お出掛けしたいところ
「えっ、本当ですか!?」
私は立ち上がった。
だって、外ですよ?
あんなに焦がれた外出ですよ?
興奮しないわけがない。
あ、でも…。
「ダメです。ギルバート様。お気持ちは有り難いですが、私は人質なので勝手に出歩けません…」
しょんぼりと言うと、ギルバート様は眉根を寄せた。
「お前に逃げる気はないのだろう。それなら問題ない。きちんとここに戻ってくると約束するなら出してやろう。だいたい、お前がいなくなったらわたしが困る。誰が私の茶菓子を作るのだ」
そこまで私が作るお菓子を気に入っていただけて嬉しいです。
「姫様っ!!」
いつもは口を出さずに控えていたジュディが、私に抱きついた。
「よかったですね、いつもあんなに外に出たいと言っていた、あの外に出られるなんて…!」
そしてギルバート様の足元へ跪く。
ジュディがギルバート様に触れることは許されない。
だから、ギルバート様の目の前で跪き、こうべを垂れる。
「ギルバート様、お声をお掛けすることをお許しください。姫様をお気遣いくださり、ありがとうございます。いつも離宮にきて、姫様に声をかけていただき、以前の姫様は大変お寂しいようでした。ギルバート様がきてお話相手になってくださって、本当に感謝しています…!」
いつも一緒にいるジュディは知っていたんだろう。
私が思っていたことを。
ずっと、外に出たかった。
自由に歩き回りたかった。
塔の上から眺める外は、とても楽しそうで、でも私の手には届かなくて。
諦めるしかなかった自由。
「よい。ジュディ、顔を上げてくれ。わたしは自分のしたいようにしているだけだ。だから、何も気にする必要はない」
ギルバート様は屈んでジュディの手を取ってくれた。
「ジュディ。わたしの友であるシャーロットに心から仕えてくれてありがとう。わたしからも礼を言う」
王位継承権第二位にある、高貴なお方が私のことを思って、侍女であるジュディの手を取る。
それは、本当に特別な意味のあることだった。
「シャーロット、お前も泣くな。お前の味方はちゃんといる。安心して過ごすとよい」
その言葉を聞いて自分の目に手をあてると、目元が濡れていた。
あんまり嬉しくて、知らぬうちに涙が溢れてきたようだった。
「ギルバート様、ジュディ、私はお二人のような方と知り合えて、本当に幸せです」
次々に涙が溢れ出てきたけれど、私は二人に微笑んだ。
「それで、シャーロットはどこへ行きたいのだ?」
「町です!お買い物がしてみたいです!!」
ぐっと握りこぶしを作って、私は熱く語る。
「かわいい小物や甘いお菓子。新鮮な果物にお花屋さん。興味は尽きません」
「町か。どこでもいいのなら明日にでもいけるぞ。すぐそこ、城下町ならあっという間に着く。では、明日、お昼過ぎに迎えに来る準備をして待っておけ」
「はいっ!」
楽しみで楽しみで、私は元気に返事をしたが…。
「でも、ギルバート様。町には何を着て行ったらいいのでしょうか?」
「こっちで用意してやる。いつものメイド服で来い」
「メイド服ですか…」
ジュディと顔を見合わせる。
その様子に気分を悪くしたギルバート様が言う。
「ちゃんと用意してやると言ったであろう。わたしと一緒に城から出るのに、ドレスを着せたら目立つし、町民の服装だとどうして平民が城から出てくるのか門番に疑われる。わたし付きの侍女として行くのがちょうどいい」
ギルバート様の言葉に不安になる。
「抜け出すのは人質としてどうでしょうか…」
「わたしが知っているのだから、抜け出すわけではない。王位継承権第二位のわたしが許可を出している。それでも不安なら、きちんと公爵としての書簡を発行するぞ。公爵印章付きの外出許可証を」
結局、ギルバート様がご不在の時に何かあった場合のことを考えて、書簡は発行してもらうことにした。
日帰りであれば、国内どこに外出してもいいという公爵お墨付きの書簡だ。
ギルバート様は、明日、書簡を発行してから、離宮へ迎えに来てくれるという。
とても楽しみ。




