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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
11章 ボナールへ再び
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国王との会談

 翌日、ボナール城を訪れ、国王に謁見を求めた。


 先に使者は出してあったので、そんなに待たずに応接室に通される。

 王が座る場所が一段高くなる謁見の間でないのは、ボナールの王はオレ達と立場が変わらないからだ。

 敗戦国の王と勝戦国の使者。


 オレ達ふたりが長椅子に座り、ジェイミーはその後ろに立つ。

 一応、オレは分厚いメガネをかけて、コンラッドの名前を名乗った。



 ボナールの宰相が汗を拭き拭き、目の前に腰掛ける。

 顔は青白く、目の下に隈ができている。

 後からフレッドに聞いた話だと、前回会った時より、かなり痩せてしまったようだ。


 宰相に遅れて、国王がやって来る。

「これはこれは、ランバラルド宰相御子息フレッド殿。ようこそおいでくださいました」

 笑顔で国王はそう言うが、目が笑っていない。

 オレたちの向かい側に、どっかりと腰をおろす。

「賠償金のお支払いでしたら、前回も申し上げましたように、急のこと故、しばしお待ちくださいますようにと」

 そうだ。

 賠償金も払えないと言い、分割になっているのだ。

 庶民の買い物じゃないんだぞ!


 フレッドは落ち着いて対応する。

「賠償金の話は承知している。だが、先日よりボナールの民がランバラルドへ移住を希望し、入国するものが後を絶たない。貴国の経済状況に口を出す訳ではないが、戦後処理はきちんとやっていただきたい」

 普段のヘラヘラ具合からは想像もできないくらい、フレッドは威厳を持って話す。


 王の目は不快に歪んだが、口元には笑みを浮かべたまま。

 こんな若僧に言われるのが不快でしょうがないんだろう。それでも笑みを取り繕えるのは、腐っても王ということか。


 王の代わりに宰相が言い訳をする。

「フレッド殿、わたしたちも全力でことに当たっておりますが、何ぶん、敗戦直後で予算もなく。貴国に支払う賠償金さえ分割でお願いしている有様です。しばし、御静観願えませんでしょうか」

 問い掛けの形にはなっているが、それ以外はできないと目が訴えている。


「しかし、ランバラルドでは受け入れ困難な数になっており、国境でお帰り願うしかない。そのため、国境の森でランバラルドに入れず、ボナールにも戻れない者が盗賊になって住みついており、早急な対処が必要になっております。御再考願います」

 フレッドも負けじと言い返す。


 しばしの沈黙。


 ここは、何がなんでも対策を立ててもらわねばと、オレが口を開きかけた時、国王が先に口を開いた。

「国民は戦争に負けた責任を取り、国王に退位を求めている」


 オレとフレッドは何を言われたのか理解するまで、時間を要した。

 あちらの宰相はこのことを知っていたのだろう。

 諦めにも似た目で国王を振り返った。

「陛下。それはまだ保留です。今あなたが退位しても、なんの解決にもなりません。セリーヌ王女様も、まだ女王として即位するには技量がたりません」

「王政を廃止して共和制にすればよかろう」


 踏ん反り返った国王は、何も責任を取らずに逃げると言う。

「そんなことは認められない」


 つい、交渉はフレッドに任せていたはずが、オレは口を開いてしまった。

「国民が苦しんでいる時に、逃げ出すことは許さない!」

 オレが激昂したしたのを見て、国王はニヤリと笑う。

「では、ランバラルドの責任は?ボナールを打ち負かし、賠償金を要求し、貿易で利益を上げていた我が国の、輸出入の要であった港をも取り上げ、国を立て直せと無理難題を押し付ける。では、一体どのようにせよと?その上で、国民の生活を立て直せとは、随分な偽善をおっしゃる」


 これ以上オレが暴走するのを防ぐように、フレッドがオレを手で制す。

「ひとまず、国王のお心はわかりました。しかし、今のままでは悪化の一途を辿るだけです」

「では、ボナールをランバラルドの属国にでもしますかな」



 オレとフレッド、国王の間に視線の火花が飛んだ。

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