表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の警護者 ~大切な存在を護る者~  作者: バガボンド
第1部・生き様の理
103/544

第12話 私利私欲現る2(通常版)

 レプリカ大和の甲板から釣りを満喫しているミツキ。しかし今の航行速度だと、とても魚を釣れるような状態ではない。この場合はその釣りの仕草自体を満喫しているとも言える。その傍らで手持ちの装備を調整していた。


「そう言えばTちゃん、海は平気になったわぅ?」

「いや、今でも怖いよ。でもこの2隻の前だと興奮の方が勝ってるわ。」


 今でも甲板直下の海を見るだけで身体が竦み上がる。更には艦橋から眼下を見るだけでも同じく竦み上がる。しかしレプリカ大和とレプリカ伊400の壮大さに圧倒され、恐怖心はかなり抑えられていた。本当に不思議なものである。


「レプリカ大和にレプリカ伊400、どちらも日本が誇れる遺産でも。しかしそれが戦争から出たという部分は好ましくないですけど。」

「戦争ほど悲惨なものはないからな。かと言って今は戦わねば世界が危ない。そのための力がこの2隻になる。誤った使い方をしない限りは、確実にプラスになるわな。」

「ですね。今後は私達の生き様が重要になってくるでしょうし。無様な姿は曝せませんよ。」


 警護者の道を通して、その後の流れを築いていく。前までは個人的な流れだったが、今では世界規模にまで至ってしまった。だからと言って特別な事に切り替える必要はない。今現在の自分らしさを貫いていってこそだ。その積み重ねの先に歴史があるのだから。


「・・・気付いているわぅ?」

「ああ・・・しっかり付いてきてるわな。」


 雑談の最中から気付いたのだが、レプリカ大和とレプリカ伊400の後方に複数の突起物が見えている。潜水艦の潜望鏡だ。つまり付けられているという事になる。


(恩師、レーダーに反応は?)

(バリバリ映ってるわよ。向こうはこの艦群が粗末なレーダーしか搭載していないとも思っているのでしょうね。)

(見た目に騙される典型的な悪い例ですよ。)


 念話による会話をすると、直ぐさま周りの面々から話が聞けた。今ではこの念話が当たり前になりつつある。しかも俺達だけにしか伝わらないというのだから怖ろしい。


(これ、アメリカ海軍の潜水艦わぅか?)

(そうねぇ、間違いなくそうでしょう。ハワイでの交渉が決裂した現状、私達の存在は完全にイレギュラー化しているからねぇ。)


(オーバーテクノロジーを持つ独立した存在ですからね。軍服連中に匹敵か、それ以上に恐怖する存在に至っていると思います。自分達の傘下に置きたいのも肯けますよ。)

(ちなみにですが、後方の艦船には衛星軌道上から狙いは付けています。それに気付いた時にどうなるか、非常に気掛かりですけど。)


 明らかに不気味な笑みを浮かべているのが想像できた。ミュティナらしからぬ強かな戦略だ。まあ実際に動く事はせず、威圧的なものに留まるが。


(地球の各国家は地球外に待機している大宇宙船郡に気を回しているのですかね。)

(多分回してないと思うわね。というか地球上のテクノロジーで、宇宙空間で活動可能な船体はスペースシャトルぐらいだし。)

(手が出せないのも実状よね。それこそ軍服連中のあの飛行物体が有効打だけど。)

(失礼ながら、連中が地球の各国家と手を組む事はありますかね?)

(そこまで愚かだとは思いたくありませんが・・・。)


 念話はそれぞれの内情をも透写する。懸念する要素が痛いほど伝わってきた。最悪なのが、地球上の各国家が軍服連中と手を結ぶ事だ。そうなった場合、地球自体を敵に回す事になりかねない。


(軍服連中が持つテクノロジーを提供する可能性はある訳か・・・。)

(大有りだと思うわね。軍服連中の目的はミュティナちゃんやルビナちゃん達の力の入手。地球の各国家が欲しいのはオーバーテクノロジー。私達が拒絶を突き付けた以上、利害一致で手を結ぶのが妥当な所よね。)

(そこまで地球人は愚かなのですか・・・。)


 ルビナの内情が痛烈に伝わってくる。正に怒りそのものだ。彼女達は純粋に太平の流れを望む存在である。特にミュティ・シスターズが種族、ギガンテス一族は大宇宙を流浪する旅人そのもの。太平を求めて彷徨い続ける調停者そのものである。ルビナ達も同じ思いだろう。


(同じ地球人として、本当に申し訳なくなってくるわ・・・。)

(いえ、マスターやお住いの方々までは責めていませんよ。私が怒りを顕にするのは、明らかに私利私欲に走る愚者そのものです。)

(ですね。逆を言えば、お兄様方はお住いの方々の矢面に立って阻止に走られている。そのための如何なる手段を投じてでも勝つ、でしょうから。)

(力があるのに使わないのは、時として不幸を招く事になるからな。周りに戒めてくれる存在がいるのなら、思う存分暴れるに限るわ。)

(持ちつ持たれつ投げ飛ばすわぅ! って、ヒットしたわぅ!)


