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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第2部・激闘と死闘
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第11話 最終話・再来する集団2(通常版)

「・・・同じ地球人が嫌いになりそうだわ。」

「はぁ、また自己嫌悪ですか。ただ、思われていた様相には私も自己嫌悪に陥りたい気分になりますがね。」

「相手を凌駕する力を持てば、一方的に優勢に立てると。現に核兵器を超える火力を持つ兵器となれば、地球の覇権を争う存在には打って付けですよ。」

「地球に住ませて貰っている事を忘れるカス共め・・・。」


 腑煮え繰り返る思いだわ。あれから調査で分かった事だが、黒服連中と軍服連中の出所は世界各国の国家が絡んでいた。だから際限なく無人兵器群が出てきた訳だ。でなければ一部の戦闘集団だけでは成し得ない戦闘力である。


「ヤッカミも踏まえての流れも起きそうだな。」

「既に出ていますがね。南極事変のそれが極みとも言えますよ。」


 俺だけではなく、エリシェも怒り心頭な感じになっている。強引に煙草セットを奪うと、何と一服しだしたではないか。しかも傍らにいるラフィナも一服しだしている。この2人も煙草を吸っていたのには驚きだわ。


「あー、これですか。マスターとお会いする前からですよ。相当なストレスがあった時しか吸いませんけど。」

「お前達の双肩には凄まじい重圧が掛かっている、か。」

「この場合は若さ故の過ち、とも言えますけどね。」

「ハハッ、違いない。」


 一服しだすと途端に落ち着きを取り戻すエリシェとラフィナ。この様相から本当に怒り心頭となった場合は、問答無用に喫煙をしていたようである。しかも咽せない所を見ると、かなり慣れていると言えた。


「・・・俺達の目が黒いうちは、総意を不幸にさせないわな。」

「心から同調します。そのための各々の力ですから。超越的な力でも、間違った方に使わなければ大いに役立ちますよ。」

「頑張らないといけませんね。」


 コスプレ姿で一服している2人が新鮮なのか、自然とヲタクの面々が集まってくる。それに煙草を消すも、着火していない煙草を持つ姿で撮影に応じだした。確かに着火している煙草は危な過ぎる。それに人混みを離れて一服していたため、禁煙問題に引っ掛かりそうだ。


 面白いのがエリシェとラフィナに人混みが集中している事だろう。俺の方には見向きもしていないのが何とも。まあ中身は野郎故に、その雰囲気が自然と出ているのかも知れないな。ここは2人に任せて散策するか。




「何だ、前の姿と殆ど変わらないじゃないか。」

「まあそう仰らずに。」


 少し離れた場所でノホホンとするヘシュナを見掛ける。何と例の黒ローブの姿だったのだ。ただ傍らにいるビアリナが同じ格好をしているため、ネタ元は某宇宙戦争だろう。


「ビアリナも同じとすると、暗黒卿と弟子な感じか。」

「流石ですね。ただこれは別の意味合いを踏まえて、この姿を選びました。」

「過去の姿を出してどんな反応を示すか、か。」


 某宇宙戦争は暗黒卿の衣服を模したコスプレだが、実際には敵対勢力への揺さ振りになる。今回のコミケの参加も娯楽と同時に、不測の事態への対処も踏まえた流れだ。ヘシュナが過去に演じていた悪役の姿が、相手側にどれだけ浸透していのるかを探るためでもあるようだ。


「あの時は幾分かやさぐれていましたが、今はその必要はありませんし。」

「フフッ、マスターのお陰だと何度も仰られていましたよ。ヘシュア様ですら取っ付き難いご自身を、真っ向勝負でぶつかって来てくれたと。」

「あの時はなぁ・・・。まあ裏に何か抱えているのも分かったからの。全ては世界の安寧を勝ち取るための布石だ。そこに帰結するなら上出来だと思う。」


 一服しながら思う。ヘシュナとの初対面時の印象は最悪だった。しかし役割を演じるには、嫌われ役を担ってこそ真骨頂である。どんな状況であろうが彼女はそれを演じ切ったのだ。本当に心から敬意を表したい。


「今後はその役割は演じなくて良いからな。汚れ役は全部俺が引き受ける。そのための警護者の存在だ。お前はヘシュア達を補佐する役でいい。」

「そうは参りません。貴方が矢面立って暴れられるのなら、その貴方を補佐してこその相棒たるもの。今後も私は私なりの生き様を貫いて参ります。」

「はぁ・・・あのじゃじゃ馬娘が淑女になってまぁ・・・。」


 出会った頃と今とでは全く違うと揶揄すると、今ではお馴染みの不貞腐れな表情を浮かべる。それに俺は笑ってしまった。釣られてビアリナも笑っている。更には不貞腐れのヘシュナも俺達に影響されて笑ってしまっていた。


 ミツキが生き様、持ちつ持たれつ投げ飛ばす。それに敬い・労い・慈しみの精神、これがどれだけ重要かが痛感できる。それにこれは人知を超えた行動でもない。生物全てに自然的に備わる力だ。生命全てと言い切っていい。それを怖ろしい程に開花させているのがミツキだ。


 警護者の生き様は道半ばで、ここからが勝負と言えるだろう。だが周りにこれだけ支えてくれる存在がいるのだ、恐れるに足りずとはこの事だわ。それにその生き様は3大宇宙種族の面々の方が遥かに精通している。人類以上にその理を大切にしているのだ。


