第5話 再来のカーチェイス・前編5(通常版)
(で、今現在の連中の動向はどうだ?)
(あ、はい。今現在は品川埠頭から・・・って、海路に出ていますよ!)
(ありゃ、道を変える流れじゃないわぅか。となると・・・。)
疾走していたウアイラを減速させ、環七から一般道へと入っていく。ウアイラのウリの高速走行ではなく、殆ど徐行に近い流れでの商店街を走っている。
(なるほど、今のその地点だと下手に動くのは得策じゃないわね。)
(うむぬ。海路は広大わぅが、陸路より移動速度は激減するわぅよ。わた達が主導権を握っているのは間違いないわぅし。そこで徐々に接近すると同時に、直ぐに切り返せるように待機走行をするわぅね!)
(これは私には考えもしない戦術ですよ。)
ミツキの戦術に一段と感嘆しているナツミYU。ナツミYUのウリは高速走行による猛追になるが、ミツキの場合は先を見越した低速走行を遺憾なく発揮している。しかもウアイラ自体の能力で補えるギリギリ範囲内での走行だ。車両の特性を見事に見極めている。
(ビアリナちゃんとルビナちゃん、もう出撃したわぅ?)
(はい、そちらに向かっています。情報の方はルビナ様から逐一連絡を頂いていますので。あ、これは新規搭載のヘッドアップディスプレイです。)
(ほぉ・・・F-22やF-35の装備ねぇ・・・。)
(正にワンコアイわぅ!)
う~む、このハリアーⅡ改には現行兵器の実験として色々な装備を施されているようだ。
ヘッドアップディスプレイは最新兵器のF-22やF-35に搭載されている装備になる。目の前のサンバイザー的な風防に情報が表示されたり、機体を透写して下側の相手を見るといった事もできるらしい。機体自体に搭載されているカメラとの一体化である。
ただこの2種とも実際に実戦投入されていないため、その機構をハリアーⅡ改に搭載して実験していると思える。システムの追加搭載は問題なさそうなので、完全な実験機体と言えるだろう。
実際、オリジナルのハリアーⅡにはヘッドアップディスプレイは装備されていない。それに各種電子機器群も該当する。更には亜音速飛行しかできない同機は、F-22やF-35には到底敵わない。機体の利点となる垂直離着陸だが、F-35の派生版も同様の能力が備わっている。
今となってはハリアーⅡが現行兵器に勝る事はなくなった。唯一の利点は価格面だろうな。F-22もF-35も高額で、ハリアーⅡが複数購入できるほどだ。このぐらいしか利点がなくなっている。
(・・・それでも武骨な機体の方が好き、ですよね?)
(ハハッ・・見事な先読み、その通りだわな。)
次の語りをする瞬間、ビアリナに胸の内を見事に見透かされた。彼女が言う通り、現行兵器は洗練され過ぎて面白味に欠ける。俺は武骨な姿にこそ兵器の粋があると思う方だ。まあこのウアイラもムルシエラゴもそうだが、一部の機体には強い魅力はある。
(レプリカ大和やレプリカ伊400が正にそうですよね。現行兵器のイージス艦などは洗練され過ぎて華やかさがありません。まあ兵器に華やかさを求める自体おかしいのですが。)
(これら機体群の意味合いは、本来の力を発揮できるかどうかにあるからな。それに、どう足掻こうが兵器群は人殺しの道具の1つに過ぎない。)
結論はこうなってしまうか。扱う人により全く変わってくるが、これら兵器群は所詮人殺しの道具に過ぎない。そしてそれらを扱うプロフェッショナルたる警護者も、悪く言えば人殺しに過ぎないのだ。この部分は払拭しようにも払拭できないのが現状である。
(んー・・・でもTちゃんみたいな一念と心構えがあるなら、人殺しには至らないわぅよ。現に活人技を駆使した戦術を惜しみなく展開してるわぅし。更には相手を殺すのではなく、阻止するために動いているわぅから。)
(そうね。その部分が絶対不動なら、殺人快楽者には陥らないわね。と言うかTさんには、その概念は全く以て皆無だと思いますし。)
(一同の顔に泥を塗る訳にはいかんしな。無様な姿など曝せんよ。)
結局はここに帰結、だな。ミツキやナツミAが指摘してくれたように、これが俺の生き様になる。絶対不動の原点回帰が備わるなら、怖れるものなど何もない。後は己が生き様を貪欲なまでに貫いていく、これしかないしな。
(改めて、私達の立ち位置は非常に重要な所まで至っているのですよね。)
(漠然と進むのは過去の話よね。)
(んにゃ、何時も通りで問題ないわぅ。茶菓子を追い求めるワンコそのものわぅよ!)
