第2話 海上防衛網1(キャラ名版)
アメリカはニューヨークでの依頼を終えた後、4人の女傑に散々引っ張り回された。本業がプロの護衛者とは思えないぐらいの若々しさである。まあ息抜きがあればこそのものだろう。
そして翌日、恐怖のフライトで日本に戻った。ナツミYUの膝枕に厄介になりながらだが。本当にこの膝枕パワーは凄まじいものである。
ちなみにネイディアが言っていた喫茶店業務だが、これも本業の一環にすべきだとも言っていた。確かに闇の動きをする以上、情報が最大の武器となるのは間違いない。
喫茶店業務なら色々な情報も入ってくるだろうし、まさか凄腕の警護者が喫茶店のマスターだとは思わないだろう・・・一応・・・。
ともあれ、今はこのスタイルで動くとしよう。再びデカい依頼も入るかも知れない。
ミツキ「いらっしゃい、何にするかい?」
すっかりマスターが板についたミツキだ。以前から何度か喫茶店の運営はしていたのだが、それを1つの本業と定めると凄まじいまでの順応を出してくる。それは姉のナツミAもしかりである。当然俺もそうだが、姉妹やナツミツキ四天王全員も調理師免許を取得済みだ。
ミスターT「ミツキやお前の腕前は凄いものだな。」
ナツミA「事務所の雑務をやる前は、喫茶店で働いていましたからね。むしろこちらの方が本業に近いでしょうし。」
ミスターT「いっその事、事務所を喫茶店の隣に置くか。」
警護者の事務所は、喫茶店がある場所から結構離れている。この流れを主流にするなら、移転も考えた方がいいだろう。それに手持ちの資金はかなりの額があるしな。
ナツミA「大盾火器兵器が大活躍のようでしたね。」
ミスターT「ニューヨークでは見事なものよ。まあ決定打は方天画戟だけど。あんなにコンパクトに収納されていて、振り払うと元の大きさに戻るのが何とも。」
ちなみに方天画戟は格納状態で、俺の背中に配置してある。専用とも言えるホルスターを言わばナップサック風にしたものだ。何時でも使えるように所持している。これでも外見から見ても違和感が全くない。
ナツミA「製造に悪戦苦闘しましたし。でもその甲斐あって、強度も攻撃力も見事なものでしょう。仕込み刀の強度を思い浮かべば分かると思います。」
ミスターT「通常の日本刀が100として、仕込み刀は80以下ぐらいか。」
ナツミA「そんな感じです。携帯性を考えると、どうしても耐久度が低下してしまいますからね。特に格納式にすると相当な強度低下を招きかねません。」
ミスターT「十字戟が一瞬で展開でき、かつ耐久度もレプリカとは思えない程にする。う~む。」
凄まじい職人技というか技術力だ。それを成し得られるのも見事なものである。まあ今後はこれらが大活躍するのは言うまでもないわな。
ナツミA「相手が重火器の場合は厳しいですが、逆に刃物ならば出番ですよ。その威圧的な獲物で叩き伏せれば上出来でしょう。」
ミスターT「耐久度ありで火力も健在、と。致死に至らないなら問題ないか。」
日本国内故に本来なら銃刀法違反に引っ掛かる。しかし警察庁長官のウインドとダークHからのお墨付きを頂いている。言わば銃刀法容認か。それに俺達の任務自体が生きるか死ぬかのものだ。このぐらいの装備は整えていないと危険な事には変わりない。
ナツミA「まあ今後の厳しい依頼には申し分ない戦力かと。思う存分、活用して下さいな。」
ミスターT「そのうち大盾火器兵器を2つ持たせられるんじゃないかね・・・。」
某マンガの劇中で登場する人物が、大盾火器兵器風の十字架兵装三挺を展開している。背中に人口腕部を搭載した彼は、正しくモンスターそのものだ。ただいくら俺の腕力と体力が結構あるとしても、その十字架兵装を真似た大盾火器兵器を2つ持つのは無理があるが・・・。
人は超人的な力を持つ存在に憧れを抱く。劇中の彼もそうだが、俺は三国志のリョフ氏が一番憧れている。彼の逸脱した力以前に、その生き様自体見習うべき模範だわ。ただし、裏切りだけはご法度だが。
