第7話 守り人と愚か者5(キャラ名版)
ミスT「ところで、近況はどんな按配だ?」
デュリシラ「あ、はい。えーと・・・。」
粗方の身嗜み調整を整え、ダブルボディスーツに黒コートを纏う。この姿が一番激しい動きに耐えられる様相になっている。そんな中、カウンターの端でパソコンを操作中のデュリシラに近況を尋ねた。今では喫茶店のブレインと化している。
デュリシラ「依然として所属不明の軍団からの横槍が続いています。無人兵器群の襲撃で、先日より悪化している感じでも。」
ヘシュア「これら機器群を見る限り、姉が関与しているのは肯けます。しかし直接関与しているとは思えません。私達の技術力を以てすれば、もっと精密で堅固な軍団を構築できますし。」
シューム「つまりヘシュナちゃん達の力を得た地球人が、自分達で構成した軍勢で攻めていると取るのが無難ね。」
ヘシュア「十中八九、間違いないと思います。」
確かに3大宇宙種族のテクノロジーを以てすれば、もっと凄まじい様相で攻めてくるだろう。レプリカ大和群が正にそれで、しかもバリアやシールドも兼ね備えてくる筈だ。それが普通の無人兵器群だけなのは有り得ない。
ミスT「結局は私利私欲に走る愚物だという事だ。ヘシュナですら利用されているクチだろうな。」
ヘシュア「姉の意固地な部分を逆利用されている感じでしょうね。」
ナツミYU「ここに全く同類の存在がいますけど。」
ミスT「ふん、言ってろ。」
ニヤケ顔で語るナツミYUに顰めっ面で舌打ちをした。まあ確かに彼女の言い分は的を得た発言だ。ヘシュナと俺は非常に気質が似ている。だからこその性転換作戦なのだが。
デュリシラ「・・・むっ、エリシェ様から連絡が入っていますが?」
ミスT「何だろう、繋いでくれ。」
エリシェからパソコン経由で連絡が入る。スカイプというコミュニケーションツールだ。普段は携帯などを用いるが、敵方に態と傍受をさせる逆作戦を取った。敵が喰い付いて来るのを期待するしかない。
ミスT「どした?」
エリシェ(ハハッ、相変わらずで。ミツキ様が挙げられた、例の“重装甲飛行戦艦ヴァルキュリア”が完成しました。レプリカ大和よりは軽量であるのと、今回は反重力機構を導入したので短期間で済みました。)
ミスT「流石は大企業連合の底力だわな。」
ヴァルキュリアはミツキが挙げた作戦の1つ。某シューティングゲームはステージ3の派生で遭遇できる、重装甲飛行戦艦ヴァルキュリアだ。ただオリジナルのとは規模を拡大している。超レプリカ大和のサイズを空中戦艦化したので、超破格なデカさと化しているとの事。
ミスT「よし、敵の目を向けるために品定めをするか。」
エリシェ(仰ると思いました。今そちらに向かっています。数時間したら到着しますよ。)
シューム「近隣の方々の度肝を抜きそうだけど。」
ナツミYU「無人兵器群が襲来しそうな感じですが。」
エリシェ(それらも狙いですので。そこから相手側に伝われば万々歳です。)
ミスT「やりますかね。先日大乱闘をした駐車場近くで待ってるわ。」
エリシェ(了解しました。)
急遽の展開にテンヤワンヤになりだした。各種戦闘準備を整えつつ、準備ができた人物から現地へと向かっていく。今回もトラガンの女性陣も参戦とあり、かなり大規模な戦いに発展していくだろう。喫茶店の運営は地元の躯屡聖堕メンバーに任せた。
俺も各種装備を整えつつ、準備が出来次第現地に向かった。背中の人工腕部は無論、恒例の三挺マデュースシールドも健在である。ちなみに今まではカラーリングを黒色にしていたが、差違を図るために紫色の着色をベースにしたものに変更した。
出で立ちも女性の身体に合ったものに代えてある。例の特殊スーツを着用し、その上から別のボディスーツを着用している。そして黒コートと覆面一式だ。従来のズボン・ロング・ベストの出で立ちの方が良いのだが、周りからこれにしろと勧められた。
俺の戦闘スタイルからして、かなり激しい動きになるための配慮になるだろう。長身の背丈も相まって、今では巨女とも言われている。まあ一種のハッタリには十分過ぎるだろうな。
