第12話 私利私欲現る5(キャラ名版)
ナツミYU「世界の紛争解決に警護者が加勢する。今まではタブーとされていたからね。」
ミスターT「怖いのが身内同士の対決なんだろうが、こちらにシルフィアがいる限り安心か。」
数日間の加勢を終えて帰還したナツミYUとシューム。この2人だけはタッグで行動した。実力自体が警護者内で最強クラスなため、問題ないと踏んだようである。
シューム「まあそれでも不殺生を貫きながら動くのは大変だったけどね。向こうはこちらを殺しに掛かってきているのを、強引に戦意喪失まで追い込む必要があるし。」
ナツミYU「今までの戦い方でも十分通用しますけどね。」
ミスターT「不測の事態のバリアも健在と。」
何度か銃弾を浴びているようだが、全てバリアによって無効化されているそうだ。これでは本来の死闘とは至らず、どうしても惰性が働いてしまうのだが・・・。
ミスターT「弱体化しなければいいがね・・・。」
シューム「バリアの件ね。確かに致死率がある銃弾を受けても無傷でいられるため、それにより惰性が生じだすのは事実よ。しかし動きは従来と同じだし、そこに幾分か超能力が加算されているに過ぎない。私達の本質は警護者自体のスキルだから、バリアに甘える事はしないから。」
ナツミYU「ですね。できれば用いたくない力ですが、今は不測の事態で倒れるのはご法度ですし。誤った力の使い方をしない限りは、何でも用いていきますよ。」
力の本質を見極めている2人。バリアは最低限の補佐であり、本来の警護者の力を最大限活用しての行動を心得ている。俺もそうだが、そこを忘れては惰性に走ってしまうのは言うまでもないだろう。
シューム「向こうは何も行動して来ないのねぇ。」
ミスターT「一触即発なのは承知済みだと思うけどな。」
監視側も下手に手を出そうものなら、簡単に潰される事は承知済みだろう。いくら地球上で最大の軍力を持つアメリカと言えど、世界最大の警護者軍団・世界最大の大企業連合を相手にしたら潰されるのが目に見えている。更にはギガンテス一族にドラゴンハート一族とある。
ナツミYU「誰が正しくて誰が間違っているか、向こう側もしっかり把握しているとは思います。しかし先の提携決裂からして、後に利害一致で組んだ先は間違いだったと。」
シューム「私利私欲の先は破滅しかないわね。」
ミスターT「まあ相手が何であれ、俺は俺の生き様を貫き続ける。どんな流れになろうがな。」
一服しながら表を見つめる。今も小型豪華客船の周りを潜望鏡が見え隠れしており、監視の目は消える事がない。近場には超大型豪華客船が鎮座しているとあり、一触即発なのは言うまでもないだろう。
シューム「そうね。どんな流れになろうが、私は貴方に付いていくから。」
ナツミYU「同じく。貴方は1人じゃない、それを忘れないで下さい。」
ミスターT「持ちつ持たれつ投げ飛ばす、だの。」
俺の傍らで一服しながら語る2人。その思いは前よりも遥かに強くなっている。それにどこまで応じられるかが、俺の最後の戦いなのだろうな。
警護者の道は何時倒れるか分からない。また家族といった概念は足枷にもなりかねない。孤独ながらも1人で突き進んだ方が安心ではある。しかしそれを真っ向から否定するのが俺達だというのが皮肉な話である。
敬い・労い・慈しみの精神、持ちつ持たれつ投げ飛ばすの心構え。どれもが他者と接してこそ発揮する概念だ。明らかに警護者の道には足枷になりかねないもの。だからこそ、その一念を抱いて突き進む事にこそ意味があるのだろうな。
今ではミツキ・スタイルとも言うこれだが、俺達の間では当たり前になっている。不思議な事にも、ギガンテス一族とドラゴンハート一族にも同じ一念が流れていた。生命体に備わるプラスの一念、それは地球人だろうが宇宙人だろうが関係なかったのだ。
ここに回帰すれば、相手の間違った行動を責めて戒める事が顕然とできるわな。自分自身が右往左往しては何も始まらない。据わった一念を定められるかどうかで全てが変わってくる。それが自分自身の強さにも変わってくるのだから。本当に不思議な流れである。
更に数日後、とんでもない流れになっていった。何と例の無人艦隊がハワイを無差別に攻撃していると言うのだ。これにはアメリカ側は驚愕しただろう。先日自分達と提携を組んだ軍勢が攻めて来たのだから。
