ライとお買い物
ライが連れてきてくれたお店は、ギルバート様が連れてきてくださったお店とは別のところだった。
多分、今日のお店の方が全体的にお値段が安い気がする。
私は目を輝かせて、お店の中を見て回った。
「ライ、この服はどうかしら?」
ラベンダー色のワンピースをライに見せると、ライは青いワンピースを私に差し出した。
「こっちの色も着てみてよ。ほら、オレの瞳と同じ色」
悪戯っ子のような表情でそう言うライ。
私は両方を持って試着室に入った。
まず、ラベンダーの方を着て、ライに見せる。
「どお?」
ライは微笑んで「かわいい」とだけ言ってくれた。
次に、ライの選んだ青のワンピースを着る。
青い生地に襟と袖口に白いレースが使われているものだ。
「ライ、見て。こっちもステキなワンピースよね」
試着室のカーテンを開けると、ライは顔を赤くしてこちらに駆け寄ってきた。
「絶対、こっちの方がいいよ!すごくかわいい!すごくいい!」
私はどちらも気に入ったけれど、ライがそこまで勧めてくれるならと、青いワンピースを買うことにした。
お会計をすると、ライの姿が見えなくなっていた。
「ライ?どこ?」
店の中を見回すと、どこからともなくライが現れる。
「ごめん。こんな店、男一人では入らないから珍しくてつい」
「ううん。いいの。付き合ってくれてありがとう。次は、ライの行きたいところに行きましょう」
服屋さんを出てライに言うけれど、ライは行きたいところはないと言う。
「じゃあ、帰りましょうか」
私がそう言うと、ライは慌ててキョロキョロしだした。
「あ、あそこのカフェに入ろう!オレ、喉が渇いた!…ダメ?」
ライは背が高いのに、少し俯いて上目遣いにこちらを見てくる。
「…ダメなわけないでしょう」
そんなライが少し可愛かった。
カフェは初めて入ったけれど、とてもオシャレだった。
ジュディがした飾り付けのような店内。
パルフェと違うのは、テーブルクロスも白いレースでできていて、椅子も白くてとてもステキだった。
メニューを開くと、チョコレートケーキの文字が見える。
「ロッテ、なんでも好きなもの頼んでいいよ」
「ほんと?あの、あのね、チョコレートケーキが食べたいです…」
くすくすと笑うライ。
「チョコレートケーキが好きなの?」
「ええ。チョコレート、滅多に食べられないから…」
ちょっと恥ずかしくて、私の頬が赤くなる。
ライは、うっ、と息を詰まらせ「好きなだけ頼んでいいよ」と言って、右手で鼻と口を覆った。
何故、ライが顔を隠すのか、私にはわからない。
そろそろ辺りが暗くなってきた頃、ライに家に帰ると告げる。
「えっ、まだ夕方じゃないか」
「でも、遅くなると心配するから…」
ライは残念そうに、ふうと息を吐いた。
「ね、今日は家まで送ってもいい?」
乗り合い馬車の乗り場まで歩いている時、ライが私の近くに寄ってきて言う。
「ごめんなさい。家は…知られたくないの」
「アーサー達と住んでるんじゃないんだね」
「ええ。マリーもアーサーも、家には来たことはないわ」
「それなら、仕方ないな」
残念そうに笑いながら、ライは馬車の乗り場まで送ってくれた。
「ね、ロッテ。また会ってくれる?」
「もちろん!あ、そうだ。これ、ライの分のクッキー。今日はありがとう。チョコレートケーキ、とても美味しかったわ」
私はライに手を振って、馬車に乗ろうと入り口に足を掛けた。
「ロッテ!」
不意にライに手を引かれ、バランスを崩して倒れそうになる。
「っく、」
ライが私をきゅっと抱きしめる。
「ごめん。急に引っ張って。オレ、少ししたらまた遠くの町まで行かなきゃならないんだ。少し先になるけど、また誘ってもいい?」
「え、ええ。もちろんよ」
でも転ぶからいきなり手を引くのはやめて欲しい。
ライは私の髪をそっとなぞった。
頭に少しの感触と、パチンという音。
「これ、今日の記念にオレからプレゼント。よかったら使って」
微笑むライに、頭を触ると何かが付いていた。
髪飾り?
それを取って見ようとしたところで、御者さんがもう馬車を出すと言う。
「ごめんなさい。ライ、ありがとう。またね」
慌ててライに手を振って、私は馬車に乗り込んだ。
馬車の中で見たそれは、青い石のはめ込まれた、綺麗な髪飾りだった。




