第1話 恐怖の暴君2(キャラ名版)
ドクターT(その後の按配は?)
ナツミYU(身内での流れは問題ないけど、2つの大きな出来事があったわ。1つがデュリシラさんの計らいで、警護者界に恐怖の暴君の異名を持つ傭兵が現れた事。もう1つは貴方がいなくなった事で、敵側が活発になり出している事。)
ドクターT(後者は大体の予想が付いたが、前者は煽り過ぎてないかね。)
教室外の廊下の壁に寄り掛かり、お互いに念話で会話をする。悪役を演じているから、この力は出せないと思っていた。しかし取り越し苦労だったようである。
ミツキ(おー、超久し振りわぅ。元気そうわぅね!)
ドクターT(何とかね。と言うか、念話は使えないと思っていたんだが。だからこの半年は滅多に連絡しなかったんだがの。)
ヘシュナ(私の時と比べると、恐らく胸中の一念の強さに依存すると思います。貴方は絶対不動の原点が据わっている。だから各ペンダント効果が発揮できているのかと。)
ミュセナ(実際に今回の事例はヘシュナ様の時と全く同じ感じなのですがね。仰る通りの一念次第で覆せる要因なのでしょう。)
ドクターT(半年前にあれだけ覚悟してこれとはね・・・。)
念話が滞りなく使える事で、何か急に疲れが出始める。この戦いは単独の潜入捜査に近く、孤立無縁だとばかり思っていた。しかし実際には何時もと全く変わらないようである。
ナツミA(ペンダント効果ないし、3大宇宙種族の力の源も全て知っているのですよ。Tさんが自らを追い込んでまで現状打開を行おうとしている様を。以前皆さんが仰っていたように、力の源が生命力の理と比例している。善悪を判断し、その力を発揮させる事も抑制させる事もできる。極悪であればまず発揮できないものでしょう。)
ミツキ(でもヘシュナちゃんの場合は出せなかったわぅよ。)
ナツミA(本人が言ってたじゃない、自身の生命力の強さでどうとでもなると。それに1つだけ別の要因を挙げるなら、恐らく迷いが抑制させていた感じよね。)
ドクターT(迷いなら今の俺にもあるんだがの。)
ペンダント効果や3大宇宙種族の力の淵源は実に不思議だ。俺は一介の人間だが、ヘシュナはカルダオス一族の王族の1人である。その彼女が十八番の力を出せないのは実に下賤だ。
ルビナ(今のマスターはヘシュナ様を遥かに超える実力をお持ちという事ですよ。)
ミュティナ(ですね。特に戦闘能力から来る直感と洞察力は逸脱しています。生命力ではミツキ姉様の方が強いですが、純粋な戦闘力では遥かに凌いでいますし。)
ドクターT(へぇ・・・ナツミツキ姉妹や恩師の方が遥かに強いと思うが。今もこの部分だけは全く変わっていないよ。)
ミツキ・ナツミA・シルフィアの3人は、自分が知る女傑の中では最強クラスである。全てにおいて超越しているとも言い切れる。しかもそれが人間という領域内で発揮できている点だ。彼女達は宇宙種族ではないのだから。
ヘシュナ(その部分ですが、皆様方はアース一族という宇宙種族じゃないですか。皆様方の強さの淵源は、全てにおいての順応力だと確信しています。私は成せるものではありません。)
ドクターT(アース一族ねぇ・・・。)
ミツキ(わたはワンコ一族わぅ!)