俺達の近場で監視をしていた潜水艦部隊が去っていった。今は監視どころの話ではない。こちらに気を取られる事で、敵に奇襲を許してしまったのだから。
ミスターT「被害の方はどうなっている?」
躯屡聖堕メンバー1「現状の様子だと、湾内の艦船の機動力を殺がれている感じです。」
躯屡聖堕メンバー2「スクリューなどの部分ですか、そこを中心に攻撃されているようで。」
小型豪華客船の操舵室で情報を窺った。地球の人工衛星力では鮮明な様相は得られないが、ギガンテス一族やドラゴンハート一族が母船搭載の超高画質カメラで鮮明に様相が見れた。ここから見る限りは人的被害はなさそうだが、それは時間の問題だろう。
ミスターT「連中の意図は何なんだ。巨獣たるアメリカに横槍を入れれば、激昂して大反撃を受けるのは目に見えている。それを承知で攻撃を仕掛けたとすると、俺達が加勢するのを見てこちらが淵源だと思わせるのが目的かね。」
ミュセナ「以前に提携が決裂している所を見れば、強かな野望などないとは思います。苦肉の策で提携したのが軍服連中ですから、正に裏切られた形になりますし。」
ミスターT「相手を見据えずに私利私欲で動くからこうなる訳だな。」
海上・航空戦力共に大打撃を受け続けるパール・ハーバー。面白いと言ったら大変失礼だが、深刻な人的被害が出ていないのが見事なものだ。それでも負傷者が出ているのは確かな様子。明らかに無差別攻撃なのは言うまでもない。
ミスターT「・・・お嬢、転送装置の準備を。やはり黙って見過ごす訳にはいかない。」
ミュセナ「フフッ、そう仰ると思いました。現地の状況はミュティナより窺っています。ミズーリ号でしたか、その甲板にお送りしますよ。」
ビアリナ(私も加勢します。ただ到着までに少し時間が掛かりますが。)
最強たる個人兵装を施しての加勢準備を行うと、無線からビアリナの声が聞こえてきた。窓の外ではハリアーⅡに搭乗の彼女の姿が窺えた。機体下部に特殊なボックスを取り付けている。多分装備などを入れているのだろう。
ミュセナ「了解しました。先発でTさんをお送りし、後発でビアリナ様をお送りしますね。戦闘機を甲板に送るのは危ないので、その直上へお送りします。」
ミスターT「・・・まさかと思うが、ハリアーⅡの兵装にレールガンとか?」
ビアリナ(ええ、そのまさかですけど。ただ、実戦投入するのは今回が初めてですが。)
怖ろしい事をするものだ・・・。レプリカ大和やレプリカ伊400に搭載しているレールガンを2門ほどハリアーⅡのミサイルポッドと付け替えたようだ。逆に翼の端にミサイルポッドを搭載し、ガトリングガン2門と併せて6つの兵器との事である。まあ専らレールガンを多用する事になるだろうが・・・。
ミスターT「まあ・・・無理無茶しないように。さて、いきますかの。」
ミュセナ「状況連絡は念話でお願いします。場合によっては増援をお送りしますので。」
ミスターT「了解。」
ミツキ(暴れてやれわぅー!)
最後の最後で茶化しが入る。国内の警護を中心に請け負っているミツキからの念話だ。それに笑ってしまうのは彼女の術中にハマっている証拠だろう。まあ間違いなく最強の激励を頂いたのだから、恐れるに足らずだわ。
全ての準備を整えた俺は、ミュセナによりパール・ハーバーはミズーリ号の甲板に飛ばして貰った。場所さえ把握できれば何処でも飛ばせる転送装置は化け物である。
続いて待機中のビアリナ搭乗ハリアーⅡも現地に飛ばして貰った。こちらはある程度時間を置いてからのものとなる。先ずは現地偵察も兼ねて、この目で確認するとしよう。
ミスターT(大丈夫そうだな。)
ミズーリ号の甲板より湾内を見渡す。アメリカ海軍の艦船の船尾から火の手が上がっているものの、ザッと見では重傷者は出ていない感じか。
躯屡聖堕メンバー1(マスター、油断なきよう。無人兵器だとしても、その火力は侮れません。)
躯屡聖堕メンバー2(常に最悪の状況を想定して行動を。)
ミスターT(だな、分かった。)
既に人口腕部は起動しており、3つの腕に黒色マデュースシールドを持たせている。半モヒカン兄さんの戦闘モードよろしく、その姿で現地に送って貰った。先ずは地上から攻撃を仕掛けてみるか。
ミズーリ号の甲板を移動し、現状の把握をしだす。この艦はモニュメントという位置付けを知っているからか、全く攻撃を受けていない。今も稼動させようとすれば動くのに・・・。
