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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第3部・帰結の旅路
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第3話 策士と愚者2(通常版)

(まあ諸々は分かった。気になるのは今後の動向だが、今は待つしかないか。)

(絶対に歩み寄って来ますよ。それが私利私欲に溺れた愚者の姿ですから。)

(そして自らの重みに耐え切れず自滅すると。それが悪たる証拠だからね。)

(そうだな。)


 ここは連中の必要以上に力を求める欲望に賭けるとしよう。まあ先の激昂軍服男事変や、その後の黒服軍服軍団事変の時も同じだった。こちらの力を欲している事には変わりない。しかも今は相手の実力はそれ相応のものを持っている。それ以上の力を求めだすのは明々白々であろう。


(全部終わったら俺は寝る。)

(・・・まさか、ペンダント効果で睡眠を取っていないとか?)

(半年前にコイツを演じだしてから一睡もしてない。以前お前さんから貰った状態維持のペンダント効果で、この様な人外的な様相に化けた。お陰様で無尽蔵に動けるがの。)

(はぁ・・・本当に使うとは・・・。その反動ですが、数日間は起きられないぐらいの眠気に襲われますよ。後先考えずに使うのは・・・。)


 呆れ顔のミュティナに驚くも、今となっては仕方がない状態である。等価交換の理は凄まじいものがあるのは承知済みだ。無尽蔵で動ける見返りに、以後の行動に支障を来たす事は明白である。ただそれが現段階の特効薬になっているのは間違いない。


(寝過ぎて死ぬんじゃないかね・・・。)

(大丈夫だと思います。ただ終始眠気に襲われ、まともな行動はできなくなるのは間違いありませんが。)

(ぬぅーん、当面の添い寝が必要わぅ?)

(何とも。)


 ミツキのその言葉の直後から、方々から凄まじいまでの妖しく輝く瞳が突き刺さってくる。その添い寝を共にしたいという一念である。俺としては有難いものだが、取って食われないか非常に心配である。


(フフッ、懐かしいですね。Tちゃんが幼少の頃、何度か添い寝をしてあげた事があります。あれから25年以上経つんですね。)

(おー、わたはまだ生まれてないわぅよ。)

(そうですね。ただ生命の理からすれば、もしかしたら前世の貴方がまだ活躍されていたかも知れません。生まれ変わるのは長い時間を要する場合と、逝去後から直ぐに誕生するみたいですし。実際に見た事はありませんが、その様な事例を数多く見てきましたから。)


 スミエの胸中が念話を通して脳裏に描写される。当時の幼い俺がスミエに添い寝され、就寝している場面だ。その姿を見て、無意識に涙が流れてきた。しかし仮面によりそれを知られる事はないが。


(無駄ですよマスター。何のための意思の疎通・念話なのです。貴方が昔を思い起こし、涙される姿は一同全てに伝わっていますよ。)

(本当ですね。またマスターは航空機事変で過去の記憶を失われましたが、その涙は実際に脳裏に焼き付いた記憶を呼び起こすものでしょう。無意識に涙されるのが証拠で。)

(記憶喪失に至ろうが、君が築いてきた生き様は絶対に消えないわよ。マスタースミエの記憶が過去を描写し、それを見て過去を思い起こす。理路整然と解釈できる物事ではないけど、実際にそれが存在するのが生命の理だからね。)

(ですね。)


 涙が流れる現状を全て周りに察知されていた。仮面のままで外見は分からないが、仮面の中は涙で溢れている。そしてその涙にこそ、己が生き様の全てが込められていると断言ができた。


(スミエさんは、数々の同志を見守り続けて来られたのですよね・・・。)

(そうですね、そうなります。先に旅立たれた方も数多くいました。私もTちゃんと同じ老化が訪れない体質と、常人では考えられない治癒能力から長生きができていますし。)

(長生きすればするだけ、辛く悲しい出来事を見続けなければなりません。むしろ後世まで生きる者として、それは先に旅立たれる者の分まで生き抜く使命でもあると思います。)

(ミュセナ様は数え切れない戦乱を見て来ましたからね。)


 意味ありげに語るスミエに、静かに頷くミュセナの姿が脳裏に浮かぶ。年代的にシュームと同じな彼女だが、実年齢からすれば俺達よりも遥かに長生きをしている女傑だ。しかも地球以外での戦乱を見てきていてもおかしくはない。


(ええ、思われた通りで。それだけ宇宙は広大なのです。私達がここまで地球の安寧に固執するのは、その戦乱を二度と起こさせないためのものですから。)

(本当ですよね。若輩ながらも先輩と同じく数多くの戦乱を見てきました。地球内のイザコザなんか、まだまだ生易しいものですよ。それこそ惑星自体を、その銀河系自体が滅んだ姿も見てきました。)

(その先は言わんでいいよ、十分伝わってくる。)


 一際熱く語ろうとしたルビナを制した。脳裏と胸中の壮絶たる思いが彼女を悲しませている。その思いだけで十分である。今の俺には彼女達の総意を汲み、目の前の安寧を勝ち取る戦いを続けて行くのみだ。


(諸々全て承知した。今後も俺は悪の権化として、世界の安寧を掴む戦いをし続ける。)

(むぬっ?! これはダースTの誕生わぅか?!)

