟子ワン。」
「それ、どちらかと言うとドッグフードのアレ・・・。」
真面目言葉からボケとツッコミに至る様相は毎度の流れ。それに周りは爆笑している。特に一切の柵から解放されたカラセアとナセリスが一際笑っていた。確かにティエラとエシェムLも笑い上戸に近い。娘がその気質なら母も同じであろう。
「と言うか、漸く同性仲間が出たかと思ったんだがの。」
「あら、女性が増えたと素直に喜んでも良いのにねぇ。」
「ですよ。今のマスターは殆ど女性の気質と変わりません。あのままだったら、お2人はずっと男性の姿のままだったでしょう。その楔を断ち切ったぐらいですし。」
「これで母親シリーズが6人、と。しかもミュセナ様を除けば、全員シングルマザーとなりますし。」
「母親パワーは計り知れませんよね。」
今までだとシューム・ナツミYU・デュリシラがシングルマザーとしての位置付けでいた。ミュセナはネデュラがいるため夫婦仲だが3人は独り身なのだ。そこにカラセア・ナセリスも加わり、5大シングルマザーとなった感じだ。特にカラセアとナセリスは男性時が長かったからか、そのギャップにより女性度が3人よりも遥かに強いのだ。
「・・・あの偽物共は、ここまで見切れなかった訳か。シュームが十八番で言う、女性とは大海原のように広く深い。野郎の凝り固まった狭い視野では、絶対に見えないものだわ。」
「フフッ、本当よね。男性の君が言い切るのだから間違いないわ。」
「何度も言ったでしょうに。女性は新しい生命を産み育む。対して野郎は何度も破壊と混沌をもたらし続けた。一体どれだけの女性が泣き続けたのか。それに野郎の慰めとして扱われていた。現状は今もそうだろう。この様相を見て腹を立てない方がおかしいわ。」
怒りが各ペンダントに影響し、それぞれの力が増幅して放出しだしてきた。特に俺の十八番たる殺気と闘気の心殺しの一念が一際目立ち、それを目の当たりにした周りの面々は驚愕している。それでも今は怒りが収まり切らない。
「今後は本当の姿のままでいるんだ。先も言ったが、俺が全ての不安要素を刈り取る。女性も男性も含め、生命総意に降り掛かる悲惨や不幸を全て蹴散らしてやるわ。」
「・・・マスターの強さはそこに帰結しますよね。強さというか自然体というか。ミツキ様と全く同じ気質です。」
「生命自体に備わる性質ですよ。これは全ての生命に内在しています。それを一際放てるのが人間・・・いや、宇宙種族だと思います。」
「買い被りです。貴方達の強さは私達を超越するものです。種族云々の次元を超えたものになります。それに呼応されるのが私達になりますので。」
「生命とは本当に凄いものですよね。人間の私もその部分は今までの人生で痛感しました。そこには善も悪も内在している。あの偽物が私達に取って代わろうとまでしたのも、案外私達の悪心がそうさせたのかも知れません。」
淑女を地で行く様な姿になったカラセアとナセリスが豪語しだす。この概念は長年性転換を行い過ごして来たから断言できるのだろうな。俺も実働時間は僅か数ヶ月で今の様相である。2人の方は更に掴めたものがあるだろう。
「シルフィア様、私達にも警護者としての修行をゼロからさせて下さい。皆様方に頼り切りになるのは忍びないです。」
「娘達も今では生粋の警護者の道に走っています。ならば母親の私達も同じ道に進まねば張り合いがありません。」
「んー、実力なら既に警護者のトップレベルクラスなんだけどねぇ。」
「にゃらば、ここはわたが出撃するわぅね!」
「そうね。ティエラさんとエシェムLさんも同じ流れだったし。ここは私達が責任持って母娘揃って開花させましょうか。」
「まだまだ修行が足らぬぞ、弟子達よ。」
当然と言ったら当然かも知れない流れになった。カラセアとナセリスも正式な警護者としての戦闘訓練を受けたいと申し出てきた。ただ実力は俺達に匹敵する様相なので、この場合は基本訓練を学び返すという事になるだろう。そして適役はナツミツキ姉妹となる。
「娘が娘なら、母も母かの。いや、それも持って生まれた使命だろうな。ミツキにナツミA、俺からもお願いする。2人を正式な警護者として覚醒してあげてくれ。」
「委細承知わぅ!」
「フフッ、万事お任せを。」
再び大役が舞い込んだナツミツキ姉妹が燃え上がる。この2人は育成に関してスペシャリストになりそうな感じだわ。そして一際盛り上がる面々を見ると、この場を守り通す事が俺の使命となる事を確信した。
「・・・お、反応がありましたよ。」
「実に遅い反応だわな。」
カラセアとナセリスの決意表明から数日後。カウンターで売上伝票の計算をしていると、サーバーブースで雑務中のデュリシラが語り出した。そちらを向くとモニターに色々と表示がされている。しかも事細かくに、である。
「はぁ・・・今度は法律やら規律やらを持ち出したのか。」
「いえ、そうではないと思います。でもこれは、端から見ればそう見えますよね。」
彼女の肩越しから内容を見入った。自分達が行った実績を赤裸々に語っているとも言えた。しかしその大多数が他人様を苦しめる事に帰結しているのだから皮肉である。何の実績にもなりはしない。逆に悪行を世間に知らしめていると言えるわ。