 膝など折れる訳がない。己が生き様を貪欲なまでに貫き通してこそ、己の存在を確固たるものにできる。その瞬間こそ周りを支えられるのだからな。




 その後も雑談を続けていると、一際賑やかになりだしてきた。聞き耳を立てると、ミツキとナツミAが何やら喋っている。あの雰囲気だと喫茶店でラジオ放送を行っていた時と同じ感じだろうか。まあFM放送ながらも全国に流していたため、ヲタクの方々にリスナーがいてもおかしくはない。


 ミツキとナツミAの手腕は本当に凄まじい。素晴らしいを通り越し、もはや怖ろしいレベルにまで至っている。それでいて私利私欲でないのだからまた怖ろしい。その理を継いでいるエリシェ達が内外問わず恐れられいる理由も痛感できるわ。


 その生き様を彼女達流に演じているだけで、あの無類の強さを発揮している。もし姉妹が本気を出したら、それこそ未知の領域へと突入するだろう。生命尊厳の一手は何ものをも凌駕する、正にその通りだわな。


「お陰様で永住権の流れは問題なく解決しそうです。」

「あー、あれか。まあスミエの時代よりは今の方が楽だからね。それにお前達3大宇宙種族も地球で人々や社会に貢献している。拒否する理由もないわな。」

「逆に外見からはとても宇宙種族には見えませんよね。私達が想像していた宇宙人の姿とは全く違いますし。」

「あの具現化は宇宙種族に対しての独断と偏見、下手したら人種差別だと言われかねない。」


 3大宇宙種族の面々は、地球人と全く外見が変わらない。怖ろしいまでに似ており、以前シュームやナツミYUが気持ちが悪いほど似ていると言い切っていた程だ。それだけ差異は全くないと言い切れる。よく地球人が揶揄するグレイなどの宇宙人の姿は、3大宇宙種族からすれば偏見と言う名の差別そのものだ。


「逆説的に、それら揶揄する地球人の胸中の方がよっぽど宇宙人だわな。いや、魔物か。全部が全部そうではないが、私利私欲を貪るカス共が正にそれだしな。」

「本当ですよ。それに注意しなければならないのは、それが人間の業とも言える部分から発生している点でも。私達もその部分が根付いているとも言えますし。」

「宇宙種族の私から解釈すれば、皆様方は全く問題ありません。以前マスターが仰っていたように、痛みを知るからこそで。愚行に走らない淵源もそこに帰結すると思います。」

「3大宇宙種族の中でメンタル面が強いカルダオス一族。その直系の女王にお墨付きを頂けたのだから大丈夫だわな。」


 俺の言葉に照れ臭そうにするヘシュナ。それを見て小さく笑っているビアリナだった。3大宇宙種族の中でメンタルで強いのはカルダオス一族だろう。ギガンテス一族もドラゴンハート一族も強いが、こちらは遥かに逸脱していると言える。特殊能力が相手の精神を操作すると言う部分からも、それだけメンタル面で強くなければ不可能な話だ。


「今後の俺達次第でどうにでもなるレベルか。」

「前途多難ですが、やってやれない事はない。これに限りますよ。」

「大いに賛同致します。私達にしかできない事をし続けましょう。」


 敵対者として初対面をしただけに、今ではその胸中が良く理解できる。悪役を担ってまで達成しなければならないものもあったのだ。それを最後まで貫けた彼女は見事な役者だが、その真意を見抜けなかった俺は無様としか言い様がない。


「・・・もっと直感と洞察力を磨かねばな。真意を見抜けないようでは盟友とは言えない。」

「ハハッ、大丈夫ですよ。それだけヘシュナ様の本気度が現れていた証拠です。見抜けないだけの実力を醸し出していたとも言い切れます。」

「お恥ずかしいながら。ですが今はもう皆様方には敵いません。その成長速度はカルダオス一族をしても驚嘆するほどです。怖ろしい限りですよ。」

「成長速度ねぇ・・・。」


 確かに身内の成長速度は尋常じゃないぐらいの様相だ。3大宇宙種族と初対面時では、種族の圧倒的な能力に驚愕した。しかし今ではそれをも凌駕する感じに至っている。各ペンダント効果もあるが、それを使いこなせてこその様相だ。怖ろしい事この上ない。


「まあ何だ、世上の安寧を勝ち取れるなら問題ないわ。そのためなら、鬼にでも悪魔にでも何でもなってやる。悪役も憎まれ役でも何でもいい。」

「「はぁ・・・。」」


 恒例たる胸中の極端な決意を述べると、呆れ顔で溜め息を付く2人。だがこの姿勢は絶対に曲げるつもりはない。むしろ時間が経過するほどに力強く定まっていく。それ相応の実力が備わっているなら、後は貫き続けるのみだ。それが俺の生き様である。


 今も呆れ顔のビアリナとヘシュナを尻目に、静かに一服をしだす。目の前では身内が大いに暴れている。そう、もはや暴れていると言い切っていい。それだけ今の瞬間を楽しんでいる。その彼らを守り通す事もまた俺の生き様だ。これも曲げるつもりは毛頭ない。


    第11話・3へ続く。

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