表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
7章 人質姫のもう一つの生活
44/180

お買い物

 洋服屋さんを出て、町の中を歩いていく。


「ギルバート様、あれはなんですの?」

「あれは雑貨屋だな。文房具などが置いてある」

「あっちはなんですの?」

「あっちは最近王都で有名な菓子店だ。あとで寄ってみよう」


 お店屋さんのショーケースにはたくさんの商品が並べられ、それを見ているだけでも楽しい。


「気になるものがあるなら買ってやろう」

 ギルバート様が珍しく機嫌良く私に言う。

 その言葉を聞いて、私は自分がお金を持っていないことに気がついた。

「ギルバート様、申し訳ありません。せっかく連れてきていただいたのに、お金がないことを今思い出しました…」

 しょんぼりと言うと、ギルバート様がイラっとした表情で私に言った。


「わたしが、女性に支払いをさせるような男に見えるのか。お前が欲しがるものはわたしが買ってやるに決まっているだろう」

「そんな…町に連れてきてもらっただけでもありがたいのに、買っていただくなんて…」

 ランバラルドに来るときに、金銭は持って来なかったから、お借りしても返せるあてがないし…。

 人質って、お給料でないわよね?

 だって、賠償金と引き換えですものね。

 あ、メイドのお仕事でお給料もらえないかしら?


 私がぶつぶつと独り言を言って考えていると、ギルバート様は呆れたように言った。

「いい。わたしが買ってやりたいのだ」

「でも、それでは申し訳なくて…」

 私が戸惑っていると、ギルバート様は私の後ろにある小間物屋に視線を移した。

「もし、ただ買ってもらうのが気になるなら、ひとつ願い事を叶えてくれるか?」

「願い事、ですか?」

 そりゃ、私にできることでしたら、メイドとしてお部屋のお掃除でもなんでもやりますけど。


 ギルバート様は目を細めて言う。

「あそこで白いハンカチーフを買うから、わたしのイニシャルを刺繍してもらえないか?」

「刺繍、ですか?いいですけど…私、あまり刺繍は得意ではありませんよ?」

「よい。シャーロットの手で刺繍されたものが欲しい」

「それでしたら…。でも、得意ではありませんので、お時間はたくさんくださいね」

 ギルバート様はにっこりと頷いた。


 そして、大判のハンカチーフを二枚買う。

 もちろん、失敗した時の予備も含めて。

 刺繍糸もギルバート様のお好みでいくつか買った。

 図案は、明日ギルバート様と打ち合わせすることにした。


 その他にも、ギルバート様は髪飾りだとかアクセサリーとかを買おうとしたけれど、基本離宮にいるので必要ないと、きっぱり固辞した。


 かなりな数のお店を回って、少し足が痛くなってきた頃に、ギルバート様がさっきの菓子店でお茶にしようと声をかけてくれる。

 素晴らしいタイミングだ。


 入口は白いドアで、レースのカーテンがかけられ、すごく素敵なお店だった。

 お店の中に入ると少し混んでいたけれど予約をしていたらしく、すぐに席に案内してもらえた。

 外が見えるテラス席だ。

「ほら、メニューだ。なんでも好きなものを頼んでいいぞ」

 ギルバート様に手渡されてメニューを開くと、ケーキや焼き菓子の絵が描かれているのが目についた。

「どうしましょう。こんなにあると迷ってしまいます」

 ボナールにいた時はあまりケーキとはご縁がなかったので、自分がどのケーキが好きなのかわからないのだ。

「では、店長のオススメとやらにしてみよう。紅茶もそれに合うのを選んでもらうのでいいか?」

「はい。お任せします」

 ギルバート様はお店の人を呼び、慣れたように注文をしてくれた。


「ふふふ。ギルバート様、慣れてますね。ここはご令嬢とのデートでお使いになるのですか?」

 私がそう言うと、ギルバート様にしては珍しく、赤くなって慌てていた。

「ばっ、ばかを申すな。わたしがご令嬢をデートに誘うなど、ありえない。最近は離宮に顔を出すから学校が終わればすぐに城へ帰るしな」

 そういえばそうか。

 ほとんど毎日のように離宮で私の作った焼き菓子を食べているな…。

「シャーロットは…その…こういうところでデートがしたいのか?」

「そうですねぇ。離宮におりますから夢のまた夢ですが…」


 ギルバート様は顔を赤くしたまま私に言った。

「…夢は叶えるものだ。きっと、そのうち叶うぞ」


 そうですね。いつか、私も人質でなくなる日がくるかもしれませんしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