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覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
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第2話 海上防衛網2(通常版)

「貴方が闇稼業に至った時は戦々恐々でしたが、今は貴方なりの幸せを築いていて安心しました。これなら心配はありませんね。」

「だが放っておけない、だろ?」

「フフッ、愚問ですよ。貴方は命の恩人ですからね。私の生き様を挙げるなら、恩人に徹底的に尽くし抜くです。」

「でもナツミYUちゃんは別の野心があるわぅけどね。」


 ミツキがサラッと述べる言葉に、不気味なほどの笑みを浮かべだしている。これは逆らおうものなら殺されかねないわな・・・。


「そうそう、その心境わぅよ。いくら朴念仁のTちゃんでも、ナツミYUちゃんが何を抱いているかぐらい察しが付くわぅよね?」

「はぁ・・・。」

「本当に異性に関しては疎いですよねぇ。まあ私達の場合は盟友の域という部分が強い。恋愛感情に発展はしませんけど。」

「ナツミYUなら痛いほど分かるが、お前達の場合は失礼な気がしてな。もっとこう、純粋無垢の師弟の理と言うか。その一念の前では、無粋な考えは失礼極まりない。」


 本当にそう思う。この姉妹には恋愛感情というよりも、もっと純然な一念が強く思い起こる。その純然な一念の前には、普段思う一念など朝露の如き儚さだわ。


「あら、ナツミYUさんへの一念はお分かりになられているのですね。」

「ウッシッシッ! 誘導尋問成功わぅね。」

「何とも・・・。」


 この姉妹は全てにおいて上手過ぎる。俺が言わば原点回帰をするのを見越してか、それをナツミYUへの思いへと導き出した。完全に誘導尋問そのものだわ・・・。


「貴方がどう思われようとも、私は私の思いを貫き通しますよ。それに生半可な考えで挑もうものなら、貴方に対して失礼じゃないですか。」


 右往左往する俺に痛烈な一撃を加えるナツミYU。それは即ち己の決意の固さだ。それが恋愛感情だろうが何だろうが、彼女の心からの思いには変わらない。


 背面にいる彼女の左手を優しく取り、俺の右手でガッチリと握手を交わした。逆手で少々辛い姿勢だが、彼女の強い思いに対しての返しはせねばならない。



「・・・嬉しいです。恋愛云々ではなく、貴方が私の心の一念を察してくれた。」

「さっきも言ったが、俺は生き様という概念に心から敬意を払っている。貪欲なまでに貫き通す。俺も己の生き様を貫く手前、他者の生き様も尊重したい。でなければ己を否定する事になるから。」


 恩師やナツミツキ姉妹との出会いを経て、生き様という概念に関して徹底的に敬意を払うようになった。それがどんな生き様であれ、個々人が抱いて貫いているものだ。これに敬意を払わないでどうするか。


「人生を楽に過ごすなら、生き様など抱かない方がいい。こんな堅苦しい概念は、間違いなく己の足枷になっちまう。それでも生き様を抱く生き様というか、これほど格好いい生き様など他にはない。」

「そうですね。生き様はその人の執念と信念の集大成。その生き様が輝けば輝くほど、執念と信念の堅固さが如実に表れてきます。中途半端な考えを抱くようなら、最初から抱かない方がいい。これ、貴方が記憶を失う前にも言ってましたよ。」