もしリョフ氏が裏切り常習犯という、レッテルが貼られない程の存在だったら。恩義に仁義に厚い武人だったら、後世にその名を轟かせる天下無双の猛将だったのだろうにな。本当にこの点だけは悔やまれる。
ナツミYU「こんにちは。」
喫茶店の奥で資料に目を通していると、先日お世話になったナツミYUが来店してくる。というか彼女、学園の総合校長だろうに。勝手に出歩いていいのかね・・・。
ミツキ「いらっしゃい、何にするかい?」
ナツミYU「えー・・・では・・・。」
ミツキ「元気が出るサンドイッチセットわぅね!」
ナツミYU「は・・はぁ・・・。」
ナツミYUの生真面目そうな顔を見かねてか、ミツキが得意のキャラを演じだす。更には彼女やナツミAが考案した、サンドイッチセットを振舞うと言い出した。これ、何らかの悩みを抱えていると判断した人物に無償提供しているものだ。見事なサービスだろう。
ミスターT「学園の総合校長が出歩いていいのか?」
ナツミYU「同僚やOBの面々が担ってくれています。もちろん、私が裏の稼業を担っている事もご存知ですが。」
ミスターT「だな。」
カウンターの端に座る彼女。丁度俺の背面に座る形になる。何やら持参してきているが、再び依頼なのだろうか。
ミスターT「・・・飛ばされるのだけは勘弁な・・・。」
ナツミYU「あらぁ、まだ何も言っていませんけどぉ?」
そう誤魔化すも、手持ちの資料を俺に突き付けてきた。前回の依頼ですっかり気に入られてしまった感じがする。まあ彼女とは俺が忘れているだけで、数十年来の付き合いだからな。このぐらいの和気藹々は定石なのだろう。
ミスターT「・・・今度は海上か。」
ナツミYU「ええ、超大型豪華客船内での要人護衛になります。」
依頼内容の話になると真顔になる彼女。今回もかなり厳しいもののようだ。まあ船上なら問題はないが。1つだけあるとすれば・・・。
ミスターT「・・・海に落とさないだろうな・・・。」
ナツミYU「え・・・まさか・・・。」
ミツキ「Tちゃんはカナヅチわぅよ。」
サンドイッチセットを完成させ、ナツミYUに手渡すミツキ。それに頭を下げて頬張りだす。その彼女が俺が水を苦手としている事を告げた。
ナツミYU「空もダメ、水もダメ。一体何が大丈夫なのですかね・・・。」
ミスターT「苦手なんだから仕方がないだろうに・・・。」
ナツミYU「はぁ・・・覆面の警護者の意外な一面が垣間見れましたよ。」
物凄い呆れ顔で俺を見つめてくる。というか呆れられる以前に、俺の方としては本当に苦手なんだが・・・。
ミツキ「うむぬ、今回はわたと姉ちゃんも同伴するわぅ?」
ミスターT「お前達は泳ぎが得意だったしな。」
ナツミYU「え、ですが・・・。」
参戦表明をするミツキとナツミAに困惑気味のナツミYU。これは姉妹の安否よりも、過小評価していると取れるか。そんな彼女の心境を読んだのか、エラい殺気を放ちながら詰め寄るミツキとナツミA。これに顔を青褪めだすナツミYU。
ナツミA「へぇ~・・・人を見掛けで判断するのは良くない傾向ですねぇ~。」
ナツミYU「え・・ええっ・・・。」
ミツキ「このポチミツキ、見縊って貰っては困るわぅ!」
ミスターT「2人には何度か助けて貰っているよ。更に2人の専属四天王もしかり。普段はノホホンとしているが、本気モードは間違いなくお前を超えているぞ。」
自慢気に語ってみせた。それに殺気も織り交ぜながら、ニヤケ顔で応える姉妹。それを見たナツミYUは更に顔を青褪めだしている。
ミスターT「まあ今のは過大評価かも知れないわな。ナツミYUの存在は2人も良く知っている。たった1人で大統領邸に乗り込み、本人を助け出した逸話は有名すぎるわ。」
ナツミYU「ああ、あの時ですか。私が学園の総合校長になる前の話です。あれ以来、危険な任務は単独でやる事を止めました。」
