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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
10章 待ち惚け王子
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ラッキー○○○

 紺のワンピースにフリフリの白いエプロンは、なかなかお客さん受けがいいらしく、パルフェの中を歩き回る私にお客さんが「可愛いね」と声をかけてくださってから、私は自慢げにお仕事をしていた。

 クッキーを勧めると、10割の確率で買ってくださって、すでに完売。


 ふふふ。

 クッキーはもっと増やしてもいいかも。

 あ、それかパウンドケーキとかも出そうかしら。

 ジュディやギルバート様に相談してみよう。


 カランカランと、ドアベルが鳴る。

「いらっしゃいませ」

 振り返ると、息を切らして飛び込んできたギルバート様がいた。

「シャーロ、いや、そのロッテ!急いで家に帰ってくれ!アーサー、ロッテは急用で連れて帰る。あとは頼む」


 アーサーの返事を待たずに、私の手を掴んで店の外に連れ出した。

「ギルバート様、一体何が?」

「あとで話す」

 お店を出てすぐの所に、公爵家の馬車が停まっていた。

 私を先に乗せ、ギルバート様が乗り込むとすぐに馬車は出発した。


「シャーロット、わたしが離宮でお茶を楽しんでいる時、先触れがあり、フレッドが離宮を訪れると告げた」


 ギルバート様、また離宮にいたんですね…。


「フレッド様が?何しに?」

「わたしが知る訳ないだろう。ただ、いくら自由にしていていいと言われていても、シャーロットが不在なのがバレたらまずいだろう?」

「はい。まずいです…。今頃、ジュディはどうしているんでしょうか?」

「わたしが思いつく限りで、急に来たフレッドに会わなくてもいい口実なんて、風呂くらいしか思い浮かばなかった。多分、風呂だと言って誤魔化しているだろう」

「そうですか…」


 早く馬車がお城に着けばいいのに。

 イライラとしながら小窓から外を見ていると、ふとギルバート様の視線を感じた。

「なんですの?」

 ギルバート様はマジマジと私を上から下まで眺める。

「いや、紺に白のエプロンはありだな。シャーロットによく似合う。今度、わたしがパルフェの制服を考えてみよう。なに、わたしにもその権利はあるはずだ。何しろ、あの店はわたしが買ったのだからな」

「…ギルバート様…変態っぽいのでやめてくださいませ」


 そんな話をしているうちに、馬車はお城に到着した。

 急いで離宮へと戻るが、どうやら、もうフレッド様は離宮に来ているようだった。


 そう大きくない離宮の建物で、一階の応接室のフレッド様に気付かれずに玄関から入ることは難しい。

 割と玄関から応接室は近いので。


 私はすぐに離宮の裏手に回り、畑の横に生えている木に登り始めた。

 ギルバート様が青い顔をして止めるけれど、なり振りかまっていられません。

 そして、私はなんとか二階のバルコニーまで到達することができた。


 ギルバート様に、二階から手を振って、無事に建物内に入れたことを知らせると、ギルバート様は呆れた顔をして、それでも安心したように笑って本宮の方へ帰って行った。


 さて。

 私はここからが本番だ。

 バルコニーから室内へ入る。

 ここは空き部屋になっていて何も置いていないので、二階の自分の寝室に行き、着替えのワンピース一式を持って二階にある浴室へと向かう。

 紺のワンピースとエプロンは、木登りのせいでかなり汚れてしまっているので、パパッと脱ぐ。

 手足も少し汚れていたので固く絞ったタオルで拭く。

 そうだ。

 入浴していると言っているのに、髪が少しも濡れていないのはおかしい。


 私は編み込んである髪をほどき、水で髪を濡らす。

 本当に入浴しているわけではないので、お湯はない。寒い。

 手早く髪を拭いていると、ドアの外が騒がしくなった。


「フレッド様、おやめください。女性が入浴している所に立ち入るなんて、非常識です!」

「でも、いくらなんでも遅すぎる。オレが先触れを出してからどれくらい経ったと思ってるんだ。まさかとは思うけど、シャーロットちゃんの所在を確認しないわけにはいかない」

 バタバタと足音が聞こえて、私は慌てて髪を拭くのを中断して、まだ着ていないワンピースを手に取る。

 下着は着けているけど、そのままでいるわけにはいかない。

 でも、ワンピース着るのに間に合わなそう。

 ワンピースは元に戻し、大判のバスタオルを全身に巻き付けたところで、いきなりドアが開く。


 水が滴る髪を揺らせて振り向くと、目をまん丸に見開いたフレッド様と目が合った。

「き、きゃ~~!」

「し、失礼!」

 フレッド様は顔を真っ赤にして、慌ててドアを閉めた。


 肩から膝まで、しっかりバスタオルで隠れていたし、中にちゃんと下着をつけていたけれど、恥ずかしいことに変わりはない。

 その場にペタンと座り込んでしまった。


 少し間を置いて、ジュディが浴室に走り込んでくる。

「姫様っ、大丈夫ですか!?」

 ジュディの手を借りて、立ち上がる。

「だ、大丈夫…。びっくりしただけ」

 ジュディは私を立ち上がらせると、素早く私の身支度を始める。

「いつお戻りに?」

「たった今。ギルバート様に送っていただいて、木を登って一番端の部屋のバルコニーから中に入って。浴室まで来て、入浴を擬装している所にフレッド様がいらっしゃったのよ」


 なんとか、フレッド様にバレずに済んでよかった…。

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