第6話 誘引の総攻撃1(通常版)
地元に襲来してきた機械兵士と人間兵士の混成部隊。それを身内だけで撃破していく流れを展開した。前回の黒服連中の大襲撃時は、最後は総出で当たる事になった。だが今回は本当に身内だけでの戦いとなる。
顕著なのがウインドやダークHを筆頭に、独立部隊とした警察群だろう。下手に大部隊を出せば、要らぬヤッカミが飛びかねない。ここは精鋭中の精鋭を集った感じになった。まあ警察群に所属する面々は、ウインドとダークHを含めて生粋の戦闘集団だからな。弱体化などする筈がない。
その中で奇跡は起きた。ボーっとしていた人工生命体の4人がミツキ達の窮地に加勢した。その後に命名をしたら覚醒したのだ。理路整然と解釈できる物事ではないが、4人の一念は俺達に匹敵する強さである。それに生命体として覚醒したのなら、彼女達を信頼せねば俺達の生き様が廃るというものだ。
以後は何時尽きるかも分からない軍勢を相手に、市街地での喧嘩大乱闘をし続けた。大騒ぎどころの話ではなかったが、皮肉にも地元の住人方にもこちらを知って貰う機会になった。災い転じて福と成す、正にその通りである。
周りに味方を多く作ればこちらのものだわ。それに俺達の戦いは私利私欲のものではない。現状は国自体が行うべき行動を名代で行っているようなものだ。この何処に私利私欲心があるのか教えて欲しいわな。
まあ理屈はどうでもいい。降り掛かる火の粉を払い続け、結果的に世上の安寧に近付ければこれ幸いである。そのための俺達の存在になるしな。まだまだ膝は折れんわ。
市街地での激闘を終えてから数日後。その間は全くの進攻はなかった。あのままこちらの疲労度を蓄積させる消耗戦を展開できたのだろうに。所詮は烏合の衆だわ。しかし何時でも攻めて来ても対処できるよう、最大限の準備を心懸けた。地元には迷惑を掛けるが、一番戦い易い場所で戦うのが無難である。
まあいざとなったら、レプリカヴァルキュリアなどで場所を変えるなり手法はなくはない。これ以上被害を拡大はさせたくないのが現状だ。例えバリアやシールドの恩恵があってもだ。
「こんな所かしら。」
「デカい姉ちゃん達だからチョイスが難しいわぅ。」
衣服がボロボロになるまで戦い続けた4女傑。後に女性陣が間に合わせの衣服を着用させたのだが、今さっきシュームとミツキが正式にバトルスタイルを確定させてきた。俺が性転換時に着用したダブルボディスーツである。胸がエラい強調されるのが何とも・・・。
「何ですか、またエロ目ですか・・・。」
「今は見てないだろうに・・・。」
「つまりさっきは見ていたという事ですね・・・。」
彼女達を見る目線に気付いたエリシェとラフィナから、強烈な殺気に満ちた目線で睨まれる。それを知った周りの女性陣からも凄まじい殺気に満ちた目線で睨まれた。その中でニヤケ顔のミツキには逆に笑ってしまったが。ナツミAは毎度ながら呆れ顔である。
「まあまあ。確かに体躯は女の私から見ても魅力的ですし。それにそのボディスーツ自体がラインを引き立たせます。貴方が性転換時に着用していた時も相当なものでしたよ。」
「はぁ・・・俺がミスT時には何も言わず、ミスターT時には言うのにはね・・・。」
「Tちゃんも罪な男わぅね、ウッシッシッ♪」
「本当だわな・・・。」
自分で言ってれば世話がない。しかしそれだけ男女比が怖ろしい事になっているのも事実だ。ナツミツキ四天王にエリミナとトーマスMは野郎だが、それぞれの行動をしているため不在。現状での野郎は俺1人で周りは全員女性なのだ。
ちなみに現状から喫茶店に駐留するようになった、トラガン軍団と躯屡聖堕軍団。その全員全てが女性である。エリシェやラフィナ、そしてエルシェナ達が抜擢した精鋭中の精鋭だ。下手な野郎の軍勢なんか足元にも及ばないぐらいの強者揃いである。
前にも挙げたが、これは地元に密着できる女性陣だからこそ実現できた。野郎の場合は武骨で目立ち過ぎるのが欠点だったからだ。やはり女性の力は本当に凄まじく、そして本当に素晴らしいとしか言い様がない。野郎なんざ足元にも及ばないわ。
また彼女達が活躍する姿は世界中が注視している。今も虐げられている各国の女性陣が奮起しだし、それぞれの地域で大活躍するに至っていた。身内の女性陣が世界中の女性陣の手本となるのには、本当に心から嬉しくなってくる。
「ほむ、やはり貴方は女性心がかなり目立ちだしていますね。」
「あれだけペンダント効果を使えば否が応でもなっちまうわな。」
「んにゃ、スミエちゃんが言っていた通りわぅ。Tちゃんが幼少の頃に女性の輪の中で育った事が淵源わぅし。それにTちゃん自身は諸々の揶揄はあれど、女性自体を心から敬愛しているのが痛感できるわぅよ。」
「そりゃそうだろう。世上の現状を見たか? 野郎の殆どが世上に悲惨や不幸をばら撒き続けている。そして苦しみ泣くのは女性と子供だ。そんな野郎の中の俺が言うのは本当に烏滸がましい感じだろうが、この現状を打開しない限り世上の安寧はない。」