それよりは現状で脅威となる兵器群を潰す事から行っているのだろう。湾内に停泊中の艦船の船尾を片っ端から攻撃して回っている。航空戦力が出ていない所を見ると、飛行場の方も無人航空兵器により襲撃を受けているようだ。
過去に旧日本海軍の奇襲部隊から攻撃を受けたパール・ハーバー。まさか半世紀以上過ぎた今になって軍服連中から奇襲を受けるとは・・・。まあ今は自分にできる事をするまでだ。
驚愕している海兵隊員達の顔がある。今正に無人飛行兵器の攻撃を受けて、ヘリごと海面に墜落しそうな所を強引に押し留めたのだ。
実はここに来る前にルビナより特殊ペンダントを託されていた。それは彼女十八番の超能力が使えるようになるという物凄い代物である。実際に使ったのは今が初めてだが。
湾内に墜落寸前の海兵隊ヘリに右手をかざして超能力で押し留め、そのまま桟橋の方に運び降ろした。その様相に搭乗していた海兵隊員達は目を白黒させている。
英語が苦手な俺は喋る事ができないので、右手親指を立てて合図を送るしかない。それに驚愕しつつも同じく右手親指を立てる彼ら。こういった意思の疎通はできる部分に嬉しさが込み上げてくる。
突然だった。俺の真上にビアリナ搭乗ハリアーⅡが現れる。垂直離陸状態から送られたのだろう、こちらの頭上でホバリングをしていた。それに対しても海兵隊員達は驚愕している。
そりゃそうだろう。超能力や転送装置といったオーバーテクノロジーは、今の地球では在り得ないものなのだから。これだけでも相当な威圧である。
ミスターT(俺も英語を話せれば良かったわ・・・。)
ビアリナ(後でフォローしておきますね。)
軽い会話をしつつ、その場を去っていくビアリナ。湾内に展開中の無人イージス艦の攻撃に加えていくようだ。俺は陸上からしか攻撃できないが、今はできる限りの事をするしかない。しかし無力ではない事は見せられそうだが・・・。
特殊部隊の兵装が軍事物と化していく様相を踏まえ、四天王が黒色マデュースシールドを超強化してくれた。何と機関砲以外にレールガンも搭載してくれたのだ。手元のスイッチにより切り替えが可能だそうだ。
桟橋から無人イージス艦を破壊するには、マデュースシールドのロケットランチャーだけでは無理である。そこで機関砲がある側にレールガンを搭載し、それにより一撃必殺の射撃を行う手法を取る事を勧められたのだ。論より証拠、実際に試していくしかない。
ビアリナ(マスター。本船やこちらのレーダーで判別した所、今回も全て無人兵器のようです。)
ミスターT(朗報だわな。よし、やるかね。)
こちらの心情を察知したビアリナから連絡が入る。今回も襲撃してきている軍勢のどれもが無人兵器との事だ。つまり本気で潰しに掛かっても問題ない。3挺のマデュースシールドを機関砲からレールガンに切り替え、近場の無人イージス艦に向けて発射した。
3つの銃口にエネルギーが蓄えられた直後、凄まじい閃光を発して光の矢が射出。それが敵艦に当たった直後、大爆発を巻き起こしたのだ。その威力に驚愕するしかない。
ミスターT(ば・・化け物だな・・・。)
ミュセナ(あ、恐らく今の射撃はチャージが浅いと思います。フルチャージまで行った場合、地球の衛星・月を一撃で破壊できるだけの力がありますのでご注意を。)
ミスターT(平然と喋るか普通・・・。)
淡々と語るミュセナに呆れてしまった。このレールガンはチャージの度合いで火力が変化するようだ。しかもフルチャージだと月すらも破壊する程の威力なのだから怖ろしい・・・。
ミュティナ(本音だと提供したくなかったのです。あまりにもの破壊力で地球自体を壊しかねないと思いまして。)
ミスターT(ただこれで汚染物質が出ないとなると、核弾頭なんか話にならないわな・・・。)
ミュセナ(超電磁兵器ですからね。ただペースメーカーや電子機器には多大な影響を及ぼすので、それらの近くでは使わないで下さい。まあ今のレールガン自体には、外部に電磁場を放射させないように施してありますので安心ですけど。)
う~む・・・これ程の威力があったとは・・・。ミュティナがレールガンの導入を最後まで躊躇っていたのは、その絶大な威力故のものだったようだ。これは確かに一個人が使うには危なすぎる。
ミツキ(超電磁ヨーヨーぉ~! 超電磁タツマキぃ~! 超電磁スピンっ!)
ナツミA(それ、5人乗り変形スーパーロボット・・・。)
ミツキ(フハ・・フハハ・・・フハハハハッ! 実に怖かろうっ!)