 ミツキ流の纏め方で締めるも、直後釣り竿に当たりがあったようだ。愛用の獲物の調整を中止して伺うと、何とかなりデカい魚が引っ掛かっている。


(へぇ・・・この航行速度で魚が掛かるのか・・・。)

(今夜の料理にしてやんよ!)


 小柄なミツキには厳しいと思うも、ナツミA縁の力の出し加減の触りを得ている。つまり身体は小さくとも、瞬発的に出せる力は俺達以上という事だ。ここは不測の事態に備えつつ、彼女の奮闘を見守る事にしよう。


 しかし、ここまで絶大な力を欲するのが地球人の業なのか。いや、それは私利私欲に走る愚者が辿る末路そのものと言えるか。ミュティナ達やルビナ達が信じられないと思うそれは、彼女達が純然に生きる事のみを重視した戦い方をし続けてきた証拠だろう。


 特に大宇宙では生きるか死ぬかのせめぎ合いが多いとも聞く。しかもそれは一族の存亡を掛けた戦いなのだ。そこを踏まえれば、地球で地球人同士がいがみ合い殺し合っている現状に怒りを顕にするのも納得ができる。


 軍服連中は地球人同士の連携を促す要因にもなるのだが、今は完全にいがみ合いに発展している現状である。何れ大きな火種になるのは間違いない。




 数時間後、東京湾から南の海上へと戻ってきた。東京湾に停泊していては、そこで襲撃されかねない。更に地元に戻っても同じ事が言える。今はこのレプリカ大和が生活圏だわ。


 そこでエリシェに頼み、小型の豪華客船を手配して貰う事にした。そもそもレプリカ大和は生活には適していない。武器工房などの設備も重要である。手配して貰う小型豪華客船は特注仕様で、超大型豪華客船の縮図とも言えた。


 何でも臨時の国家としても成り立つようにも改良されているようで、それは全ての生活圏の確保も可能とある。当然軍事部門もしかりだ。故に同船を手配して貰った訳である。


「レプリカ大和でもよかったにはよかったんだがね。」

「まあ確かに。しかし最終的には個人兵装を以ての戦いに帰結すると思います。それらの武具を整えるには、レプリカ大和の装備では無理な部分もあります。マスターが仰られた一手は有効打でもありますよ。」


 レプリカ大和の甲板の掃除を行って待つ俺達。ハリアーⅡ群は日本に近いとあり、今は全機帰郷している。こういった細かいメンテナンスが兵器群の延命を成し得ているのだ。


「これ、全て終わった後のレプリカ大和とレプリカ伊400。日本に置いておいた方が良いと思うが?」

「そうですね。パール・ハーバーはアリゾナ記念館の近くに永久保存と考えていましたが、オーバーテクノロジーの集合体な2隻を海外に置くのは危険ですし。2隻ともオリジナルが故郷の呉の造船所に置くのが無難でしょう。」

「大和ミュージアム近くにレプリカ大和とレプリカ伊400、大盛況間違いなしだな。」


 レプリカ大和とレプリカ伊400の戦闘目的以外での運用は、歴史モニュメントとしての遺構が無難だろう。しかも呉なら近場に大和ミュージアムもある。更に広島である故に、先の大戦で縁がある原爆ドームも。今後も戦争という絶対悪を語り継ぐために、この2隻の役割は続くと思われる。いや、それこそこの2隻が誕生した使命だろうな。


「全てが終わって、本当に全て丸く収まればいいが・・・。」

「私達の行動次第ですが、今は先行きは悪いですよね・・・。」


 各国家が私利私欲に走る現状、一致団結して動く事は厳しいと思われる。最悪なのが軍服連中と結託する事だ。その場合は世界中を敵に回す事になりかねない。


「まあだからと言って引く事などしない。目指す誓願は確実に定まっている。」

「はい。尚更重要になってきますからね。」

「また何時も通りの喫茶店で営業したいわ・・・。」


 一服しながら思い馳せる。数ヶ月前までは地元の喫茶店で過ごしていたのが懐かしい。今では地元に戻る事すらままならない。軍服連中の目を引き付けるために、本土から離れた場所で過ごすしかないのだ。本当に虚しいものである。


 ともあれ、行う事は明確に出ている。軍服連中を完全駆逐する事だ。連中がのさばっている以上、地球にも2大宇宙種族にも安寧は訪れない。俺達の存在は、もはや調停者として動いているようなものだ。尚更奮起せねばな・・・。


    第12話・3へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