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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第2部・激闘と死闘
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第6話 再来のカーチェイス・後編5(通常版)

 大盛り上がりの海岸。それそれが一時の休息を満喫している。遠方の海上には警備と題して超レプリカ伊400が鎮座しているのが何とも。レプリカ大和の倍以上の巨体だ。東京湾の守備には打って付けだろう。


 ちなみに超レプリカ大和は小笠原諸島近辺で鎮座中。その長大な射程距離を誇る獲物は、日本の領土全てを守り切れるほどだ。またレプリカ大和は沖縄は那覇に、レプリカ伊400は北海道は函館に待機中だ。


 今はここにいるが、超レプリカ伊400は遊撃として日本全土を回っているようだ。この4大ガンシップが日本の警護に当たっている感じになる。警察群や自衛隊群が国外からの横槍で動けない以上、俺達警護者群が何とかするしかない。


 極め付けは衛星軌道上に鎮座の母船・大母船・超大母船か。ピンポイントの射撃が可能とあると、それを知った国家は恐怖に震え上がると思うわ。そして現段階での対処法は、例の13kmを誇るヘシュナの宇宙船のみになる。人類は3大宇宙船団に為す術がないのだ。


 連中がヘシュナと組みたがる意味合いが分かる。行く行くは3大宇宙船団を視野に入れた行動を取るのが見え見えだ。まあヘシュナ自身も馬鹿ではないだろうから、そこは鋭く見抜くとは思う。大丈夫だとは思うが・・・。



「何かお考えでも?」


 彼女の声で我に返る。相変わらず周りはドンチャン騒ぎの真っ最中だ。まあ喫茶店での流れと全く変わらないため、室内か室外かの差だろう。


「いや、ヘシュナはどうしているか気になってね。」

「やはりそこに帰結されますか。」

「上辺の悪態はまだしも、シュームが言うそれは孤独を恐れている感じに取れる。」


 軽食を取りつつ内情を語った。巨大ホログラムでしか確認できなかったが、ヘシュナの心境は相当なものだとも取れる。上辺の凝り固まったプライドが前面に出ているようで、実際の内情は別のものだと感じれる。


「前にも言いましたが、昔はあの様な覇道を突き進む事はなかったのですが。」

「他の連中に誑かされているとも取れないしな。」

「本来なら私達以上に曲がった事が大嫌いな筈だったのですが、何処でどう曲がったのか本当に不思議でなりません。」

「・・・黒幕が相当な手練れという訳になるか。」


 地球人以上の見定めた千里眼を持つ宇宙種族。その中のカルダオス一族のヘシュナ。その彼女が簡単に操られるとはとても思えない。何か別の意図があっての悪態に感じれるが、今は俺達にとって脅威の何ものでもないのは確かである。


「シュームさんや、あのパッと見だと他に何か感じれたか?」

「ん? ヘシュナちゃんの事? んー・・・素でも形作ったものでもなさそうだけど、君が思うように別の意図があるのは確かよね。」


 一同に焼きそばを拵えているシューム。喫茶店での厨房の姿と何ら変わらない姿に笑ってしまう。その俺を見て苦笑いを浮かべているが、流石は現役の主婦である。


「まあこれも君が思った事だけど、確かに孤独を恐れている一面はあるわね。ミュティナちゃんやルビナちゃんが言う様に、昔は熱血漢だったとしても今は私達に害を成す存在でしかない。事態が悪化する前に説得するのが無難かな。」

「そこまで己を誇示している方を説得できますかね・・・。」

「んー・・・異性同士だと要らぬ感情が出かねないけど・・・。」

「つまり、もう一度変化せよという事だな。」


 一旦手持ちの食べ物を近場に置き、胸のペンダントの1つを作動させる。以前ミュティナから託された、性転換が可能な代物だ。座った状態での変身は行った事がないが、ペンダント効果でものの数秒で男性から女性へと変化した。