・・・不覚にも笑ってしまうミツキのネタ。某アニメの歌詞を出してくるとは見事なものだわ・・・。ただレールガンのそれとは別なのはご愛嬌か、何とも・・・。
無人イージス艦を一撃で破壊されたのを窺ったようで、他の敵艦や航空戦力が俺の方に的を変えてきた。と言うか俺自身は連中にとってお尋ね者であり捕獲対称者だ。真っ先に狙って来るのは言うまでもない。
そこに光の矢が連続的に放たれる。ビアリナ搭乗ハリアーⅡからの射撃だ。無人イージス艦に直撃すると、一撃の元に大爆発を巻き起こした。
止まっている状態からの射撃ですら一撃で破壊したのだ。巡航状態のハリアーⅡからの射撃とあれば、それに速力アップ追加で劇的な破壊力を生み出すのは言うまでもない。特にこの手のレーザー兵器は尚更である。
俺も負けじと無人飛行兵器をマデュースシールドのロケットランチャーで破壊していく。流石にレールガンは強過ぎるため、イージス艦などのデカい獲物に使うのが無難だろう。
単独で無人飛行兵器と交戦していると、そこに現れる複数の面々。先程海面に墜落しそうになったヘリに搭乗していた海兵隊員達だ。それぞれ自前の兵器で応戦している。
ナツミYU「えー・・・助けて頂いた借りを返さねば意味がない、との事です。」
更に驚くは俺の隣にナツミYUとシュームが現れたのだ。そう言えば以前、ミュティナが転送装置の座標設定に関して述べていた。自分が知る人物がいる場所の周辺も目標にできるとの事だ。ミュセナが俺を目標とし、2人を飛ばしてきたと推測できる。先程のビアリナが搭乗のハリアーⅡも同じ手法だな。
ミスターT「英語を勉強しておけば良かったわ。」
シューム「大丈夫よ。簡単なジェスチャーや誠心誠意の一念で十分通用するから。」
ナツミYU「貴方の場合は誠意ある対応こそ最強のコミュニケーションですよ。」
特殊部隊の兵器群の強化に伴い、俺以外にも周りの面々の武装も強化を施した。上空で戦闘中のビアリナはまだ分からないが、2人の女傑は更に凄い事になっている。
シュームはゲームの妖艶姉ちゃんは暴虐中佐のスタイル、両脚にグレネードランチャーやロケットランチャーを搭載している。両腕は連射式マグナムという特殊仕様だ。
ナツミYUは隠し武器の黄金拳銃はさておき、連射式ショットガンという特殊仕様。特にこの武装は無人兵器に使うとあり、正に特効薬と化している。炸裂弾もあるとの事で、海上のイージス艦以外なら確実に破壊できるとの事だ。
そして2人とも得意の愛用武器の特注品を背中に背負っている。愛用武器の特注品は、俺が使うマデュースシールドに搭載のレールガンを小型化したものだ。威力こそ若干弱まるが、それでもイージス艦程度なら一撃で破壊できるとの事である。
ナツミYUとシュームは英語を話せるとあり、海兵隊員達と連携を取りつつ無人飛行兵器を破壊して回って行った。
数時間後、湾内にいた敵勢力は全て駆逐し終わった。殆どビアリナ搭乗ハリアーⅡが撃破して回って行ったのだが。まあ地上からも無人飛行兵器や航空戦力は破壊できたため、問題なく片付いたと言っていい。
負傷者は多く出ているが、重傷者や死者が出ていないのが本当に嬉しい限りである。一応の加勢役立ちには貢献できた感じだろう。
その中で目立ったのが、俺達を見るなり謝罪をする面々だ。どうやら先の提携問題でこちらに迷惑を掛けた部分に負い目を感じているようだった。
やはり軍服連中との提携は上層部の私利私欲から出たもので、最前線にいる面々の意図した事ではないようだ。それなのに有事には加勢に訪れた部分に大変感謝しているようである。
そもそも俺達は軍隊ではなく、独立した戦闘部隊たる警護者だ。裏切られる部分は慣れたものと言っていい。それだけ最前線では血みどろの人間とは思えない行動を目の当たりにしてきた。これらに慣れてしまえば、今の流れは軽いものとも言えるだろう。
そしてそれらに恨みを持つ事もない。今では警護者全体にミツキ・スタイルが行き渡り、不殺生を貫いているのが実状である。敬い・労い・慈しみの精神、持ちつ持たれつ投げ飛ばすがモットーとなっている。この心構えがあれば、無粋な感情など抱く筈がない。
恐らくだが、何れ各国の軍隊も警護者スタイルになるような気がする。その時こそ、新たな変革が訪れるだろう。そして少しずつ悲惨や孤児という概念が薄れていき、何れ消える事を心から願って止まない・・・。
第13話へ続く。




