第3話 ガンシップ対宇宙船5(通常版)
「宇宙空間だと大気や重力による影響を受けません。一度進み出した物質は、逆噴射などの相殺エネルギーをぶつけない限り絶対に止まりませんし。」
「某リアルロボットはコロニー落としがそれだわな。」
「言い換えれば、宇宙船落としそのもので。」
アニメは某リアルロボットの様相がそれだろう。スペースコロニーは宇宙空間で人間が住める場所を構築したものだ。それを地球に落とした描写がある。完全な最悪の兵器と化すのは言うまでもない。
「“赤い彗星の逆襲”だと巨大衛星落とし、“機械の翼”だと人工衛星わぅね。」
「そうね。主人公さんが見事な手腕で破壊していたわ。」
「ここだとルビナちゃんの超能力で簡単に止められるわぅね!」
「あー・・・不可能ではなさそうですが・・・。」
あの巨大構造物を超能力で止めるとなると、相当な力が必要になってくる。ルビナが声を詰まらせたのは、恐らく全生命力を使うほどの力になるという事か。
「その時は俺も手伝うわ。この超能力ペンダントを駆使すれば、お前には及ばずとも力は出せるだろう。」
「なるほど、生命を削る超能力という事ですか。それなら、私達も全力を以てお手伝いしなければなりません。ルビナさんだけに負担を掛けさせる事は絶対にしませんよ。」
「そうね。矢面立って暴れてくれるなら、私達もそれ相応の力を発揮しなければ失礼極まりないし。」
「・・・すみません。」
感無量と言った表情をする彼女。つまり自分自身だけではないという現われだ。それは先程のヘシュナとは全く異なるものになる。ここが俺達の異体同心の理だわな。
「そうね、今思った通りの一念よね。あのおバカさんは全てを自分1人でやろうとしている。仲間という存在、戒めてくれる存在が欠落している。マスタースミエが覇気で押し留めようとしてましたが、それでもあの様相だとT君と同じ。」
「意固地に我欲を貫き続ける、ですか。だからこそ打開策も作れると。」
じゃじゃ馬ならしは目の前の俺を見よ、か。周りの女性陣の視線が非常に痛い。しかしあの意固地なヘシュナを折る事ができるなら、それはそれで活路が開けてくる。力は使ってこそのものだからな。
「超レプリカ大和と超レプリカ伊400を出すと、通常のレプリカ大和とレプリカ伊400はどうするわぅか?」
「日本の防衛に当たって頂きます。躯屡聖堕チームやトラガンの精鋭中の精鋭が担当してくれるそうです。私達はこちらの真の懐刀で対処するとしましょう。」
「おういえい!」
レプリカ大和とレプリカ伊400の5倍の規模の新造戦艦群。いや、この場合の総合火力は二乗の25倍と言った所か。それ以上の可能性も十分秘めている。あの宇宙船とタイマン勝負をする場合、引けを取る事はないだろう。
「そう言えば、あの宇宙船が動いて各国はどんな反応をしています?」
「えーと・・・。」
手持ちのノートPCを起動させ、テレビモードも起動させる。最近はこの機能も搭載されているから驚きだ。しかもこれ、BSにCSも見れるとか。詳しい事は分からないが、流石は大企業連合の総帥が成せる業物だろう。
ラフィナが世界ニュースに目を遣ると、思っていた展開に至っていた。宇宙船が出現した事により、物凄い修羅場と化している。ケルマディック海溝から近場の国はフィリピンだが、相手の動向の探りを入れるために態々ハワイにまで向かったようである。
先日の軍服事変で襲撃を受けた現地に、今度は宇宙船が現れた事で大変な修羅場になっている。どうやらパール・ハーバーに駐留中のアメリカ太平洋艦隊も、今度ばかりは私利私欲には走らないでいるようだ。
「正に“独立記念日”わぅ。」
「まあ幸いなのは、ヘシュナちゃんが絶対悪ではない所かな。先の軍服連中、特に激昂男は独断で動いていたクチだし。」
