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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第2部・激闘と死闘
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第5話 再来のカーチェイス・前編3(通常版)

「まあ、マスターの心情を読めるのは別の要因もありますが。」

「大体は分かる、言わんでいいよ。」


 俺の内情を読む女性陣は、スミエ・シルフィア・ナツミツキ姉妹を除けば全員こちらに好意を抱いてくれている。そこから内情を読むに至るのだろう。ただビアリナは分かるが、人妻のデュリシラからも思われているのには驚くが。


「・・・それを思われるのなら、シューム様やナツミYU様はどうなるので?」

「デュリシラ様も今はシングルマザーなので、問題ないとは思いますが。」

「はぁ・・・そうですか・・・。」


 確かに彼女の言う通りか。シュームもナツミYUも夫に先立たれており、今は未亡人の状態になる。デュリシラも未亡人と聞いているが、それから至るのだろうな。


「恋心は千差万別、定まったものなどありませんよ。それに子供達からは新たな幸せを築けと何度も言われていますし。」

「新たな幸せ、か・・・。」


 彼女が語った言葉に思い馳せる。シュームもナツミYUも、求める先の結末は夫婦の間柄になるだろう。デュリシラもその感じだが、俺自身は彼女達の胸に開いた穴を埋められる存在になれるのか。幸か不幸かは紙一重、一歩間違えば不幸に至ってしまう。


「・・・そこに回帰されるなら、夫として申し分ないと思います。夫婦とは支え合ってこそのものですから。シューム様もナツミYU様も、貴方のその心意気を汲んでいるからこそ共闘されていると確信しています。」

「ですね。私自身は未婚なので詳しい事は言えません。しかし女である以上、お3方が何を心から望まれているのかは痛感します。いえ、この部分は他の方々も全く同じ思いだと確信しています。」

「・・・俺にその役割が担えるのかどうか不安だがな。」


 一服しながら天井を見つめる。今は誰を娶ると言った部分ではなく、俺自身に本当にその重役が担えるのかどうかが気掛かりだ。彼女達の一生を左右する事になるから余計である。


(前にも言いましたよね。ギガンテス一族は一夫多妻を推奨していますから。日本国内で一夫多妻が不可能なら、別の場所に移住すれば済みますよ。)

(はぁ・・・そう言うものなのか・・・。)


 ミュティナが念話により、俺の心中を見事に読んできた。以前同じ事を言われたが、まさか再度言われるとは驚きだわ。皮肉なのが、それが現状の打開策になっている所だろう。


(ドラゴンハート一族も全く同じです。強いては宇宙種族は大宇宙を旅する手前、一夫多妻でも後継者は多いに越した事はありません。)

(それだけ大宇宙は何が起こるか分かりませんからね。)

(地球も飢餓や紛争で命を落とされる方がいますが、大宇宙ではそれ以上の出来事が発生しています。私達宇宙種族は超が付く程の長寿命ですが、生命体である以上逝去は必ず訪れますし。)

(幸か不幸かは紙一重、だな。)


 こうなると、ほぼ究極論理に至るのだろう。地球の概念以上に後継者を残せるかどうかが、種族の存続に関わってくる。ここに行き着くなら、上辺の固定概念など浅はかなものになる。ただ俺も地球人で日本人である以上、どうも固定概念の払拭は厳しい。


(へぇ・・・一応は私達の事を汲んでくれているのね。でもね、要は私達がどうあるかが重要なのよ。シルフィアさんが名言のアレに帰結してくる。)

(人の一生は儚いぐらいに短い。だからこそ、先輩が仰る様に目の前の幸せを掴み取る。これだけ努力しているのです、そのぐらいの幸せは許されますよ。)

(Tちゃんも罪な男わぅね、ウッシッシッ♪)

(本当に難しいわな・・・。)


 今の俺には固定概念を崩すほどの勇気はない。しかし、何れ選ばなければならない事になる。それには今現在の問題を全て片付け、それから考えるべきだろうな。


 そう考えると、地球人ほど固定概念に縛られる種族はないのかも知れないな。ギガンテス一族・ドラゴンハート一族は、大宇宙を流浪の旅路の果てに帰結した生き抜くという概念。ここに回帰するから一夫多妻を容認している。何時何処で何が起こるか分からないのが宇宙である。


 逆を言えば、この壮大な大宇宙で住み良い地球に存在できる事自体が幸せだという事だ。それがどうだ、今では私利私欲に溺れたカス共が蔓延っている。テメェ等も地球に住ませて貰っている生命体の1つだと言う事を忘れていやがる。これでは地球自体が怒っても仕方がないわな。


 その荒波の中を一念定めて進む俺達は、完全に異端児そのものだろう。しかしそれが大宇宙の法則からすれば、生命体として当然の行動に帰結してくる。敬い・労い・慈しみの精神は全てのプラスの要因に回帰するしな。


 この穢れた世上を考えれば、俺達の行動が光って見えるのだろう。と同時に異端児である手前、出る杭は叩くにも当てはまる。こと日本人はその傾向が非常に強い。同じ日本人として本当に恥ずかしい思いになるわ。


 だからと言って歩みは止めん。己が定めた生き様は、愚直なまでに貫き通してこそだ。この姿勢は今後も一切変えない。断固として貫き続けてやる。




「うっほーい! 本物のデロリアンわぅー♪」

「見事なものだな。」


 数日後、何と喫茶店にデロリアンとダッジ・チャージャーが運ばれてきた。例の窃盗事件の関連から、日本国内にあった同車両をエリシェが購入。ここに運んできたとの事である。


