第6話 誘引の総攻撃3(キャラ名版)
それから数週間が経過した頃、劇的な事が起こった。シルフィア・スミエの暗躍部隊が、幽閉されていた本当の防衛庁長官とガードラント王を発見したのだ。しかも幽閉されていたのは、あの脱獄は難しいとされた元監獄のアルカトラズだった。よくぞまあ発見したものだと思ったわ・・・。
2人が言うには、最近になってアルカトラズに食料を運ぶ怪しい面々がいるとの事だった。その連中に身辺警護として潜入捜査したシルフィアが、幽閉されていた2人を発見したのだという。料亭で悪逆の限りを尽くしていた2人と瓜二つだが、その気質は善心と慈愛に溢れていたという。正に現状の偽物と雲泥の差だ。
そして発見した経緯も、先刻思った事と一致する。絶対悪と言える存在は探知し難いが、絶対善に近い存在は探知し易いというもの。つまり己自身の善心と呼応する感じであろうか。善心を地で行くシルフィアやスミエだからこそ掴めた感じだろうな。
幸いにも現地にも躯屡聖堕メンバーは数多くおり、彼らと共に連携で2人を救出したのだ。ただ今は公に出す事はせず、偽物達にその情報が自然と流れる事を促してみるという。つまり完全な誘引戦法である。
ようやく総攻撃の時は来た。ここからが反転攻勢の時だわ。
ティエラ(そうですか・・・良かった・・・。)
エシェムL(本当に良かったです・・・。)
本物の父親達の救出に誰よりも喜んだのは、実の娘であるティエラとエシェムLの2人だ。あれだけ気丈に振舞っていた2人が涙ながらに安堵している。
シルフィア(そこそこ衰弱があるけど、気質は貴方達譲りの堅固さだから大丈夫よ。)
スミエ(ヘシュナ様やTちゃんの力により、ミュティナ様の様な相手の状態を即座に把握する能力。これが正にキュリー夫人ビームそのもので、お2人の様相を把握できました。)
ミュティナ(懐かしいですね。以前はメルア様のお子様を把握した時と同じ感じです。そう言えば、お子様方は無事お生まれになられたのでしょうか?)
ナツミYU(完璧と言ったら悪いけど、見事なまでの赤ん坊だったわ。ターリュさんやミュックさんに勝るとも劣らない泣きっ振りにはタジタジのようだけど。)
シューム(泣く子は育つと言うしねぇ。)
今も遠征中のナツミYUが一服しながら語る様が映し出される。それに呼応したシュームも喫茶店で一服しだしていた。既に母親である2人だからこそ、メルアの出産に大きな共感を得られるのだ。本当に女性は素晴らしいわ・・・。
シューム(・・・って、何故君が泣いてるのよ。)
ミスT(・・・あら、無意識に涙が流れてたわ。)
シュームに言われるまで全く気付かなかった。かなり泣いている自分がいたのだ。その俺の涙をハンカチで拭ってくれる彼女、呆れながらも貰い泣きをしている。
スミエ(フフッ、まあそう仰らずに。Tちゃんは幼少の頃、別のお子さんを抱いてあやした事が何度もありました。どんなに泣き続ける赤ちゃんも一発で泣き止ませたという。)
シルフィア(以前仰っていましたね。孤児院ではT君に掛かれば、泣き止まないお子さんは絶対にいないのだと。シェヴさんやディムさんも太鼓判を押していましたし。)
スミエ(懐かしいものです。)
当時の様相を念話を通して伝わってくる。年齢一桁代の時に何度も赤ちゃんや子供をあやしていた流れだ。ただ当時の自分がどの様な心境をしていたのかは不明で、スミエの記憶の俺はぶっきらぼうな表情をしているのだが。
スミエ(そうですねぇ。確かに当時のTちゃんは取っ付き難い様相でしたし。悪態は付かずとも、その姿自体が近寄り難さを醸し出していました。それなのにお子様方からは絶大な信頼を寄せられていましたし。)
ミツキ(大人の人が外見で判断する悪い癖ですよ。Tさんはそれらに紛動されず、純粋に相手の生命自体と対峙していたと思います。だから純粋無垢のお子さん方に信頼されていた。)
ナツミA(ポチの気質と全く以て同じよね。ただポチは太陽の様な暖かさに対して、当時のTさんは月の様な暖かさと言うべきか。少し暗い感じの様相かな。)
ミツキ(むぬっ? “暗い月の剣”わぅ?)
ナツミA(“山頂の衰退した王国”は幻想郷かしらね。)
見事なまでの譬喩だろう。ゲーム“闇の魂”は“山頂の衰退した王国”という場所の要素、“暗い月の剣”である。相対して太陽の王女もいるが、その巨大さは筆舌し尽くし難い。特に巨女故に胸も巨大なのだ。
シューム(・・・はぁ、今のその心境でも野郎心が出るのね・・・。)
ナツミYU(本当ですよね・・・。)
ミスT(不謹慎だったわ・・・すまん。)
痛烈なまでの殺気に満ちた一念を投げ付けられる。しかも方々から一斉にだ。確かにこの場合は俺の方が悪い。その前までは感動的な一時だったのが、突然として野郎の性に戻ったのだから。本当に野郎心は参る・・・。
シルフィア(ハハッ、まあそのぐらいにしてあげなさいな。こうやって即座に思考を切り替えられる部分が、今のT君の最大の力の1つだし。)
ミツキ(うむぬ。それにあの姉ちゃんがデカいのが問題わぅよ。)
ナツミA(殺害する時の表情が怖いというオマケ“付き”と。)
ミツキ(月に関してる故にオマケ“付き”わぅね!)
