表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第3部・帰結の旅路
275/544

第4話 人工生命体3(通常版)

 それからは仲間内の面々にヘシュナの治療法もとい強化法を施して回った。妹のヘシュアも試みたが、姉には遠く及ばず論外レベルとなっている。カルダオス一族で戦闘力が皆無に近いヘシュナだからこそ成し得る業物だろう。ヘシュアは戦闘力があるため出せない感じか。


 しかし相互作用からその力が覚醒しだすのもまた事実。ヘシュアも何度か行うと、何と姉に近い様相にまで強化されだしたのだ。そこで彼女の親衛となるメンバーも行う事にし、実力を得る形にした。結果は直ぐに現れだすのだから怖ろしい。流石は宇宙種族である。


 その後は言うまでもなく、凄まじいまでの戦闘力強化に至った。たった1日だけ強化法を施すだけで、従来とは見違えるような様相に覚醒したのだ。多用すると問題が出そうな感じが予想されるが、俺自身へ数週間は施されていた。現状を踏まえれば取り越し苦労だろう。


 この強化法の施しが、今後の戦闘で何処まで効果があるか。実際に戦ってみないと分からないだろう。まあ確実に言えるのは、怖ろしい展開になる事は明白である。何とも。


 ちなみに地下工房で作業中のナツミツキ四天王とミュティ・シスターズにも施してある。元から戦闘力が格段に強い7人からか、直ぐにその力が開花されだしていた。本当に怖ろしい強化法である。




 殆どの仲間内に強化法を施し、最後はドクターTに変身中のシルフィアとなった。ただ彼女は敵陣に潜入中なため、どうやって合うのかが問題だった。そこはミツキとナツミAの奇策が炸裂する。


 それはエリシェ達と大々的に対話を行う流れを設けた。ただこの場合は実際に対話を行う流れを設けるものではない。シルフィア自身への強化法の施しのみに重点をおいた。そこで酒場と題して飲み会に発展させたのだ。これならお酌をする感じでの接触も可能だ。


 しかしこの場合はミスターTは死亡扱いなため、性転換状態のミスTで参加する事にした。俺が両者同一だと知っているのは黒服連中と軍服連中だけだが、その面々は既に捕縛されて諸々の記憶を消されている。別人として扱われるだろう。


「考えたわねぇ・・・。」

「接触を図ろうとする手順はいくらでもある、だな。」


 都内は料亭での対話の場。芸者に扮した俺やヘシュナがドクターTことシルフィアに接触。その間にヘシュナの強化法が施される。俺はその間のお酌係りである。


「着物を着たのは初めてですよ。」

「俺もそうよ。特にこの状態では初めてだわ。」

「エラい似合っているからむかつくけどねぇ。」

「ハハッ、まあそう仰らずに。」


 ガードラント王と防衛庁長官の元に付いているドクターTことシルフィアだが、監視の目は事の他甘いとの事である。どうやらミスターTが死亡した事で、自分達の天下が実現できると本気で信じ込んでいるらしい。つまり彼女もまた駒の1つに過ぎないという事だ。


「恩師を何だと思ってやがるんだか・・・。」

「まあね。でもその分、ガードが甘いのは良い事よ。警護者出身という肩書きが安心をもたらすのでしょう。連中は私にこの場の代理人を一任したけど、全く以て信じていない感じだろうし。」

「向こうにとっては、何れ排除する対象になるのでしょう。その場合は何時でも念話などを通して支援要請を。直ぐに馳せ参じます。」

「その場合は私が赴きますよ。娘を見縊っているのなら、それ相応の対応をさせて頂きます。温和に見えているような私ですが、胸中は怒りが渦巻いていますから。」

「ハ・・ハハッ・・・。」

「ばあさまの本気は怖いからの。」


 本当にそう思う。ドクターTことシルフィアの顔を引きつらせて怖がる仕草、これを見れば一目瞭然だわ。シルフィアとスミエの共にいる時間は誰よりも長いのだ。それ故の怖がりとも言える。俺もそれなりの時間はあるだろうが、記憶を失った部分を差し引けば非常に短い。


「・・・でも本当、身体の底から力が漲ってくる感じよね。」

「そうでしょう。今まで施してきた方々全員がそう仰られています。それにマスターが仰るには、素体の基本能力と言いますか。それが高い人物ほど凄まじい力を発揮するとも。」

「これらを放ち続けるヘシュナ自身にも、相乗効果で恩恵に与るのだから怖ろしいわな。」


 ヘシュナは無論、ヘシュアや親衛のメンバーやその他の面々。カルダオス一族の主力陣がこの強化法を実践した。その力を使えば使うほど、自身も戦闘力が格段に向上するのである。特に強化法を行った回数が多いヘシュナが如実に現れている。


「でもさ、君の方が物凄くなっている感じがするんだけど。」

「本当ですよ。凡人の私からしてもそれが痛感できますし。」

「この強化法を受けた方々は、例外に漏れず個々人の特技が強化される感じですよね。」

(わたなんか凄いわぅぜぇ~!)


