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人質姫と忘れんぼ王子  作者: 雪野 結莉
7章 人質姫のもう一つの生活
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お出掛けのお約束

 あれからギルバート様はちょくちょく離宮に来ることになった。


 ツンデレのギルバート様のお話をまとめると、ギルバート様は年の近い王太子と比べられることが多く、窮屈な思いをされていたようだ。

 出来の良いいとこと比べられ、そしてそのいとこは王太子としての職務をつつがなく、まっとうしている。


 意固地になっていたところへ、私、シャーロットの噂が持ち上がる。

 これは、ごく一部の者しか知らないが、王太子は内密に側室を娶ったらしい。

 公表はしないそうだし、お城の中でも知っているものは僅かで、箝口令が敷かれているという。

 そんなことをしなければならない側室とは訳ありの貴族か、もしくは余程身分の低い者であろうと。


 ギルバートはおもしろくなかった。

 自分は王位継承権第二位だぞ。なんで自分にも教えてくれないんだ。と。

 そして、お城の中では離宮に近づいてはいけないと暗黙の了解があるにもかかわらず、離宮に近付いてみたのだ。


 ライリーの側室に嫌がらせの一つでもしてやろうと。

 だが、様子を伺っていても、一向にライリーは離宮にやって来ない。

 そして、様子を見ていた観察対象の女はおかしかった。

 メイド服を着て楽しそうに働く。

 貴族の姫はしないような土いじりも喜んでやる。


 これは、側室という噂は嘘なのではないだろうかと、叔父にあたる国王や宰相に探りを入れるが、まったくわからない。

 そして、本人にカマをかけたら見事にハマったのだ。


 私はまんまと人質姫であることを暴露し、側室であることを認め、あまつさえお茶菓子まで出してしまうという…。


 ギルバート様とのお茶会のときに控えていたジュディが、事の次第を聞いたときにはめちゃくちゃ怒られました。

 あ、ジュディはギルバート様が来る時は普通の侍女と同じように、お茶会には参加せずに側で控えている。

 私がメイド服なのは変わらないけれど。




 そして、今日も今日とて、ギルバート様は離宮に来て私の作ったお菓子を食べている。


「ギルバート様はお暇なのですか?こう毎日離宮にきては、お仕事に差し支えるのではないですか?」

 今日はアップルパイを焼いた。

 サクサクしたパイをギルバート様のために切り分ける。

「お前が寂しいと思って、こうしてきてやってるのではないか。さっさとパイを寄越せ」

 この人は本当に公爵様なのか…?

 フォークを片手にパイを強請る姿は、とてもではないが品のある王族には見えない。

「はいはい。さあ、どうぞ。お召し上がりくださいませ」

 大きめに切ったパイをギルバート様に出す。

 パイの大きさにギルバート様は満足そうだ。


 目の前の美少年は、その顔に似合わないくらい大口を開けてアップルパイを頬張った。

「だいたい、わたしが離宮に来るのはいつも午後だろう。午前中は学校に通っている。課題も出るし、わたしは忙しい」

「ギルバート様は学校に通われているのですか?」

「そうだ。まだ16歳だからな。あと2年通って、成人を迎えると本格的な仕事が始まるだろうな。そういえば、シャーロットは何歳なんだ?ボナールでは学校に行かないのか?まあ、国の事情にもよるが、深窓の姫君はお城の奥で家庭教師がつくというのもあるだろうからな」


 お城の奥に押し込められて、家庭教師はついたけれど…。

「私は16歳ですが、学校には行ったことがございません。ギルバート様が羨ましいです。私もいろいろなことを経験したかったです」


 もう、そんな夢みたいなことを、願ってはいけないのだろうけれど。


 でも、こうしてメイド服で武装して、お城の中で働けているだけでも幸せだわ。

 それまでは、ほとんどの時間を塔の上で過ごしたのだから。


 ギルバート様は紅茶に手を伸ばす。

 今日の紅茶はアップルティーだ。

 少し、くどかったかしら?


「シャーロットは城の外に出たことがないのか?」

「ありますよ。ボナールのお城からここランバラルドのお城までは外を通って来たじゃないですか」

「バカか。そういうことではない。ボナールにいた頃は外に出なかったのかと聞いている」

「そうですねー。ほとんど出なかったですね。16年間の間に片手で足りるくらいです」


 ギルバート様はフォークの手を止めた。

「片手?本当か?」

「本当です」

「…ランバラルドに来てからは?」

「お城の敷地の外にでたことは一度もないですね」

 フレッド様に、瞳や髪のことでカッティーニ家に行ったこと以外は。


 離宮を出て本宮に行くのだって大冒険だったのだから。


 ギルバート様はもぐもぐとアップルパイを食べながら、こともなげにこう言った。


「では、わたしが今度町に連れて行ってやろう」


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