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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
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第3話 暗殺者に愛の手を1(キャラ名版)

 超大型豪華客船での依頼を終えた。逃げ場がない船上を逆利用した不審者掃討は見事なものである。それに俺達の実力を窺い知るための場でもあったという。


 世界最大の大企業のオブザーバーたるエリシェの前では、俺達は一介の警護者でしかないのだろうな。しかし彼女が思うのは他者を利用するというものではなく、共に戦うという共助の姿勢が非常に強い。それに来るべき戦いに備えるための準備とも取れた。


 この先何が待ち構えているかは分からない。ただ確実に分かるのは、先の依頼が今後の俺達に多大な影響を与えたという事だ。



 まあ何にせよ、今後も俺達は警護者の生き様を刻むのみ。それが俺達の絶対的な概念だ。強いては自由とも言えるだろうな。


 生き様とは、貪欲なまでに貫き続けてこそ真価を発揮する。本当にそう思わざろう得ない。




 そうそう、面白い事があった。と言っては本人達に失礼だが。かなり前に迷子の娘を母親と再会させた経緯があった。後日、喫茶店にお礼に訪れた時。店舗にいたナツミYUが驚きの声を挙げたのだ。


 この母親、名前はシューム。娘はリュリア。シングルマザーな点から知り合ったそうだが、何とシュームも元警護者という実力者だったのだ。


 更に凄いのはナツミYUの先輩格だという。年齢は5歳ほど離れているが、それを感じさせないぐらいの師弟的な関係との事。シュームに頭が上がらないナツミYUの姿には、見ていて呆気にさせられる。



 丁度船上での依頼を終えた後日、シュームとリュリアが喫茶店で働きたいと申し出てきた。先日の恩返しだと言う。シューム自身は過去に飲食店で働いていた経緯から、調理師免許は取得済みとの事だ。


 リュリアはまだ10歳と若いが、外見に似合わず相当なパワフルガールである。ミツキに近い体格故に、臨時のウェイトレスはお手のものである。


 というか彼女、未成年なのに大丈夫かと心配になるが・・・。まあ俺達の裏稼業からして、このぐらいは優しいものだろうな。




ミツキ「これお願いわぅ。」

リュリア「はーいっ!」


 う~む、和やかだ。厨房のミツキが料理を完成させ、リュリアがトレイに乗せてお客さんに運んでいく。更に厨房の奥ではシュームが料理と格闘中である。肝っ玉母さんとは正しくこの事だろう。


 ちなみにカウンターの隅にはナツミYUが半ば駐留している。学園の方は同僚や弟子達に任せているのが何とも言えない。まあ彼女の場合は運営費を稼ぐ事に重点を置いているため、裏の学園校長という意味合いだろう。



ミスターT「詳しく聞いてなかったが、シュームの実戦経験はどうなんだ?」

シューム「かなりのブランクがあるけど、ナツミYUよりは上手なのは事実ね。」

ナツミYU「お・・仰る通りで・・・。」


 何ともまあ・・・。美丈夫で有名だったナツミYUが萎縮している。それだけシュームの存在が凄い証拠なのだろう。俺と1歳しか差がないのにな・・・。


ナツミA「シュームさんの噂は聞いていますよ。ハンドガンを四丁拳銃するという強者と。」

ミスターT「・・・どうやるんだそれ・・・。」

ミツキ「髪の毛を衣服に変える姉ちゃんわぅ~。」


 参考までにと資料を渡してくるミツキ。そこにあったのは、某ゲームでのお嬢の戦闘スタイルとの事。どうやら両手以外に両脚にハンドガンを装備し、それを上手い具合に射撃するスタイルらしい。本当にできるのかこれ・・・。


ナツミYU「先輩の両脚にハンドガンを装備するスタイルは、ゲームを題材に確立させた戦術です。足首の調整で射撃できるように改良を施し、後は踊っているかのように動くのみで。」

シューム「ただ両手とは勝手が違うからね。口径は小さいのしか選べないけど。」

ミスターT「口径の問題よりもできる自体がね・・・。」

ミツキ「さあ、宴の時間わぅ!」


 信じられない戦闘スタイルに呆然とするが、ミツキの茶化しに笑うしかなかった。案外彼女も同じ動きができそうだな。むしろミツキの場合はマグナムよりもマシンガンの方が効率がいいのかも知れない。機敏さなら身内最強なのは間違いないわ。