 念話が伝わるか否か、何とそれぞれの面々に癒しの念波が伝わってくる。ミツキは強化法を施された直後から、その能力が開花した感じになった。十八番とも言える癒しの一念は、心を穏やかにさせるのである。不安や恐怖の一念が一瞬にして消え去るのだから怖ろしい。


(な・・何なのこれ・・・。)

(ウッシッシッ♪ わたを見縊って貰っては困るわぅ。姉ちゃんなんかもっと凄いわぅよ。)

(フフッ、そうね。)


 今度は超絶的な恐怖の念波が伝わってくる。それに俺を含め、念話を感じ取っている面々は恐怖に駆られだした。ミツキが癒しの一撃なら、ナツミAは恐怖の一撃である。怖ろしいとしか言えないわ・・・。


(ハハッ・・・ナツミAちゃんのそれ、毎度ながら良く効くわ・・・。)

(本当ですよね・・・。)

(そんな事ができるようになるとはね・・・。)


 ナツミAの恐怖の一撃を受けた面々は、口を揃えてその恐怖度を物語る。生物に必ず訪れる死という現実を、この恐怖の一撃に垣間見る事ができた。それだけ強烈な一念となる。


(と言うか、Tちゃんの殺気と闘気の心当てなんか超ヤバいわぅよ。)

(あー、そうよね。ヘシュナさんの強化法が当たる前から、愚者を廃人に近い状態にまでさせたのだから。更に私達は1日程度の強化法の施しだけど、Tさんは数週間はそれを受けているし。)

(・・・ここは1つ、受けてみるか?)


 態とらしくニヤケ顔で語ると、とんでもない・結構だといった感じの念話が方々から伝わってきた。何ともまあ・・・。


 今のナツミAの恐怖の一撃でも相当なものだったのだ。それ以上のものだとすると、とても常人では耐えられる訳がない。これはナツミツキ姉妹・ナツミツキ四天王を助ける時、実際に愚者に殺気と闘気の心当てを放った事がある。


 未強化と言ったらヘシュナに失礼だが、その状態でも相手を廃人にまでさせたのだ。今の強化法を施された俺なら、確実に心が折られて即死しかねない。死亡はしないだろうが、二度と常人に戻る事はできないだろう。


(でもさ、その殺気と闘気の心当てが癒しの一念込みだったら・・・。)

(あー・・・慈愛の一念ですか・・・。)

(受けてみたいですよね・・・。)

(勘弁してくれ・・・。)


 今度は3人からの強烈な望む声が挙がる。この姿勢には毎度ながら参るしかない。それを伺った面々は笑っていた。そして今思ったが、意思の疎通たる念話の強さが更に変わった感じに思える。今まで以上に濃密な内容が伝わってくるのだ。


(念話は使い手の強さにより上下する、か。)

(本当にそう思います。しかもそれが善心を持たねば発揮する事ができない。恐らく連中はこの技術も使おうと画策するでしょうけど、絶対に使う事はできないでしょうね。)

(3大宇宙種族の方々が技術力、これらを用いるようになる時に予測したのでしょう。何れ必ず悪心を持つ面々が、この技術力を使おうと画策する事を。)

(そうね。それらを阻止するべく、善悪判断センサーたるものを施した。それが今に至る。ガードラント一族が模写に関して強いと言うも、生命自体に帰結する部分までの模写は不可能よね。)

(生命体自体に元来から内在する、それぞれの力か。極論だと魂などの部分になるわな。)


 毎度ながら痛感させられる。俺達全員に内在する生命の力は、如何なる邪心をも跳ね除ける。上辺では凡夫故に四苦八苦の業苦は舞い降りるが、根底の生命力までには及ばない。何ものにも侵略できない顕然とした領域とも言い切れる。それが俺達に備わっているのだ。


(・・・膝など折ってなるものか。全ては総意の安寧を勝ち取るための戦い。それにこれらは俺達が生きる今世で達成できるとは思えない。永遠と続く闘争そのものだしな。)

(そうですね。生きる上で必ず通らなければならない苦痛の道でも。しかし私達にはそれを跳ね除ける力も備わっている。後は簡単、我武者羅に突き進めと。)

(本当にそう思います。T君が常日頃から心懸けている一念がここに集約していますから。)

(烏滸がましい感じだけどな。それでもその一念や役割で世上の安寧が勝ち取れるなら、俺は鬼にでも悪魔にでも何にでもなってやる。絶対に退かんよ。)


 懐から煙草セットを取り出し、徐に一服した。とにもかくにも、己が生き様自体で全て変化していく。何処までも貪欲なまでに貫き通せるかに掛かってくる。本当に重要な概念だわ。


「よし、粗方終わりました。どうでしょうか?」

「ふぅ・・・物凄い事になってるわ。身体の底から湧き上がるパワー。これなら不測の事態への対応は大丈夫そうね。」

「その生命力なら直ぐに察知できるので、非常時は転送装置で馳せ参じますよ。」

「すみません、お言葉に甘えさせて頂きます。」

「よし、では撤収する・・・訳にはいかないか。」

「ですねぇ・・・。」


 丁度ヘシュナの強化法が終わった頃に、明確な敵意を感じ出した。前の俺達なら微々たるものには反応は疎かったが、今は強化法の恩恵で物凄く敏感に至っている。そこら中からの敵意が関知できるぐらいだ。


    第4話・4へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