(ぶっ・・アッハッハッ!)
それぞれの原点に立ち戻り、神妙な一念に回帰しだす。しかし次の瞬間、ミツキの一言で一気に崩れ去る。シュームを筆頭に一同して爆笑してしまった。この美丈夫の言動は本当に見事なものである。
(フフッ、ミツキさんの生き様があれば世上から悲惨や不幸は根絶できますよね。)
(道は険しいけど、不可能ではないわねぇ。)
(今後の私達次第という事になりますね。)
(うぉー! 最強のワンコを見せてやるわぅー!)
徐行速度で様子を見るミツキが啖呵を切る。それに周りは笑うしかない。この女傑の一挙手一投足は本当に見事としか言い様がないわ。それでも運転は非常に慎重に相手の動向を探っている。正に獲物を前にした猛獣の如く・・・。
意思の疎通による念話で、デュリシラが捉えている情報が脳裏に浮かんでくる。海路に出た窃盗団は、そのまま東京湾に出だしている。しかし、その先にはエリシェが先手を打って行動をしていた。東京湾の出口、一番幅が狭い場所にそれは鎮座している。
全長1315mの超レプリカ大和は東京湾に入り難いが、610mの超レプリカ伊400は湾内に問題なく入れる。しかも潜水艦なのに海面に出ても戦艦に匹敵する火力を有していた。後方に搭載された138cm主砲や46cm副砲が目を光らせている。
流石の窃盗団も、超潜水艦が目の前に鎮座している様に驚愕した様子だ。慌てて品川埠頭方面に引き返している。
(見るわぅ! ワンコサブマリンの実力を!)
(はぁ・・・まあそう言う事にしましょう。事前に超レプリカ伊400を東京湾外に待機させておきました。レプリカ伊400だと舐められると思いますが、超レプリカ伊400ならレプリカ大和クラスですからね。)
(皮肉の以前に、超レプリカ伊400のサイズがレプリカ大和の2倍以上なのが何とも。5倍まで拡大した様相は、地球上で最大最強の戦艦と潜水艦ですよ。)
(運用次第では無限大の可能性を秘めているわな。)
昨今の従来の潜水艦だと、武装は魚雷か単発式の砲塔しか発揮されない。最新式の潜水艦であれば、垂直発射ミサイル群が異彩を放ってはいる。しかし水中に潜水する事から、戦艦の様な重武装は不可能だ。それを覆したのが、レプリカ伊400と超レプリカ伊400になる。前者は23cm主砲だが、後者はその6倍の規模の138cm主砲が搭載されているのだ。
(某“新宇宙船号”でも、こんな重武装はなかったわぅよね。)
(あー、まあねぇ。)
(あちらはレーザー兵器そのものだしの。これら弾丸武装が物理となるなら、差詰め魔法兵器と言うかね。)
(確かに。レーザーやプラズマなどのビーム兵器は、魔法に近い感じですし。)
(ビーム兵器は水中では著しく火力が落ちるのも難点わぅ。)
(某ゲーム作品の設定か。)
某ロボットシミュレーションゲームなどで出る兵器群のどれもが、水中では火力低下に至ってしまう。地上か・空中か・水中か・宇宙空間か、この4つでの運用が多い。同作の終盤は宇宙での戦いが数多いが。
(あの作品か。警護者全盛期は娯楽も楽しんでいたから、同作で遊んでいたわ。第4次の作品では、某聖戦士の女戦士嬢が好きだったな。)
(あー、赤紫機体の女戦士ですか。主人公と異世界に戻ろうとして、自身の“闘気”力に耐え切れず爆死した。)
(オリジナルの劇中ではね。某ゲームの方だと、劇中の主人公の説得で最終まで共に戦う強者になったし。ただ、宇宙適正がCと最悪だったが。)
(宇宙空間では敵側メカ群に大ダメージ与えられないし、最強の“赤い変形可能機体”をしても回避が困難と最悪極まりないわぅ。)