「ですねぇ。ヘシュナさんはミュティナさん方やルビナさん方と同じく、相手がどの様な種族かを見極めているとは思います。」
甲板にノートPCを置き、そこに一同して見入っている。マルチ画面が可能とあり、複数のウインドウに各国のニュースが表示されていた。どれもが突然現れた宇宙船の話題で持ち切りである。
「面白い・・・と言っては失礼ですが、ミュティナ様方やルビナ様方の宇宙船群には全く触れていませんよね。」
「あちらは成層圏外に鎮座しているのと、その規模の問題で対処不能と思っているのかも知れませんね。ヘシュナ様の宇宙船ですら、2大宇宙種族の大母船の小型戦闘艦な様相ですし。」
「総合的な技術力はヘシュナさん達の方が上手ですが、規模の問題なら私達やルビナさん方の方が強いですからね。」
「それ相応の実力が据わっているのに、あの性格が災いしてスタンドプレイに走ってしまう。ただ一族の中では一目置かれている存在らしく、常にあの性格が出ているとは限らないとも言われています。」
「それだけ戦闘宇宙種族と言うべきでしょうかね。」
「なるほどねぇ・・・。」
一服しながら思う。遥か彼方の宇宙から流浪の旅路を繰り返してきた3大宇宙種族。しかしギガンテス一族とドラゴンハート一族は共助の連携を取るも、カルダオス一族は常に2大宇宙種族と争ってきたようだ。2対1の割り合いで拮抗した戦闘力を維持している感じだろう。
「まあ何にせよ、ミュティナ達やルビナ達に敵対するなら俺の敵だ。相手が何であろうが叩き潰すまでよ。」
「はぁ・・・彼女とあまり変わらない気がするけど、痛みを知れている分だけ良いと言うのかしら・・・。」
「大丈夫ですよ。貴方もTちゃんも、外面的のギラ付いた殺気と闘気だけですから。根底はミツキ様と同じ、敬い・労い・慈しみの精神が根付いている。全く以て問題ありません。」
キセルを薫らせながら一服するスミエ。見つめる先はレプリカ大和とレプリカ伊400。物凄く神妙な面持ちで見入っていた。
「・・・スミエには悪い事をしてしまっているわな。本来ならあの世界大戦の様相は、思い出したくないのが実状だろうに。」
「あー、まあ確かに。過去の戦乱を踏まえると、最大規模の犠牲者が出た戦争でしたから。この艦はアレンジタイプになるので論外ですが、あちらのレプリカ大和のオリジナルは実際に数多くの戦士と共に海中に没しています。そしてここ、広島は史上初の核攻撃を受けた場でも。」
表情からも分かるが、物凄く悲しい雰囲気を出すスミエ。その悲惨さは筆舌し尽くし難い。しかしその苦節が己の大切な礎に至っているのもまた事実だろう。
「フフッ、そうですね。Tちゃんが思った正にそれで。」
「礎、か・・・。」
「私達が担う警護者。それは苦節を糧として喰らい尽くし、前へ突き進む事を決めた集団なのですよ。最近はTちゃんも根幹に据えている概念、“一喜一憂するな”という部分が正にそれです。振り返る事は良い事です。しかしそれで歩みを止めてしまっては、亡くなられた方々に申し訳がありません。」
「心から賛同致します。マスタースミエの淵源は、限りない共助の姿勢があってこそ。そして利他の一念が全ての淵源にも帰結しています。そして師弟の理が何より重要な要因に至ってきますし。」
「烏滸がましい感じですけどね。ですが・・・それで1人でも多くの人を助けられるのなら、私は黒髪の魔神として己の責務を全うします。」
一服を終えてキセルセットを懐に仕舞う。その背中から感じられる哀愁は物悲しいが、それ以上に凄まじい気迫が彼女を後押ししている感じだ。正に黒髪の魔神だろう。
「むっふー♪ シルフィアちゃんが青髪の鬼神、スミエちゃんは黒髪の魔神わぅか。となると姉ちゃんは黒髪の女神わぅか?」
「いや、スミエさんと同じ黒髪の魔神ね。私の怖さを忘れてしまって?」
「常に戦々恐々わぅ。」