「うっほーい! ミスターTからミスTにメタモルフォーゼわぅね!」

「必殺の“ミスT様”ですか。」

「何とも・・・。」


 俺の変化を直接見ていない面々は驚愕の表情を浮かべている。俺自身も喫茶店の2階で変化して着替えたため、この場での男性時の出で立ちを纏った状態での変化は初めてである。


「はぁ・・・女の私から見ても惚れ惚れするわね。」

「ですね。元が男性だからですか、そこに女性の魅力が加算される形でも。」

「でで、どうするわぅ? どうやってあの宇宙船に潜入するわぅか?」

「暫く様子見だろうな。もし向こうが監視の目を光らせているなら、何れ襲撃してきた時に何か分かるかも知れない。」

「出会い頭の時の印象は最悪でしたからね。」


 変化を終えて再び軽食を取る。男性から女性への変身は体格の変化もあるが、殆ど変わらない流れになる。メルデュラ・リヴュアス・メアディルの様な巨女に近い感じだろう。


「そう言えば、ヘシュナには家族はいたりするのか?」

「妹がいらっしゃいますね。お名前はヘシュア様です。ただ最後に見掛けたのは数万年前の話ですが。」

「数万年ねぇ・・・。」


 アッケラカンと語る内容に驚愕するが、それは地球人時間に換算すると数年とも取れる。俺達が彼女達と出会う前に、ヘシュアと言う人物に会っている感じか。もしかしたら突破口になるかも知れない。


「流石のヘシュナ様も、ヘシュア様には頭が上がらないそうです。妹なのにやり手の頭領になりますし。」

「へぇ・・・珍しいな。」

「となると、ヘシュアちゃんを味方に付ければ打開できるかも知れないわね。」

「なるほど・・・ちょっと探りを入れてみますかね。」


 食事を取りつつ、近場のテーブルにノートPCを展開。口は食事を取るも、両手はブラインドタッチが冴え渡る。流石はやり手のプログラマーだわ。



「ほぉ、デュリシラ嬢の腕前もなかなか。」

「叩き上げで勝ち取った力ですね。」

「ヘヘッ、恐れ入ります。」


 デュリシラの猛烈な作業を見守るウエストとサイバー。この2人もソフトウェアの力は凄腕の強者になるため、彼女の実力を直ぐに察知したようである。ナッツとエンルイはこの手のソフトウェアは得意でないようで、どちらかと言うと職人肌と言える。


「この手の作業は手数が勝負だからね。私も参加して速攻勝負で炙り出しますか。」

「炙り出す、ですか。まあそうでもしないと見つかるものも見つかりませんし。」

「お前達なら何だってできるわな。」


 軽食を取り終え、一服しながら一同を見つめる。和気藹々な流れの中に、生真面目さも存在している。この部分には違和感を感じずにはいられないが、それこそが連中の目を欺く強烈な一手になるのも確かだ。言わばカモフラージュだな。


「あの、今度また私達に戦術指南をご教授頂けますか?」

「何だ、何時もの時でもいいのに。」

「いえ、私達の最初の印象はミスT様なので。どうしても今だに男性への恐怖心は消えていないのが実状でして・・・。」

「へぇ・・・四天王も形無しよねぇ。」


 デュリシラに勝るとも劣らないブラインドタッチをしながら、強烈なまでの目線で四天王を睨むナツミA。それに4人は恐怖に慄き、顔を青褪めだしている。一応の戒めの感じだろう。


 ただし、彼らのトラガンへの貢献は計り知れない。既に兄貴分として大変慕われている。俺の場合だけ特殊な接し方をしたため、今も野郎の俺自身に慣れない感じなのだろうな。


 事実、四天王と気さくに接するトラガンのレディースの面々。ここに男性への恐怖心は全く感じられない。俺の時だけ幾分か戦々恐々な雰囲気を出している。


 そう考えると、世界での女性への対応が身に滲みる思いになるわ。声を挙げられずに虐げられているのが実状だ。ある意味トラガンの面々は、今後の現状打開の特効薬になるのかも知れない。


