第7話 守り人と愚か者3(キャラ名版)
ミスT「これで大丈夫だな。」
トラガン女性隊員2「すみません・・・。」
トラガン女性隊員1「ありがとうございます・・・。」
漸く収束しだし、一気に畳み掛ける流れに至った。その中で長期戦に不慣れなトラガンのメンバーの治療に当たった。とは言うものの、大怪我ではなく擦り傷程度だが。
エルシェナ「そのお2人は最近入隊された方です。」
ミスT「なるほど。にしては、その戦闘力でヘシュアとパートナーの護衛に回すとは。」
デュシアL「実戦経験ほど身になるものはありませんよ。サラさんもセラさんも走り立てですが、志は誰よりも高いですから。」
ミツキに近い小柄のサラとセラの双子姉妹。まだ幼いのに警護者に至るのは、どうも気掛かりだが・・・。まあ本人達が望んで入隊したのなら何も言うまい。
ナツミA「ほほ、ポチに近い容姿の双子さんですか。」
ミツキ「むぬっ?! さては・・・ワンコ・デ・サンバに加入するわぅか?!」
ナツミA「・・・それでどうするのよ?」
ミツキ「アイル・ビー・バック! ワワン・ワン・ワワン!」
ナツミA「はぁ・・・。」
後始末は警察群に任せ、引き上げてくる女性陣。その中でミツキが双子に気付き、大いにボケをカマしだした。それに回りは笑っているのが何とも言えない。とにかくチャンスがあれば笑いを取ろうとする姿勢には脱帽だわ。
エルシェナ「そうですね・・・ここはマスターのお傍に居た方が実戦経験が積めそうですね。」
ミスT「むしろヘシュアとパートナーの専属護衛が良いんじゃないか?」
ルビナ「あー、ヘシュア様とリオデュラ様とは一緒に行動しますよ。近場の方が守れますし。」
仲間内で巨女を誇るルビナが軽快にプロレス技を披露する姿は、他の女性陣に良い刺激になっていたようだ。ミュティナも同じ流れに近い。超絶的な体躯の力や超能力を除いた、純粋な体術による戦闘に惹かれるものがあったのだろう。今では完全にレスラーそのものだ。
ミスT「となると、リオデュラも宇宙種族・・・には見えないな。」
ヘシュア「以前、助けて頂いた経緯から一緒に行動しています。」
ミスT「なるほど、レシュスとラーデュと同じな訳か。」
この雰囲気からすればパートナーという事は一目瞭然だ。だからこそ強いと言える。守るべき存在ができると、人は今以上に強くなっていくからな。まあ逆のパターンもあるが、それは希なケースでもある。
ヘシュア「諸々の流れは後でお話致しますが、今は姉の愚行を何とかしませんと。」
ミスT「・・・本当にヘシュアの爪の垢を、ヘシュナに煎じて飲ませてやりたいわ・・・。」
ミュティナ「ハハッ、何とも。」
この気丈夫たるヘシュアなら、カルダオス一族を纏めるには十分だろう。問題は姉の方だ。妹の言い分からすれば、完全に悪道に走っているのは言うまでもない。それでいてバリアやシールドが発生できるのだから尚更性質が悪い。
ミツキ「善心を持ちつつも、己の生き様を誇示する故に悪道に陥る。私達も十分注意しないと。」
ミスT「そうだな、本当にそう思う。」
茶菓子を頬張り終えると、何時になく真面目な雰囲気で語るミツキ。それに彼女の別の姿を初めて見た面々は驚いている。何時ものノホホンな姿が当たり前だと思っていたようだ。
エリシェ「アレですかね、正義の騎士が悪道に陥り暗黒卿と化す。」
ミツキ「あながちフィクションとは言えませんよ。人・・・生命体ですか、曲がり間違うとそうなりますから。」
ナツミA「胸中の一念が、全ての生命を思い遣っての行動に帰結する。ここに至るなら、上辺の些細な出来事なんか蹴散らせるんだけどね。」
エリシェ「本当に難しいですよね。」
後始末をウインドとダークHに任せて、喫茶店へと戻りつつも雑談をする。一際真面目な言動のミツキに周りは圧倒されているが、それに自然と同調できるナツミAとエリシェも凄いとしか言い様がない。
ミツキの理論は、もはや生命哲学に帰結してくる。躯屡聖堕フリーランスや大企業連合、そして各警護者軍団の根底の理にも至っている。ここがブレなければ、絶対に道を踏み外す事はない。周りが戒め続けてくれるため、踏み外す事すらない。
戒めてくれる存在が欠落し、悪道に進んだのがヘシュナになる。しかも地球人からすれば驚異的な戦闘力を有しているだけに、非常に性質が悪いと言える。まあ今の俺達からすれば、彼女の戦闘力は微々たるものに至ったが。
かつてはギガンテス一族とドラゴンハート一族をしても、カルダオス一族には勝ち目がないと思っていた。技術力なら遥かに勝っているため、怖ろしいまでの力を有していると言える。しかし種族としての力に至るなら、ヘシュナはミュティナやルビナにすら勝てない。だから彼女は悪道に走る地球人を味方に動き出したという事だ。
今回のキーパーソンはヘシュナに間違いない。彼女を説得できるかどうかで、今後の戦いが左右されると言い切れる。まあ今となっては妹のヘシュアがいるから大丈夫な気がするが。
ミスT「何だ、ミュティナやルビナから聞かされた話とは全く違うな。」
