第5話 市街地の共闘1(通常版)
ヘシュナの電気治療法こと強化法を身内全員に施した。彼女の力は他者の潜在能力を高めるようで、例外漏れず格段に力を増している。俺もその中の1人だが、それを用いてある事を試みた。ヘシュナの力で強化されている状態で、殺気と闘気の心当てを一同に放ったのだ。
これも例外漏れず、該当者全員が気絶するという事態になった。ナツミツキ姉妹以前に、シルフィアやスミエですら気絶したのだ。相当な念波だったようである。これは先の料亭事変で連れ帰った4人の人工生命体に放ったものだ。それを一緒に受けるという事に至った訳だ。
その後は言うまでもない。それぞれが持ち得ている能力が底上げされ、凄まじいまでの力を得るに至った。特に3大宇宙種族の力が凝縮されたペンダントを最大限活用できだしている。ミツキやヘシュナがルビナの超能力を意図も簡単に使えたりと言った具合だ。
そもそも最初は俺の右肩と右腕の負傷の治療に用いたのが切っ掛けである。ルビナが繰り出す事ができる電撃をヘシュナが模写したものだ。そこに彼女の能力が重なり、治療的な力になった訳である。それを数週間受けていた俺は、1日だけ受けた周りの面々を遥かに凌駕する力を得た感じになる。言わばこれは副産物であろう。
その後が手前に挙げた流れである。料亭事変での流れで連れ帰った4人の人工生命体に、自我を持たせるにはと試みたのがこれであった。まあ俺達の方にも凄まじい恩恵を与える事になったのが皮肉な話だが。
ちなみにその事変の後日、ナツミツキ四天王とミュティ・シスターズにも施した。こちらも先の一同と同じく気絶する事態になったが、復活したら例外漏れず格段に覚醒した。やはりこの7人全員が元から戦闘力が格段に強いため、直ぐにその力を開花した感じだろう。本当に怖ろしい強化法だわ・・・。
「これ頼むわぅ。」
「了解です。」
厨房でお客さんのオーダーを完成させるミツキ。それをカウンターに置くと、ティエラがトレイに乗せてお客さんへと運んでいく。ほぼ修行を完成させたティエラとエシェムLは、今ではトラガンの女性陣に匹敵するような戦闘力を持つに至った。
「ここに居て大丈夫かと心配になるが。」
「大丈夫ですよ。バカ父達が軍勢を仕向けて来たら、全部撃退してやります。」
「はぁ・・・そうですか。」
出逢った頃の内気な彼女達は、今では見る影もないぐらいに明るく元気である。いや、本来はこの様な姿だったとの事だ。優しい父親達に育てられたのがそれだと言う。しかしその後の流れで一変し、あの護衛事変となった訳である。
「デュリシラ、様相はどうだ?」
「全く以て変化なし、大人しいものですよ。恐らく、貴方が本気で怒り攻めてくる部分を垣間見たからでしょう。加えて殺気と闘気の心当ても目の当たりにしていますし。」
「あんなの全く以て本気じゃないんだがね・・・。」
俺の言葉に周りの女性陣はウンウン頷いている。料亭事変では触り的な感じでの念波だが、その後の喫茶店での流れはそれ以上の様相だ。もれなく周り全員が気絶したのだから。恐怖と言うよりは、死そのものがそこにあると錯覚するようである。
「貴方の殺気と闘気の心当てには、そこに慈愛も癒しも全くありません。純粋無垢の恐怖と殺意と死というマイナス面の様相と。よく私達が貴方に殺気の目線をしますが、あの場合はそこに慈愛などがありますし。」
「放ってる本人が言ってりゃ世話がないわ。」
「フフッ、本当ですよね。」
あの強烈な念波を受けた面々は、凄まじいほどの据わりを見せてもいる。肝っ玉が据わったとも言えるだろう。微動だにしなくなったと言うのが実状か。本当に女性は強いわ・・・。
「あの念波を受けて、正気を保てるのは変人ぐらいだと思われます。」
「うにゅ~・・・実際に放ったTちゃんすらも気絶しそうになったそうわぅし。」
「つまり変人という事でしょうか。」
「んにゃ、Tちゃんは元から変態わぅ!」
「はぁ・・・。」
ミツキのボケにティエラとエシェムLが爆笑する。2人とも生粋のお嬢様なのに、今では普通の女性そのものだわ。いや、先も挙げたがこれが本来の姿なのだろうな。人は環境に支配され易いと言うが、この2人を見ればそれが痛感できる。
「それでも現状は前途多難状態なんですけどね。」
「うむぬ。こちらがありとあらゆる戦術や戦略を展開しても、それ以上の様相で攻めて来るわぅし。まあ絶対悪や諸々の兵器を無力化できるのが幸いだけど。」
「通常戦力だと拮抗している状態だからな。連中は起死回生の一撃を狙っているだろう。ミツキが言う絶対悪を用いれば容易いが、俺達には一切通用しないしな。」
「そうなれば、残りは総力戦という事になりますね。」
ブラインドタッチで調査を続けながら語るデュリシラ。攻めて来るなら四六時中引っ切り無しに襲撃してくるだろう。それをしないところを見ると、まだまだ兵力が足りない証拠だな。ただ機械兵器以外に人工生命体も投入するとなると、相当な激闘になりそうである。