当時の様相が脳裏に蘇ってくる。するとナツミAもミツキも同作をプレイした事があるからだろう、脳裏にその流れが鮮明に流れてきた。意思の疎通による念話は、お互いの胸中や脳裏の描写すらも透写するみたいである。
(何か・・・あまり美人と言えない気が・・・。)
(オリジナルの彼女は美人ではないわな。ただ戦う女性としての魅力はあったね。しかもオリジナルでは不遇の流れも、ゲーム側では最後まで第一線で活躍してくれた。)
(マスターは死亡という概念に物凄く反感を抱いていますからね。最近では敵味方問わず、全員生存をモットーとしている。あの特殊部隊も全く同じでしたし。)
(人が死ぬのは好きじゃない。)
今のスキルだからこそ活人技を貫けているが、警護者走り立て時は不測の事態で死者が出ていたのも確かである。俺も何度かその場面は見てきている。できれば敵味方問わず、相手の死亡は絶対に見たくない。
(大丈夫ですよ。だからこそのギガンテス・ドラゴンハートのテクノロジーです。各種のバリアやシールドを駆使すれば、要らぬ被害は最小限に抑えられます。)
(そうですよ。それにスミエ様はそれらがなかった時代に、己の身1つで私達を守られた。私達は一族を代表し、その孫となる貴方に恩返ししなければ失礼極まりない。)
(ますます以て頑張らねばの。)
全員生存とは烏滸がましいかも知れないが、実力が伴っていれば話は変わってくる。そのための警護者の力である。警護者とは本来こういった力で動く戦闘集団そのものだ。厳守し続ける事にこそ意味がある。
(しかし・・・君も女性には目が眩むのね。)
(野郎の性でし・・・。)
(はぁ・・・。)
(ウッシッシッ♪)
相変わらずの様相だ。ゲーム内のキャラたる女戦士嬢に気を惹かれた部分に、シュームとナツミYUはヤキモチを妬いている。俺の場合は恋愛感情とは別次元なのだが・・・。
(わた達の力があれば、目の前の悲惨や不幸なんざ蹴散らしてやるわぅ!)
(本当ですよ。そのための警護者・大企業連合・その他諸々の力ですから。)
(力とは、使ってこそ真価を発揮する。しかし誤った使い方をすれば破滅を導く。よって戒めてくれる存在が必要不可欠と。)
(ワンコの力が必要なのだよ。)
結論的流れを出すも、最後の最後でボケで締めるミツキに爆笑してしまう。この美丈夫の気質があれば、本当に世界から悲惨や不幸の概念を少なくさせられるかも知れない。
(ふむ、あえて“消せるかも”と言わない所が見事で。)
(生老病死の理などからすれば、幸か不幸かは表裏一体。消す事など絶対にできない。しかし可能な限り少なくする事はできるはずだ。それがミツキ流の生き様だと思う。)
(烏滸がましい感じですが、それで少しでも幸せが得られるなら安いものです。私の生き様でブイブイ言わせますよ。)
(本当だよな。)
ミツキ流の生き様は、人間に元来から内在する力の淵源に帰結する。彼女だけが特別な存在ではなく、一凡夫として開花させているに過ぎない。俺達も全て凡夫だからな。
要はその力を出せるかどうか、ここに掛かってくる。毎度ながらの回帰先だが、それでも回帰するのは重要である証拠だろう。
(お、窃盗団は再び埠頭に戻ったようですよ。)
(こちらからも確認できました。随時監視を続けていきます。)
徐行運転をしながら待ち続けると、暫くして連絡が入る。窃盗団は東京湾から表に出る事ができないのを確認し、再び品川埠頭へと戻ったようだ。正に袋のネズミだろうが、奥の手がありそうだな。
(この通称ワンコアイは凄いですね・・・。)
(ヘッドアップディスプレイわぅね!)
