第4話 超長距離精密射撃1(通常版)
都心の暗殺者を逮捕という名目で保護したエリシェ達。今は警察庁で厳重に警護している。その人物自身、相当の腕前を持つ狙撃手としても有名との事。だから暗殺者の異名が付いたのだろうな。
そして悪道に走る連中のみを狙っていたため、今では敵対者に大変な目の敵にされている。それを憂いての逮捕という名の保護のようだ。
う~む、独自ルートで開拓した道筋か。暗殺者という異名は持つが、その人物は十分警護者としての存在感が溢れている。問題は同調できるかどうかだが、まあ問題はないだろう。
ちなみに今回はエリシェ達も同伴という事だ。13人の女性陣が集ったため、シュームやナツミYUからは終始殺気に満ちた目で睨まれているが・・・。
またミツキとナツミAも一緒である。先日調整が終わった獲物を持参してくれた。更に新型兵器も多数作ったとの事で、これは実際に戦闘で使う事になりそうだ。
「お連れしました。」
今は警察庁本庁にいる。ここなら要らぬ妨害はまず入らない。その中でエリシェが暗殺者を連れて現れた。傍らにはウインドとダークHもいる。
「う~む、女性だったのか・・・。」
半ば護送された暗殺者を見て驚いた。てっきり男性かと思っていたが、実は女性だったのだ。青髪の美丈夫で、丁度ナツミYUぐらいの背丈だろうか。
「初めまして、かな。ミスターTと言います。まあ覆面の警護者の方が分かるかと。」
「あ・・貴方が伝説の警護者・・・。失礼、私はデュリシラ=リムティレスと申します。」
「よろしく、デュリシラ。」
う~む、もっと恐々した存在かと思っていたが・・・。ナツミYUやシュームみたいに、普通の女性そのものである。これで独自ルートで警護者の道を開拓したというのだから、その手腕を買わざろう得ないわな。
「あ、ウインドちゃん・ダークHちゃん。頼まれてたブツわぅよ。」
そんな中、包み紙を開けて中身を取り出すミツキ。中身は実に不思議な獲物が入っていた。分かるのはゲーム内で登場するような武器である事だけか。
「ありがとうございます。これで格闘術は安心ですね。」
「これさ、方天画戟みたいな奴か?」
「そうですね。撃剣という逆手持ちで扱う刀剣です。」
「奥の手の武器わぅね。」
それぞれの撃剣を受け取ると、専用のホルスター型ケースに入れる。一度背広を脱ぎ、それを背中に背負った。そして再び背広を着用する。丁度俺が携帯式にした方天画戟と同じ様だ。
「拳銃だけでは厳しい場合がありますので。ミツキさん方にご依頼して、格闘武器を作成して頂きました。」
「これで拳銃を奪われた時は無防備にならずに済みますね。」
「だな。お前達から格闘術を学んだ手前、その技に獲物が合わされば鬼に金棒だろう。」
相当前にウインドとダークHを警護した時があったが、その時は見様見真似の格闘術で応戦するしかなかった。それを気にしてか、以後の数ヶ月は2人からミッチリ格闘術を伝授して貰った事がある。前にも言ったが、俺の格闘術に関しては2人は師匠そのものだ。
「警察庁長官自らが、君と顔馴染みなのは何ともねぇ。」
「師匠であり弟子であり、わぅね。」
「2人のお墨付きがあるから、こうして重火器を合法で持てるんだがね。」
ミツキがその他にも持参した重火器や獲物をそれぞれの面々に渡していく。四天王お手製の特別仕様の獲物ばかりだ。一応大盾火器兵器もあるが、とても常人じゃ持つ事ができないほどの超重量兵器である。
「というかさ・・・男性が君1人だけなのがね・・・。」
「見事わぅね。」
俺も新調した日本刀を腰に装着してると、エラい殺気立った表情で語るシューム。確かに今のこの場には俺以外の野郎は誰もいない。全員女性というのが何とも・・・。
「猛攻はお前やナツミYUだけで勘弁して欲しいんだがね・・・。」
「プライベートなら容赦しないわよ。まあ今は本命があるから黙認するけど。」
「後で諸々、じっくりとお伺い致しますね。」
う~む・・・これは後が大変な事になりそうだわ・・・。2人から半端じゃないジェラシーが感じられる。本当に女性は強くて怖い・・・。
