国王との会談
翌日、ボナール城を訪れ、国王に謁見を求めた。
先に使者は出してあったので、そんなに待たずに応接室に通される。
王が座る場所が一段高くなる謁見の間でないのは、ボナールの王はオレ達と立場が変わらないからだ。
敗戦国の王と勝戦国の使者。
オレ達ふたりが長椅子に座り、ジェイミーはその後ろに立つ。
一応、オレは分厚いメガネをかけて、コンラッドの名前を名乗った。
ボナールの宰相が汗を拭き拭き、目の前に腰掛ける。
顔は青白く、目の下に隈ができている。
後からフレッドに聞いた話だと、前回会った時より、かなり痩せてしまったようだ。
宰相に遅れて、国王がやって来る。
「これはこれは、ランバラルド宰相御子息フレッド殿。ようこそおいでくださいました」
笑顔で国王はそう言うが、目が笑っていない。
オレたちの向かい側に、どっかりと腰をおろす。
「賠償金のお支払いでしたら、前回も申し上げましたように、急のこと故、しばしお待ちくださいますようにと」
そうだ。
賠償金も払えないと言い、分割になっているのだ。
庶民の買い物じゃないんだぞ!
フレッドは落ち着いて対応する。
「賠償金の話は承知している。だが、先日よりボナールの民がランバラルドへ移住を希望し、入国するものが後を絶たない。貴国の経済状況に口を出す訳ではないが、戦後処理はきちんとやっていただきたい」
普段のヘラヘラ具合からは想像もできないくらい、フレッドは威厳を持って話す。
王の目は不快に歪んだが、口元には笑みを浮かべたまま。
こんな若僧に言われるのが不快でしょうがないんだろう。それでも笑みを取り繕えるのは、腐っても王ということか。
王の代わりに宰相が言い訳をする。
「フレッド殿、わたしたちも全力でことに当たっておりますが、何ぶん、敗戦直後で予算もなく。貴国に支払う賠償金さえ分割でお願いしている有様です。しばし、御静観願えませんでしょうか」
問い掛けの形にはなっているが、それ以外はできないと目が訴えている。
「しかし、ランバラルドでは受け入れ困難な数になっており、国境でお帰り願うしかない。そのため、国境の森でランバラルドに入れず、ボナールにも戻れない者が盗賊になって住みついており、早急な対処が必要になっております。御再考願います」
フレッドも負けじと言い返す。
しばしの沈黙。
ここは、何がなんでも対策を立ててもらわねばと、オレが口を開きかけた時、国王が先に口を開いた。
「国民は戦争に負けた責任を取り、国王に退位を求めている」
オレとフレッドは何を言われたのか理解するまで、時間を要した。
あちらの宰相はこのことを知っていたのだろう。
諦めにも似た目で国王を振り返った。
「陛下。それはまだ保留です。今あなたが退位しても、なんの解決にもなりません。セリーヌ王女様も、まだ女王として即位するには技量がたりません」
「王政を廃止して共和制にすればよかろう」
踏ん反り返った国王は、何も責任を取らずに逃げると言う。
「そんなことは認められない」
つい、交渉はフレッドに任せていたはずが、オレは口を開いてしまった。
「国民が苦しんでいる時に、逃げ出すことは許さない!」
オレが激昂したしたのを見て、国王はニヤリと笑う。
「では、ランバラルドの責任は?ボナールを打ち負かし、賠償金を要求し、貿易で利益を上げていた我が国の、輸出入の要であった港をも取り上げ、国を立て直せと無理難題を押し付ける。では、一体どのようにせよと?その上で、国民の生活を立て直せとは、随分な偽善をおっしゃる」
これ以上オレが暴走するのを防ぐように、フレッドがオレを手で制す。
「ひとまず、国王のお心はわかりました。しかし、今のままでは悪化の一途を辿るだけです」
「では、ボナールをランバラルドの属国にでもしますかな」
オレとフレッド、国王の間に視線の火花が飛んだ。