「・・・これだから野郎は・・・。」

「ハハッ、女性時でも自己嫌悪ですか。しかし、今思われた一念は痛烈に伝わっています。私達大企業連合の根幹も、女性が立ち上がってこそ至れる生き様と思っていますので。」

「マスターのその一念は、男性目線から女性目線へ至ったからこそのものですね。」


 今では野郎時でも女性時でも全く同じ考えに帰結してくる。本来なら偏った考えになるのであろうが、完全に女性目線の部分が芽生え出していた。理路整然と解釈できる事ではないが、確実に感じられる明確な力の1つと言える。


「俺の気質からしたら、女性の方が性分に合うのかも知れないわな。」

「お姉にお兄・・・前にあったアニメのお姉兄様わぅね!」

「某アニメよね。ただアレ、性転換と言うより兄妹な感じだけどね。」

「薄い本では性転換モノのウヘヘウヘな作品が多いわぅ♪」

「あー・・・まあねぇ。」


 姉妹が挙げたネタを聞いた女性陣が、強烈な目線で俺を睨んできた・・・。その恐怖の視線に男性たる四天王は恐怖に震え上がっている。女性を怒らせたら怖いという事が、この雰囲気で確実に分かるわ・・・。


「まあ君の気質からすれば何でもアリな感じだけど。」

「ですね。女性の私達からしても、その出で立ちに強い魅力を感じますし。」

「俺からすれば野郎の下心を除けば、女性特有の魅力には頭が上がらないんだがの。」


 軽食を終えて一服しながらその場に寝転ぶ。夜の帷が下り出してきた海岸は、星空が美しく見えていた。これで街灯の明かりがなければ、更に絶景が見渡せるのだろうな。


「・・・この美しい大自然、地球も含めた様相。何が何でも守り続けねばな・・・。」

「大丈夫ですよ。私達の力を駆使すれば、必ず達成できます。」

「俺達次第という事だな・・・。」


 傍らにいたエリシェが俺の頭の近くに座る。そのまま頭を優しく持ち上げ、膝の上へと乗せてくれた。実年齢からは年下の彼女だが、女性の年代からすれば俺は赤子当然に近い。この何気ない言動こそが、エリシェの女性たる生き様の集大成だろう。


「・・・デュリシラ様が仰った通りですね。貴方が男性とはとても思えない。一時的にせよ性転換するも、昔から女性でいるかのような感じで。」

「何度も言うが、女性は偉大だ。野郎は破壊と混沌しか生み出さない。しかもそれが今だに続いている。その中でどれだけの女性達が苦しんでいるか。」

「またまた自己嫌悪を。ただ確かに今も続く紛争は、男性が中心となっていますからね。」

「君みたいに回帰できる男性がいるなら、世の中もっと変わるんだけどね。」

「先程仰られた通り、今後の私達次第で変わっていきますよ。」


 気付くと傍らにシュームとナツミYUも座っている。一服する姿が格好良く、女性に変身しているから余計響いてくるのだろうな。


「・・・ナッツの名言通りだわな。」

「何です? あー・・纏めて守り通せば済む、ですね。正にその通りで。」

「言うは簡単・行うは難し、でも。しかしミツキさんの名言からすれば、諦めなければ0%にはなりませんよ。」

「本当だわな。」


 視線をミツキの方に向けると、ミュティ・シスターズと一緒に大食いしている姿を見た。それに自然と笑ってしまう。この美丈夫の生き様を体現すれば、世上から悲惨や不幸を限りなく減らしていけるのは間違いない。



 その後もドンチャン騒ぎは続く。世上は混沌とした様相なのに、この和気藹々とした流れは見事としか言い様がない。しかしそれが連中にとっての特効薬になるのも間違いない。


 星空が美しい夜の中を、一時の休息を満喫しよう。この安穏が全ての人に至る時まで、俺達は戦い続ける。


    第7話へ続く。

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