第8話 飛行戦艦対無人兵器5(キャラ名版)
ミスT(すまんな。)
エリシェ(ヘヘッ。しかし、この脳波で動かせる人工腕部は素晴らしいですよね。マスターが愛用される意味が痛感します。)
ミスT(にしては重力制御ペンダントがあるも、両手でマデュースを扱うのはな。)
エリシェ(仕方がないですよ。いくら重力制御ができても、獲物の射撃時の反動によるエイミング調整は発生します。見越し射撃を行うも、反動でブレが生じますし。)
ミスT(重力制御ペンダントでも、地球自体の重力には逆らえない感じだわな。)
この場合の重力の概念は物質の重量の意味合いではない。獲物を射撃した際の反動と風圧になる。過去にレプリカ大和で主砲の一斉発射を体感したが、反動はないも風圧は存在してた。マデュースぐらいの風圧では怯む事はないが、射撃時のノックバックは若干生じるのだろう。
ミュティナ(流石に重力制御と言えど、不可能な事はありますよ。ご自身の自重や獲物の重量は制御できたとしても、実際の質量などは存在しています。仮に私がレプリカヴァルキュリアを片手で持ち上げたとしても、私自身の重量は存在しますし。)
シューム(んー、何か釈然としない感じよね。私の獲物群も重量は軽量になるも、エリシェちゃんが言うその概念が確実に存在してるし。)
ミスT(万物の法則を捻じ曲げてるからの。多少の不都合は出てくるだろうな。ゲームで言う各種不都合と同じだわ。)
ナツミA(あら、その場合は徹底的にデバッグを実行して取り除きますけど。)
デュリシラ(そうですよ。ソフトウェアの世界では実質不可能はありませんし。)
ナツミYU(ソフトウェアとハードウェア、現実と虚像とも言いますか。実際問題は私達が考える以上の複雑な概念が存在しているようですね。)
うーむ、本当に考えさせられる。重力制御ペンダント効果なら、獲物の重量を軽量にすればノックバックも発生しなくなるだろう。しかし実際には微妙ながらのそれが発生している。トリプルマデュースシールドを射撃する際もそれが感じられるのだ。
シルフィア(何を細かい事を言ってるのよ。スペシャリスト・プロフェッショナルたるもの、そんな弱音なんか実力で排除しなさいな。ミツキさんが以前挙げていた概念が当てはまるわ。良く考えなさい。)
ミツキ(相手を知り・己を知り・全てを知る、わぅね。わたは漠然と動いている方が楽わぅけど。)
恩師の叱咤激励が飛ぶも、名言を語るミツキですら漠然と動いた方が良いようだ。これら不測の事態は未知数であり、それらを気にしては何もできないという現われだろうな。
スミエ(でも実際には難しいものですよ。慣れたとしても、実際に存在している概念は不測の事態を生み出します。この世に絶対的な事など限られますし。)
ミツキ(ぬぅーん、それは生命の力わぅね。)
スミエ(フフッ、お見事で。生命の力は無限大ですからね。これだけは絶対的な要因でしょう。)
ミスT(それだけ俺達の存在は幸せだという事だな。今を生きられる幸せに感謝し、今後の総意の幸せを勝ち取る戦いを展開する。それが警護者たる概念だ。)
スミエ(それもお見事です。まあこの世には正解といったものは複数存在しますからね。その都度解釈していくしかない。ただ、何が正しくて何が間違っているかぐらいは把握したいもの。常日頃から精進しないといけませんね。)
スミエの言葉に非常に考えさせられる。重力制御の理から、生命哲学の部分に発展するとは。しかしそれが現実なのだ。根底の概念が存在するから、そこから派生する物事が存在する。それらが折り重なってこの世は存在しているのだから。
ヘシュア(はぁ・・・あのバカ姉に皆様の爪の垢を煎じて飲ませたいですわ。)
スミエ(フフッ、まあそう仰らずに。先刻ミツキ様が仰ったように、ヘシュナ様が矢面立って連中を引き付けてくれているから暴れられるのです。万物全てに必ず意味は存在しますから。)
ミツキ(今度ヘシュナちゃんには超絶的激辛のハバネロ鍋でも食べさせるわぅね!)