今もDJブースの近くで鎮座している4人の人工生命体。強烈な念波を受けて気絶はしたのだが、それ以降は全く反応がない。生きている事は確かだが、生物に必要な外部からの力の摂取すらしないのだ。いや、恐らく今も眠っている感じなのだろうな。
「キーパーソンはあの4人か。」
「ウンともスンとも言わないですし。ただ確実に言えるのは、今も生きているという事でしょうか。思われた通り、今は眠っている感じだと思います。」
「本当に摩訶不思議な感じだわ。」
今では胸中の思いを見透かされるのは日常茶飯事だが、それだけ意思の疎通が取れている証拠である。つまりそれこそが念話という事になるだろう。不思議な話だが、遠回りしての回帰先という事になるわな。
「ウンともスンとも言わねぇです。」
「無線封鎖して行方をくらます気だね。」
「ママ、“飛行戦艦”の方が足が速いよどうするの?」
「あたしらは奴の風上にいるんだ。貿易風を使って・・・これはね、東洋の計算機だよ。」
「それ、某名作アニメの空中海賊一家・・・。」
「アッハッハッ!」
デュリシラが言った“ウンともスンとも言わない”という語句からの派生だ。某名作アニメは空中海賊一家の会話の一コマである。それを見事に再現してみせた。
ミツキはマンガやアニメに非常に良く精通しており、デュリシラも生粋のゲーマーからその流れに至っている。当然ナツミAも四天王もしかり。そしてティエラとエシェムLもお嬢様らしからぬマンガとアニメの知識が豊富で、ミツキが言ったネタに即座に反応を示したのだ。
ネタを始めた直後から呆気に取られるデュリシラだが、最後の俺の言葉で大爆笑しだした。よくぞまあ次から次へとネタが出るものだわ。本当に感心してしまう。
「まあ何だ、今は待つしかないわな。」
「その時が来るまで、静かに牙を研ぎ澄ませておきましょうかね。」
一服しながら呟いた。今は完全に後手に回っている状態だ。相手の出方が分からない以上、下手に動くのは得策ではない。最大限の脅威となる絶対悪やその他の脅威兵器の兆しのみ、重点的に警視していけば良いだろう。直ぐに無力化できるようにしておけば安心だ。
何だか完全に国家以上の役割を担っている気がしてならない。連中の世界規模での行動を警視している事から、もはや警護者の枠を超越している感じになる。しかし今はこの大役を担わなければならない、それだけの事である。
ならば徹底的にその役割を演じ切り、己が生き様を貫き続けるのみだ。それができるのも今の俺達に他ならない。とんでもない所まで至ったものだが、それも全ては世上の安寧を勝ち取る戦いに帰結する。それに少しでも貢献できるなら、俺達の存在は決して無駄ではない。
「ぬぅーん、暗躍してるわぅ。」
「本当だわな。」
それから数週間後、流れは好転しだした。明らかに暴君さながらのバカ父達に、世論が反撃を開始しだしたのである。だがそれで黙っている連中ではない。権力者の最終手段は武力で圧倒しだすのが世の常だ。実際に理不尽な戒厳令を引き出しているのだから愚かである。
「でも今なら確実に分かる。あの2人は本物じゃない。人工生命体に何らかの力を加え、真逆の属性にしているようだ。」
「以前までは全く分かりませんでした。しかし先日、貴方から受けた念波の影響で私達もそれなりに掴めるようになっています。確かにアレは父ではありません。」
「人ならざるもの、ですか。本来なら絶対に有り得ない事ですけど、それが罷り通るのが摩訶不思議な所でしょうか。」
「だな。となると、本物の父親達は何処にいるんだか・・・。」
問題はここである。もし今のバカ父達が偽物だとしたら、本物は何処に幽閉されているかという事になる。その場合は奥の手として人質として出してくる事も考えられる。先手を打って救出できれば万々歳なんだが・・・。
「そのための暗躍者でしょうに。そこは師匠と一緒に何とかするわ。君は矢面立って連中の目を引いて頂戴な。」
「大丈夫ですかね・・・。」
「Tちゃんやシルフィア様ほどではありませんが、それなりに力を開花させて頂きましたし。問題ありませんよ。」
「師弟共戦の理を連中に見せ付けてやるわね。」
「すみません、恩に着ります。」
紅茶を飲み終えると、身支度を済ませて出発するシルフィアとスミエ。既に準備はできていたようで、後は動くだけのようだ。その背中からは警護者の覇気の様な力が放たれている。この2人なら全く以て大丈夫だわ。
第5話・2へ続く。
天空の城ラピュタのネタが@@b 直接タイトルなどを挙げるのはマズいので、こうして捩るしかありません><; しかし、警護者の終盤の部分(描写)、探索者の影響が大きく出てしまい書き直しを余儀なくされた感じで、まだ完全に完成はしていません><; 先は長いですわ(-∞-)