ドクターT(・・・そっちの方がしっくり来るわ。)
ミツキのボケに小さく笑ってしまう。釣られて傍らにいるナツミYUも笑っていた。そして遠方の面々も笑う姿が脳裏に映る。念話とは、使う者の力次第では無限大に発展できる事を改めて思い知らされた。逆説的だと悪心が入れば直ぐに力は発揮できなくなるだろう。
エリシェ(何かあれば直ぐにご連絡を。出来得る限りの支援をします。)
ドクターT(ありがとう。まあ今の欲望は何だ・・・この暑苦しい仮面を取りたいに尽きるがな。)
ナツミYU(殆ど毎日付けている感じですからね。)
潜入をしてからは、ほぼずっとこの出で立ちを貫いている。人前での一服や食事などは全くしていない。周りはこの仮面が貼り付いているのではと思っているぐらいだ。まあそのぐらい徹底しないと、とてもじゃないが恐怖の暴君は演じ切れないだろう。
ミツキ(恐怖の暴君の維持には、並々ならぬ努力が必要なのだよ。)
ドクターT(本当だわな。)
エリシェ(全て片付いたら晩酌でも・・・って、お酒はダメだったんですよね。)
ドクターT(残念ながら・・・。)
シルフィア(彼に酒を飲ませると、支離滅裂になるからお勧めしないわよ。)
ミツキ(正に恐怖の暴君わぅ。)
彼女の支離滅裂を恐怖の暴君と掛け合わせる部分に、不甲斐無いも笑ってしまった。本当に全てにおいて逸脱しているわ。心から敬愛する女傑である。
念話をし続けていると、予鈴が鳴り響く。どうやら短時間で50分経過したようである。念話は時を忘れさせるのに打って付けだわ。
教室内から出てくる生徒さん達。何時の間にかティエラとエシェムLと親しくなっているデュシアLである。そう言えば以前、兄のデュシアEも対人関係を構築するのは大の得意だと言っていた。双子故のソックリなスキルとも言える。
その後も2人の護衛は続く。この様相から、俺達が彼女達にいち早く接近した形になるか。それに襲撃らしい襲撃は見当たらない。2人の言動からしても、過去にそういった出来事はなかったようである。
しかし俺達が引き金となり、襲撃者ないし誘拐者が出るかも知れない。今後も細心の注意を払いつつ、不測の事態に備えるとしよう。
ティエラ「ありがとうございました。」
エシェムL「また後日、よろしくお願い致します。」
ドクターT「道中、気を付けて。」
例の技術力を持ち出してからは、超好待遇となった2人。帰宅は厳重な警備に守られた車両が到来する。俺達は必要ないんじゃないかと思う様相である。ただ警護する側の面々は全く見ない顔ぶれだ。自宅やプライベートに関しては自分達で行う流れなのだろう。
重厚な車両に乗り、そのまま学園を後にする2人。確かに突然的に超好待遇になったのだ。慣れない扱いをされるのも納得できる。それ即ち、開発した技術力が逸脱している証拠とも言い切れる。
ナツミYU「正直な話、お守りも大変でしょう。」
ドクターT「まあね。だがそこにこちらを求める声があるなら、それが何であれ俺は突き進むわ。」
デュシアL「警護者の必須概念ですよ。」
警護者自体は依頼があって初めて動き出す。前の軍服連中や黒服連中の時は異例中の異例である。しかし明らかに常識を逸した人ならざる考えに関しては、問答無用で介入するのもまた通例。警護者とは本来こういった強者の集まる集団だしな。
ドクターT(デュリシラ、世界の状況はどうなってる?)
デュリシラ(あ、はい。えー・・・何処も防衛省とガードラント一族が提携し、新技術を開発した事への動向が強いですね。表向きは普通の世上ですが、どうやら裏では暗躍していると思われます。)
エリシェ(目に見えたヤッカミ行為で、ホトホト呆れ返りますよ。マスターがよく思われる一念が痛感しますし。)
ドクターT(何時の時代も野郎は破壊と混沌しか生み出さない。生命を生み出し育むのは女性しかできないとな。これだから野郎は困る。)
シューム(ほほ、まるで女性の様な言い回しよねぇ。)
ドクターT(あれだけ性転換し続ければ、ね。)
最後の言い回しで周りから呆れの一念が感じられた。しかし実際にその力は絶大であろう。短期間での性転換で男性の一念を把握したスミエなのに、俺の場合は数ヶ月以上は性転換状態で過ごしていた。素体の女性には遠く及ばないが、今現在の男性よりは遥かに女性を把握していると断言できる。
第1話・3へ続く。