「ところで、デュリシラちゃんは何時頃に何処の空港に送るわぅ?」
「羽田空港に約5時間後です。少々早く動きましたが、万全を期した方が良いでしょう。」
「まだまだ時間はあるわぅね。近場の葛西臨海公園にでも行こうわぅよ!」
かなり時間があるため、ミツキが息抜きにと葛西臨海公園へ赴く事を提示しだした。それに呆気に取られる面々だが、ある意味これが妨害要素を掻い潜る一撃になるのかもな。
「ハハッ、灯台下暗しな感じだわな。分かった、葛西臨海公園で待とう。」
「移動はどうするわぅ? 護送車両とか目立つ乗り物だとマズいわぅよ。」
「あー、そこはお任せを。少々狭いが何とかなるだろう。」
意味ありげに微笑んでみせる。裏の裏を付くなら、案外武骨な姿の方が良いだろう。一同には待って貰い、ミツキを同伴して一度喫茶店へと戻る事にした。
今は環七を葛西臨海公園方面に向かっている。あれから喫茶店に戻り、止めてあった愛車グローブライナーに乗り替えた。それで再び警察庁本庁に戻り、全員を乗車させている。
しかしエラい狭い車内。本来なら10人程度しか乗れないが、現状は18人も乗っている。ただ車両の連結部分には特設したカーゴを配置しており、そこに特殊兵装などを置いてある。これが最大の目的だった。
この場合はグローブライナー以外に、大型トラックを用意すべきだったのだろうな。今後の課題になりそうだ。まあ大型自動車の免許や牽引免許は持っているため、それらの運転は十分可能ではある。
とにかく狭いので、お互いに密集し合っている。傍らにはエリシェがいるのだが、半ば俺に抱き付いているのだから苦しい。
「車両のミスチョイスわぅ~。」
「何を今更な感じなんだが・・・。」
「アハハッ・・・。」
俺の右側にエリシェがいるため、少しの衝撃で抱き付いている彼女の猛攻を喰らう。それが如実に現れるのは両胸のアタックだろうか・・・。
「あらぁ~・・・羨ましい事ねぇ~・・・。」
「言うと思った・・・。」
「わ・・私は構いませんけど・・・。」
「にゃっはー♪ ハーレムそのものわぅね!」
「ハーレムもハーレム、逆の意味の護送車両よね。」
これ、一歩間違うと大惨事間違いなしだろう。シートベルトを着用できる状態じゃないため、何か事故があった時は大変な事になる。まあかなり慎重な運転をしているため、余程の事がない限りは大丈夫だろうが・・・。
まあ別の意味での大惨事になりかねない。抱き付いているエリシェ以外から猛攻を受けようものなら、ナツミYUやシュームに何をされるか分かったもんじゃないわ・・・。
「キャンピングカーでも欲しいですよね・・・。」
「ああ、では今回の報酬として同車をご提供致しますよ。以後の移動などにご活用を。」
「相当な金額になるが、大丈夫なのかね・・・。」
「そこは押し通す、です。」
自分を見縊るなと雰囲気で語る。俺に抱き付きながら携帯を操作し、何らかのやり取りをしだす彼女。有限実行とは本当に恐れ入るわ・・・。
「地上では無敵なのが何ともですよね。」
「ああ、空と海以外ならね・・・。」
「全部が全部苦手と言う訳ではなさそうですけど。」
「本気状態なら全く気にならないんだがね・・・。」
依頼最優先で動いていたり、人の命に関わる様な事態なら話は別だ。確かに高所と水は大の苦手だが、極限状態では全く気にならなくなる。しかし怖い事には変わりないが・・・。
「・・・完了しました。数時間後に車両を届けてくれるそうです。」
「化け物か・・・。」
葛西臨海公園の看板が見えた頃、エリシェが語り出してきた。どうやらキャンピングカーを即決で手に入れたようだ。大企業連合の総帥が考える事は怖ろしくて参る・・・。
「帰りはキャンピングカーで戻りましょう。グローブライナーはメンバーの方が配送してくれるそうです。」
「はぁ・・・まあ何だ、全部任せるわ・・・。」
「フフッ、了解です。」
