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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
13章 告白
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告白

 お水をかぶってしまった私は、髪は少し濡れてしまったけれど、服はそんなに濡れていなかったので、管理棟でタオルを借りて拭いただけでなんとかなった。


 ライはここでも顔見知りの人がいて、なんだかその人が親切に施設の研究について説明してくれた。

 このお花畑の中に、サクラという木があるそうなのだけれど、春になると1週間から10日だけ花を咲かせるらしい。

 花が咲くとすぐに散りはじめるけれど、それが雪のように降り注いでとてもキレイなんですって。


 ぜひ、また来たいとライに言うと、ライは微笑んだ。

「ロッテが望むなら、必ず連れて来るよ」

「嬉しい!ありがとう、ライ」

 そんな私たちのやり取りを、施設の職員さんは、微笑んで見ていた。



 時間が経つのも忘れて過ごしていたけれど、もう少ししたら、日が暮れる時間になってしまった。

「ライ、もうすぐ夕方になるから帰らないといけないわ」

 ライは残念そうな顔で私を見る。

「今日も、夕食は付き合ってもらえないのかな」

「ごめんなさい。マリーとアーサーに日が暮れる前に帰ると約束したの。心配掛けたくないから…」

「…わかった」


 乗ってきた馬車に乗り込み、パルフェやトランケのある町まで馬車は進む。


 なんとなく、馬車の中の空気が重い。

「ロッテ、あの、帰したくないんだけど……」

 ライが言う。

「帰らないわけにはいかないわ。あぁ、おうちが見たいって言ったのは、また今度お願いね」

「じゃあ、せめてロッテの家まで送らせて?」

 こんな乗り心地のいい馬車で帰りたいのはやまやまだけれど、お城に行ってもらうわけにはいかない。

「…ごめんなさい」


 少しの沈黙。


「あの、さ。本当は、夜景の見えるところ、とかお洒落なレストランで、とか考えていたんだけど、今、言ってもいいかな」

「? 何を?」

 私が首を傾げると、ライはかしこまって背筋を伸ばした。

「えっと、今日は来てくれてありがとう。本当は、朝会った時に1番に言いたかったんだけど、青いワンピース、あと髪飾りも、よく似合ってる可愛い」

 急に褒められて、頬が熱くなる。

「あ、ありがとう」

「服も髪飾りもオレの瞳の色と同じで、まるでロッテがオレの隣にいるのが当たり前のように思えて、とても嬉しかった」

 ライはポケットに手を入れて、小さな小箱を取り出した。

「これ、この間、ちょっと遠くまで行ってきたんだけと、おみやげ。受け取ってくれる?」

 その小箱を差し出す。


 私は受け取って、開けていい?とライに聞いた上で、リボンをほどいた。

 小箱の中には、透き通るような、でも深い青い色の石と、小さなダイヤがいくつもついたブレスレットが入っていた。

「こんな…、ライ、私これ以上もらえないわ。ランチだって、きっとものすごくお金がかかったでしょうし、馬車だって借り切るなんて普通できないわ。それなのに、こんなアクセサリーまでもらえないわよ」


 ライはふっ、と笑った。

「やっぱりな。おみやげ買う時にそう言われるんじゃないかと思ったんだけど、どうしてもロッテに買いたかったんだ。理由があれば、受け取ってくれるの?」

「理由?理由って、どんな?」


 ライが私の手を取った。

 真剣な眼差しで私を見つめる。

「ロッテ、オレはロッテが好きだよ」

「私もライが好きよ」

「本当に?」

「ええ。初めてできた、買い物も一緒に行けるお友達ですもの」

 ライがくすりと笑う。

「やっぱり、そんな感じだと思った。きっと、アーサーもマリーも好きってことと同じでしょ?」

「ええ、そうだけど…」

「オレが言っているのは、ロッテに恋人になって欲しいって、意味なんだけど…」

「こっ、恋人?」


 恋人って、あれよね。物語とかに出てくる、王子様とお姫様みたいな、ラブラブーっとか、イチャイチャーっとかする、あれよね?

「え、あの、その、でも」

「恋人になって、ゆくゆくはオレと結婚して欲しい。オレの家はちょっと特殊で、しがらみとかもあるかもしれないけど、オレが全力でロッテを守るから、だから、オレの恋人になって?」


 結婚、という言葉が出てきたところで、私の頭は真っ白になった。

 だって、私は……。


「ごめんなさい。私、もう結婚してるの…」

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