第2話 深海調査依頼4(キャラ名版)
ミスターT「ところで、何故にオールスターなんだ?」
ナツミYU「ちょっと大問題が発生しましてね。」
落ち着いた頃を見計らい、俺が厨房を担当する。ウェイトレスは引き続きルビナが担ってくれていた。その中で喫茶店に訪れているオールスターの経緯を尋ねた。それに顔を曇らせて語るナツミYU。
ナツミYU「ケルマディック海溝ってご存知ですか?」
ミスターT「あー、某アニメでも出てたな。」
エリシェ「おー、流石は博識ですね。」
突然の声に驚き、入り口の方を見るとエリシェとラフィナが入店していた。数週間前に腹を撃たれた彼女が、今ではピンピンしているのが何とも言えない。
ミスターT「お前、動いて大丈夫なのか?」
エリシェ「全く問題ありませんよ。それに銃弾の着弾点が急所を避けており、更に内臓や神経にはダメージは至っていませんでしたので。小規模の手術だけで済みました。」
ラフィナ「エリシェさんのタフネス振りには驚かされます。」
こちらの心配を余所に、アッケラカンとしているエリシェには苦笑いするしかない。何か負傷した時とその後では、雰囲気が変わった感じがするが・・・。
エリシェ「あ、横槍すみません。続けて下さい、ナツミYU様。」
ナツミYU「え・・ええ、分かったわ。」
エリシェの復活度に驚いていたナツミYUが続けだした。手持ちの資料やノートパソコンを駆使して、それらの流れを示し出す。
ナツミYU「これは先月、海洋調査チームが偶然探知したみたいでね。同海溝の最深部に、見慣れない物体があるらしいのよ。ただこの海溝は結構深いようで、普通の潜水艇じゃ探査できないみたい。」
エリシェ「世界一の深さはマリアナ海溝のチャレンジャー海淵だそうです。公式記録は10863mとの事で。ケルマディック海溝も1万mの様相とか。」
ナツミYU「らしいですね。ともあれ、そこの最深部の調査が今回の依頼でして。」
ミスターT「・・・海か・・・。」
大体予測ができてきた流れに、顔を青褪めながら呟いた言葉がそれだ。これに周りの女性陣は苦笑いを浮かべている。俺が大の水苦手であるのは承知済みである。
ミスターT「と言うか、日本の潜水艇すら潜るのが厳しいんだよな。一体どうやって向かうんだ?」
エリシェ「あるじゃないですか、世界一の潜水艦が。」
ミスターT「はぁ、レプリカ伊400ね・・・。」
俺の問いに自信満々に答えるエリシェ。普通の流れなら直ぐに気付いたのだろうが、今は水の問題で直感と洞察力が鈍っている。この場合、彼女が指し示すのは遺物しかない。
エリシェ「レプリカ伊400なら、地球上の最強深度数を誇る場所にすら楽々と向かえますよ。」
ミスターT「船体が持つのかね・・・。」
ラフィナ「ほら、某映画の地底探査船はご存知です?」
ミスターT「・・・アンオブタニウム・・・。」
ラフィナ「そう、それです。」
まさかレプリカ伊400の船体に、架空物質たるアンオブタニウムを使っているとは・・・。
同作ではチタンとタングステンを低温で結合する事で精製できるとか。しかし同物質は熱と圧力をエネルギーに変換するのは知っているが、深海となると熱は得られない。むしろ真逆の冷気が出てくる。
地核の圧力よりは弱いが、深海での圧力も凄まじいものになる。確かにアンオブタニウムなら圧力をエネルギーには変えられるが、冷気の問題でネックにならないか心配だ・・・。
ラフィナ「ただ、アンオブタニウムは今現在の“地球上での技術力”では実現不可能ですけど。」
ミスターT「・・・つまり、ギガンテス一族のテクノロジーの一環か。」
エリシェ「その通りで。ギガンテス一族のテクノロジーと、宇宙空間での精製で実現できたというものです。まあ詳しい事は分かりませんが、実際に実現できたのが証拠ですから。」
勉学に博識のエリシェですら、この部分は分からないようである。まあアンオブタニウム自体が架空の産物であるのは間違いない。今の地球上の技術力では実現は不可能である。
エリシェ「ちなみに、レプリカ伊400以外にもレプリカ大和も同じ物質を使っていますよ。」
ミスターT「・・・熱と圧力をエネルギーに変換して、同物質を強化する。これが劇中での設定だったよな。となると、地球上の兵器郡が着弾した時、反発する力が生まれて無敵の装甲となる訳か。」
ラフィナ「理論上はそうなります。ただそれ以前にバリアやシールドの効果で無力化しているので、実際にどうかまでは検証していないのが実状ですが。」
ミスターT「・・・この深海探査が正念場、と言う事だな。」
何ともまあ・・・。前回の軍服連中事変ではレプリカ大和が大活躍したが、今回はレプリカ伊400が大活躍しそうだ。
兵器群の物質的な部分だと、爆発は熱になり破壊も一種の圧力になると思われる。某映画の劇中のアンオブタニウム自体は、熱と圧力をエネルギーに変換し反発する力を持っていた。押せば押し返し、離せば離れる。圧力が掛かれば掛かるほど強固になるという、本当に有り得ない産物だ。
レプリカ大和やレプリカ伊400に使われているとされるアンオブタニウム。これが何処まで効果があるかは未知数である。実際にはバリアやシールドにより艦体全体を守っており、船体自体の強度は把握し切れていない。この深海調査依頼が実質の実験となるだろう。