「すみません、まだお2人用のではありません。これは言わばエサの類でして。」

「大丈夫わぅ。これでおバカさん達を吊り上げるわぅね!」

「ディーラーに置いていては警備が厳しい。しかし地方にあるクラシックカーなら、容易に窃盗し易いのを逆手に取る訳か。」

「はい。お話を伺う所、ディーラーにあるクラシックカー以外にも個人車両の窃盗も相次いでいるそうですので。」


 ガルウイングドアを開き、内部を物色するミツキ。ムルシエラゴやウアイラみたいな同ドアを採用するも、デロリアンは高級車の部類には入らない。手頃に手に入るスポーツカー的な感じだろう。しかし今ではクラシックカーの仲間入りを果たしている。


「骨董車両が増えると、メンテナンスも大変よね。」

「全部終わったらナツミYUちゃんに任せるわぅよ。」

「ほほ、それは願ったり叶ったりで。」


 ムルシエラゴを愛車とするナツミYUも、目の前のデロリアンとダッジ・チャージャーには魅入られているようである。まあムルシエラゴすらメンテナンスする彼女の車両スキルからすれば、この2台はお茶の子さいさいな感じだろう。それにパーツ自体も高級ではないしな。


「で、本当にポチの車にするの?」

「おうよ! これを改造して、過去や未来に向かってやるわぅ!」

「はぁ・・・そうですか。」


 ミツキが挙げるそれは、某映画のデロリアンである。劇中の同車は白髪科学者氏が改造を施したタイムマシン。初期はプルトニウムを燃料としてエネルギーを得ており、後半はゴミを燃料としてエネルギーを得ていた。ちなみに、車両に必要な走行燃料自体はガソリンになる。


「ギガンテス一族やドラゴンハート一族の力を使えば、タイムマシンとはいかずとも本当に空を飛ぶ事ができそうだな。」

「あー、反重力機構ですか。それなら実際に実現していますので、この車に施す事は可能ですよ。」

「レプリカ大和を改造すれば、正に某“宇宙戦艦”わぅね!」

「機動力に関しては申し分ないわな。」


 こちらはマンガやアニメで有名な某“宇宙戦艦”になる。確かに元ネタは戦艦大和を改造した宇宙戦艦で、海上はおろか海中・深海・空中・宇宙空間も動く事ができる。レプリカ大和は史実に準拠の船体だが、宇宙戦艦化すれば無限大の行動力を得られるだろう。



「ほぉ・・・そのプランは挙げておきましょうか。」

「・・・本当に造りそうだな・・・。」

「今後の戦況が悪化するなら、先を見越した行動を取らねばなりません。それにレプリカ大和の弱点は、その重荷による機動力の低下ですから。しかも海上でしか運用できないという最大の弱点もありますし。」

「まあ確かにな。」


 いくら史上最強の戦艦大和と言えど、それは海上という限定的なフィールドでしか運用ができない。陸上は無理であり、空中となれば不可能になる。そもそもあの巨体を滞りなく運用できるのは、浮力を利用した海上でしかない。それこそ翼を取り付けて巨大なエンジンを搭載すれば浮かせるだろうが、物質的には絶対に無理だわな。


「その作品を実際に拝見した事はありませんが、レプリカ大和や超レプリカ大和を空中や宇宙で運用させる事は不可能ではありませんよ。ただ現状では物質的に改修が不可能なので、最初から建造するしかありませんが。」

「エリシェ様が仰る通り、今後の戦況が悪化するなら考えねばなりませんね。」

「はぁ・・・本気なようだな・・・。」


 彼女達の信条は有限実行、特にエリシェが顕著だ。実際にレプリカ大和やレプリカ伊400を警護者専用ガンシップに仕立て上げたのだ。地球上で最強の大企業連合の力を以てすれば、宇宙戦艦を建造するのも容易いだろう。皮肉にもそれがカルダオス一族の宇宙船に特効薬となるのだから何とも言えない。


「まあやるからには、超レプリカ大和と同じのを改修した形がいいか。ネタ先の宇宙戦艦は実際のレプリカ大和のサイズだから、それ以上の方がいい。」

「超武装でブイブイ言わせてやれわぅ!」

「全て終われば、ミュティナ達やルビナ達が宇宙空間で使えば良いだろう。運用方法は任せるとして、警護戦艦としては申し分ない。」


 一服しながら思った。ただ漠然とこれらのガンシップを建造するだけでは、それこそ軍事力増強云々と言われかねない。ここはギガンテス一族とドラゴンハート一族の宇宙船群を守るガンシップとして位置付ければ良いだろう。しかも宇宙戦艦として運用するなら、これ程の逸材は他にはない。


「何か当初の話から完全に逸脱しだしている感じですがね。それでも今後の不測の事態への対応に一役買えれば万々歳でしょう。」

「地球人は地球規模だから反感を持つのであって、宇宙規模となれば介入すら無理だわ。先にシュームが言っていたが、人類が宇宙空間で活動できるシップはスペースシャトルぐらいしかない。それもただ漠然と乗り回すぐらいのな。」

「確かに。地球上では各国の軍事物が猛威を振るいますが、宇宙空間では全く以て無力に等しいですからね。それこそカルダオス製の宇宙船が妥当な所かと。」

「諸悪の根源どもは、正にそれを狙っていると思えます。もしかしたら、ミュティナ様方やルビナ様方の宇宙船団が最終目標かも知れません。」


 ギガンテス一族とドラゴンハート一族のテクノロジー欲しさを考えれば、連中の最終目標は衛星軌道上に鎮座している宇宙船団だろう。その先は分からないが、そこを連中の最終目標と取ればこちらも動き易い。断固として阻止する動きを見せれば申し分ない。


    第5話・4へ続く。

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