「あら、昔の俺も同じ決意だったのか。」

「基礎がしっかりなってるわぅね。」


 記憶を失う前の俺を知っている彼女が言うのだから間違いない。前の俺もそれなりの生き様を刻んでいた証拠だろうな。今では窺い知る事は不可能ではあるが。


「貴方とならどんな荒波だろうとも、乗り越えられない訳がない。今後も依頼の提示は致しますが、貴方のバディとして傍らにいたいのです。」

「こりゃ・・・断れないわな。」


 俺の右手を両手で掴み胸へと抱くナツミYU。彼女の思いは本物、嘘偽りなど全くない。生き様を尊重する手前、ここで断ろうものなら俺の生き様が廃るわ。


「あ、でも男女間の問題は追い追いですよ。もちろんそれも期待していますが、今は荒波を乗り越える方が先決ですから。」

「ハハッ、全てにおいて一歩上手だわ・・・。」


 補足気味に語る彼女。本音の方は後回しにすると言い出した。まあこれも彼女の生き様なら、応じなければ失礼極まりない。う~む・・・不思議な流れになったものだわ。


「Tちゃんも罪な男わぅね。」

「ふん、言ってろ。」

「ウッシッシッ♪」


 茶化しを入れてくるミツキ。顔を赤くするナツミYUだが、場の雰囲気を和ませてくれた事に小さく頭を下げている。この女傑は本当に素晴らしいものだわ。




「で、改めて本題に入るが・・・。」


 厨房を後から来たメンバーに任せて、喫茶店の奥へと移動する。今回はミツキとナツミAも一緒とあり、4人での作戦会議となった。


「場所が場所なだけに、一歩間違うと大惨事になりかねません。ただ超大型豪華客船は通常より規模が異なるため、そんな簡単には沈みませんが。」

「これ、アレですかね。三島ジェネカン所有の船籍で。」

「ええ、その通りです。」

「あの世界最大の大企業か。」


 三島ジェネラルカンパニーの話は何度も聞いている。世界中に支社があり、総資産は天文学的な数値だという。しかし根底は人を助けるに重点を置いているため、彼らに支えられている人物や団体は数多い。


「私達の学園の運営も、三島ジェネカンが担ってくれています。だからこそ、この任務は完全遂行させたい。それが今回の決意と護衛依頼です。」

「そこは同調するよ。縁の下の力持ちを支えずして、今の俺は在り得ない。分かった、この任務も同伴しよう。」

「ありがとうございます。」


 深々と頭を下げるナツミYU。彼女の決意の固さは周知の通りだ。それに完全遂行を狙うのなら、俺達も参戦した方がいい。


「ありゃ、前回の依頼の報酬はどうなったわぅ?」

「あ、そう言えば済し崩し状態でしたよね。」

「俺は構わないが。飛行機での移動で、気絶に見合うだけの落ち着かせをさせてくれた。あれだけで相当な報酬だと思う。」


 数日前のニューヨークの依頼の報酬は殆ど貰ってない。貰ったとするなら、ナツミYUの超絶的な膝枕の恩恵だ。でなければ依頼自体請け負わなかっただろう。


「ですが、形なりにお渡ししないと・・・。」

「ん~・・・なら、今度葛西臨海公園でも行こうか。」

「ええ・・・嬉しいですけど・・・それでよろしいので?」


 俺の素っ気無い提示に滅茶苦茶赤面をしている。本来なら彼女から打ち明けてくる内容を、俺の方から言い出したのだ。意表を突かれているのは言うまでもない。


「ここは素直に受け取っておくわぅよ。Tちゃんからのアプローチは滅多にしないわぅ。」

「それが報酬の代わりになるなら、お安いものだと思いますよ。」

「は・・はい・・・、仰る通りに致します・・・。」


 う~む、簡単な提示を考えたが行き過ぎたか。ただ彼女が息抜きをしていないのは、あの恐怖のフライト終了時に伺っている。これで少しは肩の張りが取れれば幸いだ。


 雑談はさておき、その後も本題の依頼内容の確認をし合う。今度もかなり高度な依頼だけに油断は禁物だ。それに・・・海がな・・・。う~む・・・。



 依頼遂行は数日後。それまでに再び武具を整えるとしようか。今回は当日まではナツミYUが喫茶店に通い詰めするとの事だ。ここはナツミツキ四天王が発案している武具の品定め役になって貰おう。


 大盾火器兵器と同獲物に内蔵の武装ポッド。それに銃弾や斬撃から完全に身を守る特殊スーツ。特に後者のスーツはナツミYU達の方も是非欲しいとの事だ。


 命懸けで戦う彼女達には打って付けだろう。材料費のみ手配して頂き、人件費は無償で提供する事にした。まあ相当な材料費が掛かるのだが・・・。


 それと方天画戟や十字戟に触発されてか、彼女達がゲームで操作するキャラの得意武器を開発する事になった。ナツミYUは両節棍、ネイディアは戟。セフィヌは牙壁、ヴァディメラは狼牙棒。これ、三国志のゲームの獲物そのままである。


 更に凄いのは、それらを縮小格納できるようにするとの事だ。言わば、“携帯式”化という感じである。どうやって至るのか不思議でならないが、ここはナツミツキ四天王の力を信じるしかない。


 ちなみにミツキとナツミAは方天画戟と十字戟の両方との事だ。また現実武装ではミツキがマグナム、ナツミAはスナイパーライフルである。性格がそのまま現れているわな・・・。


    第2話・3へ続く。

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