表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
13章 告白
94/180

素敵な場所

「まあ!なんて素敵なの…!」


 馬車が止まり、降りたところは一面のお花畑だった。

 色とりどりの花が咲いていて、天国かと思うくらい。


「ここは王立フラワーガーデンなんだ」

 馬車から降りる時に、手を差し出してくれたまま、ライが言う。

「ランバラルドは山の近くの温泉以外、目立った観光地がないんだ。国土全体にあんまり栄養がないのか、作物もすごく手間を掛けてやらないと育たない。隣の国なのにボナールはここ数十年、農作物は豊作だろ?だからランバラルドでも肥料の改良を進めて、植物の研究をしている。ここでは一年中なんらかの花が見られるように、工夫をしてきたんだ」

「ライ、ライ、私、あっちに行ってみてもいいかしら?」

「ん、ああ、大丈夫だよ」

「ありがとう!」

 私は走り出した。


 塔の上から眺めていた風景。

 セリーヌ様は、お母様に手を引かれて王城の花が咲き乱れる庭を歩いていた。

 日の光を浴びて、キラキラしているお花たちに囲まれていて、とても羨ましかった。

 私が庭に出られるのは夜だったから、もう夜には萎んでいるお花があったり、よく見えなかったりした。

 だから、こんなに近くで、太陽の光を浴びているお花が見られるなんて、とても嬉しい。


 大きな花弁の花の近く、白い蝶々が飛んでいる。

 立ち止まって、そっと指を出すと、蝶々は私の指にも止まってくれる。

「こんにちは。はじめまして蝶々さん、あなたも綺麗ねぇ」


 蝶々を指に止めたまま、カーテシーをする。

 指を上へと上げると、蝶々はそのまま飛び立ち、私の周りをひらひらと飛んだ。

 微笑んでそれを見ていると、今度は黄色い蝶々ごやってきて、また白い蝶々がやってきて。

 蝶々達が頭の上でくるくる回る。


 走ったり止まったり、夢中になって遊んでいると、後ろからライに抱きしめられた。

「ロッテ、一人で遠くに行かないで」

「あら、ふふっ。ごめんなさい。つい嬉しくて夢中になってしまったわ」


 くるっと、ライの方に体の向きを変えたのに、ライの腕は私の腰に回されたまま。

 近くでライを見ると、優しい笑顔を私に向けてくれる。

「ライ?なあに?」

「うん、ロッテといられて嬉しいなぁって思って」

 そして2人で笑い出す。


 ライは私の腰から手を離し、今度は私と手を繋ぐ。

 今度は私も走り出さずに、ライと2人でゆっくり歩いた。


 花畑の端っこまで来ると、一角に蕾ばかりでお花の咲いていない区画を見つけた。

「ああ、そこは今研究中なんだ。毎年蕾をつけるけど、なんでか花が咲く前に枯れてしまうんだ」

 ライからそう聞いて、私はその花の近くにしゃがみ込んだ。

 じーっとお花を見ると、今にも蕾が開きそうな気がした。

「ライ、もう少しお水をあげてみて。ほら、ここは日当たりが良すぎて土が乾いてる」


 私がそう言うと、ライはどこからかジョウロを調達してきてくれた。

 私はそれを受け取って、その蕾のある一角にお水を撒いた。

 お水がキラキラと太陽を反射するのが楽しくて、くるくる回りながらお水をあげていたら、足が滑って転んでしまった。

 ジョウロからシャワーのように水が出て、キラキラと私を含めてお花たちに降り掛かる。


 ライは何も言わずにそれを眺めていた。

「ふふっ、ごめんなさい。つい、楽しくて、ライを置いてけぼりにしてしまったわ」

 転んでしまったのも、お水をこぼしてしまったのも可笑しくて、私はくすくす笑いながら立ち上がってライを見る。

「ライ?どうしたの?」

 ずっと私を見て動かなかったライが、私が声を掛けるとゆっくりと動き出した。

「…今、君の上に虹がでた」

「あぁ、お水をこぼしたからかしらね」

 服も少し濡れてしまったので、手で払う。

 少し染みてしまったけれど、冷たくはない。


「……綺麗だ…」

 ライはそう呟いて、私を抱き寄せた。

「ちょっと、ライ、あなたまで濡れちゃうわ」

「あっ、ごめん」

 パッとすぐに離れる。


「管理棟にタオルがあるから、借りに行こう」

「…うん」


 私たちは、手を繋いで来た道を歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