自分が話している内容自体に怒りが湧き上がってくるわ。一体今までどれだけの女性達が苦しみ涙してきたか。やはり根底には新しい生命を宿し産むという苦痛を知るからこそ、周りに優しくできるのだ。まあ例外はあるが、ほぼ間違いなくそうであると確信している。
「はぁ・・・女としては嬉しいには嬉しいけど、君の場合は極端に突っ走るのがね。」
「本当ですよ。そして毎度ながらの自己嫌悪に陥ると。それがミスTの状態でも至るのですから性質が悪いの一言ですよ。」
「ハハッ、何とも。ですが私達宇宙種族からすれば、マスターの一念は大宇宙に帰結するかの様なものですよ。皆様方の概念からすると、それは地球的規模の視野でしかない。宇宙的規模の概念からすれば、貴方のその一念は常に肝に銘じ続けなければなりません。以前ルビナ様が仰っていたそうですが、些細な火種が銀河を滅ぼす事も有り得ますし。」
「言ってたね。相当怒りを顕にしてたわ。だから彼女達やお前さんはこの地球に留まり、バカな真似をする連中を監視し続けてくれている。本当に感謝に堪えない。」
確かに俺達は地球的概念での解釈度でしか量れない。対して宇宙種族の彼女達は宇宙的概念で物事を量っている。だから常に先手を打ち続けられるのだ。そしてその帰結先は悲惨や不幸への明確な怒りになり、更に淵源では生命を宿し産む女性への扱いへと至る。
よくよく考えれば、俺は自然的にここに帰結したと言っていい。確かにスミエも含めた女性の輪の中で育ったのが淵源だが、殆ど自然と帰結していったのだ。シュームやナツミYUへの畏敬の念もその流れである。今では全ての女性陣への畏敬の念に至っているが、これは決して間違った感情ではない。
何度も思うが、世上は女性が輝かしく動いてこそ成り立つ。破壊と混沌しか生まない野郎の時代は終わったのだ。それでも愚物共は我が物顔でのさばり続け、今もなお女性が虐げられているのが現状である。これ程の明確な怒りは他にはないわ・・・。
「ハハッ、失礼ながらも笑ってしまうしかないかなと。いえ、呆れではないのですけど。」
「いや、素直に呆れても良いと思います。それでも私達を心から敬愛して下さる一念は、素直に汲みたいものですね。」
「偽物のバカ父達はその事を全く把握していない。だからあそこまで愚かな行動に出ているのでしょうし。」
「偽物でも同じ血が流れる存在としては看過できませんよ。」
笑いながらも強く頷くヘシュナに、今も暗躍し続けるバカ父達に怒りを顕にするティエラとエシェムL。ヘシュナは幼少の頃に野郎にからかわれた事が淵源で、男性嫌いに至っていた。今はその気質は感じられないが、世上の破壊と混沌をもたらす野郎への怒りは忘れていない。ティエラとエシェムLも今も偽物のバカ父達、奴等が悪逆の限りを尽くしている事への怒りを忘れてはいない。共通するのは相手が野郎だという事だな。
「はぁ・・・これだから男は・・・。」
「おおぅ、出たわぅ! シルフィアちゃんの名言わぅね! 流石は師弟わぅ♪」
「出ない方がおかしいわ。これだから野郎は困る・・・。」
諸々の怒りが無意識に行動させたのか、性転換ペンダントを発動させてしまった。目の前でミスターTからミスTに変身する様を、周りの女性陣は驚愕する表情で見入っている。
「・・・あら、無意識に発動させちまったか。」
「おういえい! Tちゃんの女性心が突き動かされたわぅね!」
「と・・と言うか、今の様相だと完全に無意識レベルの変身ですよ。一切の概念を超越した純粋無垢の一念ですし。」
「はぁ・・・ペンダント自体が俺の深層を察知して発動した訳か。」
何ともまあ。確かにミュティナ達は各ペンダントの効果は扱い手に依存すると述べていた。最初に与ったペンダント群の時から今に至るまで、内面の一念は相当強まっていると言える。つまり必要以上の一念があれば、自然とそれに呼応して発動するのだろう。
「まあそれがペンダント群が望んでのものなら、拒否する必要はない。このままミスTの姿でいるわ。俺もその方が気が楽だし。」
「気が楽、ねぇ・・・。各種のケアをする身にもなって欲しいものよね。」
「本当ですよ。」
殺気に満ちた目線で睨むも、殆ど呆れ気味で溜め息を付く様に何処か安堵を覚えてしまう。それが同性から至るものなのかは不明だが、そこに愛情が感じられるのも確かである。そして人は1人では絶対に生きて行けないと痛感もさせられた。
「持ちつ持たれつ投げ飛ばす、わぅね♪」
「ああ、本当にそう思うわ。お前さんの概念は万能戦闘戦術だしな。本当に感謝している。」
「ほーほーほー、わたに感謝するとはコソバユイわぅよ。」
「私も影響を受けたクチだけど、殆ど私達全てミツキ流の生き様が根付いているからね。それは利他の一念、敬い・労い・慈しみの精神が根幹でも。本当に素晴らしい妹よね。」
「にゃっはー、ありがとです♪」
何時になく嬉しそうにするミツキに、自然とノホホンな気分になっていく。それは俺だけではなく、周りの面々も同じ様相のようだ。これが純粋無垢の生き様を刻むミツキならではの、正に万能戦闘戦術とも言い切れる。
第6話・2へ続く。