シューム「でもナツミYUの方が伝説的な扱いよ。私は小規模でしか動かなかったから、目立った依頼は請け負わなかったし。」

ナツミYU「ですが私の基本スタイルは先輩が淵源ですよ。先輩が本気を出されたら、もっと凄い事になると思いますから。」

シューム「全盛期はそれなりにやれたんだけどねぇ~。」


 テキパキと料理を完成させてミツキに渡す。それに一手間加えてリュリアに渡し、お客さんへと運ばれていく。前から行っていなければできないものだ。流石としか言い様がない。


シューム「でもまさか、リュリアと会わせてくれた君が警護者だったとはねぇ。しかもナツミYUの命を救った経緯もあるじゃない。」

ミスターT「俺の全く知らない俺なんですけどね。」


 紅茶を啜りながらぼやく。シュームが語る内容は、俺の知らない自身が行った事だ。本当は記憶喪失で忘れてしまって、窺い知る事ができないだけだが。


シューム「フフッ、なるほどね。ナツミYUが惚れるだけあるわね。」

ナツミYU「な・・何を言うのですか・・・。」

シューム「あら、貴方も彼の魅力に取り付かれているでしょうに。私は以前の迷子騒動時で、気にはなっていたけどね。これだけの魅力がある男性なんだから、もっと積極的にならないとダメよ。もちろん、私もその流れに乗るけど。」


 エラい不気味なほどの笑みで俺を見つめてくる。ナツミYUにはない、女性の貪欲な一面とも言うべきか。取って食われそうな感じだ。これは流石に真似はできないだろう。


ナツミA「お2人は母親故の見定めた一念がありますよね。しかもどちらもシングルマザーと全く共通点が同じ。異なるとするなら、ナツミYUさんは水・シュームさんは火でしょう。」

ミツキ「わたと姉ちゃんと同じわぅね!」

ナツミA「貴方は炎、私は氷よね。」

ミツキ「燃え上がるわぅぜぇ~!」


 2人の美女による妖艶な雰囲気を打ち消すかのような、ナツミAとミツキの見事なやり取り。これにはどうしても笑ってしまう。この姉妹は素体の問題で超絶的過ぎるのだ。



シューム「ところで、都心の暗殺者の話は聞いてる?」

ナツミYU「ああ、あの一件ですか。」

ミスターT「何だそれ?」


 粗方作業を終えて休憩に入るシューム。引き続き厨房はミツキが担い、補佐にナツミAとリュリアが行うようだ。その中でカウンターに座るシュームが奇妙な事を言い出した。


シューム「極悪人だけを狙う暗殺者がいるそうよ。しかも姿を見せない事から、死神とも言われているみたい。」

ミスターT「半殺人鬼か。」

ナツミYU「いえ、その人物も不殺生を貫いているみたいですよ。ただ瀕死にまで追い込むぐらいの猛攻は加えるそうですが。」

ミスターT「俺達と何ら変わらない感じがするけどな。」


 今までの依頼でも、殺害はせずとも相当な重傷を負わせてきた。両肩・両腕・両脚への射撃は無論、体術や鈍器による殴り付けもしかりである。その暗殺者と言われる人物がどのぐらいの度合いなのか気になるが。


ミスターT「まあ最悪のケースは、同業者同士の対決だろうけど。」

ナツミYU「そこなんですよね、一番の怖さは。」

シューム「あら、相手が誰であれ叩き潰すのが信条じゃないの。それが同業者であれ、妨害要素なら徹底的に叩き潰す。それがこの道の暗黙の了解よ。」


 ナツミYUの戦闘スタイルをしても、ある一定の慈愛は保ってはいる。しかしシュームの場合、多分それは完全に切り捨てているだろう。でなければ要らぬ感情で逆にやられる可能性もある。