ヘシュア「お2人は私達を買い被り過ぎですよ。」
何時襲撃されてもいいように、喫茶店にはほぼフルメンバーが集っている。先程の襲撃への対応後とあってか、食事の摂取量が半端じゃない。厨房のシュームやナツミYU、ビアリナやエリシェが食事作りにテンヤワンヤである。
ヘシュア「私達種族は存在も技術力も全てにおいて、お2人の種族には到底敵いません。弱小種族の私達を憂い、色々と技術提供やサポートをして頂いていました。私はお姉様と同じで、個々人の生き様に心から敬意を表しています。エリシェ様の生き様からして、大企業連合に所属される方々が凄まじい強者方であるとも痛感できますし。」
ミスT「何だかシュームみたいだな。」
一服しながら思った。ヘシュアの生き様は完全にシュームに近い。その雰囲気で相手の内情を察知する術を知っている。唯一違うのは性格だろう。まあ両者とも個性があってこその生命体だからな。
ミュティナ「いえ・・・実は昔、お会いした時はヘシュナ様よりも酷かったのですがね。」
ルビナ「確かに・・・。会頭直後に暴言を吐いたり、酷い時は殴り掛かって来た事も。」
ミスT「この美丈夫が、か・・・。」
ヘシュア「もう過去の話ですよ・・・。」
照れ臭そうにするも、本当に申し訳ないような雰囲気を出している。それだけヘシュアの悪態が凄まじかった証拠だろう。あのヘシュナですら真っ青のようである。
ミュティナ「ただ、どんな悪態を付いても敬いの精神は忘れていませんでしたよ。」
ルビナ「暴言吐きながら助ける姿を何度も見ていますし。今推測すると、本気で怒っているという事ではないようでしたね。」
ミツキ「ツンツンデレデレわぅ?」
ナツミA「正にツンデレの極みよね。」
食べ終わった食器を片付けてくるミツキとナツミA。その際に伺った話を察し、今時の言い回したるツンデレだと語ってきた。本当にそうだろうな。
ミツキ「でもヘシュアちゃんの生き様からは、全く以て悪心が感じられないわぅよ。元からそうであった証拠もあるわぅね。」
ナツミA「かなりの年月を経ないと、性格は変化しないからね。」
ミツキ「変わらない場合もあるわぅけど。Tちゃんが顕著わぅよ。」
新しい生命体とあってか、マジマジと見つめるミツキにタジタジのヘシュア。しかしその眼光が遥か先を見定めるものだと知ったのか、胸中を曝け出しているかのようである。
ヘシュア「何だか、ミツキ様とナツミA様に全てを見透かされている感じです・・・。」
ナツミA「んー、そんな特殊技能なんかないですよ。まあ簡潔に言えば、直感と洞察力による先読みとも言いますか。」
ミツキ「シュームちゃんも凄いわぅが、Tちゃんなんか更に凄いわぅからね。特に女性の姿になってからの先見性ある目線は、抜き身の真剣そのものわぅし。」
ヘシュア「えっ・・・もしかして・・・。」
ミツキの発言を聞いた直後、俺の胸元を見つめるヘシュア。その中の1つに気付き、俺の素性を察知したようである。
ヘシュア「うわぁ・・・ギガンテス一族の性転換ペンダントでしたか。」
ミスT「一同の特効薬だの。お前さんの姉を説得するための、言わば偽装工作に近い。」
ヘシュア「あー・・・一理あります。姉は幼少の頃に同族の男性にからかわれた経験から、かなりの男性嫌いになっていますので。」
ミスT「・・・初見時の見下すような目線はそれだったのか。」
なるほど、これで全ての合点が一致した。ヘシュナが俺を強烈な目線で見ていたのは、男性が嫌いだったからというものだ。確かにミュティナやルビナを敵視する一面はあるものの、完全に嫌いだという雰囲気はなかった。全てはここに帰結する訳か・・・。
ミツキ「むーん、Tちゃんが某竜の教義で性転換キャラで暴れているのと同じわぅね!」
ミスT「あー・・・。」
ナツミA「何時でも性別の変更ができるしねぇ。」
ミツキが挙げるは、某ゲーム“竜の教義”という作品だ。以前彼女から面白いと勧められ、暇があればプレイしている。まあ今は喫茶店での常駐が多いから、その機会は全くないが・・・。
ヘシュア「ミスT様・・・いえ、ミスターT様なら姉の凝り固まった心を溶かす事ができますよ。そこまで女性を知り尽くされていらっしゃるのですから。」
シューム「隙があれば色目でサーチを開始するからねぇ、これだから野郎は・・・。」
ミスT「はぁ・・・。」
厨房から強烈な殺気に満ちた目線で睨んでくるシューム。同調してナツミYUやビアリナとエリシェも睨んできた。更に背後からトラガンの女性陣からも痛烈な殺気を感じる。俺自身の一挙手一投足全てに反応しているかのようだ。
ヘシュア「ですが、その身形だと女性陣の中に溶け込む事も可能でしょう。色目とかそれ以前の話になりそうですが。」
ミツキ「あー、着替えの覗きわぅね!」
ミスT「勘弁してくれ・・・。」
意地悪そうに語るヘシュアとミツキ。それを聞いた周りの女性から、再び強烈な殺気に満ちた目線で睨まれた。本当に勘弁してくれ・・・。
第7話・4へ続く。