数時間後、それはやって来た。重低音を響かせながら現れる、レプリカヴァルキュリア。規模からして超と付くのだろうが、これが初めての機体になるのでそのままとの事。劇中でも何度か対峙したものだが、それを5倍の規模にした艦体は化け物である。
周りの住人方が驚愕の表情で見上げているが、俺達の存在は既に周知の通り。何時何処に出現するか分からない連中への対策として太鼓判を押されている。これが唯一の救いだろう。
ミツキ「おういえい! 見事な艦体わぅ。」
ナツミA「僅か短期間で実現するのも見事なものよね。」
両腰に二対の爪銃を装備のナツミツキ姉妹。ミツキは別途二挺のマグナムを所持し、ナツミAは二挺のスナイパーライフルを背中に背負っている。
シューム「これ、どうやって乗り込むのかしら。」
ナツミYU「何でも、回収用の特殊飛行体を構築したとか。ほら、丁度船体の下部に搭載されているのがそれみたいです。」
彼女が挙げる先を見つめると、それが分離してこちらに降りてきた。何とこれも同作品ではラストで出現する“戦闘飛行空母ブリュンヒルデ”そのものだ。ただ縮尺はオリジナルの規模を模しているからか、5倍サイズのフランベルジュの回収用ユニットと化している。ちなみに、こちらもオリジナルの名前とは別名を使っている。
ブリュンヒルデは正方形の特殊型空母で、本体を真上から見て左上・右上・左下・右下に大型のプロペラが搭載されている。V-22オスプレイを前後に連結させて、ペイロードを増加した形だろうか。まあ形状は完全に異なっているが。そして劇中では、同空母にはアレが搭載されていた。
・・・やはり、予測した通りだわ。着陸態勢のブリュンヒルデから発進する機体があった。“XF/A-49・ブラックブレイド”、劇中で強奪された最強の戦闘機である。ただ劇中だと最後でしか登場していないため、その実力は全く以て未知数だが。また、こちらも本来の名前から改変している。更に機体色は白色だが、アレンジ版たる同機は黒色だ。
ミツキ「おおぅ! ブリュンヒルデにブラックブレイドわぅよ!」
ナツミA「F-22やF-35が門外不出なのに、それを超える戦闘機をよく作れましたよね。」
エリシェ(現物の兵器群を模したり構成したりは難しいですが、仮想現実の産物なら容易に構成は可能ですので。ギガンテス一族とドラゴンハート一族のテクノロジーの集大成ですよ。)
ブラックブレイドは噴射口がF-14やF-15みたいに真後ろにしか向いていない。しかし3大宇宙種族のテクノロジーが惜しみなく使われている。顕著なのが反重力機構だろう。
エリシェ(戦闘機のライセンスを持たない私でも、ブラックブレイドなら問題なく動かせます。むしろ通常の柵に囚われない方が、より一層動きが機敏になりますし。)
ビアリナ「はぁ・・・戦闘機パイロット泣かせの産物ですよ。」
ミスT「Ta152Hもそうやって操縦できればの。」
ブリュンヒルデより先に着陸してくるブラックブレイド。ハリアーⅡ改の噴射力を目の前で体感したが、凄まじいものなのは痛感している。しかしブラックブレイドは反重力エンジンの効果からか、最低限の噴射力で済んでいるようだ。全く以て威圧感がない。
着陸したブラックブレイドのコクピットからエリシェが降りて来る。普通の身形なのに、問題なく操縦できる部分に脅威を感じずにはいられない。本当に空想の産物から出現した、絶対に有り得ない戦闘機と言えた。
ミツキ「これ、わたが操縦しても動かせるわぅか?!」
エリシェ「全く問題ないと思います。全てコンピューターが操作してくれるのと、善悪判断が可能な人工知能が搭載されていますので。こちらは簡単な操作を行うだけですし。」
ナツミA「純粋無垢の極みたるポチが乗れば、逆に人工知能は混乱しかねないわね。」
Ta152HやハリアーⅡ改は実際の戦闘機とあり、ライセンスなどの問題で操縦はかなり厳しい。不可能ではないが、難しい事には変わりない。対してブラックブレイドは空想世界から飛び出した産物だ。F-22やF-35と変わらない様相だが、誰でも操縦できる優れた機体だろう。興味津々のミツキの姿が実に頬笑ましい。