「怒りを通り越して哀れに思えてくるわ。しかし、奴等がした事は紛れもない悪行。必ず明るみに引き摺り出し叩き潰す。地球はおろか宇宙全体にまで火種を飛ばしかねない。絶対に阻止せねばな。」
「本当ですよ。」
南極での黒服軍服事変や偽物事変を踏まえれば、これは地球上での物事では済まされない。既に4大宇宙種族を巻き込んでの戦いになっており、下手をすれば宇宙戦争そのものなる。最悪の事態は防げているが、それでも最悪の事態に陥りかねないのが現状だ。
そもそも、この様相を4大宇宙種族の面々が見て黙視している。ミュセナ達の言い方では、既に地球自体を掌握できる戦闘力を配置しているとの事だ。ただ漠然と成層圏で鎮座しているだけではないのである。
それでも穏便に進めたいと思っている彼らに、人類は心から感謝すべきだわな。それに人類の一部の愚者共は、テメェ等が地球に住ませて頂けている事を忘れている。だから平然と環境破壊や自然破壊、最悪は種族を絶滅にまで追い込んでいるのだ。
「・・・地球人ないし人間の愚者道に走るカス共は、全ての生命に謝罪では済まされない事をし続けている。何処の生命体が多種族を絶滅に追い遣る権限があるんだ。宇宙種族からしてみれば、これほど罪深い生命体は他にはいない。」
「究極論理ですよね。しかし実際はそれが如実に当てはまっている。貴方が人類を守る意味はあるのかと問い質した事を痛感します。」
「確かに行き過ぎた考えだとは思っている。だが根底から揺さ振り阻止するには、もはや人類の抹殺が最短行動だ。今も絶滅している種族がいるのも事実だしな。」
この概念は俺個人的な物事では納まり切らない。人間全ての宿業とも言い切れる。それだけ多種族を絶滅に追い込む事は、言い換えれば根絶やしにしているようなものだ。4大宇宙種族から見れば、監視し戒めねば自分達にも火種が及ぶだろう。
「・・・それでも、対話という最善行動を取るべきなのだろうな。武力行使や実力行使での解決は容易いが、それでは憎悪のスパイラルから抜け出せない。」
「非常に難しい問題ですよね。アレを潰せばコレが挙がる、コレを潰せばアレが挙がる。イタチごっこ極まりませんが、それが現状での穏便に動くという事になりますし。」
「この現状をここまで知り尽くし、理までも至ってしまった。もはや停滞する事は罪そのもの。俺達にできる事は限られているが、それでも何もしないよりは遥かにマシだ。」
一服しながら思う。一介の警護者が世界全体・宇宙全体を左右する戦いに投じている現状。本当に烏滸がましいが、ここまで来て途中退場は悪党と同じ生き様に帰結する。最後の最後まで足掻き続け、目の前の課題を1つずつ攻略するしかない。警護者の理とは本当に奥が深いと言える。
「・・・ノホホンはできなさそうだの。」
「ハハッ、まあまあ。完全停滞は良くありませんが、息抜き程度のものなら問題ないと思いますよ。それこそノンストップで動いたら、いざという時に潰れてしまいます。警護者たるもの、万事を制する気概で進まねば。」
「都心の暗殺者の頃が懐かしいわ。」
作業をする彼女の頭をポンポンと軽く叩いた。それに一瞬驚くも、そこに込められた一念は汲んでくれたようである。俺よりも年上の彼女だが、警護者としての部分なら真逆になる。まあ役割の部分を持ち出すのは無粋だろう。素直に彼女の生き様を称えた言動としたい。
「・・・本当に時偶クリティカルな事をされますよね。」
「フッ、そこに邪な一念など感じないだろうに。」
「それはそうですけど・・・。」
不貞腐れ気味に語る彼女だが、言いたい事は良く分かる。性転換ペンダント効果により、女性として過ごしていた時間が長かった。それ故に薄っすらと女性心を感じる。特に彼女はシューム達と同じく俺に好意を抱いてくれているから尚更だ。本当に感謝に堪えない。
「お前さん達を含めた総意を守り通すのが、俺の警護者としての最後の戦いだな。」
「愚問ですよ。ミツキ様が十八番、持ちつ持たれつ投げ飛ばすの気概で進みましょう。」
「そうだな。」
周りあっての俺自身を痛感せざろう得ない。特にそれを女性化に至ってから強く感じるようになった。これが女性目線から至るものなのか、それとも自然的に帰結するものなのか。本当に人は1人では絶対に生きてはいけない事を思い知らされる。
「まあ何だ、連中が完全に動き出すまでは後手だわな。」
「了解です、今後も警視し続けますね。」
再びモニターと睨めっこを開始するデュリシラ。今では完全に俺達のブレインそのものだわ。それでもソフトウェアの実力はナツミAやウエスト・サイバーには遠く及ばないというのが怖い話である。恩師もかなりの実力を持っているしな。
しかしまあ、こちらが断然有利になったら引き篭もりとは。あれだけ力を固持し、地球はおろか大宇宙にまで火種を飛ばそうとしていた。それがカラセアとナセリスの救出後は完全に成りを潜めている感じである。所詮偽物とはこの程度のものだ。
実質は存在そのものの力を失ったと言い切れるが、残存戦闘力は未知数の部分が多い。特に今だに見えない黒幕も控えている。それらも完全駆逐してこそ安寧を勝ち取れるだろうな。俺達の戦いはまだまだ終わりそうにない。
第7話へ続く。