「まあ貴方の方が黒髪の女神だけど、普段は双髪のワンコよね。」
「わっふーわっふっふー♪」
この美丈夫はまぁ・・・。真剣そのものの雰囲気を一瞬にして娯楽に変えるのは見事な業物である。当然周りの面々は笑ってしまうのは言うまでもない。あのスミエですら笑っている。
「壁は1つずつ乗り越えてこその、栄光の未来を掴み取るですよ。」
「そこには茶菓子も沢山あるわぅか?!」
「そうですねぇ・・・幸せな世界が来れば、食べ放題は間違いなしかと。」
「おういえい! 全力投球でやったるわぅよ!」
手持ちの残りの茶菓子を一気に食らうミツキ。しかし直後、軽く喉を詰まらせ咳き込む姿は何とも言えない。それに周りの面々は爆笑してしまう。
生き様で全てを体現していく、か。ミツキの生き様なら、本当に世上から悲惨や不幸と孤児という概念を縮小させていく事ができるかも知れない。そして何れは消えていくだろう。
世界の情勢がどう出るかを見極めるため、今は日本に滞在する事にした。レプリカ大和とレプリカ伊400は日本の防衛に当たって貰う事になる。どちらもオリジナルとは掛け離れた火力と飛距離を持つため、レプリカ大和は広島の呉・レプリカ伊400は青森に配置との事。
両艦の主砲だと微々たるものだが、超長距離弾道ミサイルなら日本全体をカバーできる。しかも呉から沖縄の末端までを、青森から北海道の先端まで射程に捉えていると言う。実に凄まじいものだ。これなら日本を守る事は十分できる。
首都圏の防衛はハリアーⅡ改群が担当する事になるという。今では警護者群・自衛隊群・警察群・トラガン群が目白押しであり、局地的な戦闘力は世界の軍事力に引けを取らない。それに目玉は団結力と統率力だからな。ここだけは絶対に負けないわ。
今後は超レプリカ大和と超レプリカ伊400を主軸とする事になる。船体自体はオリジナルやアレンジの5倍の規模だが、火力や飛距離は数十倍か数百倍にまで強化されている。目玉は230cm主砲だが、それ以前に両艦に搭載のICBMとレールガンにスーパーレールガンが最強兵器になるだろう。
これらを以てしても、ヘシュナの宇宙船などには対抗し難い様相だ。正直な話、2大宇宙種族と戦うようなものである。勝てる筈など有り得ない。それでも阻止や時間稼ぎは十分可能であろう。その間に直接乗り込み、ヘシュナ自身を叩くしかない。
ちなみにテクノロジーや軍事力ではカルダオス一族の方が上手とされるが、種族自体の力になるとギガンテス一族とドラゴンハート一族の方が遥かに強いという。顕著なのがルビナ達ドラゴンハート一族だ。
やはり映画“宇宙戦争”の十八番、“力”そのものに近い超能力が逸脱していると言える。他のテクノロジーは3大宇宙種族共に互角だが、種族の問題では相当な差があるとの事だ。まあ俺からすれば普通の女性にしか見えないのだが・・・。
となると、ヘシュナ達が得意とする能力は何なのだろうか。ミュティナ達は言うまでもなくタフネス振り力や体力だ。重力制御の理もあるが、それ以前に種族の力で実際に超重量の物質を持ち上げられるらしい。何ともまあ・・・。
ルビナはミュティナ達には若干劣るも、その力や体力が凄まじいという。まあ人間からして逸脱した力なのは間違いない。それにルビナ達は超能力の力が全てにおいて逸脱している。物質を念力で持ち上げ浮かせられるのだ、恐ろしいとしか言い様がない・・・。
そして、ヘシュナ達になる。あのじゃじゃ馬娘風でも人望があるという事から、推測だが相手の精神を操る事ができるのかも知れない。まあそれをせずとも付き従う人物がいれば、それこそ彼女に内在する人望そのものだろう。
人間がどう足掻いても届かない領域の世界だ。それだけ宇宙種族は偉大過ぎるわ。それでも俺達人間は、できる事をし続けるまでだ。それこそが己が生き様を示す戦いにもなるしな。
第4話へ続く。