嬉しそうに語る彼女。エリシェの場合もそうだが、とても大企業連合の総帥には見えない。彼女の双肩に数多くの従業員の命が掛かっているのに、普通の女性にしか見えないのが何とも言えない。またナツミYUも学園の総合校長であり、数多くの生徒を預かっているのと同じ意味合いだろうな。
「・・・本当に女性は偉大だ。命を育み次の世代へ送り届ける。対して野郎はどうだ、破壊しか能がない。過去の戦争も全て野郎が引き起こした愚行そのもの。」
「決して全部が全部ではありません。貴方みたいに救う側に回っている方もいます。それに貴方の様にそう思う存在がいるのも確かです。私はそんな貴方に賭けているのですよ。まあ聞こえ方によっては利用している感じに取られてしまいますが。」
「何を愚問な。お前の生き様からして、他者を利用しようとする一念など微塵もないわ。純粋に世界から孤児を無くすという誓願を貫いていると伺った。俺やシュームがいた孤児院もその流れだと知ったからね。」
海上での依頼時の終了後、エリシェ達の生き様を窺い知った。世界から孤児を無くすという誓願を目標とし、大企業連合を創立して動いていると。当然一筋縄ではいかないが、悪道以外の如何なる手段を用いてでも達成させると豪語もしていた。
「・・・私達の行動は間違ってはいませんよね・・・。」
「誰彼がどうこうじゃない、自分自身がどうあるべきか。それが重要だ、だよ。」
「勝負は一瞬、思い立ったら吉日ですよ。Tさんの生き様そのものと同じ。己の生き様は貪欲なまでに貫き通す。だからこそ達成できるのだと。」
「現状は苦しくとも、何れ後ろを振り返ると凄い所にまで至っているものです。それらを信じて、前に突き進むのみですから。」
「・・・ありがとうございます・・・。」
声色からして不安だったのだろう。自分達の生き様が正しいものかと。ただどう考えても彼女の生き様は中道であり、善道寄りの人助けの何ものでもない。多少強引な所はあるだろうが、結果的にはそれで救われている人物がいるのだ。決して間違ってはいない。
「私も同じ考えでした。裏稼業を担う手前、学園の総合校長としていられるのか。しかしマスターに、己の生き様は貪欲なまでに貫き通せと支えてくれました。」
「生き様の固持は、簡単なようで難しい。しかしそれを演じられるのは他でもない、自分自身以外にいないのです。だからTさんの誰彼が~の座右の銘になる訳ですし。」
「生き様もそうだけど、生きるって難しいものよね。」
シュームの言葉に一同が頷いている。運転中故に背後は窺い知れないが、雰囲気からしてその感じがした。特にここにいる全員が殆ど裏稼業に近い行動を行っている。シュームが語る内容が痛烈に響いていると言えるだろう。
「まあ何だ、これだけ仲間がいるんだ。恐れるものなどないわな。」
「そうわぅね。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、わぅよ。」
「貴方の場合のそれは、本当に当てはまっているからねぇ。」
「にゃっはー♪」
「アハハッ! ミツキちゃんらしいわ。」
最後の締めも忘れない。ミツキとナツミAによる冗談トークで周りを笑わせて終わるのだ。この2人には本当に脱帽するしかない。存在そのものが激励であろう。
雑談しつつも環七を疾走する。葛西臨海公園までは目と鼻の先だ。殺伐とした警護者の依頼の中での和気藹々とした会話は、本当に素晴らしいの一言だろう。
異端と言われても仕方がないが、その異端こそが殺伐とした流れを払拭する起爆剤だわな。う~む・・・俺達なら何でもできそうだわ。
窮屈ながらの走行を終えて、葛西臨海公園の駐車場に着いた。グローブライナーを停車し、それぞれ表に出て行く。当然ながら身体を解す事を忘れない。かなり窮屈な旅路であった。
ただ護送車両としては打って付けのカモフラージュであり、妨害要素の目を掻い潜るには充分な要素である。そして時間潰しに娯楽施設を選んだ所に、ミツキの戦略性があるとしか言い様がない。時間ギリギリまでここで暇潰しをする事にしよう。
第4話・2へ続く。