シルフィア(アッハッハッ!)
う~む、見事なまでのボケとツッコミと揶揄だわ。それに一際爆笑するシルフィアも見事としか言い様がない。これも彼女達の強さの所以だろうな。
スミエ(まあともあれ、Tちゃんの強さはシルフィア様が仰る通りの部分と。)
シルフィア(偶に見境なくなる部分が困りものですけど。)
ミツキ(それらも全てはTさんがTさん所以のものですよ。持ちつ持たれつ投げ飛ばすで対処と。)
シューム(へぇ・・・今度から蹴飛ばされても文句は言わないという事ね。)
ミツキ(ダメわぅ! それをやっちゃうと、Tちゃんがより一層変態化するわぅよ!)
シューム(ぶっ・・アッハッハッ!)
最後の最後は諭しにもなるが、それすらもボケに変化させるミツキ。その内容が見事であり、シュームを含む殆どが大爆笑しだしている。まあ変人や変態と言われる方がまだマシだが、その都度ネタにされる身にもなって欲しいものだわ・・・。
シルフィア(アハハッ・・・ミツキさんのフックもストレートも強烈過ぎるわね・・・。)
ミツキ(ふふり、ここはロイヤルストレートフラッシュでキマリわぅ♪)
ナツミA(出る確率は怖ろしく低いけど。)
ミスT(ミツキの気質なら招きよせそうだの。)
シメでもボケを言うミツキだが、先程の大ボケよりはスマートな感じだろうか。それでも全ての語句に対してネタに変化させる彼女の腕前は、並大抵の人物にはできない代物である。この気質があれば世上から争いなど根絶できそうだわ。
脱線はしたが、ティエラとエシェムLの本当の父親達は問題ないとの事だ。更には2人とも草創期は最前線で戦う存在との事。ウインドやダークHみたいに叩き上げの闘士そのものだ。故に真逆の属性の偽物バカ父達の行動力の強さが痛感できる。
案外、娘達が警護者に目覚めた事に諸手を挙げて賛同するかも知れない。仕舞いには自分達も現役に戻ると言い出すかも知れないわ。親が親なら子も子、か。この場合は良い方の例えの極論とも言える。その彼らを守り通すのが俺達の使命だわな。
本物の防衛庁長官とガードラント王の救出は、直ぐに偽物の連中に伝わった。そう、連中で片付けてもいい。もはや本物ではない、ただの偽物の愚物だ。
当然躍起になって再度捕縛を試みているようだが、護衛をしているのが地球で最強の警護者だという事実を忘れているようだ。青髪の鬼神・シルフィアに、黒髪の魔神・スミエである。精鋭中の精鋭の躯屡聖堕メンバーも身辺護衛に回っている。
どうやら身辺護衛を担っている面々は、過去にシルフィアやスミエに生命を救われたり助けられた人物らしい。故にその報恩度は計り知れない。生命哲学の理があるため、恩には報恩で返す事を地で行く熱血漢達である。彼らから本物の父親達を奪おうなど愚の骨頂だな。
更に防衛庁長官とガードラント王が全盛期に助けた面々も合流しだした。彼らが最前線で戦っていた証拠である。やはり本物は別格だわ、存在そのもので本物を呼び寄せるのだから。類は友を呼ぶ、の良いバージョンと言える。
そして極め付けは日本の対応だ。あれだけ悪態を付かれていた連中に反旗を翻しだした。特に一切の沈黙を守っていた自衛隊群と警察群が一斉に行動を開始。横槍が心配されそうな感じだったが、世論すらも反転攻勢は今だと叫び出していた。今が正に反撃の時である。
しかし実際には加担していた連中を捕縛ないし逮捕するに留まった。諸悪の根源たる連中は見つかっていないのだ。特に偽防衛庁長官と偽ガードラント王は雲隠れをしている。結局はテメェ等が劣勢に立たされると、部下を利用して逃げる愚物だったわな。
何にせよ、宇宙にまで火種をばら撒こうとする連中を野放しにはできない。あの2人以外にも居るであろう、真の黒幕を発見し捕まえるまでは油断は禁物だ。
まあ今となっては地球自体が総意となり、連中を追い回している感じである。更には3大宇宙種族が後押ししている事も挙げられる。また今の今まで世界中で肩身の狭い状態でいた、ガードラント一族も動き出したのだ。これは日本国内の同族達も同じである。
もはや連中に逃げ場などない。全ての生命を軽視し侮辱し、宇宙すらも己の糧として利用しようとする姿勢。これに強烈な鉄槌が下される時が来た訳だ。因果応報の理は鋭くも重く圧し掛かる。それを連中は痛烈なまでに思い知る事になる。
第6話・4へ続く。




