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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
10章 待ち惚け王子

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パルフェの日常 

 次の週のよく晴れた日、パルフェはオープンした。

 最初はガラガラだったのだけれど、なんとロジャーさんが早速買いに来てくれて、トランケに定期的にパンを卸す契約をしてくれたのだそうだ。

 で、トランケでパンを食べたお客さんがロジャーさんから仕入れ先を聞いて、パンを買いに来てくれて。

 口コミで、徐々に売り上げを伸ばしていった。


 私が作ったクッキーはどうなったかと言うと、作れる時にたくさん作って、パルフェに持っていっている。

 毎日置けるわけではないため、運がよければ買えるラッキーアイテムとして人気があるそうだ。


 店主であるアーサーは、クッキーの売り上げをそのまま私に渡してくれた。

 クッキーを店頭に並べて売れ残った日はないそうなので、作れば作っただけ私のお小遣いとなっている。

 がんばれば、自分で服が買える日は近い!



 ギルバート様の刺繍も、2枚ほど完成した。

 できれば夜会前までにもう1枚作り終えたい。



 刺繍も完成までの目処が立ったので、今日はクッキーを大量に焼いた。

 と、言っても趣味の範囲にしては大量と言うだけで、店頭に並べてしまえば10袋くらいだけど。


「ジュディ、じゃあ行ってくるわね」

 今日のお留守番はジュディだ。

「はい。姫様。お気をつけて」

「あ、もしギルバート様がいらっしゃったら戸棚のクッキーは全部差し上げてね。ギルバート様の分だから」

「かしこまりました。最近、ギルバート様はクッキーが食べられないって文句言ってましたもんね」


 最近はギルバート様は私がいなくても離宮でお茶を飲んでいく。

 ジュディはギルバート様の良い話し相手になっているようだ。


 服をボナールから持ってきたシンプルな紺のワンピースに着替えて、バスケットにたくさんのクッキーを入れて、私はパルフェに向かう。


 乗り合い馬車を降りて、パルフェに向かう途中でロジャーさんに会った。

「ロジャーさん、こんにちは」

「おおー、ロッテさん。こんにちは。ちょうど昨日の営業でパンがなくなったから、昼の分をもらいにパルフェに行ってきたところなんだ」

「まあ、いつもご贔屓にありがとうございます」

 私は営業スマイルでロジャーさんに挨拶する。

「そういえば、ライとの約束は明日だっけ?ライが楽しみにしてたよ」

 あ、そういえば2週間後に町に来ますと約束したっけ。

「はい。私も楽しみにしています」

 ロジャーさんはそれを聞くと、パンを持ってトランケの方に急いで帰って行った。


 パルフェに着くと、お昼時なのもあって、お店は繁盛していた。

 パンのレジに人が何人か並んでいて、イートインコーナーにもお客さんが座っている。


 レジはマリーが担当していて、イートインに食事を運ぶのはアーサーの役だけど、パンの焼き加減も見ながらだから大変そうだった。

 もっと、暇なお店を想像してそのようにしていたので、明らかに人員が足りない。


「こんにちは、アーサー。私、手伝うわね」

「ひ、ロッテ。いや、そんなことをさせる訳には…」

「だって、忙しいでしょう?あまり役に立たないかもしれないけど、少しだけ。ね?」

 私はアーサーにそう言い、マリーにも声を掛けてから、売り場の隅にバスケットからクッキーを取り出して並べた。

 一度、奥に入って白いエプロンを借りて身に着ける。


「アーサー、今日のスープは何?」

 アーサーが厨房から顔を覗かせる。

「今日はシチュー。紅茶はダージリンとアイスのアールグレイだけにしてる」


 イートインコーナーは、お店で売っているパンを買って、その場で食べるものだ。

 サンドイッチや具材の入ったパンがあるので、それをレジで買って、飲み物が欲しければレジで食券を買って、アーサーに渡すのだ。

 アーサーは飲み物を用意してテーブルに持っていくだけのつもりだったのだが、ジュディが暖かいスープくらいはあった方がいいと言うので、日替わりでコンソメスープやシチュー、ミネストローネなども出している。

 スープを飲みたい人は、飲み物と同じようにレジで食券を買う。

 これがまた城で食事を作った経験のあるマリー作なので、大変好評らしく、あっという間に完売するそうだ。


 厨房前の注文台には食券が溜まっている。

 シチューが2つにホットの紅茶が4つね。

 先に注文してくれているシチュー2つと紅茶2つをトレーに乗せる。

 …ただ置くだけじゃだめよね?

 お城で舞踏会をやった時に、メイドはどうやっていたかしら?


 舞踏会に参加したことも数えるほどしかないので、うっすらとした記憶をたよりにテーブルに向かう。


「失礼します。お待たせいたしました」

 背筋をピンと伸ばし、軽く腰を曲げてテーブルにシチューと紅茶を置く。

 パンだけじゃ足りなくてシチューを頼んだのは、髭のある恰幅のいいおじさんと、多分その息子(若い方はスマートだけど、顔がソックリ!)だった。

 そのお客さんの顔を見てにっこり笑うと、お客さんは私の顔をぽーっと見ていた。


 何かおかしかったかしら…。

 不思議に思いながらも、次の紅茶を入れに厨房へ戻る。


 次の2人は可愛らしい女の子2人。

 サンドイッチとクリームをつけて食べるパンをテーブルに置いておしゃべりに花を咲かせていた。

「どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

 こちらも私が紅茶を置くと、顔を赤くして私を見ている。


 最近、私を見て顔を赤くする人が多いけど、気のせいかしら…。


 そのあとも、イートインにシチューや紅茶を運んだり、お客さんにクッキーを勧めてみたりと、人と触れ合うのがすごく楽しかった。


 もし、私が町で住むことができたら、絶対にパルフェで働かせてもらおう。

 できれば、支店とか任せてもらえたら嬉しい。

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