シューム「愛する者を守るためなら、私は躊躇なく引き金を引くわ。自分がやられては、守る事すらできなくなる。一切の私情は禁物、徹底的な無慈悲な一撃を放つのみよ。」

ミスターT「ギラついた感情だなぁ・・・。まあそれこそが警護者としての真のあるべき姿だが。」

ナツミYU「私には厳しいです・・・。」


 シュームの肝っ玉の前だと、流石のナツミYUも赤子当然だろう。しかし彼女が厳しいと言うのは、いざ本気を出せば同じ事は可能だという現れだろうな。伊達に伝説のガンマンを謳ってはいない。



ミツキ「わたはシュームちゃんの一念は同調しかねないわぅ。やっぱ相手も自分も助かる方を取っておきたいわぅよ。もちろん、敵対者には冷徹無慈悲な鉄槌は下すわぅけど。」

ナツミA「そうね。シュームさんの一念は相手を殺しかねない痛烈なもの。それでは何れ己自身がダークサイドに陥るのは間違いありません。ここはマスターの十八番、悪人心折で殺すのが無難だと思いますよ。」


 シュームの信念には同調できないと語る姉妹。しかし理は理解しているようで、用はその手段に同調できないという事だろうな。理は十分同調している。かくいう俺もそうだ。


シューム「う~ん、やっぱそうかなぁ・・・。」

ミツキ「うむぬ。ただシュームちゃんが悪いという事ではないわぅよ。ただ殺害という一念が絶対的に悪いというのであって、それ以外の部分は全然OKだと思うわぅ。じゃないとこの生き様は絶対に貫けないわぅね。」

ミスターT「シュームの一念は本当に殺しかねないものだからな。そこだけは同調できんわ。しかし躊躇なく引き金を引く、は同調できる。でないとこちらがやられるからの。」

ナツミA「シュームさんの一念は、本来あるべき警護者の姿ですよね。要らぬ感情すらも捨て、冷徹に任務を徹底する。むしろマスターの不殺生の戦闘スタイルこそ、ある意味異端児でもありますし。」

ミスターT「まあねぇ・・・。」


 一撃必殺の重火器を用いている以上、下手をすれば相手を殺害しかねない。それを行わず、技術で覆していく姿。なかなかできるものではないが、それが実際にできているのは実力が伴っている証拠だろうか。


シューム「でもT君の場合は執念と信念よね。こればかりは私には真似できないわ。私は目の前の敵は完全排除を狙うから、強いては殺害に至ってしまう。もちろん今までの依頼では至る事はなかったけど。」

ミツキ「それ即ち、さっきのは心構えわぅね。心構えなら同調できるわぅよ。ただし、行動はご法度わぅからね?」

シューム「大丈夫よ、そこまで愚かじゃないから安心して頂戴な。」


 自分を見縊るなと小さく笑う彼女。この笑いには数々の修羅場を潜った者が伝えられる、哀愁がヒシヒシと伝わってくる。心構えこそ殺意を持つも、実際に不殺生を貫いている彼女こそ伝説的存在だろうな。


ミスターT「ただし、心殺しなら何度でも行うがね。まあ廃人同然になるが、殺害には至らない。以後の悪行を行わなくさせるなら、俺は何でも用いてやる。」

ミツキ「ウッシッシッ♪ ギラ付いた殺気と闘気で一撃必殺わぅね!」

ナツミA「廃人程度ならば、刑務所で余生を過ごせますからね。因果応報の理は、しっかり受けて貰いますよ。」


 怖すぎるぐらいの殺気を出すナツミA。それに当てられてミツキも同じく殺気を出し始めた。それに青褪めるシュームとナツミYU。凄腕の警護者を以てしてもこれだ。姉妹の凄さが滲み出ているわな。



 しかしまあ、先日の迷子騒動時は普通の母娘の感じがしていた。それがどうだ、母の方は伝説の二丁拳銃ガンマンの師匠的存在だというのには驚くしかない。しかも両腕両脚を駆使した戦闘スタイルと言う。


 某ゲームの主人公では、作品内の彼女が同じ戦闘スタイルをしている。しかしそれを実際に行うには、かなりの高度な戦闘技術を必要とすると思われる。凄腕ガンマンのナツミYUですら、二丁拳銃止まりだ。


 シュームの四丁拳銃スタイルは一体どんなものか、是非とも見てみたいものである。


    第3話・2へ続く。

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