シューム(あー、それは良い考えね。地球自体を少しでも舐めたのなら、そこで食せる食べ物で躾をすべきよね。)
ミスT(ヘシュナの辛労が窺えるわ・・・。)
俺の言葉に周りは小さく笑っている。間違った道に進んだ彼女を正すのに、まさか食べ物で戒めるというのは見事なものだ。確かにそれなら戒めと地球での食事の良さを体感できる。一石二鳥な感じだろうな。
本来ならこの夥しい飛行兵器群の到来で、相当なダメージを蒙るだろう。しかしバリアやシールドの恩恵で全く以て皆無である。しかし数押しで来られるとなると、弾薬の消耗や俺達の疲労度も蓄積していく。相手が消耗戦を狙っている場合は、無人兵器群の方が効率がいい。
だが俺達の場合は背負っているものが違う。連中は視野が狭い私利私欲でしか動いてない。対して俺達は地球人類・全ての生命体総意の名代で動いている。烏滸がましい感じだが、俺達が動くしかないのだ。引く事などできないわな。
そして相手は毎度ながら大損をしている。こうして俺達を試す形の侵攻をする度に、こちらの団結力や結束力はより一層増していく。各種戦術や戦略も展開でき、新型兵器の試しも可能となる。これ程の有利な展開はないだろう。向こうも新型兵器の投入で色々と試みていると思われるが、搭乗者がいない無人兵器では得られるものもない。実に皮肉な話だ。
それでも俺達が進むべき道は定まっている。個々人の己が生き様を貫き通す。その面々が集い合い、異体同心の理で進めば万事解決だわな。
何時の間にか戦闘は終わっていた。レプリカ大和単体での戦闘時は、かなりの時間を要した形だった。しかし今回は日本全体規模にまで膨れ上がったからか、向こう側の戦力投入も分散してしまった感じだろう。大損をした事には間違いない。
今は東京湾の一番デカい港にレプリカヴァルキュリアを寄港させている。実は下部の船体は超レプリカ大和と同じ感じなので、海上に浮かべる事も可能だ。ただ上部に3倍近い飛行船部分が何とも言えないが。
その近場の桟橋に、所狭しとハリアーⅡ改・ブラックブレイド・レプリカTa152Hが着陸している。一度レプリカヴァルキュリアから下船して、桟橋で休息を取る事にしたのだ。
ミツキ「この程度わぅか、つまらんわぅ。もっとACコブラを演じたかったわぅよ。」
ナツミA「それ、名車のコブラよね。」
ミツキ「握手を! これでコブラレプリカは貴方のものです!」
ナツミA「はぁ・・・。」
レプリカTa152Hの近くに座り、茶菓子を頬張っているミツキ。ナツミAは操っていた同機のメンテナンスを行っている。ソフトウェアが博識なのは分かっていたが、ハードウェアも博識とは驚いた。そのミツキがネタを披露して周りを笑わせていた。
ナツミYU「フフッ、某車番組の名言ですね。私も何度も拝見してますよ。自前の車のメンテナンス群は、彼らの手法が大いに参考になりますし。今は別のメカニックさんですが。」
ミツキ「ナツミYUちゃんの所持する車群も、名車揃いで凄いわぅよ。今度わたのデロリアンも調整して欲しいわぅ。」
ナツミYU「お任せを。ムルシエラゴやウアイラもできるのですから、デロリアンも問題なく調整できると思います。」
一服しながら雑談するナツミYU。彼女のウリは車などの車両だ。ムルシエラゴやウアイラすらも分解メンテナンスを行うぐらいの整備士の実力を持っている。先刻ミツキが報酬で得たデロリアンは、前者2車両より簡単に調整ができるだろう。
ミスT「はぁ・・・本当に思う。全部片付けて、何時ものノホホンとした生活を過ごしたいわ。」