エリシェ「洋上ではレプリカ大和が待機します。不測の事態に備えての、転送装置での兵員移送もできますので。」
ミスターT「兵員は船内に可能だろうが・・・表は海だぞ・・・。」
エリシェ「まあ何とかなりますよ。」
実に元気そうに語る彼女に、ただただ呆れるしかない。先のエリシェ事変で負傷した流れから、何かが吹っ切れた感じなのだろう。今まで大人びいていた姿がなくなり、すっかり女性としての姿になっている。いや、本来の姿に戻ったというのが実状か。
ミスターT「まあ・・・諸々は分かった。ただオールスターだという事は、それ相応の流れを予測してのものか。」
ラフィナ「まあ色々とありますけど。」
ミスターT「はぁ・・・。」
こちらもニコニコしながら語る彼女。ラフィナもエリシェと同じく、大人びいた姿が全く感じられない。普通の女性に戻った感じである。そして分かったのだが、この2人から今までにない覇気も感じられた。素体に戻ったから発せられるパワーだろう。
ナツミYU「まあそんな感じなのよ、大丈夫かしら?」
ミスターT「・・・どうせ無理矢理連れて行くんだろうに・・・。」
シューム「分かってるじゃない。」
最後の最後で楔を打たれた。この流れがどうなろうと、俺を無理矢理現地に連れて行くのは間違いない。先のエリシェ事変は高々度で、今度は大深度の深海である・・・。身体が幾つ有っても足りやしないわ・・・。
ミツキ「ポチ皇帝陛下にご報告だ!」
ナツミA「それ、某皇帝・・・。」
ミツキ「Tちゃんの胸にある6つの“青い水”を手に入れるわぅ!」
ミスターT「はぁ・・・。」
更に最後は双子のシメだ。それに周りの女性陣は笑い合っている。まあ何だ、この気質がなければ成せる事も成せないわな。ミツキが生き様は全ての不確定要素に立ち向かう起爆剤そのものである。
決行は翌日という事もあり、テンヤワンヤしそうな感じだ。ただ裏を返せば、それだけ深海にある物体が厄介であるという現われだな。つまり敵対側に見つかる前に調査をすると言う事になるだろう。
今回も後の流れが決まるともあり、ここは身体に鞭を打って進むしかあるまい・・・。
翌日。準備万端の状態で、広島は呉の港に到着した。出迎えてくれたのは、伝説の戦艦と潜水艦である。しかも以前よりも増して様変わりしていた。
レプリカ大和は、第1砲塔の前面甲板に左右合計12門のハッチが見受けられる。例えると丁度ボウリングのピンの並び順に似ている。第3砲塔の後方甲板にも見慣れないハッチが合計4門ある。どうやらここにも同じ得物があるようだ。
察するに、ここに超長距離弾道ミサイルが搭載されている事になる。この様相だと大陸間弾道弾クラスの得物があると取れる。46cm主砲ですら化け物染みた火力なのに、それをも上回る火力を持った様相はモンスターとしか言い様がない。
またパール・ハーバーのミズーリ号と同じく、近代兵器も充実しだしている。今までの兵器搭載数の数倍はあると思われる。当然オリジナルの機銃・副砲・主砲は健在だ。
ちなみに小型銃座と中型砲の各兵装は完全オートメーション方式で、人間が座して射撃するタイプではない。副砲と主砲のみが人間操作によるものになる。当然これらはイージス艦が十八番の電子制御式の超精密誘導射撃が可能とある。狙われたら最後、最早逃げる術はない。
レプリカ伊400は、密閉棟の前面甲板が一段と凄みを増している。レプリカ大和のハッチとは異なり、合計10門と数は減っている。ただこれは先のハワイ沖での遊撃で真価を発揮した超長距離弾道ミサイルである。レプリカ大和にも同じ兵装が施されているのは先の通り。
その中で一際目立つのが、明らかに後方甲板に後付けされた形の大型砲門だろう。聞く所によると、23cm三連砲との事だ。レプリカ大和の十八番、46cm主砲の半分のサイズである。しかし前よりも各段に戦闘力は増した。
23cm主砲による射撃は、イージス艦クラスなら一撃必殺との事だ。それが特殊潜水艦たるレプリカ伊400に搭載されたのだ、ある意味逸脱した海の暗殺者であろう。
どちらも艦載機はハリアーⅡ改になる。翼を折り畳み式の特殊仕様にした特注品だ。それがレプリカ大和には5機、レプリカ伊400には2機搭載されている。第2次大戦時の遺物に近代兵器の搭載は、実にミスマッチとしか言い様がない。
極め付けは、両艦の艦首に必殺兵器を搭載したとの事。スーパーレールガンとの事だが、それは46cm主砲を超越する超火力を誇るとも。ライフルタイプのレールガンですら、主砲の火力を超える様相だ。大出力となれば、地球の衛星たる月はおろか地球クラスの岩石惑星すら破壊可能だろう。
かなり前にマンガで見た、某マンガを実に彷彿とさせる。劇中では、飛行戦艦の艦首に重力砲の様な砲塔が搭載されていた。触れれば何でも消滅させるという、別の某マンガの劇中での“極大消滅呪文”に似ている。
ただこちらのはスーパーレールガンと、架空の産物ながらも先に挙げた2つの獲物とは違う様相だ。技術力さえ伴えば、実際に現実で実現可能という代物になる。実際にこうして目の前に具現化されている、恐ろしい超兵器の1つである。
これで両艦とも空を飛べ、宇宙にまで行ければ無双そのものだわな。まあ流石にそれは無理だろうが・・・。
第2話・5へ続く。