ミスT「これ、ビアリナ達が操ったら無双化しそうだな。」
エリシェ「あー、確かに。操縦センスがない私が乗っても、そのレスポンスには驚きましたから。実際のファイターが搭乗した場合は、相乗効果で怖ろしい効率を叩き出しそうです。」
ミスT「俺も興味があるが・・・空がな・・・。」
颯爽とコクピットに搭乗するミツキ。どうやらタンデム飛行も可能との事で、それを窺ったナツミAも搭乗しだした。これ、この姉妹が操ったら怖ろしい事になりそうだ・・・。
搭乗して間もなく、ブラックブレイドは静かに離陸を開始。垂直離着陸が可能とは思えないのだが、その場で強引に浮き上がり飛び出していった。反重力エンジンが為せる業物だろう。
ミスT「はぁ・・・化け物だなこりゃ・・・。」
シューム「性能面もさることながら、あの姉妹が乗ったら怖ろしい事になるわね。」
ナツミYU「特に力の出し加減の触りを体得されていますし。戦闘機となるとそれは・・・。」
ナツミYUの発言に青褪めるしかない。あの姉妹の直感と洞察力は、シルフィアやスミエを完全に超えている。得手不得手はあるだろうが、間違いなく身内で最強クラスの女傑である。それが2人同時に史上最強の戦闘機に搭乗しているのだ。これを無双と言わずして何と言うのだろうか。
ミスT「未来位置射撃や見越し射撃とか、人工知能泣かせの戦術を取りそうだわ。」
エリシェ「あのお2人なら十分可能ですよ。実際に知り尽くしていませんが、ブラックブレイドは搭乗する人物の力が大きく反映されると思いますので。」
ミスT「ナツミツキ姉妹のための獲物とも言えるわな。」
反重力エンジンは重力を感じさせないという仕様は伺っている。それを遺憾なく発揮しているようで、従来の戦闘機ではできないような動きを繰り出していた。特に劇中でもプレイヤーを苦しめていた残像もそれで、パッと消えたと思ったら別の場所に移動しているのだ。
ミスT「・・・アレで重力の理が働いていたら、パイロットはとても耐えられないわ・・・。」
エリシェ「でしょうね。私が乗った時も地上と全く変わらない様相でしたし。反重力機構が全ての概念を崩しているため、正に人知を超えた動きが可能と。」
ミスT「現行兵器は絶対に敵わないわ・・・。」
ブラックブレイドの有り得ない動きを見つつ、俺達はブリュンヒルデに搭乗。空中で静かに鎮座しているレプリカヴァルキュリアへと向かった。このブリュンヒルデも反重力エンジンを搭載しているからか、地上と全く変わらない様相を醸し出している。
ミュティナ達やルビナ達が技術提供をしたがらない訳だ。更にヘシュナもそうだろう。この技術力があれば、地球上の全ての兵器は意味をなさなくなる。全てにおいて格が違うのだ。現段階で地球上最強の戦闘機たるF-22やF-35ですら、ブラックブレイドの前には為す術はないだろう。最もたるものはバリアやシールド機構だろうな。
そして空中に鎮座しているレプリカヴァルキュリアもそうだ。超レプリカ大和と同じ規模の超戦艦が空中に浮いているようなものだ。更には航空母艦の能力もあり、武装もイージス艦を遥かに凌いでいる。
飛行船となると鈍重で回避力がないと思われるが、このレプリカヴァルキュリアはバリアとシールドと反重力機構の恩恵から無敵の飛行戦艦と化している。ただ総合火力に至るなら、やはり超レプリカ大和の230cm主砲などには敵わないだろう。
人間に得手不得手があるように、兵器にも得手不得手があると言っていい。使い方次第で善にも悪にも化けるという事だ。これ程使い手の一存で全てが決まるものは他にはないわな。だからこそ、絶対不動の原点回帰が必要になってくる。ブレない一念が必要不可欠となる。
まあこれだけ周りに戒めてくれる存在がいるのだ、曲がった方に進む事など有り得ないわ。敬い・労い・慈しみの精神、持ちつ持たれつ投げ飛ばすの気概。この2つがあれば、殆ど問題ないだろう。後は俺達次第だな。
第8話へ続く。