(そしてルビナ様から念話を通して、私達全員にその場が脳裏に映し出されるという。ギガンテス一族やドラゴンハート一族の十八番ですが、我ながら感心しますよ。)
(テクノロジーはあっても、使わなかった証拠とも言えますね。今は惜しみなく使っている現状から、こうした便利さが如実に現れているのかと。)
確かにそうだろう。意思の疎通による念話は、地球人自体には絶対に成し得ない力である。ペンダント効果もあるのだが、それ自体がオーバーテクノロジーの集合体だ。ミュティナ達やルビナ達がいてこそ成り立つものである。
(で、どうするの?)
(再び陸路を走るまで待ちましょう。ビアリナ様方には監視を続行して頂き、ミツキ様方に追撃をお願いする形で。)
(任せろわぅ! ただ、前回のように幹線道路を封鎖はしなくて良いわぅか?)
(多分大丈夫だと思います。その理由は連中がネットワークを通した情報網を巡らせているのと、前回の敗退理由を痛感していると思いますし。)
(なるほどねぇ。同じ過ちは二度と行わない、ね。まあ、この窃盗自体が同じ過ちを犯しているに過ぎないけど。)
(説得力の欠片もないわぅね。)
再び環七に戻り、ウアイラを中速走行で疾走させるミツキ。ただここからは前回のルートや各種の手法を知るナツミYUのアドバイスを受けている。幹線道路を封鎖しないのは、もしそれを行った場合は相手にも有利になる事を知っているからだろう。
(さて・・・次の一手はどう出るか。)
(ナツミYUちゃんなら、どういった手法で逃走するわぅ?)
(私ですか? う~ん・・・品川埠頭がダメで、別の場所に出るとなると・・・葛西臨海公園側ですかね。あそこからなら羽田空港も近いですし、桟橋も近いので目眩ましには十分だと思います。)
(つまり、こちらに向かってくるという事か。)
今は品川埠頭側に疾走中のウアイラ。ナツミYUの仮説に至るなら、連中と鉢合わせになる流れになる。となると、待ち構えるは葛西臨海公園周辺が無難か。
(OKわぅ、Tちゃんのそのプランでいくわぅね!)
(ああ、分かった。今度は逆追走だな。)
(“ワンコでワッショイ”を発動するわぅ!)
(アハハッ! 前回は“オーダーワンコ”で、今回は“ワンコでワッショイ”ですか。)
(はしる~はしる~わんこた~ち~♪)
(はぁ、“走る者”ね。)
どうしてこうも笑いに持ち込むのか不思議でならない。当然その術中にハマってしまい、爆笑してしまうのは言うまでもないが。これが自然体で出るのだから、ミツキの内在するパワーは本当に凄まじいものである。
品川埠頭側に向かっていたのを止め、信号経由から反対車線へと切り替えた。本来は上り射線から下り車線への方向転換はし難いか、ここは急を有する事で行った。一歩間違えば違反切符を切られそうだが・・・。
するとナツミYUが車内を漁り、何とパトランプを取り出すではないか。それを窓を開けて屋根に取り付けだす。更にサイレンまで鳴らし出したではないか。これには驚愕するより爆笑してしまった。
覆面パトカー化したウアイラが本領を発揮し、環七を爆走しだす。ただし今回はナツミYUの運転ではなくミツキの運転である。
第6話へ続く。
某聖戦士の女戦士は、「聖戦士ダンバイン」のガラリア=ニャムヒーさん(>∞<) 第4次スパロボでの宇宙適正がC(D?)と最悪で、ゲストメカなどの攻撃を回避できません><; 陸上と空中なら無双なのですがね@@; お気に入りのキャラの1人です@@b