シューム「本当よね。喫茶店で普通に動いていたら、突然襲撃してきたりするし。」
ビアリナ「オチオチ日常行動すらできませんよ。」
俺のボヤきに、それぞれの面々もボヤきを述べてくる。確かにここ最近はこういった不意の襲撃やらが多く、日常生活に支障を来たしている。まあ警護者である手前、それ自体が非日常なのを忘れてはならないのかも知れない。
ミスT「・・・非日常が日常で、日常が非日常か・・・。それでもこの道を選んだ手前、最後まで貫き続けてやるわ。」
デュリシラ「ですね。私達の存在は、もはや私達だけのものではなくなっていますし。マスターが何度も烏滸がましいと仰っている意味合いが、本当に痛感できてきます。ですが誰かが動かなければならない。それが私達ならば胸を張って突き進むべきでしょうね。」
ミツキ「茶菓子の追加報酬はあるわぅか?」
エリシェ「アハハッ、何とも。では今度差し入れを致しますね。」
シューム「茶菓子が報酬ねぇ・・・。それで済ますミツキちゃんに拍手を送りたいわね。」
ナツミYU「本当ですよ。」
無欲の塊のミツキを見て、周りの面々は呆れるも感嘆している。その些細な欲望が己の起爆剤になっているのだから不思議なものだ。俺達にも備わるミツキの概念、敬い・労い・慈しみの根本の精神。それを地で体現している彼女の生き様を、少しでも肖りたいものである。
ヘシュア「・・・皆様方の生き様が、本物である事を痛感致しました。今の今までは何処か疑念があったのですが、むしろ無粋な一念だったと後悔しています。本当にすみません。」
ミスT「・・・3大宇宙種族のカルダオス一族の代表から、見事なお褒めの言葉を頂く方が大変貴重ですよ。私の方からも感謝します、本当にありがとうございます。」
ヘシュアの本音を聞き、それが本当の敬意ある一念だと察知した。それに俺も敬語という形で応じさせて貰った。俺よりは総意の一念を汲んでくれた事に、心の底から感謝したい。
ミツキ「ぬぅーん、ついにTちゃんが“俺”じゃなく“私”を使い出したわぅ!」
ミスT「この身形で敬語を使うなら、その方が良いだろうに・・・。」
ヘシュア「アッハッハッ! まあそう仰らずに。貴方の一念は十分承知致しましたので。それにその身形が今後の特効薬になるのは間違いありません。」
デュリシラ「今では何処からどう見ても女性ですからね。」
ミツキ「頼り無い姉ができた感じわぅね!」
ミツキの言葉に周りがウンウン頷いている。確かに頼り無い姉な感じになるかも知れない。しかしそう思われるという事は、それだけ俺が見事な女性化に至っている何よりの証拠だ。ヘシュアが述べた通り、今後の特効薬になるのは言うまでもない。
和気藹々な雑談をしていると、突如として空間の歪みを感じ出した。重力制御ペンダント効果が共鳴している感じか。すると何と上空にケルマディック海溝で発見した、あの宇宙船が現れたのだ。直系13km超の宇宙船が出現した事で、東京湾は一気に殺気立った。
すると更に空間の歪みが生じ、目の前に黒ローブを纏った人物が現れる。どうやら転送装置によるワープだろう。移動が終わると、徐に頭のローブを剥いでいく。そこにはヘシュアと同じ髪の色の女性がいた。つまり姉のヘシュナだ。
周りの面々が一気に殺気だっていくのだが、その合間を割り入るのは妹のヘシュアである。先程までの温厚な表情が一変し、相当な怒りの表情を浮かべながら姉を見つめていた。妹の存在に驚愕するヘシュナ。そりゃそうだ、ここに妹がいるとは思いもしなかっただろうしな。
第9話へ続く。