ミツキ「でも二丁拳銃のガンマンの逸話は有名ですよ。しかも誰1人として殺害しないでの達成と。普通なら死者が出てもおかしくない状況とも伺っています。」
コーヒーを炒れて手渡すミツキ。それに再び頭を下げて啜るナツミYU。彼女の伝説的な行動のどれもは単独行動で成し遂げている。だからこそ二丁拳銃のガンマンと名が知れ渡ったのだろうから。
ナツミYU「娘達を養っている以上、安易に命を危険に曝すのは良くありません。まあこれを言うと、今の稼業自体を止めなければなりませんが。」
ミスターT「でも娘さん達はそんなお前を誇りに思っている、だな。守るべき存在がいるからこそ、人は強くも優しくもなれる。」
ナツミA「そうですね。だからこそ、こういった人を助ける職業に就いている。その度合い云々は抜きとしてですが。」
ミスターT「そんな陰で努力し続ける猛者を支えるのも俺の役目だわな。」
一服しながら呟く。この稼業をやりだす前などでは、縁の下の力持ちの存在を痛いほど思い知らされた。彼らあっての俺達だという事を、だ。
ミスターT「カスもいるものだ。縁の下の力持ちの存在で這い上がれたのに、その人物を貶している実状。本当に腑煮え繰り返りそうになるわ。」
ナツミA「分からない奴は分からないままでいいんですよ。何れ同じ思いに至った時、時既に遅しですから。それに貴方の名言が正に的を得ているではありませんか。」
ミスターT「誰彼がどうこうじゃない、テメェ自身がどうあるべきか。それが重要だ、か。」
ミツキが差し出してくれた紅茶を啜る。この名言は恩師が何度も語ってくれた、今では俺の座右の銘である。この一念があったからこそ、今まで何度となく襲ってきた荒波を超えられてきた。何度も思うが、本当に感謝に堪えない。
ナツミYU「フフッ、貴方が本当に恩人のお弟子さんだと痛感せざろう得ません。その座右の銘は私も何度も伺っていますよ。確か貴方より年下だとお聞きしてます。」
ミスターT「俺より2歳年下だの。まあ彼女あっての俺自身だしな。それに師弟に年代なんか関係ないわ。ミツキやナツミAも言い換えれば俺の師匠でもある。この3人に至れば、もう怖いものなどないわな。」
ミツキとナツミAを師匠と位置付けているのは、その絶対不動の原点回帰を持つ故だ。自分の生き様に対して徹底的に貫きだしたのも、恩師と姉妹のお陰でもある。それまでは右往左往は当たり前であった。
ミツキ「昔があって今がある、ですね。それにナツミYUさんとのお付き合いも、昔の経緯があってこそのものでしょうから。」
ナツミA「私達もマスターとの出会いがなければ、この道に至らなかったと思います。闇の稼業とも言えますが、それでも己の生き様を示せるのは大切な事です。」
ミスターT「お前達6人は別の道もあったんだろうけどね。」
ナツミツキ姉妹とナツミツキ四天王との出会いは、殆ど偶然的なものだった。しかし今では盟友の域にまで達している。いや、殆ど同業者と言っていい。何だか巻き込んでしまった感がしてならない。
ミツキ「んー、でもないと思いますよ。巻き込まれたのなら嫌々でしょう。しかし私達もこの生き様に誇りを持っていますから。」
ミスターT「あら、読まれちまったか。」
ナツミA「大体は察しが付きますからね。私達を見つめる目線が申し訳ないというのを。」
ミツキ「でも大丈夫ですよ。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、が人情というもの。それに半ば悪党を懲らしめるのは痛快極まりませんから。やる気が出てくるというものです。」
自慢気に語る姉妹。確かに彼女達や四天王が参戦を決意した時も、その眼光に嘘偽りは全くなかった。それは即ち心中の決意の固さだ。それにこの6人は一度定めた生き様を、徹底的に貫き通す姿勢もある。俺が彼らを師匠と言う所以はそこにある。本当に素晴らしい存在だ。
第2話・2へ続く。