(ハハッ、案外それもハッタリとなりそうだわ。)


 悪の権化からの連想は、某宇宙戦争で最強の悪役たる漆黒の暗黒卿氏である。確かに初期の頃はその人間性を感じさせない姿から、正に悪の権化たる出で立ちをしている。しかし実際には、大切なものを守りたいがために悪道に落ちた青年だった。俺も彼の様に誤った道に進まないように心懸けねば。


 今後の流れを打ち合わせしつつ、相手から連絡が入るのを待った。待つのは性に合わない感じだが、幸いにもこちらには超絶的な力がある。提携ないし共闘すれば、それらの恩恵にも与れるのだ。俺が悪党なら確実にアポを取るわ。


 まあ全ては世上の安寧を掴む戦い、そのための悪役である。今後も貫き通してやるわ。




「なるほど、確かに興味をそそられる。」

(追って連絡を入れよう。考えておいてくれたまえ。)


 拉致事変から数日後。何処でどう察知したのか知らないが、こちらに引っ切り無しに提携や協力の誘いが舞い込んでくる。まあ今はレプリカヴァルキュリアで行動をしている。ここに直接連絡を入れて来る形だろう。


「はぁ・・・何だって相手は見下した形なんですかね。」

「超絶的な力を持つ故に、気迫だけは優位に立ちたいのだろうな。」

「私達が何度か話し合いを持ち掛けた時も、やはり見下す感じの流れを見せてます。実にバカげてますよ。」


 通信を終えると周りは溜め息を付く。そこまでして力を得たいのかと呆れる部分だ。かく言う俺も同じである。


 ちなみに仮面の警護兵たる存在は、エリシェ・ラフィナ・ミュティナにも仮面を着けさせた仮の姿だ。仮面の帝王ことヘシュナと同じく、黒ローブに仮面を着けた形で居て貰っている。また位置付けはこの流れになる。仮面の警護兵はエリシェ、仮面の交渉兵はラフィナ。そして仮面の救護兵がミュティナとなる。


 役割方はその流れになるが、呼び名は従来のままにしている。しかし部外者にはこの役割の呼び名で呼ぶしかない。かなり厄介な言い回しになるが・・・。


「ミツキ様も本当に凄いですよね。本来なら捕縛され役のまま待機の私達を、お兄様の身辺警護に回すというのは。」

「本当ですね。それにヘシュナ様と同じ黒ローブと仮面を纏えば、マスターと同じ輩と思われるでしょう。」

「“竜の教条追加版”の某組織みたいな感じだわな。」

「ハハッ、本当ですよね。」


 以前にも上げた、ゲーム“竜の教条”と派生の“追加版”。ここに登場する暗躍する秘密結社が某組織という連中だ。主人公と真逆の存在で、世界に破壊を望む集団である。まあ最後は自然消滅していく形ではあるが。


「あの場合は宿敵氏を召喚して、世界を破壊する事を目的とした集団だったな。」

「ですね。首領の死亡で空中分解した形ですが。」

「首領氏か。宇宙戦争のローブの暗黒卿氏よりも哀れ極まりないわ。いや、比べるだけ失礼かも知れないわな。」

「長い期間を掛けて正義の騎士の抹殺を目論み、宇宙に銀河帝国という恐怖政治を展開していきましたからね。」

「首領氏の場合は本当に小物に過ぎないわ。」


 首領氏とローブの暗黒卿氏との差は歴然だろう。顕著なのがその実力にもなる。前者は魔法使い程度の力しかないが、後者は長年暗躍してきた暗黒卿の主の力を持っている。その実力は偉大な正義の騎士の小さき超闘士氏と互角だ。まあ生命体故に、歳などには絶対に敵わないが。


「ローブの暗黒卿氏も首領氏も、外部に力を求め過ぎる。自身の戦闘力もなかなかのものだが、それ以外での力を使おうとしていた。弟子や配下、竜氏の利用。」

「お兄様が以前仰っていましたよね。力とは己の力で掴み取ってこそ、だと。」

「全部が全部じゃないが、大体は正にそれよ。そして成長させていく所にこそ、重要な意味がある。そしてそれを何に使うか、これだろう。」


 力の誤った使い方の末路は目に見えている。実際に数々の愚者が私利私欲に溺れ、そして自滅していった。俺達の行動も外部からはそう見えはなくはないが、根底の一念次第では全く変わってくる。


「悪役も大変だわな。」

「まあそう仰らずに。一歩一歩進んでいってこその様相ですからね。」

「守る意味はあるのか疑問に思うわ・・・。」


 どうしても浮かぶのは、これだけ悪業が多い一部の人類を守る意味はあるのかと。全部が全部ではないが、この部分だけはどうしても過ぎって来る。


「・・・いや、それを考えるのは止めよう。3大宇宙種族が命懸けで守ろうとしている。しかもスミエ自身も己が生き様を投じてきた一念だ。それを無碍にはできない。」

「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。悪党は自然沙汰されるのが世の常です。ホンの少しだけ押すだけで更なる自滅の道に進みますし。」

「3大宇宙種族の方々は宇宙を主体とする、いわば調停者と裁定者の警護者そのもの。私達は地球を主体とする警護者ですからね。今は烏滸がましいも調停者と裁定者の大役を担っていますが、全て終わればそれらは消える定め。その日まで今後も突き進みましょう。」

「ますます以て奮起せねばな。」


 どんなに疑念や疑惑が出ようが、結局は回帰する先は定まっている。そこに行き着く流れは、本当に有難いものだわ。それが欠落したら、力を持つ者としての俺達は破壊者に堕落する恐れも十分ある。それだけは絶対に阻止せねばな。


    第3話・3へ続く。

 補足までに@@;;;


*竜の教条:ドラゴンズドグマ(追加版=ダークアリズン)

*首領:エリシオンさん

*漆黒の暗黒卿:ダース・ベイダーさん

*ローブの暗黒卿:シーヴ=パルパティーンさん

*小さな超闘士:ヨーダさん


 それなりの表現は挙げるものの、しっかり名前を捩らねば・・・><;

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