移動
出発の日、陽も昇りきらぬ早朝から馬車に荷物を乗せ、出発の準備をする。
一応、メイド服ではなく私服で出発することにしている。
城下町に入った時に、お城のメイド服を知っている人がいるかもしれないためだ。
朝食はサンドイッチを頼んでおいた。
さすが王族が使う…以下略。
嫌な顔ひとつせずに用意をしてくれる。
護衛の部屋に行くと、まだライは眠っていた。
アーサーと相談をして、額のタオルが落ちないように、また目を覆うように紐を巻きつけて固定してから、アーサーがライを担ぎ上げた。
「な、に…どうなった?」
ライが起きてしまったようだ。
「起こしてごめんなさい。私たち、もうここを出なければいけないの。あなたも一緒にきてもらって、お医者様に見てもらうのよ」
「そうか。でも、この目隠しは…」
「額のタオルが取れないように巻いてあるだけよ。まだ熱があるのよ」
納得してくれたか、ぐったりしていて反論する元気もないからかわからないが、ライはそのまま大人しくアーサーに担がれてくれる。
また寝てしまったらしい。
よっぽど、体力が持って行かれているのだろう。
馬車の中にライを下ろし、私たちも乗り込んで、馬車は走り始めた。
馬車が宿泊所から離れたところで、ライのタオルを目が隠れないくらいのところまでまくってあげる。
ライの瞳は、まだ眠っているようで閉じられたままだった。
馬車は狭い6人乗りで窮屈ではあったが、こちら側に女性3人、向かいの椅子にアーサーとライが座ると、馬車の中はいっぱいいっぱいだ。
当初、馬車の中に入れる予定だった荷物は、トランクに詰め込み、屋根の上で。
しばらく馬車が走り、太陽が完全に昇ったところで、ライが目を覚ました。
「ここは…どのあたりだ?」
ライは身動ぎして、額のタオルを取った。
「森からは大分離れました。町に入って、医療院を見つけたら、そこで下ろしますね」
私の言葉を聞くと、ライは不安そうな目で私を見つめた。
「ずっと一緒だと……いや、医療院に置かれて行っては困る。もう熱もないし、一緒に連れて行ってもらえないだろうか」
隣に座るアーサーがライに言葉を返す。
「まだ熱はあるよ。それに、オレたちは中心地までしか行かない。キミはどこに帰るつもりだったんだ?」
「オレは、城下町に……。そこに家がある」
城下町なら、お城に帰るのについでに乗せて行くのも可能なはず……。
「アーサー、そこなら一緒に乗せて行ってあげたらどうかしら?」
私がそう言うと、アーサーは渋い顔をする。
「まあ、ロッテがそう言うなら……」
マリーとジュディを見ても同じ表情だ。
「でも、ライ、体の方はどうなの?まだ本調子でないなら、医療院に行った方がよいのではなくって?」
「いや、帰れば充分な治療が受けられる。それよりも、家の者が心配しているといけないから…」
結局、ライはそのまま私たちと馬車で城下町まで帰ることになったのだけど、私たちは急いでいたので、馬車も当然急いで走る。
あんまり揺れる馬車の中で、ライの調子は少し悪化してしまった。
馬車の中で食べるサンドイッチも、ライの胃は受付なくて、果実水だけを口にしていた。




